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法人におけるFX取引の法人税、消費税、仕訳の取り扱い

法人におけるFX取引の法人税、消費税、仕訳の取り扱い

概要

 法人がFX取引を行った場合には、個人の場合とは異なり、事業年度末に未決済のポジションがあるときでも、原則として期末のみなし決済損益を法人税の所得金額に反映させる必要があります。

 また、FX取引では、為替差損益だけでなくスワップポイントが生じることがあり、その損益が確定する時期はFX業者との契約内容によって異なります。

 本記事は、法人が投資・資金運用目的で行う一般的な証拠金FX(主として反対売買による差金決済を行う取引)を前提としています。

 現物通貨の受渡しを行う取引、為替予約、ヘッジ目的の取引等については、別の取扱いが生じる場合があります(法法61の5、61の6、法基通2-3-35~2-3-44)。

仕訳と法人税

FX口座に証拠金を預託する

 FX取引を開始する際には、FX業者に証拠金を預託します。例えば、1,000万円をFX口座へ入金した場合には、次のような仕訳が考えられます。

差入証拠金(又は預け金) 10,000,000円/ 普通預金 10,000,000円

 なお、その後の証拠金残高への損益の反映時期は、FX業者との契約内容によって異なります。

 反対売買による決済時だけでなく、ロールオーバー等によって確定した為替差損益やスワップポイントが証拠金残高へ加算又は減算される取引もあります。

買建て又は売建てのポジションを建てた時

 通常の証拠金FXでは、現物の外貨そのものを取得するのではなく、買建て又は売建てのポジションを建てることになります。

 通常の証拠金FXでは、ポジションを建てたこと自体について、新規約定時に損益を計上する仕訳は通常生じません。

 なお、デリバティブ取引から生じる正味の債権又は債務については、原則として時価をもって貸借対照表価額とし、その評価差額を当期の損益として処理します(企業会計基準第10号25項)。

スワップポイントによる損益

 スワップポイントとは、取引対象となる2つの通貨の金利差等を調整するために受払いされる金額です。

 スワップポイントの損益がいつ確定するか、また、確定した損益がいつ証拠金残高へ反映されるかは、FX業者との契約・約款、ロールオーバー方式等によって異なります。

 例えば、ロールオーバーごとにスワップポイントが確定する取引もあれば、ポジションの反対売買による決済時に累積したスワップポイントが確定する取引もあります。

 この点について、所得税に関する国税不服審判所の公表裁決においても、FX業者との契約内容によってスワップポイントの確定時期が異なることが認定されています(平成22年11月29日裁決、平成25年6月25日裁決、平成29年8月2日裁決)。

 なお、これらの裁決は所得税における収入時期を判断したものであり、法人税法61条の5を直接適用した裁決ではありません。

 スワップポイントによる利益が確定し、その金額が証拠金残高へ加算された場合には、例えば次のように仕訳します。

差入証拠金 1,000円/ 先物取引損益 1,000円

 一方、スワップポイントに係る権利は確定したものの、まだ証拠金残高に加算されていない場合には、契約内容に応じて未収入金等の勘定科目を用いることが考えられます。

未収入金等 1,000円 / 先物取引損益 1,000円

 なお、「先物取引損益」等の具体的な勘定科目名は法令で定められているものではないため、法人の会計方針に応じた勘定科目を使用することになります。

ポジションを決済した時

 新規取引と反対の決済取引を行うことでポジションを手仕舞った場合には、新規取引と決済取引との間の為替差損益が確定します。

 FX取引について反対売買等による手仕舞いを行った場合には、その手仕舞いに係る損益を、手仕舞約定等が成立した日の属する事業年度の益金又は損金に算入します(法基通2-3-44)。

 決済による利益が証拠金残高へ加算される契約の場合には、例えば次のように仕訳します。

差入証拠金 25,000円/ 先物取引損益 25,000円

 逆に、決済による損失が証拠金残高から減算される場合には、例えば次のようになります。

先物取引損益 25,000円/ 差入証拠金 25,000円

FX口座から証拠金を引き出した時

 FX口座から100万円を普通預金口座へ出金した場合には、例えば次のように仕訳します。

普通預金 1,000,000円/ 差入証拠金 1,000,000円

事業年度末に未決済ポジションがある場合

 法人が事業年度終了時に未決済のFXポジションを保有している場合、そのFX取引が法人税法61条の5の対象となるデリバティブ取引に該当するときは、原則として、事業年度終了時に決済したものとみなして算出した利益又は損失を、その事業年度の益金又は損金に算入します(法法61の5①)。

 法人税法上の「未決済」とは、デリバティブ取引に係る約定が成立しているものの、解約、譲渡その他の手仕舞約定等が成立していないものをいいます(法基通2-3-37)。

 期末のみなし決済損益額は、取引所に上場されている取引であれば事業年度終了日の最終取引成立価格等を基礎として算定し、取引システムの気配値がある取引であれば、その気配値等を基礎として算定します(法規27の7③、法基通2-3-39)。

 なお、みなし決済損益額の算定に当たっては、委託手数料その他取引に付随して発生する費用は加味しません(法基通2-3-39(注)3)。

 また、一定のヘッジ取引等については、法人税法61条の6その他の特例が適用される場合があります(法法61の6、法基通2-3-38)。

期末の仕訳

 会計上、未決済のデリバティブ取引から生じる正味の債権又は債務は時価をもって貸借対照表価額とし、その評価差額は原則として当期損益として処理します(企業会計基準第10号25項)。

 例えば、期末に未決済FXポジションについて35,000円の評価益を計上する場合には、次のような仕訳が考えられます。

デリバティブ資産等 35,000 / 先物取引損益 35,000

 ただし、FX業者との契約上、ロールオーバー等によって損益が既に確定し、その金額が預託証拠金残高へ加算又は減算されている場合には、その確定損益と未決済ポジションの評価損益とを区別する必要があります。

