(1)事案の概要

 本件は、原告Xらは、相続により取得した上場株式等について特定口座(源泉徴収口座)に預け入れ、その後、その株式等の一部を譲渡した場合に、Xらが、上場株式等の譲渡による所得について、当該所得を含めずに確定申告をした後、相続税額の取得費加算の特例を適用して更正の請求をしたところ、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたことから、通知処分の取消しを求めた事案である。

○本判決に至るまでの事実等は、次のとおりである。
① Xらは、亡母Mの死亡に伴う相続(以下「本件相続」という。)について遺産分割を行い、相続財産の一部である上場株式等(以下「本件各上場株式等」という。)を取得した。
② Xらは、S証券A支店に、特定口座(源泉徴収口座)を開設し(以下「本件各特定口座」という。)、その後、本件各特定口座に本件各上場株式等を預け入れた。
③ その後、Xらは、各自、本件各上場株式等の全部又は一部を譲渡し、これにより、譲渡益を得た。
④ Xらは、期限内に確定申告をしたが、本件各譲渡に係る譲渡所得を含めていなかった。
⑤ Xらは、租税特別措置法(以下「措置法」という。)39条1項に規定する相続税額の取得費加算の特例を適用して更正の請求をしたところ、所轄税務署長は、更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。

(2)判決要旨(却下・棄却)(控訴)

① 更正の請求は、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことが必要とされるところ(通則法23条1項)、本件各確定申告は、いずれも、申告不要制度について定めた措置法37条の11の5の規定に基づき、本件各譲渡に係る譲渡所得の金額を除外してされたものであり、また、これを前提とした計算に誤りがあるとは認められない。

② 措置法37条の11の5は、個人投資家の確定申告等の事務の負担の軽減に配慮する観点から、源泉徴収選択口座において生じた上場株式等の譲渡所得について、申告不要の特例を設けたものであるところ、申告不要の特例を選択するか、あるいは、これを選択せずに当該源泉徴収選択口座において生じた上場株式等の譲渡所得を除外することなく申告するかは、確定申告時の納税者の自由な選択に委ねられており、このことは、同条1項が、当該上場株式等の譲渡所得の金額について「除外したところにより、所得税法120条(中略)の規定を適用することができる」と規定していることからも明らかといえる。納税者にとってみれば、源泉徴収選択口座において生じた上場株式等の譲渡所得について、確定申告時に、税額に及ぼす影響や事務の負担等を勘案して、申告不要の特例を選択するか否かを検討することが求められるものといえるが、これが納税者にとって過度な負担を強いるものとはいえず、このことは、上場株式等が一定の期間における相続財産である場合に、申告不要の特例を選択せず、当該源泉徴収選択口座において生じた上場株式等の譲渡所得を除外せずに申告することで、更に措置法39条1項の適用を求めることができることを踏まえても、同様といえる。

③ 仮に、納税者が申告不要の特例を選択したことによって、これを選択せずに当該源泉徴収選択口座において生じた上場株式等の譲渡所得を除外することなく申告をした場合と比べて納付すべき税額が過大となったり、又は、還付金の額に相当する税額が過少となったりしたとしても、これをもって「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」に当たるとはいえず、したがって、本件各確定申告で本件各譲渡に係る譲渡所得の金額を除外したことについて「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」に当たるとはいえない。

④ 以上によると、本件更正の請求は、通則法23条1項の更正の請求の要件を満たしておらず、Xらは更正の請求で措置法39条1項の規定の適用を求めることはできないというべきである。