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概要

 先物取引等に係る損失の繰越控除は、損失の生じた年分につき、当該控除を受ける金額の計算に関する明細書等の添付がある確定申告書を提出し、かつ、その後も明細書等の添付がある確定申告書を連続して提出している場合に適用されます(措法41の15③)。

 つまり、FX取引等で生じた先物取引等の損失額を控除するには、その損失が生じてから繰越損失額を毎年確定申告する必要があります。

損失の繰越控除

 例えば、令和2年分の確定申告でその令和2年中に生じた損失を繰り越す旨を申告していなかった場合(先物取引等以外の内容については申告済)でも、令和3年分の確定申告をする前であれば、令和2年分の損失についてはその損失を繰り越すものとして更正の請求をすることは可能です(措法41の15 ③、措通41の15-1)。

 逆に、令和3年分の確定申告書等の提出後に令和2年分の期限後申告書を提出するような場合は、「連年申告要件」を満たさないため、更正の請求をすることはできないと考えられています(反対意見はあります)。

 なお、損失の繰越控除の適用を受けようとする令和4年分確定申告書等を提出した時点において、令和2年分確定申告書等(損失の金額の計算に関する明細書等の添付有)は提出されていたものの、令和3年分の確定申告書は提出されていないような場合は、「その後において連続して確定申告書を提出している場合」には該当しないとして、令和4年分において先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を適用することはできません。

 参考事例として、長野地裁平成29年9月29日判決(税資267号-122(順号13071))、東京高裁平成30年3月8日判決(平成29年(行コ)第344号)があります。

 ただし、令和4年3月10日判決(令和4年(行ワ)第19350号)があり、これについては入手次第、判決要旨をアップします。

繰越損失額が過少であった場合の更正の請求

 先物取引等に係る損失の生じた年分につき、その繰越控除を受ける金額の計算に関する明細書等の添付がある確定申告書を提出した場合において、その損失が過少であったためその損失額を増加させる更正が行われたときは、その更正後の金額を基として当該控除の規定が適用されます(措通41の15-2)。

 例えば、令和元年中に生じた繰越損失額を申告し、かつ、令和2年分も明細書等の添付がある確定申告書を連続して提出している場合は、令和元年中に生じた先物取引等の繰越損失額が過少であったとして、その繰越損失額を増加させる旨の令和元年分ないし令和2年分の更正の請求は認められるということになります。

措通41条の15((先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除))関係通達

41の15-1(更正の請求による更正により先物取引の差金等決済に係る損失の金額があることとなった場合)

 措置法第41条の15第3項に規定する「先物取引の差金等決済に係る損失の金額が生じた年分の所得税につき当該先物取引の差金等決済に係る損失の金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある確定申告書を提出」した場合には、同項に規定する先物取引の差金等決済に係る損失の金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類(次項において「明細書等」という。)の添付がなく提出された確定申告書につき通則法第23条((更正の請求))に規定する更正の請求に基づく更正により、新たに措置法第41条の15第2項に規定する先物取引の差金等決済に係る損失の金額(次項において「先物取引の差金等決済に係る損失の金額」という。)があることとなった場合も含まれることに留意する。

41の15-2(更正により先物取引の差金等決済に係る損失の金額が増加した場合)

 先物取引の差金等決済に係る損失の金額が生じた年分の所得税につき措置法第41条の15第3項の明細書等の添付がある確定申告書を提出した場合において、先物取引の差金等決済に係る損失の金額が過少であるため更正が行われたときは、その更正後の金額を基として同条第1項の規定を適用する。

確定申告書が連年提出されていない場合には、先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除は認められないとした事例-東京高裁平成30年3月8日判決(平成29年(行コ)344号)(棄却)(確定)

(1)事案の概要

 本件は、平成25年分確定申告書等を提出し、その後、修正申告書を提出したX(原告・控訴人)が、平成24年分期限後申告書等を提出するとともに、租税特別措置法(以下「措置法」という。)41条の15第1項の規定による先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除(以下「本件特例」という。)が適用されるものとして、外国為替証拠金取引(FX取引)等に関し平成23年中に生じた先物取引の繰越損失額を平成25年分の先物取引に係る雑所得の金額から控除して計算した更正の請求書を提出したが、所轄税務署長Yが、同条第3項の「連続して確定申告書を提出している場合」に当たらず、本件特例を適用することはできないとして更正をすべき理由がない旨の通知処分を行った。このことにより、Xが、当該通知処分の取消しを求めた事案であるが、一審の長野地裁平成29年9月29日判決(平成28年(行ウ)16号)においてXの請求は棄却され、Xは東京高裁に控訴した。

