概要
法人が株式投資信託を保有している場合、普通分配金、元本払戻金(特別分配金)、解約、買取による売却を区別して処理します。特に、解約と買取では、源泉徴収の有無と消費税の課税売上割合に算入する金額が異なります。
この記事は、日本の普通法人が、国内で設定された契約型の株式投資信託を保有し、国内で分配金や換金代金を受け取る場合の基本的な取扱いを説明します。主な対象は、非上場の追加型株式投資信託です。公社債投資信託、外国投資信託、ETF、REIT等については、商品ごとの確認が必要です。
海外の株式に投資するファンドでも、国内で設定された投資信託であれば、直ちに「外国投資信託」になるわけではありません。
以下は2026年10月10日現在の法令等に基づく説明です。仕訳例の金額は円単位で、それぞれ独立した例としています。源泉徴収上の外国税額調整、別建ての換金手数料、会計上の帳簿価額と税務上の簿価の差異がない場合を前提とします。
解約と買取の違い
解約は、投資信託の一部を解約して金銭の払戻しを受ける方法です。買取は、保有する受益権を金融機関等に売却する方法です。信託終了による償還は、基本的に解約に準じて確認します。
| 項目 | 解約・償還 | 買取による売却 |
|---|---|---|
| 法人税上の損益 | 収益分配金と、元本の払戻しに伴う帳簿価額との差額を確認 | 売却価額と売却原価との差額を譲渡損益として処理 |
| 源泉徴収 | 元本相当額を超える収益分配金がある場合に行われる | 法人の売却代金・売却益については行われない |
| 消費税 | 収益分配金は非課税。元本の返還部分は対象外 | 国内の受益権の譲渡は非課税 |
| 課税売上割合の分母 | 収益分配金の額を算入 | 売却益ではなく、譲渡対価の5%を算入 |
上表は本記事の対象商品についての整理です。一定の上場証券投資信託等の解約・償還には、租税特別措置法9条の4の2による源泉徴収不要の特例があるため、ETF等にはそのまま当てはめられません。
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購入時の仕訳と取得価額
投資信託の購入代金は、有価証券又は投資有価証券として資産に計上します。勘定科目は保有目的や表示区分に応じて選びます。購入手数料等の取得に要した費用は、原則として取得価額に含めます。
購入代金1,000万円で、購入手数料がない場合の仕訳例は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 10,000,000 | 預け金 | 10,000,000 |
金融機関の口座から代金が引き落とされる場合には、預け金に代えて普通預金等を用います。未決済であれば、貸方を未払金として計上します。
追加型投資信託の個別元本には、通常、購入手数料等は含まれません。そのため、源泉徴収に用いる個別元本と、法人の帳簿価額・税務上の簿価が一致しないことがあります。
普通分配金を受け取った場合
法人税と源泉徴収
普通分配金は、原則として源泉徴収前の金額を受取配当金等の収益に計上します。本記事の通常の株式投資信託の収益分配金には、受取配当等の益金不算入は適用されません。
国内の非上場株式投資信託について、法人が受け取る課税対象の収益分配金の源泉徴収税率は、2026年中は次のとおりです。
| 商品の区分 | 所得税・復興特別所得税の合計税率 |
|---|---|
| 公募株式投資信託 | 15.315% |
| 私募株式投資信託 | 20.42% |
法人が受け取るこれらの分配金について、個人の公募投資信託のような住民税5%の特別徴収はありません。また、源泉徴収だけで法人税の課税関係が完結するわけではありません。
海外資産に投資する国内投資信託等では、外国税額の調整により、実際の源泉徴収額が単純な税率計算と異なることがあります。この場合は支払通知書に基づいて処理し、所得税額控除と分配時調整外国税相当額控除を分けて確認します。
普通分配金の仕訳例
公募株式投資信託の普通分配金15万円を受け取り、外国税額の調整がない場合の仕訳例です。源泉徴収税額は、150,000円×15.315%=22,972.5円の1円未満を切り捨て、22,972円となります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 127,028 | 受取配当金 | 150,000 |
| 租税公課 | 22,972 |
源泉徴収税額を仮払法人税等で処理する方法もあります。租税公課で処理した場合の法人税申告上の調整は、後述の「所得税額控除と法人税申告」を参照してください。
収益の計上時期
