概要

 匿名組合契約は、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約束することによって、その効力を生じます(商法535)。

 匿名組合員は、利益の分配又は出資の返還以外には、匿名組合財産に対する何らの権利も有しません(商法538、542)。匿名組合員への利益の分配は、出資額に応ずるなど契約の定めによって行います。

 匿名組合財産は営業者に帰属しますので、その匿名組合契約に基づいて営まれる組合事業にかかる損益は、一旦、営業者に帰属します。そして、その後、契約の定めに従って匿名組合員に分配されます。

 法人税法上は、匿名組合の損益は、営業者及び匿名組合員に帰属することになります。よって、営業者は匿名組合員に分配する利益を損金とし、利益を分配された匿名組合員は益金とします(法基通14-1-3)。

出資

 匿名組合員の出資は、営業者の財産に属するとされていて(商法536①)、匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができます(商法536②)。

 例えば、匿名組合員であるX社が、Y匿名組合に1,000万円の出資金を支出した場合は、X社は以下のような経理処理をします。

出資金 1,000万円  現預金 1,000万円

損益の帰属時期

 匿名組合員である法人の場合、現実にその匿名組合営業で生じた利益の分配を受け又は損失の負担をしていない場合でも、その分配を受けるべき利益又は負担すべき損失の金額を、組合の計算期間の末日の属する匿名組合員である法人の事業年度の益金の額又は損金の額に算入します(法基通14-1-3)。

 匿名組合の決算期と匿名組合員である法人の決算期にズレ(同じ月でない)が生じる場合です。

 例えば、組合の決算月が12月で、匿名組合員である法人の決算月が3月だったとします。この場合、組合の×1年1月~×1年12月の損益を、匿名組合員である法人の×1年4月~×2年3月の事業年度に取り込みます。

損益の会計上・法人税法上の取り扱い

会計

 匿名組合員は、原則として、組合の貸借対照表及び損益計算書を純額法により経理処理をします。

 損益を取り込む際の経理処理は、出資金勘定を直接増減させる方法と、未収入金(または未払金)を計上する方法があります。下記の例は、未収入金(または未払金)を計上する方法です。

 雑損失 100万円   未払金 100万円

 未収入金 150万円  雑収入 150万円(源泉税については記載省略)

法人税法-損金不算入規定

 組合事業に係る重要な財産の処分もしくは譲受け又は組合事業に係る多額の借財に関する業務の執行の決定に関与し、かつ、当該業務のうち契約を締結するための交渉その他の重要な部分を自ら執行する組合員等以外の組合員を「特定組合員」といいます。匿名組合に出資しているほとんどの法人は、特定組合員に該当しています。

 法人が特定組合員に該当する場合で、かつ、組合債務を弁済する責任の限度が実質的に組合財産の価額とされている場合等、一定の場合には、その組合員に分配された「組合等損失額」のうち、その組合事業に係る出資の価額を基礎として計算した金額(調整出資等金額、措令39の31⑤)を超える部分の金額(組合等損失超過額。その組合事業が実質的に欠損とならないと見込まれる場合には、組合損失額)は、損金の額に算入されません(措法67の12①)。

 例えば、当期の分配された組合損失額が1,500万円、調整出資等金額が1,000万円の場合、損金不算入は500万円となります。

 ただし、この損金不算入とされた組合等損失超過額については、連続して確定申告書等を提出している場合、当該組合等損失超過合計額のうち当該事業年度の当該法人の組合事業等による利益の額として定める一定の金額に達するまでの金額は、損金の額に算入するとされています(措法67の12②)。確定申告書には、明細書(別表9(2))の添付が必要です。

 つまり、組合等損失超過額が生じて損金不算入となっても、その後、投資利益が分配された場合には、損金の額に算入(利益に充当)できるということになります。

 簡単に言うと、初期段階で、出資額以上の損失を計上させないようにするための規定といえます。

受取配当等の益金不算入の適用

 法人の匿名組合員が営業者から受け取る分配は、剰余金の分配ではなく、組合損益の分配です。よって、受取配当等の益金不算入の適用はありません。

消費税

 匿名組合事業に係る資産の譲渡等または課税仕入れ等は、営業者に帰属します。よって、匿名組合員が課税売上、課税仕入を計上しません。

任意組合との違い

匿名組合任意組合
根拠法商法民法
事業営業者の事業組合員の共同事業
出資営業者の財産組合員の共同財産
損失負担有限責任(出資額を限度)無限責任