○本件における前提事実等は、次のとおりである。
①  Xは、平成23年ないし平成25年において、措置法41条の14第1項2号に規定する金融商品先物取引等を行っていた。
②  平成24年3月12日、Xは、Yに対し、平成23年分の所得税について、総所得金額(給与所得の金額)を1,661万円余、先物取引に係る雑所得の損失を1,502万円余(以下「本件繰越損失額」という。)、翌年以後に繰り越される先物取引に係る損失の金額を2,227万円余と記載した平成23年分の所得税の確定申告書及び添付書類(以下「平成23年分確定申告書等」という。)を提出した。
③  平成26年3月10日、Xは、Yに対し、平成25年分の所得税等について、総所得金額(給与所得の金額)を1,702万円余、先物取引に係る雑所得の金額を484万円余、前年分までに引ききれなかった先物取引の差金等決済に係る所得の損失の額を1,502万円余(本件繰越損失額)、本年分の先物取引に係る所得から差し引く損失額を484万円余、翌年以後に繰り越される先物取引に係る損失の金額を1,017万円余と記載した確定申告書及び添付書類(以下「平成25年分確定申告書等」という。)を提出した。
④  Xは、平成25年分確定申告書等の調査を担当した税務署職員から、平成25年分確定申告書等の提出時において、平成24年分の所得税の確定申告書が提出されておらず、連続して確定申告書が提出されていないため、平成25年分の所得税等について、平成25年分の先物取引に係る雑所得の金額から本件繰越損失額を控除することはできないとの指摘を受けた。そこで、Xは、平成26年12月17日、Yに対し、総所得金額(給与所得の金額)を1,702万円余、先物取引に係る雑所得の金額を484万円余と記載した修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を提出した。
⑤  平成27年4月20日、XはYに対し、平成24年分の所得税について、総所得金額(給与所得の金額)を1,656万円余、先物取引に係る雑所得の金額を184万円余、本年分の先物取引に係る所得から差し引く損失額を184万円余、翌年以後に繰り越される先物取引に係る損失の金額を1,502万円余(本件繰越損失額)と記載した確定申告書及び添付書類(以下「平成24年分期限後申告書等」という。)を提出した。これと同時に、Xは、Yに対し、平成24年分期限後申告書等の提出により、平成23年分から連続して確定申告書が提出されたこととなるため、平成25年分の所得税等について、平成25年分の先物取引に係る雑所得の金額から本件繰越損失額を控除できるとして、更正の請求書を提出した(以下「本件更正の請求」という。)。
⑥  Yは、平成27年6月30日、本件更正の請求について、更正をすべき理由があるとは認められないとして、本件通知処分をした。

(2)判決要旨(一審引用含む)

① 本件特例の適用を受けるためには、本件特例の適用を受ける年分の確定申告書を提出するまでに、確定申告書の連年提出を含め、本件特例の手続的要件を充足し、当該年分の先物取引に係る雑所得等の金額から控除されるべき、その年の前年以前3年内の各年において生じた先物取引の差金等決済に係る損失の金額が確定している必要があると解するのが相当である。
② Xが平成26年3月10日に本件特例の適用を受けようとする平成25年分確定申告書等を提出した時点において、平成23年分確定申告書等は提出されていたものの、平成24年分の確定申告書は提出されていなかったのであるから、「その後において連続して確定申告書を提出している場合」には該当しない。
③ 「その後において連続して確定申告書を提出『している』場合」と定めている措置法41条の15第3項の規定の文理からしても、また、同条1項は、先物取引の差金等決済に係る損失の金額が生じた年分の確定申告書の提出後に、順次その後の年分の確定申告書が提出され、当該先物取引の差金等決済に係る損失の金額を順次控除することを予定しており、本件特例の適用を受けるとした場合に、当該年分において繰越控除の計算をし、先物取引に係る雑所得等の金額を確定させるためには、過去3年内の各年に係る控除する先物取引の差金等決済に係る損失の金額が確定している必要があるため、同条3項が、先物取引の差金等決済に係る損失の金額が生じた年分の確定申告書を提出した後も確定申告書の連年提出要件を設けていると解されることからしても、本件特例の適用を受けるためには、本件特例の適用を受ける年分の確定申告書を提出するまでに確定申告書の連年提出の要件が充足されていることが必要というべきである。