概要

 購入した棚卸資産の取得価額は、(1)その資産の購入の代価(引取運賃等の資産の購入のために要する費用の額を加算した金額)と、(2)その資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した全ての費用の合計額とされています(法令32①一)。

 ただし、手入れに要した費用の額等が棚卸資産の購入代価のおおむね3%以内の少額な金額である場合には、重要性の原則等の観点から、取得価額に算入しないことができることとされています(法基通5-1-1)。あくまでも、棚卸資産の場合であり、固定資産として取得するための費用であれば、いわゆる3%基準はありません。

 上記のことは、棚卸資産の取得価額における法人税法上の一般的な取り扱いとなります。これとは別に、販売用不動産の取得価額については、以下のような特別な取り扱いがあります。

 次に掲げるような費用の額は、たとえ棚卸資産の取得又は保有に関連して支出するものであっても、その取得価額に算入しないことができるとされています(法基通5-1-1の2)。

(1)不動産取得税の額、(2)地価税の額、(3)固定資産税及び都市計画税の額、(4)特別土地保有税の額、(5)登録免許税その他登記又は登録のために要する費用の額、(6)借入金の利子の額

 棚卸資産の取得価額に算入しない場合は、支出事業年度の期間費用とすることができます。

取得価額に算入しないことができる費用

(1)不動産取得税の額、(4)特別土地保有税の額、(5)登録免許税その他登記又は登録のために要する費用の額

 固定資産の取得価額に算入しないことができる費用として、不動産取得税、特別土地保有税、登録免許税その他登記又は登録のために要する費用があります(法基通7-3-3の2(1))。

 これら租税公課等について、固定資産の取得価額に算入しないことができる理由について、法人税基本通達逐条解説(税務研究会出版局)では、以下のように解説しています。

 本通達(編注、法人税基本通達7-3-3の2)の(1)の租税公課等は、いずれも固定資産の取得に関連して納付するものであるから、その取得価額に算入しなければならないのではないかという考え方があり得よう。しかしながら、もともとこれらの租税公課等は一種の事後費用であるうえ、その性格も流通税的なものないしは第三者対抗要件を具備するための費用であって、必ずしも固定資産の取得原価そのものとはいいきれない面がある。そこで、これらの租税公課等を取得価額に算入するかどうかは法人の判断に任せることとされている。

 そして、取得価額の計算に関しては、もともと固定資産であろうと棚卸資産であろうとで基本的な考え方の違いはありません。

 よって、取得価額に関する取扱いの整合性がとられ、これら租税公課等については、棚卸資産の取得価額においても算入しないことができる費用として取り扱われています。

 取得価額に含めない場合には、支出事業年度の期間費用として損金に算入されることになります。取得価額に含めるか否かの選択は、支出がなされた事業年度においてなされる必要がありますので、事後の事業年度において選択したとして費用処理することは認められません。

 なお、特別土地保有税は、2003年(平成15年)度以降の新たな課税は、停止されています。

(2)地価税の額、(3)固定資産税及び都市計画税の額

 地価税、固定資産税及び都市計画税については、一般的には単純な期間費用です。これら租税公課は、棚卸資産である土地を販売するために直接要した費用というよりはむしろ土地を保有することに伴って発生する費用という性質を有するものであり、不動産取得税などの租税公課よりも原価性が低いと考えられます。

 それなのに、あえて、これを取得価額に算入しないことができると通達で記載されているのは、棚卸資産の固有の問題として取扱いを定めたものということができ、そのことについて、法人税基本通達逐条解説(税務研究会出版局)では以下のように解説しています。

 土地、建物等の不動産を棚卸資産として取得し、保有している法人(不動産業者等)にとっては、当該不動産について課される地価税や固定資産税、都市計画税等は、いわば棚卸資産の販売の用に供するために不可欠の費用であるともいえる。このような意味からすれば、例えば、土地の造成期間中に課された地価税や固定資産税等については、法人税法施行令第32条第1項第1号ロ(棚卸資産の取得価額)に規定する「当該資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した費用」に該当し、その取得価額に算入しなければならないということであろう。
 しかしながら、不動産の取得に関連して課された不動産取得税等のように、不動産の保有に関連して課される地価税や固定資産税等より原価性が濃いと認められる租税公課等について原価外処理を認めながら、地価税や固定資産税等について原価算入を強制するのは必ずしも妥当ではなく、また、現実の企業経理においても、これらの租税を取得価額に算入するかしないかは区々であると思われるので、これを取得価額に算入するかしないかは法人の任意とすることとされている。

