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役員退職金が過大として否認される場合とは?同業類似法人と平均功績倍率法の判定基準

役員退職金が過大として否認される場合とは?同業類似法人と平均功績倍率法の判定基準

役員退職金は全額が損金になるとは限らない

 会社が役員に退職金(役員退職給与)を支給した場合、その全額が必ず法人税の計算上損金になるわけではありません。

 役員に対して支給する給与のうち「不相当に高額な部分」の金額は損金の額に算入されず、役員退職給与についてもこの規定が適用されます(法法34②)。

 通常の功績倍率法によって算定される役員退職給与は、法人税法上の業績連動給与には該当せず、法人税法34条1項の適用はありませんが、その金額が過大かどうかについて同条2項による判定を受けることになります(法基通9-2-27の3)。

 したがって、役員退職慰労金規程に基づいて計算し、株主総会で適法に決議して支給した役員退職金であっても、その全額が法人税法上当然に損金になるわけではありません。

「不相当に高額な部分」は何を基準に判断するのか

 役員退職給与が過大であるかどうかは、その役員が会社の業務に従事した期間、退職の事情、その会社と同種の事業を営み事業規模が類似する法人の役員退職給与の支給状況等に照らして判断されます(法令70二)。

 したがって、法人税法には、

「社長なら○円まで」

「売上高の○%まで」

「功績倍率○倍まで」

という一律の損金算入限度額は設けられていません。

 実際の税務調査や税務訴訟では、課税庁が同業類似法人を抽出し、その法人が支給した役員退職給与を基礎として、対象法人の役員退職給与の適正額を算定する方法が多く用いられています。

役員退職給与の適正額を計算する主な方法

 裁判例・裁決例で問題となってきた算定方法として、主に次の方法があります。

  • 平均功績倍率法
  • 最高功績倍率法
  • 1年当たり平均額法

 このうち、退職直前の月額報酬が役員の功績を適切に反映している通常のケースでは、平均功績倍率法が中心的な算定方法となっています。

平均功績倍率法とは

 平均功績倍率法は、同業類似法人が実際に支給した役員退職給与からそれぞれの功績倍率を算定し、その平均値を使用する方法です。

 功績倍率は、一般に次のように計算されます。

 功績倍率 = 役員退職給与額 ÷(最終月額報酬×役員在任年数)

 そして、対象法人における適正な役員退職給与額を、

 最終月額報酬 × 役員在任年数 × 同業類似法人の平均功績倍率

によって算定します。

 法人税基本通達も、功績倍率法について、役員の退職直前に支給した給与の額を基礎として、法人の業務に従事した期間及び役員の職責に応じた倍率を乗ずる方法と説明しています(法基通9-2-27の3)。

なぜ平均功績倍率法が基本とされるのか

 東京高裁平成25年7月18日判決(税資263号-137・順号12261)は、合理的に同業類似法人が抽出されている限り、平均功績倍率法は法人税法の趣旨に最も合致する合理的な方法であるとの考え方を示しています。

 平均値を使用することによって、同業類似法人間に通常存在する様々な差異や個々の特殊性が捨象され、平準化された数値を得ることができるためです。

 この事件では、同業類似法人3社から算定された平均功績倍率1.18が採用されました。

 したがって、現在の裁判例を前提とすれば、合理的に同業類似法人が抽出できる場合には、平均功績倍率法が役員退職給与の適正額を判断する中心的な方法になると考えられます(東京高裁平成25年7月18日判決・税資263号-137・順号12261)。

同業類似法人はどのように選定されるのか

 平均功績倍率法で重要になるのが、どの法人を「同業類似法人」として比較するかです。

 法人税法施行令70条2号は、「同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するもの」の役員退職給与の支給状況等を考慮することとしていますが、具体的な抽出方法までは定めていません。

