概要

 合同会社の定款には絶対に記載しなければならない事項があります。その事項を絶対的記載事項といいます(会社法576)。

 また、定款には絶対的記載事項の他にも、相対的記載事項や任意的記載事項を記載することができます(会社法577)。

 相対的記載事項とは、法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項のことをいいます。定款自治の範囲が広い合同会社にとっては重要な事項となります。

 また、任意的記載事項とは、その他の事項で法律の規定に違反しないもので任意に記載できる事項のことをいいます。

絶対的記載事項

 絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項のことをいいます。これらが記載されていない場合は定款自体が無効となり、設立登記の申請をしても却下されます。

 なお、合同会社における絶対的記載事項は、(1)目的、(2)商号、(3)本店の所在地、(4)社員の氏名又は名称及び住所、(5)社員全員が有限責任社員である旨、(6)社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準、の6つとなっています。

相対的記載事項

 相対的記載事項とは、定款に記載しなければ効力を持たないこととされている事項のことをいいます。定款に記載しなくても定款全体の有効性には影響しませんが、定款自治の範囲が広い合同会社にとっては、重要な事項となります。

 「定款で別段の定めをすることを妨げない」、「定款に別段の定めがある場合を除き」といった表現が、会社法ではいくつも出てきます。定款に別段の定めがない場合は、会社法の原則規定どおりになり、定款に別段の定めがある場合は、定款のどおりになるということです。

 そのため、会社法の原則規定とは違うように業務を運営したいと思うならば、必ず定款に記載をしてください。会社設立後に定款変更をすることももちろん可能なのですが、原則として総社員の同意が必要です(後述しますが、別段の定めをすることができます)。

 そのため、社員が複数いる場合には、定款変更で不利益を受ける社員がいる場合には反対されて定款変更をすることが難しいでしょう。そのため、合同会社の場合、設立段階で定款の相対的記載事項には注意をする必要があります。

 主な相対的記載事項としては以下のようなものがあり、必要と思うものを定款に盛り込むとよいでしょう。

持分の譲渡(会社法585)

(1)社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができません。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

(2)業務を執行しない社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができます。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

(3)業務を執行しない社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができます。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

業務の執行(会社法590)

(1)社員は業務を執行します。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

(2)社員が2人以上ある場合には、業務は社員の過半数をもって決定します。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

業務を執行する社員を定款で定めた場合(会社法591)

(1)業務を執行する社員を定款で定めた場合において、業務を執行する社員が2人以上いる場合は、業務は、業務を執行する社員の過半数をもって決定します。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

(2)業務を執行する社員を定款で定めた場合においても、支配人の選任及び解任は、社員の過半数をもって決定します。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

(3)業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は、正当な事由がなければ、辞任することができません。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

(4)業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができます。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

社員の合同会社の業務及び財産状況に関する調査(会社法592)

 業務を執行する社員を定款で定めた場合には、各社員は、業務を執行する権利を有しないときであっても、その業務及び財産の状況を調査することができます。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

 なお、定款によっても、社員が事業年度の終了時又は重要な事由があるときに調査をすることを制限する旨を定めることはできません。

業務を執行する社員と合同会社との関係(会社法593)

(1)業務を執行する社員は、合同会社又は他の社員の請求があるときは、いつでもその職務の執行の状況を報告し、その職務が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならないとされています。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

(2)民法646条(受任者による受取物の引渡し等)、647条(受任者の金銭の消費についての責任)、648条(受任者の報酬)、648条の2(成果等に対する報酬)、649条(受任者による費用の前払請求)、650条(受任者による費用等の償還請求等)の規定は、業務を執行する社員と合同会社との関係について準用します。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

競業の禁止(会社法594)

 業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならないことになっています。ただし、定款で別段の定めをすることができます。
1.自己又は第三者のために合同会社の事業の部類に属する取引をすること。
2.合同会社の事業と同種の事業を目的とする会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

利益相反取引の制限(会社法595)

