概算取得費

 個人の方で、上場株式等の取得価額が不明の場合は、取得価額の確認方法がありますので、まず、それで確認してください。

 それでも、譲渡した株式等が相続したものであるとか、購入した時期が古いなどのため取得費が分からない場合には、同一銘柄の株式等ごとに、取得費の額を売却代金の5%相当額とすることが認められています。

 また、実際の取得費が売却代金の5%相当額を下回る場合にも、同様に認められます。

 同一銘柄の株式で不明なものと明らかなものがある場合には、部分的に概算取得費(5%)を適用することはできないため、全部について5%とするか、取得価額を合理的に算出し総平均法に準ずる方法により取得費の計算を行うことになります。

 まれに、法人の方でも株式の取得価額がわからないから概算取得費を適用したいという方がいますが、概算取得費については個人のみ適用できるので法人は適用できません。

 法人は個人と違って、帳簿管理がちゃんとできているという前提です。そうでないと、貸借対照表等が作成できません。

租税特別措置法関係通達37の10・37の11共-13(株式等の取得価額)

 株式等を譲渡した場合における事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費又は取得費に算入する金額は、所得税法第37条第1項《必要経費》、第38条第1項《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》、第48条《有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法》及び第61条《昭和27年12月31日以前に取得した資産の取得費等》の規定に基づいて計算した金額となるのであるが、譲渡をした同一銘柄の株式等について、当該株式等の譲渡による収入金額の100分の5に相当する金額を当該株式等の取得価額として事業所得の金額若しくは雑所得の金額を計算しているとき又は当該金額を譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費として計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。

概算取得費、実額取得費による更正の請求

 更正の請求の理由については、「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」(通法23①)と規定されており、税法の適用において選択を誤ったことはその理由に当たらないものと解されています。

 なお、当初申告では概算取得費により計算したが、実額取得費の方が高いことが証明された場合には、選択の誤りではなく、取得費の計算の誤りということとなりますので、実額取得費による更正の請求は可能であると考えられています。

 また、当初申告では実額取得費により計算したが、その後、概算取得費より実額取得費の方が低いことが判明した場合には、概算取得費による更正の請求はできるかについては以下の2つの説があります。

(1)当初申告自体は正しく行われているため、概算取得費による更正の請求は認められない(有力説)。
  実際、更正の請求が取下げとなったケースを聞いたことがあります。

(2)概算取得費と実額取得費とは選択の関係にあるものではないと考えられ、実額取得費の方が低いことが判明したときには、概算取得費による更正の請求は可能である。

株式の譲渡所得の計算上、同一銘柄で、取得価額が不明のものと明らかなものがある場合の概算取得費(5%)の適用の可否(所事例7401 税相版 誤りやすい事例集)

 同一銘柄で部分的に概算取得費(5%)を適用することはできないため、全部について5%とするか、取得価額を合理的に算出し、総平均法に準ずる方法によります。不明なものは5%、明らかなものは実際の取得価額をもとに総平均法に準ずる方法で取得費の計算をおこなうことはできません。

国税庁課税部資産課税課情報「株式譲渡益課税のあらましQ&A」(平成31年1月)問22「株式等の取得費と概算取得費(5%)との関係」より

 実際の取得価額を基に計算した株式等の取得費の金額(同一銘柄の株式等を2回以上にわたって取得している場合には、総平均法に準ずる方法により計算した金額)と概算取得費(譲渡価額の5%相当額)により計算した金額とを比較して、いずれか高い方をその株式等の取得費とすることができる(措通37の10・37の11共-13)。
 なお、概算取得費を選択した場合であっても、その個々の株式等の実際の取得価額を譲渡価額の5%相当額に置き換えるものではないことに留意する。

(設例)
【取得】 取得時期 株数(株) 単位(円) 取得価額
     S47・10 10,000    50    500,000
     H12・10 1,000    600    600,000
      (計) 11,000         1,100,000

【譲渡】 譲渡時期 株数(株) 単位(円) 譲渡価額
     H30・1  11,000    3,000  33,000,000

(実際の取得価額を基に計算した取得費)
1,100,000円(取得価額の合計額)÷11,000株(取得株数の合計)=100円(単価)
@100円(単価)×11,000株(譲渡株数)=1,100,000円

(概算取得費)
33,000,000(譲渡価額)×5%=1,650,000円(@150円)

(説明)
 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、総平均法に準じて計算した金額(@100円)と譲渡価額の5%(@150円)とを比較していずれか高い方(@150円)を取得費とすることができる。

株式等の譲渡に係る取得費(実額)を収入金額の5%とすることを求める更正の請求の可否-大阪国税局 資産課税課「資産税関係質疑応答事例集」(平成23年6月24日)

(質疑事項)
 甲は、株式等の譲渡所得の金額の計算上、収入金額の5%に相当する金額に満たない金額(実額)を取得費として申告していた。
 この場合、甲は収入金額の5%に相当する金額を取得費として更正の請求をすることができるか。

(回答)
 取得費を収入金額の5%に相当する金額とする更正の請求は認められない。

(理由)
1 租税特別措置法通達37の10-14(現行通達は「37の10・37の11共-13」)では、「・・・譲渡をした同一銘柄の株式等について、当該株式等の譲渡による収入金額の100分の5に相当する金額を当該株式等の取得価額として事業所得の金額若しくは雑所得の金額を計算しているとき又は当該金額を譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費として計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。」と定めている。
 この取扱いは、譲渡収入金額の5%相当額を取得価額として申告することとしてもこれを認めることを明らかにしたものであり、取得価額が明らかでないような場合に、課税当局において譲渡収入金額の5%相当額を取得費として認定するというものではない。

