クラウド会計対応 月額5,500円からの顧問料 東京都豊島区池袋の格安顧問料の税理士です

配当・利子を確定申告する単位|特定口座ごとの選択と申告後の変更制限

概要

 上場株式の配当や特定公社債の利子などには、確定申告をするか、申告不要とするかを選べるものがあります。ただし、その選択をする単位は、配当・利子を源泉徴収ありの特定口座に受け入れているかどうかによって異なります。

 また、「申告するかどうかの選択」と「申告する配当所得を総合課税・申告分離課税のどちらで計算するかの選択」は、それぞれ確認する必要があります。

配当・利子を申告するかどうかの選択単位

 申告不要制度の対象となる配当・利子について、申告するかどうかを選択する単位は、次のとおりです(措法8の5④、37の11の6⑨)。

配当・利子の受入状況申告するかどうかの選択単位
源泉徴収ありの特定口座に受け入れていないもの1回に支払を受けるべき配当・利子の額ごと
源泉徴収ありの特定口座に受け入れたものその口座で年間に受け入れた配当・利子に係る所得金額の合計額ごと

 以下、源泉徴収ありの特定口座を「源泉徴収口座」といいます。複数の源泉徴収口座がある場合には、口座ごとに、その口座に受け入れた配当・利子を申告するかどうかを選択できます(措法37の11の6⑨)。

申告不要制度の対象となるものに限られます

 本記事で扱うのは、上場株式等の配当、公募投資信託の分配金、特定公社債等の利子などのうち、申告不要制度の対象となるものです。配当所得・利子所得のすべてについて、自由に申告の有無を選べるわけではありません。

 例えば、国内の預貯金の利子は、原則として源泉分離課税により課税関係が完結し、確定申告できません。また、大口株主等が受ける配当や非上場株式の配当は、少額配当の特例に該当する場合などを除き、申告不要制度の対象になりません。国外の証券会社等を通じて国外で直接受け取る外国株式の配当も、国内の支払取扱者を通じた交付がない場合には、申告不要を選択できません(措法3①、8の5①、9の2⑤、国税庁タックスアンサーNo.1310・No.1330)。

 NISAの非課税要件を満たす配当等については、本記事の申告不要制度とは別の制度により非課税となります。

源泉徴収口座に受け入れていない場合は、支払ごとに選べます

 源泉徴収口座に受け入れていない配当・利子で、申告不要制度の対象となるものは、1回の支払ごとに申告するかどうかを選べます。同じ銘柄であっても、例えば、中間配当は申告し、期末配当は申告不要とすることができます(措法8の5④)。

 ただし、1回分の配当10万円のうち6万円だけを申告し、残り4万円を申告不要とするような選択はできません。

 なお、株式を源泉徴収口座で保有しているだけで、その株式の配当が必ず口座単位の選択になるわけではありません。配当をその源泉徴収口座に受け入れたかどうかで判断します。配当の受取方法や特定口座年間取引報告書の記載内容を確認してください(措法37の11の6①②)。

源泉徴収口座に受け入れた場合は、配当・利子をまとめて選びます

銘柄ごと、支払ごと、所得の種類ごとには分けられません

 源泉徴収口座に受け入れた配当・利子については、その口座に係る年間の配当所得と利子所得の合計額を単位として、申告するかどうかを選びます(措法37の11の6⑨)。

 したがって、同じ口座に受け入れた5銘柄の配当のうち3銘柄だけを申告したり、配当だけを申告して利子を申告不要としたりすることはできません。

 例えば、次のように配当・利子を受け取っている場合を考えます。いずれの口座にも譲渡損失はなく、借入金利子の控除等もないものとします。

源泉徴収口座配当所得利子所得選択の単位
A証券20万円5万円合計25万円
B証券15万円なし15万円

 この場合、A証券の25万円を申告し、B証券の15万円は申告不要とすることができます。一方、A証券の配当20万円だけを申告し、利子5万円を申告不要とすることはできません。

口座単位とされている理由

 源泉徴収口座では、その口座内の上場株式等の譲渡損失と、その口座に受け入れた配当・利子との損益通算が行われます。その結果、配当等の額と源泉徴収税額が単純に比例しなくなり、どの配当等について源泉徴収が行われたかを個別に判定することが難しくなります。

 この仕組みに対応して、申告不要制度の選択も口座単位とされています。制度創設時の財務省の解説でも、この理由が説明されています(措法37の11の6⑥⑨、財務省「平成20年度税制改正の解説」118~119頁)。

譲渡損益と配当・利子の申告には、別のルールがあります

譲渡益と配当・利子は、原則として別々に選べます

 源泉徴収口座に譲渡益と配当・利子がある場合、原則として、次のいずれの選択も可能です。配当・利子については、その口座に受け入れたものの全額を単位とします(措法37の11の5①、37の11の6⑨)。

