概要

 政治連盟に支払った会費は、所得を生ずべき業務の遂行上直接必要な経費とは認められず、また、家事関連費であるとしても、その主たる部分が業務の遂行上必要であるともいえないため、必要経費に算入することはできません。

平成13年3月30日裁決(裁事61集129頁)判断要旨

 請求人は、連盟会費は業務の遂行上必要な経費である旨主張し、連盟会費の支出先である団体は、歯科医師会と密接な関係にある政治連盟に近いものであるが、請求人はそこから保険制度の改正等の情報を入手している旨答述する。
 当審判所の調査の結果によれば、歯科医師政治連盟とは、歯科医師会からは独立した団体で、日本歯科医師政治連盟の規約及びこれに準じて作成されたQ県歯科医師政治連盟規約に基づき、歯科医師の業権の確保とその発展を図るため、歯科医療に理解ある政党又は公職の候補者に対し、政治的後援活動を行うことを目的とする政治団体であるので、連盟会費は、政党又は公職の候補者の後援のためのものと認められる。
 そうすると、請求人が、連盟会費を支払うことにより、保険制度の改正等の情報の入手ができるとしても、その会費が所得を生ずべき業務の遂行上直接必要な経費とは認められず、仮に家事関連費であるとしても、その会費について、その主たる部分が業務の遂行上必要であるともいえないし、業務の遂行上直接必要な部分を明らかにすることもできないから、これを必要経費に算入することはできない。

東京地裁平成23年3月25日判決(税資261号-65(順号11655))判示要旨

 原告は、W医師会に加入する際にI医政連に入会することを拒否することはできないから、これに対する会費は、医師としての業務を遂行する上で実質的に避けることができない支出として、必要経費に算入されるべきである旨主張する。
 しかし、①I医政連は、W医師会の目的及び事業を達成するために必要な政治活動を行う政治団体であって、W医師会とは別個の団体であること、②豊島区の医師がW医師会やI医政連への加入を強制されていることはなく、W医師会に加入すればI医政連に加入したことになるものでもないこと、③現に、W医師会の会員であるがI医政連の会員ではない者も相当数いること、④I医政連から脱退することは自由であり、文書で届け出るだけでよいこと、⑤I医政連は、地方選挙や国政選挙に当たり推薦候補を決定して支持活動を行っているほか、議員の講演会や討論会を企画するなど、政治的な課題に関する研究を行っていること、⑥I医政連の会員が納入する会費は、上記⑤の活動の経費として使用されていることが認められる。
 そうすると、原告の上記主張は、W医師会に加入するに当たりI医政連への入会を拒否できないとするその前提において失当である上、I医政連の上記目的や活動内容に照らせば、I医政連がその会員の事業に直接影響を与える活動をしているものではなく、その会費が会員の事業に直接還元される活動に使われるものでもないのであり、I医政連の会費は、客観的に見て、原告の事業所得を生ずべき業務に関連する支出であるということはできず、当該業務の遂行上必要と認められる支出であるということもできないから、原告の事業所得の金額の計算上、I医政連の会費を必要経費に算入することはできないというべきである。