概要

 社員は、合同会社に対し、自分が出資として払込み又は給付をした金銭等の払戻し(以下「出資の払戻し」といいます。)を請求することができます(会社法624①)。

 ただし、定款を変更してその社員の出資の価額を減少する必要があります(会社法632①)。

 なお、合同会社は、出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができます(会社法624②)。

出資の払戻しの原資

 出資の払戻しの場合、社員が払込み又は給付をした金銭等、つまり、資本金と資本剰余金が払戻しの原資となります。

 出資の払戻しにより払い戻した財産の帳簿価額に相当する額は、利益剰余金の額からは控除されません(会計規32②)。

 つまり、利益剰余金が原資となる利益の配当(会社法621)と概念が違うということです。

減少させることができる資本金の限度額

 本来、出資の払戻しの場合、出資の払戻しを受ける社員に計上されている資本剰余金から払戻しをします。

 ただし、社員による出資の払戻しの請求があり、その社員に計上されている資本剰余金の額だけでは不足の場合は、その社員の資本金の額を減少させ、かつ、その社員の資本剰余金を増加することにより、出資の払戻しをすることができます。

 ただし、資本金の額を減少させことができる金額には以下の制限があります。

 出資の払戻しのために減少する資本金の額は、「出資払戻額」(会社法632②、合同会社が出資の払戻しにより社員に対して交付する金銭等の帳簿価額)から出資の払戻しをする日における「剰余金額」を控除して得た額を超えてはなりません(会社法626②)。

 ここでいう「剰余金額」とは、当該社員の出資につき資本剰余金に計上されている額のことをいいます(会社法626④、会計規164三イ)。

出資の払戻しの限度額

 「出資払戻額」が、出資の払戻しの請求日における剰余金額(上記の資本金の額の減少をした場合にあっては、その減少後の剰余金額)又は定款の変更により出資の価額を減少した額のいずれか少ない額を超える場合には、当該出資の払戻しをすることができません。

 ここでいう「剰余金額」とは、次に掲げる額のうちいずれか少ない額のことをいいます(会社法632②、会計規164三ハ)。
(イ)会社全体の資本剰余金の額及び利益剰余金の額の合計額
(ロ)当該社員の出資につき資本剰余金に計上されている額

 (イ)の制限があるのは、会社債権者を害することをないようにするためです。また、(ロ)の制限があるのは、他の社員を害することをないようにするためです。

 合同会社は、限度額を超えた請求があった場合は、出資の払戻しの請求を拒むことができます(会社法632②)。

出資の払戻しの例

 純資産の部、社員の持分が以下の場合、社員Aが出資の払戻し100万円の請求をしたが可能なのか?

社員名資本金資本剰余金利益剰余金合計
200万円75万円△50万円225万円
100万円125万円△25万円200万円
合計300万円200万円△75万円425万円

 出資の払戻しの限度額は、次に掲げる額のうちいずれか少ない額となります。

(イ)会社全体の資本剰余金の額及び利益剰余金の額の合計額=200万円+△75万円=125万円
(ロ)当該社員の出資につき資本剰余金に計上されている額=75万円

 この場合、社員Aの出資の払戻しの限度額は75万円となります。

 ただし、社員による出資の払戻しの請求があり、その社員に計上されている資本剰余金の額だけでは不足の場合は、その社員の資本金の額を減少させ、かつ、その社員の資本剰余金を増加することにより、出資の払戻しをすることができます。

 なお、資本金の額を減少させことができる金額は、出資払戻額から当該社員に計上されている資本剰余金を控除した額となります。

 よって、社員Aが出資の払戻し100万円の請求があった場合は、出資払戻額100万円から当該社員に計上されている資本剰余金75万円を控除した額である25万円の資本金の額を減少させ、かつ、資本剰余金を増加することにより、出資の払戻しをします。

 結果、社員Aへの出資の払戻し100万円をした後の純資産の部、社員の持分は以下のようになります。

社員名資本金資本剰余金利益剰余金合計
175万円0円△50万円125万円
100万円125万円△25万円200万円
合計275万円125万円△75万円325万円

出資の払戻しをした場合の税務処理 

 合同会社の税務に関する書籍では、出資の払戻しにおいて、「みなし配当」について記載されています。

 ただし、合同会社における出資の払戻しは利益剰余金(利益積立金額、法法2十八)は関係なく、資本金と資本剰余金(資本金等の額、法法2十六)から払い戻されます。

 そのため、払い戻し請求をした社員の出資の払戻し額=資本金等の額である限り、「みなし配当」は生じないと思います。(法令8①十八、9十二)。

 私見ではありますが。

 次に、資本金を減少して資本剰余金を増加した場合ですが、法人税法上、資本金を減少して資本剰余金を増加しても資本金等の額は変動しません。資本金等の額の中での振替にすぎないためです。

手続き

 資本金の額を減少する場合には、定款に別段の定めがなければ業務執行社員の過半数により決定します。

 官報公告などによって債権者に異議を述べる機会を与えなければならないこととされており、債権者保護手続が要求されています(会社法627)。

 また、資本金の額が変わるため、2週間以内に変更の登記をしなければなりません(会社法915①)。登録免許税は3万円です(登税法別表一24(一)ツ)。