主婦

概要

 専業主婦(所得がない妻)や、夫の扶養となって働いている妻は、年金では国民年金第3号被保険者、健康保険では夫の保険の被扶養者となり、妻の保険料を別途支払う必要はありません。

 しかし、妻の「年間収入」が130万円以上(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円以上)あるとみなされると、年金では国民年金第1号被保険者として、健康保険では国民健康保険の被保険者として新たに妻の保険料を支払うことになります。

 ここでいう年間収入とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。

 この扶養の判定基準である「年間収入」に株式の譲渡収入が含まれるかについては明確な規定はなく、また、加入の健康保険が「全国健康保険協会管掌健康保険(以下「協会けんぽ」という。)(主に中小企業)」か「組合健保(主に大企業)」かによって違いがあります。

健康保険法4条
 健康保険(日雇特例被保険者の保険を除く。)の保険者は、全国健康保険協会及び健康保険組合とする。

 ただし、「協会けんぽ」にしろ「組合健保」 にしろ、特定口座(源泉あり)内での株式売却益や上場株式の配当について申告不要を選択した場合は、「年間収入」には入らないと解されていることが多いようです。つまり、この場合、扶養から外れることはないということになります。

 協会けんぽでは、株式売却が事業として成立しているレベルでなければ、株式の譲渡収入金額にかかわらず扶養に入ってよいことになっているようです。また、損失が出ている場合は収入とならないようです。つまり、扶養から外れることは、まずないそうです。

 なお、「協会けんぽ(健康保険)」における扶養判定は、年金事務所が行っているため、心配な方は所轄の年金事務所で確認されるとよいでしょう。

 健康保険の給付(療養の給付等)の手続や相談等は、全国健康保険協会の各都道府県支部で行い、健康保険の加入や保険料の納付の手続は、日本年金機構(年金事務所)で行っているため、「健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」を日本年金機構(年金事務所)へ提出します。

 国民年金第3号被保険者になるか否かの被扶養配偶者の認定は、健康保険等における被扶養者の認定の取扱いを勘案して日本年金機構が行います(国年法7②、国年令4)。よって、扶養について、健康保険と年金で取り扱いが異なることはまずないということです。

国民年金法7条2項
 前項第3号の規定の適用上、主として第二号被保険者の収入により生計を維持することの認定に関し必要な事項は、政令で定める。

国民年金法施行令4条
 法第7条第2項に規定する主として第2号被保険者の収入により生計を維持することの認定は、健康保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法及び私立学校教職員共済法における被扶養者の認定の取扱いを勘案して日本年金機構が行う。

  一方、組合健保では、扶養の基準を組合ごとに独自に決められるため、組合によって取扱いがまちまちで扶養から外れてしまう場合があります。

 例えば、ある組合健保では、取引が単発的な年1回(例えば、相続により株式を取得したが、不要のため売却した場合)のような場合は、「一時的収入」とみなしますが、株式の譲渡が1年に複数回行われた場合は「年間収入」と考え、年間の売却額の累計額を収入と判断します。

 なお、気を付ける点は、「年間収入」が130万円以上であり、「所得」が130万円以上でないということです。そのため、株式売却損であっても売却額が130万円以上になると扶養から外れてしまう場合もあり得るということです。

 来年以降の売却損の繰越控除を利用するために確定申告をしたはいいが、扶養から外れてしまうということがおこってしまう可能性があるということです。

  組合によって取扱いがまちまちなので、確実なのは、夫(働いているほう)が加入している組合健保に確認されるのがよろしいでしょう。

 もっとも、「協会けんぽ」にしろ「組合健保」 にしろ、株式売却益や配当により、扶養から外れることはレアケースといえるので、所得税・住民税の配偶者控除(扶養控除)ほどは、神経質になることはないかと思います。

平成5年3月5日保発第15号庁保発第4号(生計維持の基準)

認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合

 認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となる。

 なお、上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を総合的に勘案して、当該被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、被扶養者となる。

認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合

 認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となる。

令和3年4月30日保保発0430第2号保国発0430第2号(夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について)

 夫婦とも被用者保険の被保険者の場合には、以下の取扱いとする。
(1) 被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。
(2) 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
(3) 夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべき者に係る扶養手当又はこれに相当する手当(以下「扶養手当等」という。)の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。
 なお、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできない。
(4) 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。
当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、加入者の標準報酬月額、届出日及び決定日を記載することが望ましい。
 被保険者は当該通知を届出に添えて次に届出を行う保険者等に提出する。
(5) (4)により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険者等は、当該通知に基づいて届出を審査することとし、他保険者等の決定につき疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの者の被扶養者とすべきか年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議する。
 この協議が整わない場合には、初めに届出を受理した保険者等に届出が提出された日の属する月の標準報酬月額が高い方の被扶養者とする。
 標準報酬月額が同額の場合は、被保険者の届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。なお、標準報酬月額に遡及訂正があった結果、上記決定が覆る場合は、遡及が判明した時点から将来に向かって決定を改める。
(6) 夫婦の年間収入比較に係る添付書類は、保険者判断として差し支えない。

その他