クラウド会計対応 月額5,500円からの顧問料 東京都豊島区池袋の格安顧問料の税理士です

配当控除とは?対象となる配当・計算方法と総合課税の有利不利

配当控除とは?対象となる配当・計算方法と総合課税の有利不利

概要

 配当控除は、国内株式の配当などを総合課税で申告した場合に、所得税や住民税から一定額を差し引く制度です。ただし、外国株式やJ-REITの分配金などには適用されず、申告による保険料等への影響も考える必要があります。

 本記事では、日本の居住者が受け取る配当を対象に、令和8年分(2026年分)を中心とした取扱いを解説します。上場株式の申告方法の比較は、大口株主等に該当しない個人を前提とします。

配当控除とは

 会社の利益には法人税等が課され、その利益を原資とする配当にも個人段階で課税されます。配当控除は、このような法人と個人の間の二重課税を調整するために設けられた税額控除です(所法92)。

 配当控除は、所得から差し引く「所得控除」ではなく、計算した税額から差し引く「税額控除」です。配当の支払時に源泉徴収された所得税等を精算する手続とも区別します。確定申告では、配当控除を計算したうえで、源泉徴収された所得税等も納付税額から差し引きます(所法92、国税庁タックスアンサーNo.1250)。

配当控除の対象になる配当・ならない配当

 国内法人から受ける剰余金の配当などについて、総合課税で確定申告した場合には、原則として配当控除を受けられます。ただし、総合課税で申告すれば、すべての配当や分配金が対象になるわけではありません(所法92、措法8の4・8の5・9)。

配当・分配金などの種類配当控除の取扱い
国内の通常の株式会社から受ける配当総合課税で申告した場合は原則として対象
国内の投資信託・ETFの分配金商品区分により対象・対象外、控除率が異なる
外国株式・外国ETFの配当や分配金対象外
J-REITなど投資法人から受ける分配金対象外
申告分離課税を選んだ配当対象外
申告不要制度を選んだ配当対象外
NISAで非課税となる配当対象外
投資信託の元本払戻金(特別分配金)非課税の元本払戻しであり、対象外
資本の払戻しのうち、みなし配当に該当しない部分配当所得ではないため対象外
貸株サービスの配当金相当額通常は雑所得であり、対象外
特定公社債等の利子利子所得であり、対象外

 国内で設定された投資信託や国内市場に上場するETFでも、配当控除を受けられないものがあります。外国株価指数連動型特定株式投資信託や特定外貨建等証券投資信託などは対象外です。商品名や上場市場だけで判断せず、商品区分と支払通知書等を確認してください。外国株式の配当に対する外国税額控除は別の制度で、適用要件や控除限度額があります(所法95、措法9、国税庁タックスアンサーNo.1250)。

 NISAで保有する国内上場株式でも、株式数比例配分方式以外で配当を受け取ると、課税される場合があります。その場合は、通常の課税配当として申告方法を検討します。非課税となっている配当を、配当控除のために申告することはできません(措法9の8、国税庁タックスアンサーNo.1535)。

配当控除の計算に使う配当所得の金額

 計算の基礎は、税引後の手取額ではありません。源泉徴収前の配当収入から、税法上控除できる株式等の取得借入金の利子を差し引いた配当所得の金額です。借入金利子を控除できるのは、その元本の保有期間に対応する部分などに限られ、申告不要を選んだ配当に対応する利子は控除できません(所法24②、所基通24-5、措通〈申告所得税・源泉所得税関係〉8の5-2)。

配当控除額の計算方法

配当・分配金の種類ごとに控除率が異なる

 主な控除率は、次のとおりです。表の「1,000万円以下」「1,000万円超」は、それぞれの部分に含まれる対象配当所得についての区分です。1,000万円をまたぐ場合は、部分ごとに計算します(所法92①、措法9、地法附則5)。

対象となる配当所得の種類1,000万円以下の部分:所得税同:住民税1,000万円超の部分:所得税同:住民税
国内の通常の株式配当・一定の特定株式投資信託の分配金10%2.8%5%1.4%
特定株式投資信託以外の証券投資信託の分配金(外貨建等を除く対象分)5%1.4%2.5%0.7%
一般外貨建等証券投資信託の分配金2.5%0.7%1.25%0.35%

 外国株価指数連動型特定株式投資信託など、そもそも配当控除の対象にならないものは表に含めていません。また、株式配当と投資信託の分配金が混在するときは、所得の種類ごとに法定の順序・算式で計算する必要があります(所法92①、措法9、国税庁タックスアンサーNo.1250)。

1,000万円の判定は「課税総所得金額等」で行う

 所得税の配当控除では、給与の年収や、所得控除前の合計所得金額ではなく、「課税総所得金額等」を使います。総合課税の課税総所得金額に、土地・建物や株式等の課税譲渡所得、先物取引の課税雑所得等など、対象となる申告分離課税の課税所得金額を加えた金額です。退職所得・山林所得は、この判定に含めません(所法92①、国税庁タックスアンサーNo.1250)。