信託期間中の決算分配金は、原則として、その収益分配金の計算期間の末日の属する事業年度に計上します。解約・償還による収益分配金は、原則として、解約日・信託終了日の属する事業年度に計上します(法人税基本通達2-1-27(4))。
支払のために通常要する期間内に支払を受けるものについて、継続して支払を受けた日の属する事業年度の収益としている場合には、その処理も認められます(同2-1-28)。単に入金日で処理すればよいという取扱いではありません。
消費税と課税売上割合
国内の株式投資信託の普通分配金は、集団投資信託の収益の分配として、消費税の非課税取引に当たります。課税売上割合の計算では、源泉徴収前の収益分配金を分母に算入し、分子には算入しません。
上記の例では、入金額127,028円ではなく、150,000円を分母に算入します。通常の株式の配当金の消費税上の扱いと混同しないようにしてください。
元本払戻金(特別分配金)を受け取った場合
現金で受け取る場合
個別元本方式による追加型株式投資信託の元本払戻金(特別分配金)は、利益の分配ではなく、元本の払戻しです。受取配当金として収益に計上せず、保有する受益権の帳簿価額を減額します(法人税法施行令119条の3第19項、法人税基本通達2-3-23)。
特別分配金15万円を現金で受け取った場合の仕訳例です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 150,000 | 投資有価証券 | 150,000 |
特別分配金には所得税等の源泉徴収はありません。消費税も元本の返還として対象外となり、課税売上割合の分母・分子に算入しません。受取配当等の益金不算入を適用して処理するものでもありません。
特別分配金を自動再投資する場合
特別分配金15万円を同じファンドに全額再投資し、手数料がない場合は、元本の払戻しと新たな購入を分けて記録できます。
| 処理 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 特別分配金の受取り | 預け金 | 150,000 | 投資有価証券 | 150,000 |
| 同じファンドへの再投資 | 投資有価証券 | 150,000 | 預け金 | 150,000 |
この例では、再投資後の投資有価証券の帳簿価額の合計は変わりません。ただし、保有口数が増えるため、1口当たりの帳簿価額等は変わります。純額では仕訳が相殺される場合でも、払戻し額、再投資額、取得日、口数、個別元本は管理する必要があります。
普通分配金を再投資する場合は、普通分配金の収益計上と源泉徴収税額の処理を行ったうえで、再投資した金額を取得価額に加算します。
単位型投資信託の通常の決算分配金については、追加型の個別元本方式と同じ普通分配金・特別分配金の区分を前提にせず、商品の支払通知書を確認します。解約・償還代金まで全額が収益分配金になるという意味ではありません。
解約・償還した場合
元本相当額と帳簿価額を区別する
解約・償還時には、次の3つの金額を区別します。
| 金額 | 内容 |
|---|---|
| 解約・償還代金 | 源泉徴収前の金額。以下の例では、信託財産留保額の控除後で、別建ての換金手数料はありません |
| 元本相当額 | 源泉徴収の計算に用いる信託元本の額。個別元本方式の追加型では、換金する口数に対応する個別元本の合計額 |
| 帳簿価額 | 解約する受益権に対応する法人の帳簿価額。以下の例では税務上の簿価と一致するとします |
源泉徴収の対象となる収益分配金は、原則として、解約・償還代金のうち元本相当額を超える部分です(所得税法施行令58条1項)。
収益分配金=解約・償還代金-元本相当額(差額がプラスの場合)
解約・償還代金が元本相当額以下の場合には、この収益分配金は生じません。一方、法人の損益の合計は、源泉徴収前の解約・償還代金と、対応する帳簿価額との差額で確認します。
元本相当額と帳簿価額が異なる場合には、源泉徴収上の収益分配金と会計上の解約損益が一致しないことがあります。
解約時の仕訳例
公募の追加型株式投資信託について、次の金額で解約したとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 源泉徴収前の解約代金 | 10,500,000 |
| 解約口数に対応する元本相当額 | 10,000,000 |
| 解約する受益権の帳簿価額 | 10,200,000 |
| 源泉徴収の対象となる収益分配金 | 500,000 |
| 源泉徴収税額(500,000円×15.315%) | 76,575 |
| 実際の入金額 | 10,423,425 |
収益分配金50万円と、帳簿価額・元本相当額の差額20万円を分けて示す仕訳例は、次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10,423,425 | 投資有価証券 | 10,200,000 |
