10万円

概要

 上場株式の配当は、配当受取時に、20.315%(所得税等 15.315% 、住民税5% )の税率で源泉徴収され、大口株主等を除き、金額の多寡にかかわらず申告不要が選択できます(措法8の5①二)。

 一方、未上場株式の配当は、配当受取時に、20.42% (所得税等 20.42% ) の税率で源泉徴収され、少額配当に該当する場合を除き、総合課税の対象として確定申告が必要です。

 なお、少額配当とは、未上場株式の配当金のうち、1銘柄につき1回に支払いを受ける金額が、10万円に配当計算期間の月数を乗じてこれを12で除して計算した金額以下の配当金をいいます(措法8の5①一)。

 例えば、年1回の配当であれば、その配当金額が10万円以下であれば少額配当に当たります。

 10万円×配当計算期間の月数(注)/12
(注)配当計算期間が1年を超える場合には、12か月として計算し、配当計算期間に1か月に満たない端数がある場合には、1か月として計算します。

 中間配当、決算配当(配当計算期間6か月づつ)の年2回の配当であるならば、それぞれの配当が5万円(10万円×6÷12)以下かどうかで少額配当に当たるか否かを判断します。

 配当計算期間3か月づつの年4回の配当であるならば、それぞれの配当が2.5万円以下かどうかで少額配当に当たるか否かを判断します。

 なお、みなし配当(資本の払戻しによるものを除きます。)は、その計算期間が1年であるものとして取り扱われるため、1回に支払われる金額が10万円以下であれば少額配当に該当します(措令4の3④)。

所得税の申告

 少額配当に該当する場合、所得税(確定申告)については申告不要を選択することができます(措法8の5①一)。ただし、課税所得金額が900万円以下の方は、所得税が還付されるので申告した方がトクです。なお、未上場株式の配当は、申告分離課税を選択できず総合課税で申告することになります。

 なお、同族会社の役員等で給与所得以外の所得が少額であっても確定申告書を提出(所令262の2)しなければならないのは、当該同族会社から貸付金の利子又は資産の賃貸料の支払いを受ける場合です。よって、少額配当に該当する配当金の支払いを受ける場合には、確定申告書を提出しなければならない場合に該当しません。

 下記は、未上場株式の配当を総合課税(配当控除あり)で申告する場合の実質所得税等の税率がどのくらいかを表している表となります。例えば、申告不要の場合は20.42%の所得税等(復興特別所得税含む)の税率となります。

 課税所得金額が695万円超900万円以下の場合、所得税の税率は23%となりますが配当控除率が10%のため差引13%となります。それに復興特別所得税率0.273%(所得税率×2.1%)を合わせると13.273%となります。

 よって、所得税で総合課税で(確定)申告する場合、課税所得金額が900万円以下の方ならトクするということです。なお、課税所得金額は、配当だけではなく、他の所得(給与所得、事業所得等)を合わせた金額となります。

課税所得金額申告不要総合課税で申告
195万円以下 20.42%0%
195万円超 20.42%0%
330万円超 20.42%10.21%
695万円超 20.42%13.273%
900万円超 20.42%23.483%
1,000万円超 20.42%28.588%
1,800万円超 20.42%35.735%
4,000万円超 20.42%40.84%

住民税の申告

 少額配当に該当する場合であっても、未上場株式の配当金の場合、住民税が徴収されていないので、住民税の申告は必要です。小さい会社からの配当受領ですと、自治体がその情報を補足できない場合がありますが、トヨタAA型種類株式のように、大企業が配当を支払った場合、支払調書等が各自治体にいくので、情報が補足されます。自治体から、配当の申告がない旨の連絡があった方は結構、多いでしょう。

 下記は、実質住民税の税率がどのくらいかを表している表となります。課税所得金額が1,000万円以下の場合、住民税の税率は10%となりますが配当控除率が2.8%のため差引7.2%となります。課税所得金額が1,000万円超の場合、住民税の税率は10%のままですが配当控除率が2分の1となるため1.4%となり差引8.6%となります。

課税所得金額申告不要総合課税で申告
1,000万円以下選択できない7.2%
1,000万円超選択できない8.6%

少額配当等に係る更正の請求は認められないとした事例

 少額配当等に係る配当所得の金額を一旦総所得金額に含めて確定申告書を提出した場合には、その後、更正の請求又は修正申告を行う場合に、この少額配当の金額を総所得金額から除外することはできません(措通8の5-1)。

 また、確定申告をしないこととした少額配当等に係る配当所得は、更正の請求をすることはできません(措法8の5①、平成4年12月2日裁決・裁事44集23頁)。

平成4年12月2日裁決(裁事44集23頁)の要旨

 いわゆる少額配当等を有する者が、少額配当等に係る配当所得の金額を除外したところにより総所得金額を計算して所得税の確定申告書を提出している以上、租税特別措置法8条の5(確定申告を要しない配当所得)1項の規定を適用したものとして取り扱われることとなるから、請求人が確定申告において、少額配当等に係る配当所得の金額を失念して申告額に含めなかつたことは、国税通則法23条1項に規定する「申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたこと」という場合には該当しないこととなる。
 したがつて、原処分庁が本件少額配当等に係る部分の配当について請求人からの更正の請求を認めなかつたことは相当である。

未上場外国株式の配当につき外国所得税が課されている場合

 未上場外国株式の配当につき外国所得税が課されている場合には、これを控除した後の金額について支払いを受けるべき1回の配当金額が、10万円に配当期間の月数を乗じ12で除した金額以下であるかどうかで判定します(措法8の5①一、9の2③⑤)。