 例えば、給与等の総合課税部分だけでは1,000万円以下でも、申告する株式の譲渡益などによって、配当控除の一部又は全部が低い控除率になる場合があります。申告不要を選んだ配当や、申告不要の源泉徴収口座内の譲渡所得等は、この計算に加えません。

 所得税と住民税では所得控除額などが異なります。したがって、1,000万円以下・超となる部分も、それぞれの税について計算する必要があります。

1,000万円をまたぐ場合の計算例

 国内の通常の株式配当だけがあり、配当所得が50万円、これを含めた課税総所得金額等が1,030万円である場合を考えます。借入金利子はなく、説明のため所得税と住民税の判定金額を同じとします。

区分所得税の配当控除住民税の配当控除
1,000万円以下の部分に含まれる配当所得20万円20万円×10%=20,000円20万円×2.8%=5,600円
1,000万円超の部分に含まれる配当所得30万円30万円×5%=15,000円30万円×1.4%=4,200円
合計35,000円9,800円

 このように、配当所得を1,000万円以下の部分と超える部分に分けて計算します。所得税の配当控除額は、その年分の所得税額が上限です。控除しきれない配当控除額そのものが還付されたり、翌年へ繰り越されたりする制度ではありません(所法92②)。

総合課税と申告不要は、どちらが有利か

税率だけで比較する場合の目安

 大口株主等に該当しない個人の通常の上場株式配当は、申告不要を選ぶと、原則として20.315%の源泉徴収・特別徴収で課税関係が終了します。内訳は、令和8年分では所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%です(措法8の5・9の3、国税庁タックスアンサーNo.1331)。

 総合課税を選ぶ場合の目安を、以下の条件で比較します。

  • 国内の通常の株式配当で、配当控除率は所得税10%・住民税2.8%とする。
  • 配当を含めた課税総所得金額等は、所得税・住民税とも1,000万円以下とする。
  • 配当控除を全額使え、配当の申告による所得控除・他の税額控除の変動、保険料等への影響はないものとする。
  • 所得税の税率は、配当を加えた部分に適用される税率とし、端数処理は省略する。
配当を加えた部分の所得税率所得税・復興特別所得税の増減率住民税の増加率合計の増減率
5%(195万円以下の部分)−5.105%7.2%2.095%
10%(195万円超330万円以下の部分)0%7.2%7.2%
20%(330万円超695万円以下の部分)10.21%7.2%17.41%
23%(695万円超900万円以下の部分)13.273%7.2%20.473%
33%(900万円超1,000万円以下の部分)23.483%7.2%30.683%

 所得税・復興特別所得税の増減率は「(所得税率-10%)×1.021」、住民税の増加率は「10%-2.8%」で計算しています。上記の前提では、所得税率20%の部分は合計17.41%となり、申告不要の20.315%を下回ります。所得税率23%の部分は合計20.473%となり、申告不要をわずかに上回ります(所法89・92、国税庁タックスアンサーNo.2260、豊島区「控除の種類」)。

 5%の行のマイナスは、配当控除によって、給与所得など他の所得に対する所得税も減る効果を表しています。所得税額が少なく配当控除を使いきれない場合は、表の数値にはなりません。これは配当全体にかかる確定的な税率ではなく、申告による税負担の変化を示す目安です(所法92②)。

 令和9年1月1日以後に生ずる所得については、復興特別所得税が所得税額の1.1%となり、防衛特別所得税1%が加わります。令和29年分までは、両税を合わせた付加税率が2.1%となるため、上記の一般的な比較に用いる係数1.021は変わりません(国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税〈源泉徴収関係〉Q&A」問1・問5)。

「課税所得695万円以下なら必ず得」とは限らない

 累進税率は、所得の各部分に適用されます。配当を加える前後で695万円などの税率区分をまたぐ場合は、配当全体に一つの税率を当てはめることはできません。

 例えば、配当を加える前の所得税の課税総所得金額が680万円、国内株式の配当所得が50万円で、申告後は730万円になる場合を考えます。所得控除等は変わらず、配当控除を全額使えるものとします。

  • 所得税の増加額:15万円×20%+35万円×23%-50万円×10%=60,500円
  • 復興特別所得税を含めた増加額:60,500円×1.021=61,770.5円
  • 住民税の増加額:50万円×(10%-2.8%)=36,000円
  • 合計の増加額:97,770.5円(端数処理前)

 申告不要の税額は50万円×20.315%=101,575円です。この前提では、申告後の課税総所得金額が695万円を超えていても、総合課税の方が税額は少なくなります。住民税についても配当所得50万円の全額が課税され、2.8%の配当控除を使えるものとして計算しています。

