概要
特定口座には、以下の2種類があります。
(1)簡易申告口座
本記事では、特定口座(源泉徴収なし) と記載しています。
(2)源泉徴収選択口座(措法37の11の4①)
本記事では、特定口座(源泉徴収あり) と記載しています。
特定口座ではない証券口座のことを一般口座といいます。
特定口座(源泉徴収なし)と特定口座(源泉徴収あり)の同異
(共通点)
特定口座内の取引については、証券会社等が上場株式等の譲渡損益等を計算し、特定口座年間取引報告書を作成します。
納税者は、特定口座年間取引報告書に記載されている金額を株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書や確定申告書に転記し、税額計算するだけで確定申告をすることができます。
そのため、一般口座に比べて申告のための準備の手間が軽減されています。
(違う点)
特定口座(源泉徴収なし)内の上場株式等の譲渡益は、原則、確定申告と納税が必要です。上場株式等の配当等は、確定申告が不要です。
一方、特定口座(源泉徴収あり)内の上場株式等の譲渡益および配当等は源泉徴収(所得税等15.315%、住民税5%)されているため、確定申告が不要です。
特定口座(源泉徴収なし)の特徴
証券会社等が上場株式等の譲渡損益を計算します。ただし、源泉徴収は行われません。
一般口座同様に、特定口座(源泉徴収なし)で受け取った上場株式等の配当等は特定口座年間取引報告書に記載されず、「上場株式配当等の支払通知書」に記載されます。
特定口座(源泉徴収なし)内の上場株式等の売却益は、原則、確定申告と納税が必要です。
特定口座(源泉徴収なし)内の売却損について上場株式等の配当等と損益通算をする場合には、確定申告が必要です。
特定口座(源泉徴収あり)の特徴
特定口座(源泉徴収あり)内の上場株式等の譲渡益および配当等は、確定申告が不要です(措法37の11の5①)。
特定口座(源泉徴収あり)内で生じた上場株式等の譲渡損失をその特定口座以外の上場株式等の譲渡益と通算する場合や、その特定口座以外の上場株式等の配当等と損益通算する場合や翌年以降に繰越す場合は、確定申告が必要です。
なお、特定口座(源泉徴収選択口座)内保管上場株式等の譲渡による譲渡損失の金額を確定申告する場合は、その口座内の配当所得等の金額も併せて申告する必要があります(措法37の11の6⑩)。その口座内で、譲渡損失と配当所得等が損益通算されて源泉徴収税額が計算されているからです。
源泉徴収選択口座において生じた譲渡所得等の金額については、確定申告をする時点において、それを含めて確定申告するか、又は、それを除外して確定申告するかの選択は、申告する者の意思に委ねられています。
特定口座(源泉徴収あり)において生じた譲渡所得等の金額を除いて所得税等の確定申告を行った場合には、その後において、その納税者が更正の請求をし、又は修正申告書を提出する場合においても、その所得又は損失の金額を当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上算入することはできません(平成18年5月30日裁決・東裁(所)平17第188号、平成30年8月29日裁決・大裁(所)平30第12号、令和3年9月2日裁決・関裁(所)令3第4号、令和5年2月13日裁決・福裁(所)令4第13号、新潟地裁令和4年12月14日判決・令和4年(行ウ)7号)。
同様に、特定口座(源泉徴収あり)において生じた所得又は損失の金額を上場株式等に係る譲渡所得等の金額に算入したところにより確定申告書を提出した場合には、その後においてその者が更正の請求をし、又は修正申告書を提出する場合においても、当該所得又は損失の金額を当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上除外することはできません(措通37の11の5-4)。