  • 譲渡益と配当・利子の両方を申告する。
  • 譲渡益だけを申告し、配当・利子は申告不要とする。
  • 配当・利子だけを申告し、譲渡益は申告不要とする。
  • 両方とも申告不要とする。

同じ口座の譲渡損失を申告するときは、配当・利子も申告します

 源泉徴収口座内の譲渡損失を、他の口座の利益等と通算したり、翌年以後に繰り越したりするために申告する場合には、その口座に受け入れた配当・利子も併せて申告する必要があります。口座内で配当・利子との通算に使った譲渡損失を申告しながら、その配当・利子を申告不要のままとすることはできません(措法37の11の6⑩、国税庁タックスアンサーNo.1476)。

 なお、配当・利子だけを申告し、その口座の譲渡損失を申告しない選択は可能です。

 上場株式等の譲渡損失と配当所得を確定申告により損益通算するには、その配当所得について申告分離課税を選択する必要があります。総合課税で申告する配当所得とは、この損益通算はできません(措法37の12の2①)。

総合課税・申告分離課税の選択は、申告する配当所得の全体で判断します

 総合課税と申告分離課税を選べる上場株式や公募株式投資信託等の配当所得については、申告する分の全額について、いずれかの課税方式を選択します(措法8の4②)。

 例えば、A証券とB証券の配当をともに申告する場合に、A証券の配当は総合課税、B証券の配当は申告分離課税とすることはできません。A証券の配当を総合課税で申告し、B証券の配当は申告不要とする選択は可能です。

 一方、特定公社債等の利子所得を申告するときは、申告分離課税となります。同じ源泉徴収口座の配当所得を総合課税で申告する場合であっても、利子所得を総合課税にすることはできません(措法8の4①②、国税庁タックスアンサーNo.1310・No.1331)。

修正申告や更正の請求で、申告方法を選び直すことはできません

 上場株式等の配当・利子について確定申告で選択した申告不要、総合課税、申告分離課税の取扱いは、その後の修正申告や更正の請求で変更できません(措通8の4-1、8の5-1)。

 例えば、申告不要とした配当を後から追加し、損益通算や配当控除による還付を受ける方法に変更することはできません。反対に、申告した配当を後から申告不要とする変更もできません。

 すでに申告対象とした所得の金額や源泉徴収税額の転記・計算の誤りを訂正することと、申告方法そのものを変更することは区別する必要があります。申告すれば還付額が増えたという事情だけで、更正の請求が認められるものではありません(通法23①)。

一方の口座の配当を記載しなかった事案―釧路地裁判決と控訴審

事案と双方の主張

 釧路地裁平成30年8月7日判決は、平成26年分の確定申告で、A証券の源泉徴収口座の譲渡損失と配当は記載した一方、B証券の源泉徴収口座の配当等を記載しなかった事案です。

 納税者は、B証券の配当等も記載していれば還付額が増えたとして、通法56①に基づき11万1,987円等の返還を求めました。これに対し、国は、口座ごとに申告の有無を選べるため、B証券の配当等を記載しなかった申告も適法であり、過誤納金は生じていないと主張しました。

裁判所の判断と実務上の注意点

 裁判所は、B証券の配当等を所得金額から除外して申告することも法律上認められているため、その記載がないことによって申告が違法・無効になるものではなく、税金を過大に納付したとは認められないとして、請求を棄却しました。

 控訴審の札幌高裁平成31年1月24日判決も控訴を棄却し、確定しています(釧路地裁平成30年8月7日判決・税資268号-70〔順号13175〕、札幌高裁平成31年1月24日判決・税資269号-7〔順号13230〕)。

 この事件は、不当利得に基づく過誤納金の返還請求が争われたものです。申告不要制度の対象となる配当等の記載を忘れたことが、直ちに申告の無効や還付につながるわけではない点に注意が必要です。

住民税と高額所得者に関する注意点

所得税と住民税で異なる課税方式は選べません

 令和5年分の所得に対する令和6年度の個人住民税から、上場株式等の配当所得等について、所得税と住民税で異なる課税方式を選べなくなっています。所得税では申告し、住民税では申告不要とする方法は利用できません(地法32⑬、313⑬、附則33の2②⑥、豊島区「令和6年度の住民税の税制改正について」)。

 申告するかどうかを判断する際は、所得税・住民税の税額に加え、国民健康保険料や扶養控除等への影響も確認する必要があります(渋谷区「特定配当等及び特定株式等譲渡所得等金額に係る課税方式の統一および繰越控除について」)。

極めて高い水準の所得に対する特例が適用される場合

 令和7年分以後の所得税では、「特定の基準所得金額の課税の特例」により追加の所得税額が生じる場合、配当・利子や源泉徴収口座の譲渡所得等について、申告不要制度を利用できません(措法41の19④)。