 なお、地価税は1998年(平成10年)度より当分の間、課税されないことになっています(措法71)。

 また、取得価額に算入しないことができるのは、固定資産税及び都市計画税の額であり、不動産売買の際に、売買当事者の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過分を買主が分担する場合の当該分担金は、地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受にしかすぎません。

(6)借入金の利子の額

 固定資産の取得価額に算入しないことができる費用として、借入金の利子があります(法基通7-3-1の2)。

 そして、取得価額の計算に関しては、もともと固定資産であろうと棚卸資産であろうとで基本的な考え方の違いはありません。

 よって、取得価額に関する取扱いの整合性がとられ、これら租税公課等については、棚卸資産の取得価額においても算入しないことができる費用として取り扱われています。

通達

法人税基本通達5-1-1(購入した棚卸資産の取得価額)

 購入した棚卸資産の取得価額には、その購入の代価のほか、これを消費し又は販売の用に供するために直接要した全ての費用の額が含まれるのであるが、次に掲げる費用については、これらの費用の額の合計額が少額(当該棚卸資産の購入の代価のおおむね3%以内の金額)である場合には、その取得価額に算入しないことができるものとする。
(1) 買入事務、検収、整理、選別、手入れ等に要した費用の額
(2) 販売所等から販売所等へ移管するために要した運賃、荷造費等の費用の額
(3) 特別の時期に販売するなどのため、長期にわたって保管するために要した費用の額

(注)
1  (1)から(3)までに掲げる費用の額の合計額が少額かどうかについては、事業年度ごとに、かつ、種類等(種類、品質及び型の別をいう。以下5-2-9までにおいて同じ。)を同じくする棚卸資産(事業所別に異なる評価方法を選定している場合には、事業所ごとの種類等を同じくする棚卸資産とする。)ごとに判定することができる。
2  棚卸資産を保管するために要した費用(保険料を含む。)のうち(3)に掲げるもの以外のものの額は、その取得価額に算入しないことができる。

法人税基本通達5-1-1の2(棚卸資産の取得価額に算入しないことができる費用)

 次に掲げるような費用の額は、たとえ棚卸資産の取得又は保有に関連して支出するものであっても、その取得価額に算入しないことができる。
(1) 不動産取得税の額
(2) 地価税の額
(3) 固定資産税及び都市計画税の額
(4) 特別土地保有税の額
(5) 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用の額
(6) 借入金の利子の額

法人税基本通達7-3-1の2(借入金の利子)

 固定資産を取得するために借り入れた借入金の利子の額は、たとえ当該固定資産の使用開始前の期間に係るものであっても、これを当該固定資産の取得価額に算入しないことができるものとする。

(注) 借入金の利子の額を建設中の固定資産に係る建設仮勘定に含めたときは、当該利子の額は固定資産の取得価額に算入されたことになる。

法人税基本通達7-3-3の2(固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示)

 次に掲げるような費用の額は、たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。

(1) 次に掲げるような租税公課等の額
イ 不動産取得税又は自動車取得税
ロ 特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
ハ 新増設に係る事業所税
ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
(2) 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額
(3) 一旦締結した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金の額

消費税質疑応答事例「未経過固定資産税等の取扱い」

【照会要旨】
 不動産売買契約における公租公課の分担金(未経過固定資産税等)は、消費税法上どのように取り扱われるのでしょうか。

【回答要旨】
 不動産売買の際に、売買当事者の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過分を買主が分担する場合の当該分担金は、地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭)として課税の対象となります(基通10-1-6)。

【関係法令通達】
 消費税法第2条第1項第8号、第28条第1項、消費税法基本通達10-1-6

消費税法基本通達10-1-6(未経過固定資産税等の取扱い)

 固定資産税、自動車税等(以下10-1-6において「固定資産税等」という。)の課税の対象となる資産の譲渡に伴い、当該資産に対して課された固定資産税等について譲渡の時において未経過分がある場合で、その未経過分に相当する金額を当該資産の譲渡について収受する金額とは別に収受している場合であっても、当該未経過分に相当する金額は当該資産の譲渡の金額に含まれるのであるから留意する。

(注) 資産の譲渡を受けた者に対して課されるべき固定資産税等が、当該資産の名義変更をしなかったこと等により当該資産の譲渡をした事業者に対して課された場合において、当該事業者が当該譲渡を受けた者から当該固定資産税等に相当する金額を収受するときには、当該金額は資産の譲渡等の対価に該当しないのであるから留意する。