概要

 源泉徴収制度とは、①給料や報酬などの支払をする者(源泉徴収義務者)が、②給料などを支払う際、その給料の金額などに応じて定められている所得税の額を計算し、③その所得税額を差し引いて(源泉徴収)、一定の期日までにその源泉徴収した所得税を国に納付する制度をいいます。

 源泉徴収すべきものには何があるのかわからない中小企業の方は多いでしょう。まれに、外注先の人が各自確定申告するので、うちの方では源泉徴収しなくてもよいと思っている中小企業の経営者や経理担当者がいますが、そんなことはありません。

 支払先が確定申告しているか、会社として源泉徴収すべきかは別問題です。 

中小企業でよくある源泉徴収しなくてはいけないもの

 次のようなものは、中小企業でよくある源泉徴収しなくてはいけないものなので注意をして下さい。

源泉徴収の対象とされている所得の種類と範囲源泉徴収税率等
給与等俸給、給料、賃金、歳費、賞与、その他これらの性質を有する給与(所法28、183)給与所得の源泉徴収税額表等による(所法185、186、190)
退職
手当等
①退職手当、一時恩給その他これらの性質を有するもの、②社会保険制度等に基づく一時金など(所法30、31、199、措法29の4)「退職所得の受給に関する申告書」
有…退職所得控除額控除後の2分の1に対して税率適用(所法201①)
無…20.42%(所法201③)
報酬
料金等(個人に対するもの)
 次に掲げる報酬・料金、契約金、賞金等(所法204、所令320②、措法41の20)
⑴ 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士、経営コンサルタント等の報酬・料金
⑵ 原稿料、デザイン料、講演料、放送謝金、工業所有権等の使用料、技芸・スポーツ・知識等の教授・指導科など
⑶ モデル、外交員、集金人等の報酬・料金
⑷ 芸能、ラジオ放送及びテレビジョン放送の出演、演出等の報酬・料金並びに芸能人の役務提供事業を行う者が支払を受けるその役務の提供に関する報酬・料金
10.21%・20.42%
(所法205)
(注)控除額が定められているものもある。

報酬・料金等の支払を受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲

 所得税法204条1項の規定を見ると、「居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。」となっており、「居住者に対し」となっています。

 そして、「居住者」とは「個人」を指しており、「法人」は含まれません(所法2①三)。

令和4年版 源泉徴収のあらまし(報酬・料金等の源泉徴収事務)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2021/pdf/07.pdf

コンサルタントへの報酬

 源泉徴収が必要なのは経営コンサルタント(個人)への報酬であるため、経営に関係しないコンサルタントへの報酬は、源泉徴収する必要がありません。

〇所得税基本通達204-15(企業診断員の範囲)
 令第320条第2項に規定する企業診断員には、中小企業支援法に基づく中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則により登録された中小企業診断士だけでなく、直接企業の求めに応じ、その企業の状況について調査及び診断を行い、又は企業経営の改善及び向上のための指導を行う者、例えば、経営士、経営コンサルタント、労務管理士等と称するような者も含まれる。

源泉所得税の納期の特例との関係 

 給与、賞与、退職手当、税理士報酬などいわゆる士業とよばれるものに対する報酬(所法204①二)については、源泉徴収税額の納期の特例が認められています。

 納付書は「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納期の特例用)」となっています。

 ただし、それら以外のもの(つまり、税理士等の報酬以外の報酬)については、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出していても、納期の特例の対象とはならないため、支払った月の翌月10日までに納めなければなりません。

 なお、納付書も「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」ではなく「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」に記載して納付をします。