概要

 特定口座(源泉徴収あり)内において受領する配当・利子等以外については、1回に支払を受けるべき配当・利子等ごとに申告をするか否かを選択することができます(措法8の5④)

 一方、特定口座(源泉徴収あり)内のものについては、1回に支払いを受ける配当・利子等ごとに、確定申告するかどうかを選択することはできません。

 特定口座(源泉徴収あり)における配当・利子等を申告するかどうかの選択の単位は、特定口座(源泉徴収あり)内に係る配当所得の金額及び利子所得の金額の合計額となります(措法37の11の6⑨)。

 よって、3銘柄の配当について申告し、2銘柄の配当について申告不要を選択するような、その特定口座(源泉徴収あり)内の一部の配当等のみを申告することはできません。

 また、配当所得と利子所得のいずれか一方のみを申告し、又は申告しないとすることはできません。つまり、 特定口座(源泉徴収あり)については、口座単位で全ての配当・利子等を申告するか否かを選択します。

 特定口座(源泉徴収あり)の制度上、売却損が生じた場合、売却損と配当・利子等が損益通算されますが、具体的に、どの配当・利子等が損益通算されるのかが、構造上、判定することが困難なため、全ての配当・利子等を適用単位とせざるをえないのです。

 なお、複数の特定口座(源泉徴収あり)内に配当・利子等を有する場合には、それぞれの特定口座(源泉徴収あり)ごとに申告するか否かを選択することができます(措通37の11の5-2)。

上場株式等の配当等の金額の一部を除外して確定申告した場合、その処理方法を変更(還付請求)できないとされた事例-釧路地裁平成30年8月7日判決(税資268号-70(順号13175))(棄却)(控訴)

(1)事案の概要

○本件におけるXの申告状況等は、次のとおりである。
① Xの証券口座の保有状況
 Xは、平成26年12月31日時点において、A証券株式会社及びB証券株式会社に特定口座を有しており、そのいずれについても源泉徴収口座として選択していた。以下、XがA証券株式会社に有している特定口座を「A証券口座」といい、B証券株式会社に有している特定口座を「B証券口座」という。

② Xの証券口座の所得状況
 Xは、平成26年中に、A証券口座において租税特別措置法(以下「措置法」という。)37条の11の3第1項及び2項に規定する特定口座内上場株式等の譲渡及び信用取引等に係る上場株式等の譲渡を行ったことにより、同法37条の12の2第2項規定する上場株式等の譲渡損失が生じたほか、同口座に上場株式配当等(措置法8条の5第1項2号に定めるもの)を受け入れた。また、B証券口座に上場株式等にかかる配当等(措置法8条の5第1項2号及び3号に該当するもの)を受け入れた(以下、B証券口座に受け入れた配当等を「本件配当等」という。)。

③ Xの確定申告状況
 Xは、平成27年2月4日、平成26年分の所得税等の確定申告書を提出して確定申告を行った(以下「本件確定申告」といい、提出した確定申告書を「本件確定申告書」という。)。本件確定申告書に、A証券口座に関する事項、すなわち、平成26年中に生じた措置法37条の12の2第2項に規定する譲渡損失及び平成26年中にA証券口座に受け入れた上場株式配当等(同法8条の5第1項2号に定めるもの)については記載していたが、B証券口座に関するものについては記載していなかった。

④ Xの主張
 確定申告書の記載は、B証券口座に関する事項の記載を欠いた点に誤りがあり、これにより、確定申告書に当該事項を記載していたならば受けられたであろう所得税等の還付金の額と実際に受け取った還付金との差額11万円余が生じ、当該金員を所得税等として過大に納付したこととなるから、国は当該金員を法律上の原因なく利得しており、国税通則法56条に基づき還付請求できる。

(2)判決要旨(棄却)(控訴)

① 本件確定申告書には、A証券口座に関する事項についてのみ記載されており、B証券口座に関する事項(本件配当等)については記載されていない。しかしながら、上場株式等の配当等に関する課税について、措置法8条の5第1項は、同項各号に掲げる配当等に該当するものについては確定申告の際の所得金額から除外することを認めており、同法37条の11の6第9項は、複数の源泉徴収選択口座に受け入れられた上場株式等の配当等(源泉徴収選択口座内配当等)については、各特定口座における源泉徴収選択口座内配当等ごとに確定申告の際の所得金額から除外するか否かの選択を行うべき旨定めている。

 そうすると、源泉徴収選択口座であるB証券口座に受け入れた本件配当等を除外して所得金額を計算することも措置法8条の5第1項の定めにより認められているといえるから、本件確定申告書に本件配当等が記載されていないからといって、本件確定申告が違法であるとか無効となるものではなく、その効力に何ら影響を及ぼすものではない。

② 以上によれば、Xは平成26年分の所得税等について、過大に納付しているとはいえない。