 FX業者が表示する「有効証拠金額」等の口座管理上の数値が、そのまま法人税法上のみなし決済損益額になるわけではありません。法人税上のみなし決済損益額は、法人税法施行規則27条の7第3項及び法人税基本通達2-3-39に基づいて算定する必要があります(法規27の7③、法基通2-3-39)。

翌事業年度の処理

 前期末に法人税法61条の5第1項により益金又は損金に算入したみなし決済損益額と同額は、翌事業年度に反対方向の損金又は益金に算入します(法法61の5④、法令120①)。

 したがって、例えば前期に35,000円の評価益を益金に算入した場合には、翌事業年度では同額を損金に算入することになります。

 税務上のこの洗替え処理と会計処理を一致させる方法を採る場合には、会計帳簿上も翌期首に前期末の評価仕訳の反対仕訳を行う方法が考えられます。

先物取引損益 35,000 / デリバティブ資産等 35,000

 ただし、法人税法が会計帳簿上の期首反対仕訳そのものを義務付けているわけではありません。会計上の処理と税務上の処理が異なる場合には、法人税申告書上で必要な調整を行うことになります。

決算表示

 FX取引を通常の事業活動とは別に資金運用等として行っている場合、その損益は一般に営業外損益として表示することが考えられます。

 一方、FX取引そのものを主要な事業として行っている場合などは、事業の実態や法人の会計方針に応じて表示区分を判断する必要があります。

消費税

 FX取引では、為替相場の変動による為替差損益のほか、スワップポイントによる損益が生じることがあります。

 なお、FX業者に支払う取引手数料等がある場合には、為替差損益やスワップ損益とは区分して、その取引の内容に応じて消費税区分を判断する必要があります。

為替差損益(売買損益)

 国税庁は、商品先物取引や有価証券先物取引について、反対売買による差金決済で現物の引渡しを伴わない場合には、資産の譲渡等に該当せず、消費税の対象外となるとしています。

 通常の差金決済型FXについても、現物通貨の引渡しを伴わないことから、同様に資産の譲渡等に該当せず、消費税の課税対象外になると考えられます(消法2①八、消基通9-1-24、国税庁タックスアンサーNo.6245)。

 これに対し、現物通貨の受渡しを実際に行う場合には、差金決済の場合とは別に消費税上の取扱いを検討する必要があります。

スワップポイント

 2026年8月15日現在、FXのスワップポイントについて、これを一律に「支払手段の譲渡」に該当する非課税取引とすることを直接明示した国税庁の法令解釈通達・質疑応答事例等は確認できません。

 消費税基本通達6-2-3は、消費税法別表第二第2号に規定する「支払手段」の範囲を定める通達であり、FXのスワップポイントそのものを「支払手段の譲渡」に該当すると定めているものではありません(消法6①・別表第二2、消基通6-2-3)。

 したがって、FXのスワップポイントについては、一律に「非課税取引」又は「不課税取引」と断定するのではなく、取引の法的性質、FX業者との契約内容及び実際の決済方法を確認した上で判断する必要があります。

 なお、税務大学校の篠原克岳研究部教授による研究論叢「金融取引に係る消費税の取扱いについて」では、金利スワップや通貨スワップ等の一般的なデリバティブとしてのスワップ取引について、実務上は「支払手段の譲渡」として非課税取引とされている旨を紹介する一方、資産の譲渡等に当たらない不課税取引と解する余地も指摘されています。

 ただし、この論文は研究論文であって国税庁の法令解釈通達や質疑応答事例ではなく、FXのスワップポイントそのものについて示された取扱いでもない点には注意が必要です。

 仮に、具体的な取引について「支払手段の譲渡」に該当すると判断される場合には、その取引は消費税の非課税取引となりますが、その対価の額は課税売上割合の計算上、分母に算入しないこととされています(消法6①・別表第二2、消令48②一)。

FX取引の仕訳記帳の頻度

 法人がFX取引を行っている場合、取引内容を帳簿に適切に記録しておく必要があります。

 もっとも、法令上、FX取引について「取引ごと」「1日ごと」「1か月ごと」といった具体的な仕訳頻度が定められているわけではありません。

 株式会社及び持分会社(合同会社等)には、適時かつ正確な会計帳簿を作成することが求められています。

 また、法人税法上も、法人は帳簿を備え付けて取引を記録するとともに、取引に関して作成又は受領した書類を保存する必要があります(会社法432①・615①、法法126)。

 したがって、FX業者の取引報告書や取引データを保存し、集計した仕訳から個々の取引まで遡って追跡・検証できることを前提として、日次又は月次単位で取引を集計して仕訳する方法が実務上考えられます(会社法432①・615①、法法126、国税庁タックスアンサーNo.5930)。

 取引件数が多い場合には、FX業者からダウンロードしたCSVデータ等を利用して日次又は月次で集計すると、記帳事務を効率化することができます。

 月次での仕訳が法律上の最低基準というわけではありませんが、取引内容の照合可能性、決算時の損益計算や未決済ポジションの確認、内部管理等の観点からは、FX業者の詳細な取引データを保存した上で、日次又は月次単位で集計して記帳する方法が実務上適当であると考えられます。

 また、FX業者から取引報告書等を電子データで受領している場合には、電子取引データの保存について電子帳簿保存法上の保存要件にも留意する必要があります(国税庁タックスアンサーNo.5930)。

 なお、月次が法律上最低限という根拠はありませんが、個人的な感覚からいうと、年間分の合計を仕訳1つの登録でするのはやり過ぎなのではないかと思います。

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