クラウド会計対応 月額5,500円からの顧問料 東京都豊島区池袋の格安顧問料の税理士です

1年で2回の納付ですむ「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」とは

1年で2回の納付ですむ「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」とは

源泉所得税を年2回にまとめて納付できる制度

 給与などから源泉徴収した所得税等は、原則としてその給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。

 しかし、毎月源泉所得税を納付することは、小規模な会社にとって事務負担となります。

 そこで、給与等の支払を受ける者が常時10人未満である源泉徴収義務者については、税務署長の承認を受けることにより、一定の源泉所得税等を半年分まとめて納付できる「納期の特例」が設けられています(所法216、217)。

 納期の特例の適用を受けると、納付期限は次のようになります。

支払期間納付期限
1月から6月まで7月10日
7月から12月まで翌年1月20日

 納期の特例を利用すれば、対象となる源泉所得税について原則年12回の納付を年2回に減らすことができます。

 ※本稿は令和8年8月24日現在の法令・通達・国税庁公表資料等に基づいています。

「常時10人未満」とは

 納期の特例を利用できるのは、給与等の支払を受ける者が「常時10人未満」の源泉徴収義務者です(所法216)。

 ここでいう「常時10人未満」とは、一時点の人数だけで判断するのではなく、給与等の支払を受ける者の数が平常の状態において10人未満であるかどうかによって判定します(所基通216-1)。

 例えば、繁忙期に臨時の従業員を雇ったため一時的に10人以上になっても、通常は10人未満である場合には「常時10人未満」とされます。

 一方、建設業者のように日々労務者を雇い入れることが通常の状態となっており、それらを含めると平常10人以上となる場合には、常勤者だけが10人未満でも「常時10人未満」には該当しません(所基通216-1)。

 また、平常の状態で給与の支払を受けているのであれば、正社員だけでなく、役員、パート、アルバイトなども人数の判定対象となります。

納期の特例を利用するには申請が必要

 納期の特例は、給与の支給人員が10人未満だから自動的に適用される制度ではありません。

 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を、給与等の支払事務を取り扱う事務所等の所在地を所轄する税務署長へ提出する必要があります(所法217)。

 申請書を提出する時期について特別な期限はなく、要件を満たしていればいつでも提出できます。

申請書を提出しても、すぐに適用されるとは限らない

 納期の特例で特に間違いやすいのが、適用開始時期です。

 申請書を提出した月の翌月末日までに税務署長から承認又は却下の通知がない場合には、その翌月末日に承認があったものとみなされます(所法217)。

 所得税基本通達216-2では、納期の特例は、承認通知が到達した日又は承認があったものとみなされる日以後に法定納期限が到来する源泉所得税から適用するとされています(所基通216-2)。

2月に申請書を提出した場合

 例えば、2月中に申請書を提出し、税務署長から個別の承認通知がない場合を考えます。

給与支払月納付期限
2月支給分3月10日
3月~6月支給分7月10日

 2月に申請書を提出した場合、承認があったものとみなされるのは3月末日です。そのため、3月10日に法定納期限が到来する2月支給分には、原則として納期の特例はまだ適用されません。

 一方、3月支給分の通常の法定納期限は4月10日ですから、承認があったものとみなされる3月末日より後に法定納期限が到来し、納期の特例の対象となります(所基通216-2)。

 ただし、2月中に申請書を提出し、3月10日までに税務署長から承認通知が到達した場合には、2月支給分についても納期の特例の適用を受けることができます(所基通216-2)。

新設法人は最初の給与の納期限に注意

 新しく会社を設立した場合には、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を早めに提出しておくことをおすすめします。

 会社設立と同時に申請書を提出しても、設立直後に支払う給与について当然に納期の特例が適用されるわけではありません。

 例えば、9月に会社を設立して9月中に申請書を提出し、9月中に役員報酬や給与を支払った場合には、税務署長から10月10日までに承認通知が到達していない限り、9月支給分の源泉所得税等は原則として10月10日までに納付します。

 その後、承認があったものとみなされた場合には、10月から12月の対象分について翌年1月20日までに納付することになります。

どの源泉所得税が年2回になるのか

 納期の特例の対象となるのは、すべての源泉所得税ではありません。

 対象となるのは、給与、退職手当及び所得税法204条1項2号に規定する税理士、弁護士、司法書士等の一定の報酬に係る源泉所得税等です(所法216)。

 デザイン料、原稿料、講演料などについては、会社が納期の特例の承認を受けていても原則として支払月の翌月10日までに納付します。

 この対象範囲については、別記事「源泉所得税の納期の特例はどの報酬まで対象?税理士報酬は年2回、デザイン料は翌月10日」で詳しく解説しています。

e-Taxなら徴収高計算書の提出と納付ができる

 現在は、源泉所得税の納付についてe-Taxを利用することができます。

 e-Taxを利用すれば、自宅や会社から所得税徴収高計算書を作成・送信し、その後、ダイレクト納付やインターネットバンキング等によって納付することができます。

 現在は紙の納付書を税務署へ取りに行く方法だけでなく、e-Taxによる徴収高計算書の送信とキャッシュレス納付を利用することができます。

 もちろん、紙の「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を使用して、金融機関又は税務署の窓口で納付することも可能です。

