概要
暗号資産は、法人税法上「短期売買商品等」として取り扱われます(法法61)。
法人が暗号資産を売却した場合だけでなく、暗号資産で商品やサービスを購入した場合や、保有する暗号資産を他の種類の暗号資産と交換した場合にも、原則として保有していた暗号資産の譲渡として法人税法上の損益を認識することになります。
また、一定の市場暗号資産については、法人が事業年度終了時に保有している場合、期末時価評価が必要となります。
暗号資産の譲渡
暗号資産の売却(円転)、暗号資産による商品・サービスの購入、暗号資産同士の交換は、いずれも原則として暗号資産の譲渡に該当します。
暗号資産の譲渡損益の計上時期
暗号資産の譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額は、原則として、その譲渡に係る契約をした日(約定日)の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入します(法法61①)。
したがって、実際に暗号資産が移転した日や代金が決済された日ではなく、原則として約定日を基準として損益を認識する点に注意が必要です。
暗号資産の譲渡所得金額の計算方法
暗号資産の譲渡損益は、次のように計算します(法法61①)。
| 譲渡損益 = 暗号資産の譲渡により通常得べき対価の額 - 暗号資産の譲渡原価 |
「暗号資産の譲渡により通常得べき対価の額」は、通常の第三者間取引であれば一般的には実際の売却額等となります。
ただし、実際の売却額等が時価を反映していない場合には、法人税法上、別途検討が必要となります。
暗号資産の譲渡原価
暗号資産の譲渡原価は、次のように計算します(法法61①、法令118の6①)。
| 譲渡原価 = 暗号資産の一単位当たりの帳簿価額 × 譲渡した暗号資産の数量 |
一単位当たりの帳簿価額の算出方法
暗号資産の一単位当たりの帳簿価額の算出方法には、移動平均法と総平均法があります(法令118の6①)。算出方法を選定しなかった場合の法定算出方法は、移動平均法です(法令118の6⑧)。
| 移動平均法 | 暗号資産を取得する都度、その取得直前に保有していた同一種類・区分の暗号資産の帳簿価額と新たに取得した暗号資産の取得価額等を基礎として、一単位当たりの帳簿価額を算出する方法です。 |
| 総平均法 | その事業年度開始時に保有していた同一種類・区分の暗号資産の帳簿価額と、その事業年度中に取得した暗号資産の取得価額等を基礎として、一単位当たりの帳簿価額を算出する方法です。 |
総平均法を選定する場合には、原則として、その暗号資産を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに、納税地の所轄税務署長へ届出を行う必要があります(法令118の6⑤)。
算出方法は、暗号資産の種類ごと、かつ、次の区分ごとに選定します(法令118の6②④)。
① 特定譲渡制限付暗号資産に該当する暗号資産であって自己発行暗号資産に該当しないもの
② 特定譲渡制限付暗号資産に該当する暗号資産であって自己発行暗号資産に該当するもの
③ 特定自己発行暗号資産に該当する暗号資産
④ 上記①から③まで以外の暗号資産
〇短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出方法・特定譲渡制限付暗号資産の評価方法の届出
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_53.htm
既に取得している暗号資産と種類及び区分を同じくする暗号資産を追加取得した場合には、原則として既に選定している算出方法を適用します。
算出方法を変更する場合
一単位当たりの帳簿価額の算出方法を変更する場合には、原則として、変更しようとする事業年度開始の日の前日までに、納税地の所轄税務署長へ変更承認申請書を提出する必要があります(法令118の6⑦、法規26の8)。
変更前の算出方法を採用してから相当期間を経過していない場合には、特別の事情がある場合を除き、変更が認められないことがあります。
この「相当期間」については、特別の事情がない場合、現によっている算出方法を採用してから3年を経過しているかどうかが一つの基準となります。
ただし、3年を経過すれば当然に変更が認められるという意味ではなく、変更に合理的な理由があるかどうか等も考慮されます(法基通2-3-64(2)、5-2-13)。
〇棚卸資産の評価方法・短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出方法・特定譲渡制限付暗号資産の評価方法・有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の変更の承認の申請
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_19.htm
暗号資産の法人税法上の期末時価評価
法人が事業年度終了の時に保有する暗号資産のうち、一定のものについては、時価法により評価した金額をもって事業年度終了時の評価額とする必要があります(法法61②、法令118の7)。
主な対象は、次の暗号資産です。
① 市場暗号資産であって、特定譲渡制限付暗号資産及び特定自己発行暗号資産に該当しないもの
② 市場暗号資産に該当する特定譲渡制限付暗号資産(自己発行暗号資産を除きます。)で、その評価方法として時価法を選定しているもの
市場暗号資産に該当するかどうかは、法人税法施行令118条の7に定める要件により判定します。
具体的には、継続的に売買価格等が公表され、その価格等が取引価格や交換比率の決定に重要な影響を与えていること、その価格等が継続して公表されるために十分な数量及び頻度の取引が行われていること等が必要です(法令118の7)。
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時価評価金額