2 また、本件においては、株式等の譲渡所得の計算上収入金額から控除する取得費を実際の取得価額で計算していることから、国税通則法23条1項1号に規定する課税標準等若しくは税額等の誤りがあった場合に該当しない。

3 以上のことから、更正の請求において、株式等の譲渡所得の計算上控除する取得費を収入金額の5%に相当する金額とすることは認められない。

日本税理士会連合会機関紙「税理士界」1365号/平成30年-事例10

【譲渡所得の計算において概算取得費の適用を失念したため過大納付となった事例】東京海上日動火災保険株式会社

<事故概要>
 譲渡所得の計算において、収入金額から控除する取得費については、譲渡した資産を実際に取得するために要した金額ではなく、収入金額の5%相当額(以下「概算取得費」)とすることができる。
 譲渡所得の計算において、税理士は概算取得費の方が有利であったにもかかわらず、その適用を失念し、結果として過大納付所得税等が発生したことから、依頼者より損害賠償請求を受けた。

<コメント>
 税理士は誤りに気付き、すぐに所轄税務署に更正の請求を行ったが、更正事由に該当しないことから更正の請求は認められなかった。本件は、税理士が概算取得費の適用を失念したことが原因で過大納付税額が発生したことから、税理士に責任があると判断された。

上場株式の名義書換日を取得時期とし、その時期の相場(終値)によって算定することも合理的な取得費の推定方法であると判断された事例-令和元年11月28日裁決(裁事117集)(一部取消し)

(1)事案の概要

 本件は、原処分庁が、申告漏れとなっていた審査請求人X保有の一般口座内株式について概算取得費を用いて上場株式等の譲渡所得の金額を計算して、所得税等の更正処分等を行ったことから、Xがその処分の取消しを求めた事案である(その他、修正申告において、源泉徴収選択口座で生じた上場株式等の譲渡損失の金額等を新たに計上できるか否か等の争いがあるが省略)。

(2)裁決要旨(一部取消し)

① 株式等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上、取得費に算入する金額は、金銭の払込みにより取得した株式等や購入した株式等については、その払込みをした金銭の額(取得のために要した費用を含む。)又はその購入の代価(購入手数料等を含む。)であるが、2回以上にわたって同一銘柄の株式等を取得している場合には、所得税法施行令105条1項1号に掲げる総平均法に準ずる方法によって算出した1単位当たりの金額に、譲渡した株数を乗じて計算した金額となる。
 そして、本件通達規定(租税特別措置法《株式等に係る譲渡所得等関係》の取扱いについて37の10・37の11共-13)は、納税者が、株式等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額に関し、譲渡をした同一銘柄の株式等について、概算取得費を当該株式等に係る譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費として計算しているときは、これを認めて差し支えない旨定めていることからすれば、当該規定は、取得費の額について、納税者の利便性も考慮し、納税者の利益に反しない限り、簡便な計算方法によることを認める趣旨であり、当審判所においても相当と認められる。
 そうすると、原処分庁が課税処分を行うに当たって、Xに対する調査を含め、その調査を尽くしても取得時期及び取得価額が明らかにならない場合及び概算取得費を取得費の額とすることが納税者の利益と認められる場合において、概算取得費を用いることも相当である。

② 上記の総平均法に準ずる方法による株式等の取得費の算定に当たっては、当該株式等の取得価額が必要であるところ、これらの事項は、取引証券会社から交付される取引報告書や顧客勘定元帳などにより確認することが可能であり、これらによっても取得価額が明らかでない場合には、株式等の名義書換日を調べて取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、明確かつ簡便な推定方法として合理的であると解される。
 本件においては、本件各株式の取得価額について、これらを直接的に立証する客観的な証拠資料等が確認できないところ、上記同様、本件各株式についてその名義書換日を調べて取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、合理性を有する取得価額の把握方法であると解される。
 そして、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件各株式は本件被相続人が有償取得したものと推認され、また、本件各株式について、本件被相続人に係る顧客勘定元帳及び有価証券明細簿並びに本件各株式の名義書換代理人からの回答等を検討したところ、本件各株式のうち、J社、K社、L社、M社、N社、P社、Q社及びR社の各株式の名義書換日やその日の終値等の状況は、別表の「年月日」、「取引区分等」、「増加株数」、「減少株数」、「残株数」及び「備考」の各欄のとおりであった(以下、名義書換日が判明した銘柄の株式を「本件各判明分株式」という。)。なお、本件各株式のうち、S社、T社及びU社については、いずれも最初の名義書換日が判明しなかった。
 以上を前提とすれば、本件各判明分株式については、有償取得されたことを前提に、名義書換日の相場(終値)で取得価額を算定することも明確かつ簡便な推定方法として合理性を有する取得価額の把握方法であると解されることから、本件各判明分株式の取得費については、概算取得費によらず、総平均法に準ずる方法により算定することが相当である。

③ もっとも、本件各判明分株式のうち、P社及びQ社の各株式の取得費については、概算取得費により算定した金額が総平均法に準ずる方法により算定した金額を上回るため、概算取得費により算定するのが相当である。また、本件各株式のうち、S社、T社及びU社については、最初の名義書換日が判明しなかったのであるから、その取得費についても、概算取得費により算定するのが相当である。

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