外国株式の譲渡損益

 外国株式とは、海外(外国籍)の企業が発行する株式のことをいいます。外国株式を売買する方法には、証券会社等を通じて国内の金融商品取引所(証券取引所)で上場されている外国株式を売買する方法、国内外の証券会社等を通じて海外の外国金融商品市場(外国有価証券市場)に上場されている外国株式を売買する方法、証券会社等を相手方として売買する方法等があります。

 外国株式の取得時から売却時までの為替の変動による損益(為替差損益)は外国株式の売却損益に含まれます。為替差損益を雑所得として区分する必要はありません。

 つまり、外国株式の譲渡損益は、国内の株式と同様に申告分離課税の対象となり、譲渡に伴って生ずる為替差損益は譲渡損益に含めて計算します。

 また、外貨建預金を払い出して外貨建株式等を購入した場合は、株式等の購入価額の円換算額とその購入に充てた外国通貨を取得した時の為替レートにより円換算した金額との差額(為替差損益)を雑所得として認識する必要があります。

邦貨(円)換算方法

 外貨建株式等に係る売却収入は、約定日における対顧客直物電信買相場(TTB)、取得価額は、約定日における対顧客直物電信売相場(TTS)となります(措置法通達37の10・37の11共-6)。

 なお、外貨建株式等に係る売却損益を計算する場合には、売却収入と取得価額をそれぞれ邦貨に換算した上で計算します。

譲渡所得の計算

(Q)次のようなケースでは譲渡所得の計算はどのようになるか。
 売却株式:A国B銘柄株式(A国上場、日本非上場) 200株
 取引口座約款:売買約定成立日から3営業日目に決済を行う
 適用通貨:米ドル
 譲渡価額:180ドル(単価)
 取得価額:110ドル(単価)
 譲渡に係る約定日の対顧客直物電信買相場(TTB):1ドル=76円
 取得に係る約定日の対顧客直物電信売相場(TTS):1ドル=123円

(A)計算すると、次のとおりとなる。
 譲渡収入:200株×@180ドル×76円=2,736,000円
 取得費:200株×@110ドル×123円=2,706,000円
 譲渡所得:2,736,000円-2,706,000円=30,000円

外貨のまま売買を複数回継続する場合の注意点

「譲渡所得・山林所得・株式等の譲渡所得等関係 租税特別措置法通達逐条解説 令和4年版」の措置法通達37の10・37の11共-6の解説で以下のように記載されています。

「外貨建ての株式等の取引後、邦貨に転換せずに外貨のまま売買を複数回継続し、実体のない譲渡損失を計上するなどの課税上の弊害が生じる場合にも、所得税基本通達57の3-2によっているが、この点についても明らかにしたものである。」

 つまり、ある日におけるTTMが100円だとすると、一般的にTTSはこれに1円をプラスした101円になります。一方、TTBは100円から1円をマイナスした99円になります。

 同日に、邦貨に転換せずに売却、取得を何度も繰り返すと、譲渡におけるTTBと取得におけるTTSの関係で、譲渡損失が積み上がります。

 よって、あまりにも課税上の弊害が生じる場合は、その譲渡損失をなかったものとすると警告しているということです。

外国株式の譲渡損益における課税の取扱い

  外国株式は国内株式と同様に、上場株式、未上場株式に分けて課税上取り扱われます。ただし、ほとんどの方が所有している外国株式は上場外国株式に該当するものでしょう。

 上場外国株式の譲渡損については、申告分離課税を選択した上場株式等グループの配当等・利子等・譲渡益・償還差益の金額から控除することができます。

 なお、控除しきれずに残った上場外国株式(日本で内閣総理大臣の登録を受けている証券会社を通して行われたものに限る)の譲渡損は、確定申告をすることによって翌年以降3年間繰越すことができます。

特定口座(源泉徴収あり)で保有していた外国株式の譲渡損益における課税の取扱い

 特定口座(源泉徴収あり)で保有していた外国株式の譲渡損益については、利益が出ている場合は(確定)申告不要を選択することができます。

 なお、証券会社が源泉徴収して課税庁(国税)に納める場合は、外国株式の譲渡益に対する源泉所得税等であっても、円貨で支払う必要があります。

 よって、証券会社にその金額に見合う円貨での預け金、MRF(円貨)等がないと、証券会社は源泉徴収・納税ができないことになります。

 ですから、その場合は、(1)投資家が受渡日までにそれに見合う円貨を入金をしなくてはいけない、あるいは(2)あらかじめの契約により外貨から円貨への為替取引(強制円転)を証券会社が行うことによって、それに見合う円貨を確保している状況です。

 投資家は自分が利用している証券会社の対応はどうなるのかを、あらかじめ聞いておくと良いでしょう。

 また、外国株式の譲渡損が出ていて、損失の繰越をしたい場合は確定申告をする必要があります。

外国の上場株式を国外の証券会社を通じて売買した場合

 外国金融商品市場に上場されている外国株式を、措法37条の12の2②一に規定する金融商品取引業者である国内の証券会社(内国法人)を通じて譲渡した場合には、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の対象となります(措法37の12の2)。

 よって、金融商品取引業の登録を受けていない(金融商品取引法第29条の内閣総理大臣の登録を受けていない)海外の証券会社を通じた譲渡などは、この特例の対象となる譲渡には該当しません。

 つまり、金融商品取引業者等(国内で登録した金融業者等)を通さずに譲渡した外国上場株式の譲渡損は、上場株式等の譲渡になることから、上場株式等の譲渡所得の計算内では差し引きして計算することはできます。ただし、配当との損益通算や繰越控除の特例の適用を受けることはできないということです。

 なお、信託会社の国内にある営業所に信託されている上場株式等の譲渡で、その営業所を通じて金融商品取引法第58条に規定する外国証券業者への売委託により行うもの又は外国証券業者に対して行うものについては、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の対象となります(措法37の12の2②九、十)。

措置法通達37の10・37の11共-6(外貨で表示されている株式等に係る譲渡の対価の額等の邦貨換算)

 一般株式等に係る譲渡所得等の金額又は上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算に当たり、株式等の譲渡の対価の額が外貨で表示され当該対価の額を邦貨又は外貨で支払うこととされている場合の当該譲渡の価額は、原則として、外貨で表示されている当該対価の額につき金融商品取引業者と株式等を譲渡する者との間の外国証券の取引に関する外国証券取引口座約款において定められている約定日におけるその支払をする者の主要取引金融機関(その支払をする者がその外貨に係る対顧客直物電信買相場を公表している場合には、当該支払をする者)の当該外貨に係る対顧客直物電信買相場により邦貨に換算した金額による。
 また、国外において発行された公社債の元本の償還(買入れの方法による償還を除く。)により交付を受ける金銭等の邦貨換算については、記名のものは償還期日における対顧客直物電信買相場により邦貨に換算した金額により、無記名のものは、現地保管機関等が受領した日(現地保管機関等からの受領の通知が著しく遅延して行われる場合を除き、金融商品取引業者が当該通知を受けた日としても差し支えない。)における対顧客直物電信買相場により邦貨に換算した金額による。
 なお、取得の対価の額の邦貨換算については、対顧客直物電信売相場により、上記に準じて行う。
(注) 株式等の取得の約定日が平成10年3月以前である場合には、外国為替公認銀行の公表した対顧客直物電信売相場によることに留意する。

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