金融商品取引所に上場されている株式等の配当等(大口株主等が支払を受けるものを除く。)は、確定申告をしないで源泉徴収だけで済ませる確定申告不要制度を選択できます(ただし、この制度を選択すると、配当控除や所得税等の源泉徴収税額の控除を受けられません。)。

 一方、上場株式等の配当等(大口株主等が支払を受けるものを除く。)に係る配当所得について確定申告する場合は、その年分について申告する配当所得の全てについて、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択する必要があります(措法8の4②)(なお、申告分離課税を選択すると、配当控除は受けられません。)。

 例えば、令和3年に、上場会社であるA株式会社及びB株式会社から受領した配当の確定申告を行うに当たり、A株式会社に係る配当については総合課税を選択し、B株式会社に係る配当については申告分離課税を選択するようなことはできず、総合課税又は申告分離課税のいずれか一方を選択することになります。

 また、確定申告において、配当所得について申告分離課税を選択せず、確定申告不要制度を選択した場合や、総合課税を選択した場合は、その後、修正申告又は更正の請求において、これらの配当所得について申告分離課税制度を選択する変更はできません。逆に、申告分離課税を選択した場合も同様です(措通8の4-1)。

上場株式等に係る配当について、一部を総合課税、残りを申告分離課税とした申告が否認された事例-東京地裁平成29年12月6日判決(平成28年(行ウ)10号)(棄却)(控訴)

(1)事案の概要

 原告Xは、平成22年分ないし平成24年分の所得税の確定申告において、外国銀行の取引口座を通じて支払を受けた外国法人からのA配当金に係る配当所得の金額を総所得金額に含めるとともに、国内払配当金に係る配当所得につき租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの。以下「措置法」という。)8条の4第1項による申告分離課税の特例(以下「本件特例」という。)を適用して所得税額を計算した。これに対し、所轄税務署長が、本件特例の適用選択が可能なA配当金に係る配当所得の金額を総所得金額に含めて所得税額を計算したことが措置法8条の4第2項に該当し、本件特例を適用することができないから、国内払配当金に係る配当所得金額の全てを総合課税の配当所得の金額に加算すべきとする更正処分等をした。Xは、当該処分の取消しを求め、本訴を提起した。

(2)判決要旨(請求棄却)

① 措置法8条の4第2項は、その年中に支払を受けるべき上場株式等の配当等に係る配当所得について総合課税の適用を受けた場合には、その者が同一年中に支払を受けるべき他の上場株式等の配当等に係る配当所得については、本件特例を適用しない旨を定めるところ、その制度上、上場株式等の配当等に係る配当所得のうち、一部については上場株式等に係る譲渡損失との損益通算をしつつ、他の部分について配当控除の適用を受けるといったことは相当でないというべきであり、同項の趣旨には、上場株式等の配当等に係る配当所得について、申告分離課税の適用により上場株式等に係る譲渡損失との損益通算をする場合にはその年中に受ける全ての上場株式等の配当等に係る配当所得についてしなければならないこととし、その一部でも総合課税の適用を受けた場合には、当該年中の上場株式等の配当等に係る配当所得全体について総合課税の適用を受けることとして、上記のような事態が生ずることを回避するということがあると解される。そうすると、確定申告において、上場株式等の配当等に係る配当所得につき、現に総合課税の適用を受けたものがある以上は、措置法8条の4第2項にいう総合課税の適用を受けた場合に該当するというべきである。

② Xは、更正の請求により、A配当金に係る配当所得を総合課税の適用対象から申告分離課税の適用対象に変更できる旨主張する。しかし、確定申告書等において、上場株式等の配当等である国内払配当金に係る配当所得につき申告分離課税の適用対象として記載しつつ、A配当金に係る配当所得については総合課税の適用対象として記載したとしても、そのこと自体、何ら国税に関する法律の規定に反するものではないというべきであり、また計算を誤ったものであるということもできない。したがって、A配当金に係る配当所得を総合課税の適用対象から申告分離課税の適用対象に変更するために更正の請求をすることはできない。

③ 本件更正請求書において、A配当金に係る配当所得を新たに申告分離課税の適用を受けるものとして記載したとしても、措置法8条の4第1項の本件特例の適用を受けようとする旨の記載のある確定申告書を提出したときには該当しないから、更正の請求によって国内払配当金、A配当金に係る配当所得につき本件特例の適用を受けることはできないというべきである。

④ Xの請求にはいずれも理由がないから、これを棄却する。