納付税額が0円でも徴収高計算書は提出する

 年末調整による過納額の充当などにより、納付する源泉所得税額が0円となる場合があります。

 給与等の支給がある場合には、納付税額が0円であっても、その事績を記載した所得税徴収高計算書を提出します。

 e-Taxを利用する場合も、合計額を0円として徴収高計算書データを作成し、e-Taxへ送信する必要があります。

常時10人以上になったら届出が必要

 納期の特例の承認を受けた後、給与の支給人員が常時10人以上となり、特例の要件を満たさなくなった場合には、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出する必要があります(所法218)。

 人数が増えた後も、そのまま半年ごとの納付を続けないよう注意が必要です。

納期限を過ぎると不納付加算税等の問題が生じる

 源泉所得税等を法定納期限までに納付しなかった場合には、延滞税のほか、不納付加算税が問題となることがあります(通法60、67)。

 国税庁の「源泉所得税及び復興特別所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)」では、「正当な理由」があると認められる場合の取扱いが示されています。

経理担当者の退職や人手不足では「正当な理由」と認められなかった裁決

 令和2年10月13日裁決(大裁(諸)令2第17号)では、源泉所得税等を法定納期限までに納付できなかったことについて、経理担当者の突然の退職、その後の人手不足などが「正当な理由」に該当するかが争われました。

 審判所は、経理担当者の不在状態が継続して事務処理が間に合わなかったことなどは納税者の組織内部の事情であり、源泉徴収義務者として期限内に納付できるよう必要な措置を講じておくべきであったとして、「正当な理由」を認めませんでした(令和2年10月13日裁決・大裁(諸)令2第17号)。

 経理担当者が突然退職した、会社が人手不足だった、事務処理が間に合わなかったという事情だけで、不納付加算税を免れられるとは限りません。

1日遅れでも「正当な理由」と認められなかった裁判例

 東京地裁平成20年7月16日判決(税務訴訟資料258号134・順号10992)は、納期の特例の適用を受けていた源泉徴収義務者が、源泉所得税約547万円を法定納期限の翌日に納付した事案です。

 納税者は、業務が立て込んで銀行へ行けず、翌日の午前中に納付したなどと主張しましたが、東京地裁は、この事情は不納付加算税を課さない「正当な理由」には当たらないと判断しました。

 また、納期の特例によって半年分の源泉所得税が一度に法定納期限を迎え、その結果、不納付加算税額が大きくなることについても不合理ではないとしています(東京地裁平成20年7月16日判決・税務訴訟資料258号134・順号10992)。

納期の特例による納期限が「法定納期限」になる

 平成9年6月30日裁決(裁事53集106頁)では、納期の特例適用者に対する不納付加算税の計算が争われました。

 審判所は、所得税法216条は、通常の各月ごとの法定納期限に代えて、納期の特例による法定納期限を定めたものであると判断しています(平成9年6月30日裁決・裁事53集106頁)。

 なお、この裁決当時は7月から12月分の納期限が現在とは異なっていました。現在は7月から12月分の納期限は翌年1月20日です。

令和9年1月以後について

 令和9年1月1日以後に生ずる所得については、防衛特別所得税が創設され、復興特別所得税率が引き下げられます。

 ただし、防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%を合わせた付加税率は従来の2.1%と同じです。

 納期の特例の「常時10人未満」「年2回」「7月10日・翌年1月20日」という基本的な仕組みに変更はありません。

まとめ

 源泉所得税の納期の特例は、小規模な会社にとって源泉所得税等の納付事務を大幅に減らせる便利な制度です。

 申請書を提出しただけでその月から直ちに適用されるとは限らないこと、新設法人では最初の給与について通常どおり翌月10日納付になる場合があること、常時10人以上となった場合には届出が必要であることには注意が必要です。

 また、年2回の納付になることで1回当たりの納付税額が大きくなります。7月10日と翌年1月20日の納期限をあらかじめ管理し、余裕をもって納付することが重要です。

主な根拠法令・通達・公的資料

  • 所得税法216条~219条
  • 所得税基本通達216-1、216-2、219-1
  • 国税通則法10条、60条、67条
  • 国税庁タックスアンサーNo.2505「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」
  • 国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」
  • 国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
  • 国税庁のe-Taxに関する源泉所得税納付資料
  • 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし」

関連する裁決例・裁判例

  • 平成9年6月30日裁決(裁事53集106頁)
  • 東京地裁平成20年7月16日判決(税務訴訟資料258号134・順号10992)
  • 令和2年10月13日裁決(大裁(諸)令2第17号、TAINS F0-2-1069)

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry

error: Content is protected !!