 裁判例では、業種、売上高等による事業規模、地域、退職役員の役職・退職事情などを組み合わせて比較法人が抽出されています。

 事業規模については、対象法人の売上高の2分の1以上2倍以下の法人を抽出する、いわゆる「倍半基準」が用いられる例があります。

 ただし、これらの条件自体が法令上の絶対的な要件というわけではありません。

 重要なのは、対象法人と事業内容や事業規模等が合理的に類似する法人が、恣意性を排除した方法によって抽出されているかどうかです。

比較法人が3社しかなくても平均値が使われることがある

 平成19年11月15日裁決(裁事74集146頁)では、課税庁が当初4社を比較法人として抽出しました。

 しかし、そのうち1社については、資金繰りの関係から役員退職慰労金規程に定めた倍率より大幅に低い倍率によって退職給与を支給していたという特殊事情がありました。

 国税不服審判所は、この1社を比較対象から除外し、残る3社の功績倍率1.7、1.9、2.0の平均である1.9を採用しました。

 そして、比較法人は多いことが望ましいものの、3社しかないという理由だけで、その平均功績倍率による算定が合理性を欠くとはいえないと判断しています(平成19年11月15日裁決・裁事74集146頁)。

代表取締役や創業者だから高い倍率になるとは限らない

 平成19年11月15日裁決(裁事74集146頁)は、功績倍率について、代表取締役か取締役か、創業以来の役員であるかといった形式的な事情だけではなく、会社への実際の貢献度等の実質を考慮すべきであるとしています。

 また、他の裁判例・裁決例で高い功績倍率が採用されたというだけでは、その事件について合理的に算定された平均功績倍率1.9が不当に低いことにはならないと判断しています(平成19年11月15日裁決・裁事74集146頁)。

 したがって、

「創業社長だから3.0以上」

「代表取締役だから最低でも3.0」

といった基準が法人税法上存在するわけではありません。

代表取締役の功績倍率3.0は税務上の安全基準ではない

 役員退職慰労金規程では、代表取締役の功績倍率を3.0とする例が実務上広く参照されています。

 しかし、3.0という数値は、法人税法、法人税法施行令、法人税基本通達のいずれにも損金算入限度額として定められていません。

 東京地裁昭和55年5月26日判決(税資113号442頁・訟月26巻8号1452頁)では、課税庁が抽出した同業類似法人7社、退職役員13名の功績倍率について平均1.9、最高3.0という数値が問題となりました。

 この事件では、比較法人の選定基準に必ずしも十分でない面があったことなどから、課税庁は納税者に最も有利となる最高功績倍率3.0を使用して適正額を算定し、裁判所もその事案における算定方法を認めました。

 したがって、この判決から、

「代表取締役であれば3.0まで当然に損金になる」

という一般的なルールを導くことはできません。

 役員退職慰労金規程に3.0と定めることと、3.0で計算した退職給与全額が法人税法上損金になることは別問題です。

 代表取締役3.0を役員退職慰労金規程に定める考え方や具体的な規程のひな型については、関連記事「役員退職慰労金規程の作り方|代表取締役の功績倍率3.0と具体的なひな型」で詳しく解説しています。

完全に退職している場合、過大部分は役員本人の給与所得になるのか

 ここは、法人税と所得税を分けて考える必要があります。

 例えば、代表取締役が実際に会社を完全に退職し、1億円の役員退職金を受け取ったとします。

 その後の税務調査で、法人税法上相当と認められる退職給与額は6,000万円であり、残り4,000万円は「不相当に高額な部分」と判断されたとします。

 この場合、会社側では4,000万円を損金に算入することができません(法法34②)。

 しかし、会社側で4,000万円が損金不算入になったことだけを理由として、役員本人についてその4,000万円が退職所得から給与所得へ変更されるわけではありません。

 所得税法30条1項は、退職所得を「退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与」に係る所得としています。

 所得税基本通達30-1も、本来退職しなかったならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われる給与を退職手当等としています(所法30①、所基通30-1)。

 したがって、実際に役員が完全に退職しており、1億円全体がその退職に基因して支給された真正な退職手当等であれば、法人税上4,000万円が過大役員退職給与として損金不算入となったとしても、役員本人については原則として1億円全体が退職所得となります。