| 租税公課 | 76,575 | 受取配当金 | 500,000 |
| 雑損失 | 200,000 |
この例の損益の合計は、収益分配金50万円-雑損失20万円=30万円です。解約代金1,050万円-帳簿価額1,020万円でも、同じ30万円となります。
受取配当金等を純額30万円で表示する処理を採る場合でも、源泉徴収の計算対象となった収益分配金50万円を別途把握します。消費税の課税売上割合に使う金額も、この50万円です。
解約・償還時の消費税
解約・償還による収益分配金は、消費税の非課税取引です。上記の例では、課税売上割合の分母に500,000円を算入します。元本の返還部分は対象外となります。
会計上の利益300,000円、入金額10,423,425円、解約代金の5%である525,000円を分母に算入する処理ではありません。譲渡対価の5%の取扱いは、後述する買取による売却の場合の取扱いです。
解約損が生じた場合
解約代金900万円、元本相当額1,000万円、帳簿価額1,020万円の場合には、源泉徴収の対象となる収益分配金はなく、法人の解約損失は120万円となります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 9,000,000 | 投資有価証券 | 10,200,000 |
| 解約損失 | 1,200,000 |
元本の返還として整理されるこのケースでは、課税売上割合の分母に算入する収益分配金はありません。また、この解約損失を、そのまま他の非課税売上から差し引く処理はしません。国債等の償還差損についての消費税法施行令48条6項の取扱いを、株式投資信託の解約損にそのまま適用することはできません。
ただし、「帳簿上は解約損だから、必ず収益分配金もゼロ」とは限りません。例えば、解約代金1,010万円、元本相当額1,000万円、帳簿価額1,020万円なら、帳簿上の損益の合計は10万円の損失でも、源泉徴収上の収益分配金は10万円生じます。この場合は、その収益分配金10万円を課税売上割合の分母に算入します。
買取により売却した場合
買取による換金は、受益権の譲渡です。法人税上は、売却価額と対応する売却原価との差額を譲渡損益として処理します。法人が受け取る売却代金や売却益について、所得税等の源泉徴収はありません。
帳簿価額1,020万円の投資信託を1,050万円で売却し、売却手数料がない場合の仕訳例です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 10,500,000 | 投資有価証券 | 10,200,000 |
| 有価証券売却益 | 300,000 |
譲渡損益は、原則として譲渡に係る契約をした日、すなわち約定日の属する事業年度に計上します(法人税法61条の2第1項)。代金の受渡日と混同しないようにしてください。
消費税については、国内の受益権の譲渡は非課税取引です。課税売上割合の分母には、売却益30万円ではなく、譲渡対価1,050万円の5%である525,000円を算入します(消費税法施行令48条5項)。
売却損が生じた場合も、譲渡対価の5%を分母に算入します。別建ての売却手数料がある場合には、手数料控除後の入金額と譲渡対価を区別して確認します。
所得税額控除と法人税申告
控除できる所得税額の確認
収益分配金から源泉徴収された所得税等は、所定の計算と申告により、法人税額から控除できます。ただし、株式投資信託のすべてについて、源泉徴収額が無条件で全額控除されるわけではありません。
原則として、収益分配金の計算の基礎となった期間のうち、その元本を所有していた期間に対応する所得税額を計算します(法人税法68条、同施行令140条の2)。
個別元本方式により所得税が計算される通常の追加型株式投資信託では、法人税基本通達16-2-8(4)により、その受益権の設定日・追加設定日を基礎として計算期間を確認します。通常の購入から分配・解約まで引き続き保有しているケースでは、計算期間と保有期間が一致し、源泉徴収された所得税等の全額が控除対象となります。
単位型投資信託を設定後に取得した場合など、計算期間と保有期間が一致しないケースでは、所有期間による按分等が必要です。
追加型の特則が適用されない投資信託の解約・償還については、原則として信託開始日から解約日・終了日までを計算期間とします。ただし、信託約款で収益分配可能額の全額を毎期分配すると定めているものには、直前の決算分配金の計算期間末日の翌日を起点とする特則があります(同16-2-8(2)(3))。
申告書と損金不算入