所得控除・保険料・譲渡損失も含めて判断する

 配当を申告すると、合計所得金額などが増え、基礎控除・配偶者控除・扶養控除等の適用や控除額に影響する場合があります。国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料、医療費の自己負担割合などにも影響する場合があるため、還付額だけで判断しないことが大切です。

 令和6年度分の住民税(令和5年分の所得に対応)から、対象となる上場株式等の配当所得等について、所得税と住民税で異なる課税方式を選べなくなっています。所得税で総合課税を選び、住民税だけ申告不要とする方法は使えません(地法32・313、財務省「令和4年度税制改正の解説」地方税法等の改正)。

 また、その年の上場株式等の譲渡損失や、前年以前3年内に生じた繰越損失がある場合は、申告分離課税による損益通算・繰越控除と比較します。総合課税の配当所得には、これらの上場株式等の譲渡損失を通算できません(措法37の12の2、国税庁タックスアンサーNo.1474)。

配当控除を忘れた場合、更正の請求はできるか

申告済みの配当控除の計算漏れは是正できる

 配当控除には、確定申告書への控除額の記載を適用要件とする規定がありません。対象となる配当を総合課税で申告済みなのに配当控除の計算を忘れ、そのため税額が過大、又は還付額が過少となっている場合は、更正の請求で是正できます。請求期間は原則として法定申告期限から5年以内です(所法92、通法23①)。

申告不要・申告分離課税の選択変更とは区別する

 法定申告期限後に、当初の申告で除外した申告不要対象の配当を追加したり、申告分離課税を選んだ配当を総合課税へ変更したりすることは、原則としてできません(措法8の4・8の5、措通〈申告所得税・源泉所得税関係〉8の4-1・8の5-1、国税庁質疑応答事例「確定申告で申告しなかった上場株式等の利子及び配当を修正申告により申告することの可否」)。

当初申告の内容法定申告期限後の取扱い
対象配当は総合課税で申告済みだが、配当控除を計算していない税額等の要件を満たせば、更正の請求で是正可能
申告不要対象の配当を申告から除外した更正の請求・修正申告による追加は原則として不可
配当を申告分離課税で申告した更正の請求・修正申告による総合課税への変更は原則として不可

 なお、その年分の確定申告書をまだ提出しておらず、初めて還付申告等をする場合は、申告後に選択を変更する場合とは別に考えます。また、法定申告期限内に誤りに気付き、申告内容を訂正する場合とも区別します。

関連裁決:配当の記載漏れでも、後から追加できるとは限らない

 令和2年6月24日裁決では、当初申告に含めなかった上場株式の配当を、更正の請求によって追加できるかが争われました。納税者は、配当を除外する選択をしたのではなく記載漏れであるなどと主張し、課税庁は、更正の請求が認められる計算誤りには当たらないと主張しました。

 審判所は、配当を申告から除外したことは、意図的な選択かどうかにかかわらず、申告不要制度の規定に従った適法な申告であり、計算誤りには当たらないとして、審査請求を棄却しました。この裁決は、申告から除外した配当の追加に関する事例です。総合課税で申告済みの配当について、配当控除の計算漏れを直す場合とは事案が異なります(令和2年6月24日裁決・関裁(所)令元第52号)。

申告前に確認する資料

 特定口座年間取引報告書や配当等の支払通知書を用意し、税引前の配当金額、源泉徴収された所得税等、住民税の配当割額、配当控除の対象区分を確認します。借入金利子がある場合は、その使途・対象株式等・保有期間も確認してください。

 申告する上場株式等の配当所得については、その全額について総合課税か申告分離課税のいずれかを選びます。申告不要を選べる単位は、源泉徴収口座への受入れの有無などによって異なります。申告方法を選んだ後の変更には制限があるため、税額と保険料等を比較してから申告してください(措法8の4②・8の5、国税庁タックスアンサーNo.1331)。

関連記事

主な根拠・参考資料

  • 所法24②・89・92・95、措法8の4・8の5・9・9の8・37の12の2、地法附則5、通法23①
  • 租税特別措置法関係通達〈申告所得税・源泉所得税関係〉8の4-1・8の5-1・8の5-2
  • 国税庁タックスアンサーNo.1250「配当所得があるとき(配当控除)」、No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」、No.1331「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
  • 国税庁タックスアンサーNo.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」、No.2026「確定申告を間違えたとき」、No.2260「所得税の税率」
  • 国税庁質疑応答事例「確定申告で申告しなかった上場株式等の利子及び配当を修正申告により申告することの可否」
  • 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」問1・問5
  • 豊島区「控除の種類」配当控除・配当割額控除
  • 東京国税局「所得税・消費税 誤りやすい事例集(令和7年12月)」2・3・51頁〈国税内部資料〉
  • 令和2年6月24日裁決(関裁(所)令元第52号)

 ※本記事は、2026年11月3日現在確認できる法令・公表資料等に基づいています。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry

error: Content is protected !!