法人税の「損金算入限度額」と所得税の「所得区分」は別問題

 このような違いが生じるのは、法人税法と所得税法がそれぞれ異なる問題を判定しているためです。

 法人税法34条2項は、「会社が支給した役員給与のうち、法人税の所得計算上どこまで損金として認めるか」を規定しています。

 一方、所得税法30条1項は、「役員本人が受け取った金員が、退職所得に該当するか」を規定しています。

 そのため、

 会社側
 退職金1億円-適正額6,000万円=4,000万円損金不算入

となっても、

 役員本人側
 退職金1億円全体=原則として退職所得

という結果が生じることがあります。

 法人税上の損金不算入額と、個人の退職所得の金額が当然に一致するわけではありません。

分掌変更で「退職そのもの」が否定された場合とは違う

 一方、代表取締役から取締役会長になるなどの分掌変更の場合は、問題の性質が異なります。

 この場合には、そもそも、「実質的に退職したといえるか」が争われます。

 実質的退職が否定されれば、会社側では分掌変更時に支給した一時金について退職給与としての取扱いが否定される可能性があります。

 さらに役員本人側についても、そもそも退職により受けた給与とはいえないことから、退職所得ではなく給与所得とされる場合があります。

 平成29年7月14日裁決では、分掌変更後も役員が会社の経営上主要な地位を占めていたとして退職給与該当性が否定され、役員本人についても退職所得ではなく給与所得に該当すると判断されています(平成29年7月14日裁決・裁事108集)。

 したがって、

 完全退職+金額が過大

と、

 分掌変更+実質的退職を否定

は、明確に区別する必要があります。

 前者では、会社側で過大部分が損金不算入となっても、原則として役員本人の退職所得該当性には直接影響しません。

 後者では、退職そのものが否定されるため、役員本人についても退職所得課税が否定される可能性があります。

 分掌変更と実質的退職の判断については、関連記事「役員の分掌変更で退職金は損金になる?報酬50%減でも否認される『実質的退職』の判断基準」で詳しく解説しています。

退職時に支給されれば何でも退職所得になるわけではない

 ただし、実際に役員が完全退職しているからといって、退職時に支払われた金員のすべてが無条件に退職所得になるわけではありません。

 所得税基本通達30-1は、退職に際し又は退職後に使用者から支払われる給与であっても、その支払金額の計算基準等からみて、引き続き勤務している者に支払われる賞与等と同じ性質のものは退職手当等に該当しないとしています(所基通30-1)。

 したがって、法人税法上「過大」とされたという理由だけで給与所得になることはありませんが、支給された金員の実質が退職に基因するものではなく、別の賞与等である場合には、その所得区分を別途検討する必要があります。

会社には課税庁と同じ比較法人データがない

 役員退職給与の過大性判定には、実務上大きな問題があります。

 課税庁は、税務申告情報等を利用して同業類似法人を抽出し、その法人の役員退職給与、最終月額報酬、役員在任年数等を調査することができます。

 一方、役員退職金を支給しようとする通常の会社には、他社が誰にいくらの退職金を支給したのか、その役員の最終報酬月額がいくらだったのか、何年間役員を務めていたのかという詳細な情報は通常分かりません。

 つまり、会社が役員退職金を支給する時点では、後日の税務調査で課税庁が算定する平均功績倍率を正確に知ることは困難です。

一審は「平均功績倍率の1.5倍」を認めたが控訴審で覆された

 東京地裁平成29年10月13日判決では、課税庁が抽出した同業類似法人5社の平均功績倍率3.26について、納税者には課税庁と同様の厳密な同業類似法人調査を行うことを期待できないことなどが問題となりました。

 一審は、このような事情を考慮し、平均功績倍率3.26の1.5倍である4.89までを相当な退職給与と認めました。

 しかし、この判断は控訴審で変更されています。

 東京高裁平成30年4月25日判決(税資268号-44・順号13149)は、合理的に抽出された同業類似法人5社の平均功績倍率3.26をそのまま採用し、一審が認めた1.5倍の上乗せを否定しました。

 したがって、「会社には同業類似法人の情報がないため、課税庁が算定した平均功績倍率に一定の余裕を加えてよい」という税務上のルールはありません(東京高裁平成30年4月25日判決・税資268号-44・順号13149)。

