概要
明細書等の添付がある確定申告書を提出していたが、その申告における上場株式の譲渡損失の金額が過少である場合は、納税者が更正の請求をし、所轄税務署長がそれを認容すれば、本来の正しい損失額とすることができます(措通37の12の2-6)。
FX取引の損失についても同様となります(措通41の15-2)。
事例
事例1
(Q)
甲のX0年分の上場株式の取引内容は以下であった。
A口座(一般口座)の上場株式の譲渡損失の金額400万円
B口座(特定口座源泉徴収なし)の上場株式の譲渡損失の金額200万円
甲のX0年分の確定申告内容は以下であった。
A口座(一般口座)の上場株式の譲渡損失の金額400万円
これについては「確定申告書付表」及び「計算明細書」を添付して当該譲渡損失をX1年分以後に繰り越すための確定申告をしていた。
B口座(特定口座源泉徴収なし)の上場株式の譲渡損失の金額200万円については確定申告をしていない。
この場合、確定申告をしなかったB口座(特定口座源泉徴収なし)の上場株式の譲渡損失の金額200万円についても、X1年分以後に繰り越すことはできるのか?
(A)
X0年分についての更正の請求があり、これを所轄税務署長が認容すれば、B口座(特定口座源泉徴収なし)の上場株式の譲渡損失の金額200万円を加算した600万円をX1年分以後に繰り越すことができます。
なお、B口座が一般口座の場合であっても同様の取扱いとなりますが、B口座が特定口座源泉徴収(あり)の場合は、繰り越すことができません。
平成18年5月30日裁決(東裁(所)平17 第188 号)要旨
「納税者が確定申告する時点において、源泉徴収選択口座で生じた上場株式等の譲渡による所得の金額又は損失の金額を株式等に係る譲渡所得等の金額(譲渡損失の金額)に含めて確定申告をするか、それを除外して確定申告をするかは、納税者の選択に委ねられていることから、源泉徴収選択口座において生じた当該所得の金額又は損失の金額を株式等に係る譲渡所得等の金額(譲渡損失の金額)に含めずに確定申告をした場合には、その後において、更正の請求又は修正申告をするときにおいても、当該所得の金額又は損失の金額を当該株式等に係る譲渡所得等の金額(譲渡損失の金額)の計算上算入することはできないと解される。」
大阪国税局「令和元事務年度 資産課税関係審理事務連絡会資料4号-3 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の特例の適用について」事例4を改変
事例2
(Q)
甲はX0年分及びX1年分の確定申告で、X0年分に生じたFX取引の損失を繰り越す申告をしていたが、X0年分で生じたFX取引の繰越損失額が過少であった。
その繰越損失額を増加させる旨のX0年分及びX1年分の更正の請求は認容されるのでしょうか?
(A)
X0年中に生じた繰越損失額を申告し、かつ、その後も明細書等の添付がある確定申告書を連続して提出している場合は、その申告した損失額が過少であったとする更正の請求は認められます。
東京国税局「事例集 所得税・消費税誤りやすい事例集(令和6年12月) 東京国税局」31頁改変
通達
措通37の12の2-6(更正により上場株式等に係る譲渡損失の金額が増加した場合)
上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税につき措置法第37条の12の2第7項の明細書等の添付がある確定申告書を提出した場合において、上場株式等に係る譲渡損失の金額が過少であるため更正が行われたときは、その更正後の金額を基として同条第5項の規定を適用する。
措通41の15-2(更正により先物取引の差金等決済に係る損失の金額が増加した場合)
先物取引の差金等決済に係る損失の金額が生じた年分の所得税につき措置法第41条の15第3項の明細書等の添付がある確定申告書を提出した場合において、先物取引の差金等決済に係る損失の金額が過少であるため更正が行われたときは、その更正後の金額を基として同条第1項の規定を適用する。