令和4年度税制改正

 個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させることとなりました。つまり、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することができなくなります(地法附則33の2等)。

 例えば、上場株式等の配当所得について所得税で総合課税を適用した場合は、住民税においても総合課税が適用されます。

 令和6年度分(2024年度分)以後の個人住民税(令和5年分の配当所得・譲渡所得)から適用されます。つまり、選択ができるのは、令和4年分の所得税が最後となります。

令和5年度分(2023年度分)までの取扱い

 平成29年度の地方税の改正により、上場株式等の配当所得等及び特定口座(源泉徴収あり)内の譲渡所得等について、所得税と住民税で異なる課税方式(申告不要制度・申告分離課税・総合課税)を選択できることが明確化されました(地法32⑫~⑮、313⑫~⑮、地方税法附則33の2②⑥)。

 一番利用されているケースは、所得があまり高くない方が、上場株式等の配当所得を総合課税で確定申告(所得税)し、住民税では申告不要(特別徴収5%のまま)を選択するということです。

 住民税で配当所得を総合課税で申告となると、配当控除を利用できても申告不要の場合に比べて住民税が必ず増えてしまいます。また、国民健康保険料等もあがります。ですから、所得税では総合課税、住民税では申告不要というスタイルを取るケースが多いのです。

 また、譲渡所得と譲渡損失を通算したり、損失の繰越をするために所得税では申告するが、医療費の窓口負担が3割負担になることを避けたい高齢者の方が、住民税では申告不要を選択するというケースも多いです。

 なお、よく間違われるのですが、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座での上場株式等の譲渡益は、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できません。つまり、住民税が徴収(特別徴収5%)されていないものは、住民税の申告不要は選択できないという事です。

 同様に、特定口座(源泉徴収あり) で、配当所得と譲渡損失があって、配当所得より譲渡損失の方が大きい場合で、確定申告時に、配当所得を総合課税、 譲渡損失を申告分離課税(損失繰越)で申告した場合、住民税では譲渡損失について繰越をし、配当所得について申告不要を選択することはできません。特定口座(源泉徴収あり)の口座内で、住民税が徴収(特別徴収5%)されていないからです。

 なお、特定口座(源泉あり)内の譲渡損失、配当所得ともに住民税において申告不要を選択することは、論理的に考えてできると思われます。本来的に申告が不要なものですから。

 その場合、当然、住民税において上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用はできないということになります。

所得税と住民税と異なる課税方式を選択する手続方法

 所得税と住民税と異なる課税方式を選択する手続きの方法は、住民税の納税通知書(特別徴収税額決定通知書を含む)が送達される時(おおむね5月下旬~6月上旬)までに、確定申告書第2表の住民税・事業税に関する事項の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に丸をして確定申告をする、又は、確定申告書とは別に一定の事項を記載した住民税の申告書を市区町村に提出する必要があります(地法32⑫⑬、313⑫⑬、地法附33の2②⑥)。

 住民税の税額は、原則として確定申告書が提出された場合は、確定申告書に記載された内容に基づいて算定されますが、住民税の納税通知書送達後に、確定申告書が提出(その後、市区町村に送付)された場合は、住民税の税額算定に算入できません。

 よって、遅くても、4月15日ぐらいまでには確定申告、あるいは、別途、市区町村への住民税の申告は済ましておきましょう。

 なお、上述したように「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に丸をして、住民税で「申告不要」を選択したケースに限り、所得税の確定申告のみで申告手続が完了する予定です。

 よって、住民税で「申告不要」を選択したケース以外では、これまでどおり、別途、住民税の申告が必要となります。

 住民税で「総合課税」や「申告分離課税」を選択する場合は、原則どおり住民税の申告書等の提出が必要です。

外国税額控除

 所得税と住民税で異なる課税方式を選択した場合でも、外国税額控除は適用されます。外国税額控除が住民税において控除対象となる場合は、外国税額控除に関する明細書等(外国税額控除の金額がわかるもの)を、お住いの自治体に提出します。