平均値を超える比較法人が存在しても矛盾しない

 東京高裁平成30年4月25日判決で抽出された比較法人5社の功績倍率は、高い順に4.31、3.75、3.09、3.00、2.13で、その平均は3.26でした。

 ここで、「比較法人自身には3.26を超える倍率を使っている会社があるのに、なぜ対象法人には3.26までしか認められないのか」という疑問が生じます。

 しかし、同判決は、平均功績倍率法は、現在判断対象となっている法人の退職給与の相当性を判断するための方法であり、比較法人自身の退職給与が適正であると判断しているものではないとしています。

 ある比較法人自身について適正額を判定するのであれば、その法人を基準として改めて同業類似法人を抽出することになるため、抽出される法人も平均功績倍率も異なる可能性があります。

 したがって、比較法人の中に平均功績倍率を上回る法人があることだけで、平均功績倍率法の合理性が失われるわけではありません(東京高裁平成30年4月25日判決・税資268号-44・順号13149)。

最高功績倍率法が使われるのは例外的な場合

 最高功績倍率法は、同業類似法人の功績倍率の平均値ではなく、その中の最高値を使用して役員退職給与の適正額を算定する方法です。

 過去の裁判例には最高功績倍率法が使用されたものがありますが、現在の裁判例では、平均功績倍率法が基本的な方法と位置付けられています。

 東京高裁平成25年7月18日判決は、合理的に同業類似法人が抽出されている場合には平均功績倍率法によるのが合理的であり、最高功績倍率法を採用できるのは、平均功績倍率法によることが不相当となる特段の事情がある場合に限られるとの考え方を示しています(東京高裁平成25年7月18日判決・税資263号-137・順号12261)。

 したがって、納税者が平均功績倍率法と最高功績倍率法のうち、自らに有利な方法を自由に選択できるわけではありません。

退職直前の報酬が低額・0円の場合

 功績倍率法は、退職直前の月額報酬がその役員の会社に対する功績を適切に反映していることを通常の前提としています。

 そのため、退職直前の報酬が著しく低額又は0円であるなどの特段の事情がある場合には、最終月額報酬を機械的に使用する功績倍率法が合理的でないことがあります。

 昭和61年9月1日裁決(裁事32集231頁)は、最終報酬月額が役員の在職期間を通じた会社への貢献を適正に反映していないため低額となっている場合には、最終報酬月額を使用しない「1年当たり平均額法」の方が合理的であると判断しています(昭和61年9月1日裁決・裁事32集231頁)。

 ただし、1年当たり平均額法には同業類似法人の具体的な退職給与額や勤続年数のデータが必要であり、通常の会社が退職金の支給時に課税庁と同じ方法で正確に算定することは困難です。

 役員退職直前の報酬が低額又は0円の場合に会社側でどのように退職給与額を検討すべきかについては、関連記事「役員退職直前の報酬が低い・0円の場合の退職金|功績倍率法と1年当たり平均額法」で詳しく解説しています。

功労加算にも注意が必要

 役員退職慰労金規程では、通常の功績倍率によって計算した退職金に「特別功労金30%」などを加算する規定が置かれていることがあります。

 しかし、規程に功労加算の条項があるからといって、その加算額まで法人税法上当然に損金になるわけではありません。

 東京高裁平成30年4月25日判決は、合理的に同業類似法人が抽出されている場合、役員や会社に関する通常の個別事情は、原則として同業類似法人の退職給与の支給状況に反映されているものと考えています。

 その上で、それでも同業類似法人の支給状況として把握されたとはいい難いほどの極めて特殊な事情がある場合に、別途考慮すれば足りるとの考え方を示しています(東京高裁平成30年4月25日判決・税資268号-44・順号13149)。