 この特例の判定に用いる特別控除額と税率は、令和7・8年分は3億3,000万円・22.5%、令和9年分以後は1億6,500万円・30%です。基準所得税額との比較により判定するため、基準所得金額がこれらの金額を超えるだけで必ず追加税額が生じるわけではありません(措法41の19①、所得税法等の一部を改正する法律〔令和8年法律第12号〕附則47、財務省「令和8年度税制改正の解説」422~425頁)。

参考資料・根拠

  • 租税特別措置法8の4、8の5、37の11の5、37の11の6、37の12の2、41の19
  • 租税特別措置法関係通達8の4-1、8の5-1
  • 所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)附則47
  • 国税庁タックスアンサー No.1310「利息を受け取ったとき(利子所得)」、No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」、No.1331「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
  • 国税庁タックスアンサー No.1476「特定口座制度」、No.2270「特定の基準所得金額の課税の特例」
  • 財務省「平成20年度税制改正の解説」租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正・118~119頁
  • 財務省「令和8年度税制改正の解説」租税特別措置法等(所得税関係)の改正・422~425頁
  • 釧路地裁平成30年8月7日判決・税資268号-70〔順号13175〕、札幌高裁平成31年1月24日判決・税資269号-7〔順号13230〕
  • 豊島区「令和6年度の住民税の税制改正について」
  • 渋谷区「特定配当等及び特定株式等譲渡所得等金額に係る課税方式の統一および繰越控除について」

上場株式等の配当等の金額の一部を除外して確定申告した場合、その処理方法を変更(還付請求)できないとされた事例-釧路地裁平成30年8月7日判決(税資268号-70(順号13175))(棄却)(控訴)

(1)事案の概要

○本件におけるXの申告状況等は、次のとおりである。
① Xの証券口座の保有状況
 Xは、平成26年12月31日時点において、A証券株式会社及びB証券株式会社に特定口座を有しており、そのいずれについても源泉徴収口座として選択していた。以下、XがA証券株式会社に有している特定口座を「A証券口座」といい、B証券株式会社に有している特定口座を「B証券口座」という。

② Xの証券口座の所得状況
 Xは、平成26年中に、A証券口座において租税特別措置法(以下「措置法」という。)37条の11の3第1項及び2項に規定する特定口座内上場株式等の譲渡及び信用取引等に係る上場株式等の譲渡を行ったことにより、同法37条の12の2第2項規定する上場株式等の譲渡損失が生じたほか、同口座に上場株式配当等(措置法8条の5第1項2号に定めるもの)を受け入れた。また、B証券口座に上場株式等にかかる配当等(措置法8条の5第1項2号及び3号に該当するもの)を受け入れた(以下、B証券口座に受け入れた配当等を「本件配当等」という。)。

③ Xの確定申告状況
 Xは、平成27年2月4日、平成26年分の所得税等の確定申告書を提出して確定申告を行った(以下「本件確定申告」といい、提出した確定申告書を「本件確定申告書」という。)。本件確定申告書に、A証券口座に関する事項、すなわち、平成26年中に生じた措置法37条の12の2第2項に規定する譲渡損失及び平成26年中にA証券口座に受け入れた上場株式配当等(同法8条の5第1項2号に定めるもの)については記載していたが、B証券口座に関するものについては記載していなかった。

④ Xの主張
 確定申告書の記載は、B証券口座に関する事項の記載を欠いた点に誤りがあり、これにより、確定申告書に当該事項を記載していたならば受けられたであろう所得税等の還付金の額と実際に受け取った還付金との差額11万円余が生じ、当該金員を所得税等として過大に納付したこととなるから、国は当該金員を法律上の原因なく利得しており、国税通則法56条に基づき還付請求できる。

(2)判決要旨(棄却)(控訴)

① 本件確定申告書には、A証券口座に関する事項についてのみ記載されており、B証券口座に関する事項(本件配当等)については記載されていない。しかしながら、上場株式等の配当等に関する課税について、措置法8条の5第1項は、同項各号に掲げる配当等に該当するものについては確定申告の際の所得金額から除外することを認めており、同法37条の11の6第9項は、複数の源泉徴収選択口座に受け入れられた上場株式等の配当等(源泉徴収選択口座内配当等)については、各特定口座における源泉徴収選択口座内配当等ごとに確定申告の際の所得金額から除外するか否かの選択を行うべき旨定めている。

 そうすると、源泉徴収選択口座であるB証券口座に受け入れた本件配当等を除外して所得金額を計算することも措置法8条の5第1項の定めにより認められているといえるから、本件確定申告書に本件配当等が記載されていないからといって、本件確定申告が違法であるとか無効となるものではなく、その効力に何ら影響を及ぼすものではない。

② 以上によれば、Xは平成26年分の所得税等について、過大に納付しているとはいえない。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry

error: Content is protected !!