所得税額控除は、法人税申告書の別表六(一)等で適用します。控除しきれない金額は、所定の申告により還付の対象となります。
税額控除する所得税等を租税公課として費用に計上した場合には、その控除対象額を別表四で加算し、損金不算入とします。仮払法人税等として資産計上した場合には、費用計上した場合と同じ加算を機械的に行わないようにしてください(法人税法40条)。
支払通知書に「分配時調整外国税相当額」が記載されている場合には、実際に徴収された所得税等と区別します。分配時調整外国税相当額控除は、法人税法69条の2に基づく別の控除で、別表六(五の二)等により確認します。
分配時調整外国税相当額控除は、法人税・地方法人税から控除しきれない額があっても還付されません。また、この控除を適用した場合の損金不算入額は、所有期間による按分前の分配時調整外国税相当額の全額となるため、所得税額控除とは別に申告処理を確認します。
ETF等を保有している場合の注意点
通常の株式投資信託の収益分配金には、受取配当等の益金不算入は適用されません。この取扱いは、平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。
一方、法令上の特定株式投資信託のうち、外国株価指数連動型特定株式投資信託を除く一定のものについては、一般の普通法人では、原則として収益分配金の20%相当額が益金不算入となります(租税特別措置法67条の6)。短期保有の受益権に係る適用除外にも注意が必要です。
ETFという商品名だけで20%の益金不算入を判断することはできません。また、益金不算入の判定と、解約・償還時の源泉徴収不要の特例の判定は、別々に確認します。
手数料・信託財産留保額と決算時の確認
消費税の課税仕入れになる費用
投資信託の購入代金自体は、消費税の課税仕入れに当たりません。一方、国内の金融機関等に直接支払う購入・売却等の手数料は、原則として課税仕入れです。
個別対応方式で仕入税額控除を計算する場合、国内の非課税取引である受益権の売買や収益分配に対応する手数料等は、通常、非課税売上にのみ要するものとして確認します。手数料に消費税がかかっていることと、仕入税額控除できることは同じではありません。
信託財産留保額や、ファンド内部で差し引かれる信託報酬を、法人自身が金融機関に直接支払った手数料と同じように扱って、仕入税額控除を行うことはできません。
期末評価と税務上の簿価
期末評価は、採用する会計基準と保有目的に応じて確認します。法人税では、売買目的有価証券と売買目的外有価証券で期末評価の取扱いが異なり、会計上の評価損益がそのまま税務上の益金・損金になるとは限りません(法人税法61条の3)。
特別分配金による簿価の減額、再投資による口数の増加、会計上の評価額、税務上の簿価、源泉徴収上の個別元本を区別して管理すると、換金時の計算を確認しやすくなります。
2027年から適用される源泉徴収の改正
2027年1月1日以後に生ずる所得に対する所得税については、防衛特別所得税が所得税額の1%相当額で課され、復興特別所得税の税率は所得税額の1.1%相当額に引き下げられます。
両税の合計は所得税額の2.1%相当額のままであるため、通常の公募株式投資信託の15.315%、私募株式投資信託の20.42%という合計源泉徴収税率は変わりません。2026年中の取扱いと税目の内訳を分けて確認してください。
主な根拠資料・関連記事
法令は、法人税法22条・23条・40条・61条の2・61条の3・68条・69条の2・78条、法人税法施行令119条・119条の3第19項・140条の2、所得税法施行令27条・58条、租税特別措置法9条の3・9条の4の2・67条の6、消費税法6条・別表第二及び同施行令10条・48条等を参照しています。
国税庁の公表資料は、法人税基本通達2-1-27・2-1-28、同2-3-23、同16-2-8、消費税法基本通達6-3-1、同11-2-15、タックスアンサーNo.5760「所得税額控除」、No.5761「分配時調整外国税相当額控除」、No.6221「預金や貸付金の利子など」、「非課税となる有価証券の範囲と課税売上割合の関係」、「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし」(令和8年の改正案内8頁)等を参照しています。
会計処理は、企業会計基準委員会の移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」56項・96項等も確認しています。
関連項目
個人の場合、(公募)株式投資信託は、買取と解約のいずれの方法により換金した場合も「換金価額」と「取得価額」との差額を売却損益として認識します。つまり、益となれば、所得税が生じます。なお、償還された場合も同様に、売却損益として認識します。