市場暗号資産の時価評価金額は、その種類ごとに、原則として事業年度終了の日における最終の売買価格等を基礎として算定します(法法61②、法令118の8)。
事業年度終了の日に売買価格がない場合には、原則として、その日前の最終の売買価格が公表された日のうち事業年度終了の日に最も近い日の価格を用います(法令118の8)。
評価損益
期末時価評価の対象となる暗号資産については、時価評価金額と帳簿価額との差額を、その事業年度の益金の額又は損金の額に算入します(法法61③④)。
この評価損益は、翌事業年度に洗替処理を行います(法令118の10)。
例えば、当期末に評価益を益金算入した場合には、翌事業年度に同額を損金算入することになります。反対に、当期末に評価損を損金算入した場合には、翌事業年度に同額を益金算入します。
| 当期の処理 | 翌期の処理 |
|---|---|
| 評価益の益金算入 | 評価益と同額を損金算入 |
| 評価損の損金算入 | 評価損と同額を益金算入 |
| (X1年度期末) 暗号資産 〇円 / 暗号資産運用損益 〇円 (X2年度期首) 暗号資産運用損益 〇円 / 暗号資産 〇円 |
ステーキングや貸付けをしている暗号資産
市場暗号資産について、ステーキングによる報酬を得るためにロックアップをしている場合や、利用料を得るために第三者へ貸し付けている場合であっても、その事実のみをもって法人税法上の期末時価評価の対象外となるわけではありません。
市場暗号資産に該当するかどうか、特定譲渡制限付暗号資産等に該当するかどうか、価格変動リスクを誰が負担しているか等を個々の事実関係に基づいて判定する必要があります(法法61②~④、法令118の7、国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(令和7年12月)」3-1-6、3-1-7)。
暗号資産信用取引
暗号資産信用取引とは、他の者から信用の供与を受けて行う暗号資産の売買をいいます(法法61⑦)。
したがって、法人税法上の暗号資産信用取引は、信用を供与する者が暗号資産交換業者である場合だけに限定されているわけではありません。
暗号資産信用取引の決済損益の計上時期
暗号資産信用取引を反対売買により決済した場合には、原則として次の日の属する事業年度に決済損益を計上します。
| 売付けをした後に買付けをして決済する場合 | 決済に係る買付けの契約をした日 |
| 買付けをした後に売付けをして決済する場合 | 決済に係る売付けの契約をした日 |
暗号資産信用取引の決済損益
暗号資産信用取引の決済損益は、基本的には売付けに係る対価の額と買付けに係る対価の額との差額となります(法法61、法令118の6⑩)。
| 譲渡所得金額 = 売付け価額 - 買付け価額 |
暗号資産信用取引に関連して信用供与者との間で授受される金利相当額、品貸料等については、法人税基本通達2-3-62により売付け又は買付けの対価の額に含める取扱いが定められています(法基通2-3-62)。
具体的には、次のように取り扱います。
① 売付けを行った者が信用供与者から受け取る金利相当額は、売付けに係る対価の額に含めます。
② 売付けを行った者が信用供与者に支払う買委託手数料及び品貸料は、買付けに係る対価の額に含めます。
③ 買付けを行った者が信用供与者に支払う買委託手数料及び金利相当額は、買付けに係る対価の額に含めます。
④ 買付けを行った者が信用供与者から受け取る品貸料は、売付けに係る対価の額に含めます。
ただし、売買委託手数料を除き、法人が継続してその発生に応じて収益又は費用として益金の額又は損金の額に算入している場合には、その処理も認められます(法基通2-3-62)。
事業年度末に未決済の暗号資産信用取引がある場合
法人が暗号資産信用取引を行い、事業年度終了の時に決済されていない取引がある場合には、その事業年度終了の時に決済したものとみなして算定した利益相当額又は損失相当額を、その事業年度の益金の額又は損金の額に算入します(法法61⑦、法令118の12、法規26の12)。
このみなし決済損益については、翌事業年度に洗替処理を行います(法令118の12)。
消費税の取扱い
暗号資産の譲渡
2026年8月15日現在、国内における暗号資産の譲渡は、消費税の非課税取引とされています(消法6①、別表第二2号、消令9④)。
また、現行制度では、暗号資産の譲渡対価は、原則として課税売上割合の計算上の資産の譲渡等の対価の額には含まれません(消法30⑥、消令48②一)。
なお、2017年(平成29年)6月30日以前に国内において行われた当時の仮想通貨の譲渡については、現在とは異なり消費税の課税対象とされていました。
暗号資産交換業者等に支払う売買手数料については、暗号資産そのものの譲渡とは別に、役務提供の対価として課税取引となる場合があります。
暗号資産の貸付け
2026年8月15日現在、利用料を対価として行う暗号資産の貸付けは、原則として消費税の課税対象となります(消法2①八、4①、6①、別表第二、消令9④)。
令和8年度税制改正による消費税の変更
令和8年度税制改正により、暗号資産の消費税の取扱いが改正されます。
金融商品取引法及び資金決済に関する法律の改正法は、2026年(令和8年)7月23日に令和8年法律第64号として公布されています。
消費税については、同法の関係規定の施行日の属する年の翌年1月1日以後に行われる国内取引から、次の取扱いとなります(改正消令附則3①、財務省「令和8年度税制改正の解説」)。
暗号資産の譲渡
暗号資産の譲渡は引き続き非課税取引となりますが、課税売上割合の計算上、有価証券の譲渡と同様に、譲渡対価の額の5%相当額を分母に算入する取扱いとなります(消令48⑤)。
暗号資産の貸付け
暗号資産の貸付けについても、消費税の非課税取引となります(消令10③十一)。
したがって、令和8年度税制改正の適用開始後は、暗号資産の譲渡だけでなく貸付けについても消費税の取扱いが現行制度から変わるため、実際の取引時点における施行日及び適用関係を確認する必要があります。


