
金定額購入システムの概要
金定額購入システム(純金積立ともいいます。)とは、投資家が金地金の現物を少額から購入できるシステムです。
購入方法
投資家が金定額購入システムにより、金地金を購入する方法には以下の2つがあります。
(1)ドルコスト平均法
金地金の価格変動リスクを避けるため、継続して金地金を同一金額だけ購入する方式です。
金地金取扱業者は、毎月の購入代金(投資家の指定した口座から自動口座振替されます。)を営業日数で割った金額で毎日買い付けていき、投資家ごとの預り口座の預り重量に加算します。
この方式はドルコスト平均法といいますが、市場価格が上昇傾向にある、または下落傾向にあるにかかわらず、継続して同一の商品を同じ金額だけ購入することにより、購入する金地金の価格が高い時には少しだけ、価格が安い時には多くの金地金を購入していくことができます。
この方式を使うことによって平均買付けコストを引き下げる効果があり、一度に全ての投資を行うのではなく、一定金額ずつ積み増ししていくことで、時間の分散を図り、購入コストを下げるというリスクの低減を図ることができます。
ドルコスト平均法は、投資信託(sp500やオルカン等)の購入でもよく利用される方法です。
(2)スポット購入
上記(1)のドルコスト平均法による月々の定額購入に追加して、投資家が購入したい日の価格で金地金を買い増しする方法であり、スポット購入により買い増しした金地金は、投資家の預り口座の預り重量に加算されます。
売却方法
投資家が売却数量及び単価を決定し、金地金を売却します。この金地金の売却により、投資家の預り口座の預り重量が減算されます。
所有期間(短期譲渡所得及び長期譲渡所得)の判定
金地金の所得区分が譲渡所得に該当する場合、所有期間が5年以内なのか5年超なのかで税額計算が変わってきますが、金定額購入システムの場合は、金地金の現物取引における個別法ではなく以下のように考えます。
譲渡した金地金の所得区分が譲渡所得に該当する場合において、その所有期間は、所得税基本通達33-6の4の取扱いに準じ、投資家の預り口座において先に取得したものから順次譲渡したもの(先入先出)により判定します。
仮に、純金積立した金額が200万円あり、5年超の金額が100万円、5年以内の金額が100万円の場合で、100万円分(売価ではなく取得費)売ったとしても、先入先出により、全額、所有期間5年超(長期譲渡所得)で譲渡所得を計算します。
これは、金定額購入システムでは、投資家が購入した金地金の重量は投資家ごとの預り口座で管理されていますが、購入した金地金そのものは、購入先の取扱業者が複数の投資家分をまとめて保管し、譲渡の際には単位重量を売却するものであるため、譲渡した金地金は購入した金地金に個別に対応していません。
また、金定額購入システムは、単価が変動する同一品質の金地金を定期的に購入し、その同一品質のものを売却するものであることから、同一銘柄の有価証券を譲渡した場合の取得の日の取扱いに準じて、先に取得したものから順次譲渡したものとして所有期間を判定することにしたものです。
なお、所有期間の判定については先入先出で考えますが、取得費については、下記のように総平均法に準ずる方法により算出します。
取得費等
譲渡した金地金の所得区分が雑所得又は譲渡所得に該当する場合において、雑所得又は譲渡所得の金額の計算に際して総収入金額から控除される必要経費又は取得費(以下「取得費等」といいます。)については、所得税法48条3項及び所得税法施行令118条の規定に準じ、有価証券の評価方法である総平均法に準ずる方法により算出します。
金定額購入システムで購入した金地金は、投資家ごとに預り口座で重量により管理されているだけで、金地金自体は投資家ごとに個別に管理されていないため、金地金を売却した場合に譲渡資産と取得資産が個別に対応せず、個別の取得価額により取得費を計算することはできません。
金定額購入システムが、同一品質である金地金を一定額で定期的に購入するものであることからすれば、金定額購入システムで購入した金地金を売却した場合の所得金額の計算上控除する取得費等については、2回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券の取得費の取扱いに準じて、総平均法に準ずる方法で算出した1単位当たりの単価により計算します。
所得区分、所得金額の計算、損益通算
金積立口座による金を売却した際の所得区分、所得金額の計算、損益通算については、通常の金地金の現物売買によるものと同じとなります。
譲渡所得の計算例
(Q)金定額購入システムで以下のように積み立てた金地金を売却した場合のX6年分の譲渡所得金額はいくらなのか?
①X1/4/5 取得 50g 1,000,000円
②X1/4/6 取得 90g 2,000,000円
③X3/8/3 売却 30g 990,000円
④X5/10/5 取得 40g 1,000,000円
⑤X6/4/6 売却 120g 5,400,000円
(A)
(1)X3/8/3売却時における1g当たりの取得価額(1円未満の端数切り上げ)
(1,000,000円+2,000,000円)÷(50g+90g)=21,429円
(2)X6/4/6売却時における1g当たりの取得価額(1円未満の端数切り上げ)
{21,429円×(140g-30g)+1,000,000円} ÷{(140g-30g)+40g}=22,382円
(3)X6年分の譲渡所得金額
X6/4/6の売却数量120gのうち20gについては、所有期間が5年超のため長期譲渡所得となる。
100gについては、所有期間が5年以内のため短期譲渡所得となる。
①売却時における1g当たりの売却価額
5,400,000円÷120g=45,000円
②短期譲渡所得の金額
(45,000円×100g)-(22,382円×100g)-500,000円=1,761,800円
③長期譲渡所得の金額
(45,000円×20g)-(22,382円×20g)=452,360円
④課税される所得の金額 |
1,761,800円+452,360円×1/2=1,987,980円
参考
国税庁HP「東京国税局文書回答事例-金定額購入システムで取得した金地金を譲渡した場合の課税上の取扱いについて」
https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/shotoku/19/01.htm