 したがって、

「創業者だから30%加算」

「会社を発展させたから50%加算」

というように、規程だけを根拠として機械的に功労加算することには注意が必要です。

そもそも「退職給与」に該当するかは別の問題

 ここまで説明したのは、役員退職給与に該当することを前提として、「その金額が高すぎないか」という問題です。

 しかし、役員退職金では、それ以前に、「そもそもその役員が税務上退職したといえるのか」という別の問題があります。

 例えば、代表取締役から取締役会長へ肩書を変更し、役員報酬を50%以上減額していたとしても、その後も重要な経営判断等に関与している場合には、実質的に退職したとは認められないことがあります(法基通9-2-32)。

 この場合には、会社側の損金算入だけでなく、役員本人についても退職所得ではなく給与所得とされる可能性があります。

 分掌変更による役員退職給与と実質的退職の判断基準については、関連記事「役員の分掌変更で退職金は損金になる?報酬50%減でも否認される『実質的退職』の判断基準」で詳しく解説しています。

役員退職金を支給するときに残しておきたい資料

 高額な役員退職給与を支給する場合には、後日の税務調査に備えて、少なくとも次のような資料を残しておくことをお勧めします。

  • 役員退職慰労金規程
  • 株主総会議事録
  • 退任役員の就任年月日・退任年月日
  • 役員在任中の役位の変遷
  • 最終月額報酬及び過去の役員報酬の推移
  • 退任役員の具体的な功績を説明する資料
  • 売上高、利益、総資産等の会社規模を示す資料
  • 退任に至った事情を説明する資料
  • 役員退職給与の具体的な計算書
  • 支給時に参照した役員退職金に関する公刊資料等

 会社が課税庁と同じ同業類似法人のデータを入手することは困難ですが、少なくとも、

 「なぜこの金額を相当と判断したのか」

を支給した時点の資料によって説明できるようにしておくことが重要です。

役員退職慰労金規程を作れば安心というわけではない

 役員退職慰労金規程をあらかじめ作成し、代表取締役、専務取締役、常務取締役等について一定の功績倍率を定めておくことには意味があります。

 役員ごとに退職時になって恣意的に退職金額を決めることを防ぎ、会社として継続的な支給基準を設けることができるからです。

 しかし、役員退職慰労金規程は会社内部の支給基準です。

 法人税法上どこまで損金になるかは、法人税法34条2項及び法人税法施行令70条2号によって別途判定されます。

 したがって、「規程で代表取締役3.0と定めているから3.0まで損金になる」という考え方は適切ではありません。

 役員退職慰労金規程の作り方や、代表取締役3.0を規程上の基準倍率とする場合の注意点については、関連記事「役員退職慰労金規程の作り方|代表取締役の功績倍率3.0と具体的なひな型」で詳しく解説しています。

まとめ

 役員退職給与について、法人税法上「功績倍率3.0まで」「退職金○円まで」といった一律の安全基準はありません。

 役員の業務従事期間、退職の事情、その会社と同種の事業を営み事業規模が類似する法人の役員退職給与の支給状況等を踏まえて、個別に適正額が判断されます(法令70二)。

 そして、合理的に同業類似法人を抽出できる場合には、現在の裁判例では平均功績倍率法が中心的な算定方法となっています。

 一方、退職直前の報酬が著しく低額又は0円である場合には、最終月額報酬を前提とした功績倍率法が合理的でなくなり、1年当たり平均額法等が問題となることがあります。

 また、会社側が課税庁と同じ比較法人データを持っていないという問題はありますが、そのことだけを理由に平均功績倍率へ一定割合を上乗せできるものではありません。

 さらに、完全に退職している役員について退職金の一部が法人税法上過大とされた場合、会社側ではその過大部分が損金不算入となりますが、そのことだけを理由として役員本人の所得区分が退職所得から給与所得へ変更されるわけではありません。

 これに対し、分掌変更の場合に実質的退職そのものが否定されたときは、役員本人についても退職所得ではなく給与所得とされる可能性があります。

 したがって、役員退職金の税務では、

 ①そもそも「退職」といえるか

と、

 ②退職給与の金額が相当か

を分けて検討することが重要です。

 役員退職金を支給する場合には、役員退職慰労金規程による計算額をそのまま「税務上の損金算入限度額」と考えず、実際の退職時点において、その金額の相当性を改めて検討する必要があります。

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