 業務を執行する社員は、次に掲げる場合には、当該取引について当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならないことになっています。ただし、定款で別段の定めをすることができます。
1.業務を執行する社員が自己又は第三者のために合同会社と取引をしようとするとき。
2.合同会社が業務を執行する社員の債務を保証すること、その他社員でない者との間において合同会社と当該社員との利益が相反する取引をしようとするとき。

合同会社の代表(会社法599)

 合同会社は、定款又は定款の定めに基づく(業務を執行する)社員の互選によって、業務を執行する社員の中から合同会社を代表する社員を定めることができます。

任意退社(会社法606)

 合同会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間合同会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができます。この場合においては、各社員は、6か月前までに合同会社に退社の予告をしなければならないことになっています。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

法定退社(会社法607)

(1)社員は、定款で定めた事由の発生によって退社することができます。

(2)法定退社事由のうち、破産手続開始の決定、解散(合併による消滅及び破産手続開始の決定を除く)、後見開始の審判を受けたことによっては退社しない旨を定めることができます。

相続及び合併の場合の特則(会社法608)

 社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができます。

 定款にこの定めがない場合は、相続人その他の一般承継人は持分を承継することができず社員となることができません。そのため、社員1名の合同会社で社員が死亡した場合、「社員が欠けたこと」になるため、合同会社は解散することになります。

計算書類の閲覧等(会社法618)

 合同会社の社員は、会社の営業時間内は、いつでも、計算書類の閲覧等の請求をすることができます。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

 なお、定款によっても、社員が事業年度の終了時に計算書類の閲覧等の請求をすることを制限する旨を定めることはできません。

利益の配当(会社法621)

 利益の配当を請求する方法その他の利益の配当に関する事項を定款で定めることができます。

社員の損益分配の割合(会社法622)

 損益分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定まります。そのため、損益分配の割合を出資の割合と異なる割合にする場合には、定款で定める必要があります。

出資の払戻し(会社法624)

 出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができます。

定款の変更(会社法637)

 定款の変更には総社員の同意が必要です。ただし、定款でこれとは異なる別段の定めをすることができます。

解散の事由(会社法641)

(1)定款で定めた存続期間の満了によって解散します。

(2)定款で定めた解散の事由の発生によって解散します。

清算人の就任(会社法647)

 業務を執行する社員、社員だけでなく定款で定める者も清算人となることができます。

清算人の解任(会社法648)

 清算人(会社法647条2項から4項までの規定により裁判所が選任したものを除く)の解任は、社員の過半数をもって決定します。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

清算人の業務の執行(会社法650)

 清算人が2人以上ある場合には、清算合同会社の業務は、清算人の過半数をもって決定します。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

清算合同会社の代表(会社法655)

 清算合同会社は、定款又は定款の定めに基づく清算人(会社法647条2項から4項までの規定により裁判所が選任したものを除く)の互選によって、清算人の中から清算合同会社を代表する清算人を定めることができます。

残余財産の分配の割合(会社法666)

 残余財産の分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定まります。そのため、残余財産の分配の割合を出資の割合と異なる割合にする場合には、定款で定める必要があります。

清算合同会社の帳簿資料の保存(会社法672)

 清算人は、清算合同会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から10年間、清算合同会社の帳簿並びにその事業及び清算に関する重要な資料(帳簿資料)を保存しなければならないことになっています。ただし、定款で帳簿資料を保存する者を定めることができます。

合同会社の組織変更(会社法746、781)

 株式会社へ組織変更をする合同会社は、効力発生日の前日までに、組織変更計画について当該合同会社の総社員の同意を得なければならないことになっています。ただし、定款で別段の定めをすることができます。

会社の公告方法(会社法939)

 会社は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができます。なお、定款に定めがない場合は、「1.官報に掲載する方法」となります。
1.官報に掲載する方法
2.時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
3.電子公告

任意的記載事項

 任意的記載事項とは、絶対的記載事項や相対的記載事項以外の事項で、法律の規定に違反しないもので任意に記載できる事項のことをいいます。定款へ記載しなくとも定款自体の効力には影響せず、かつ、定款外においても定めることができる事項となります。

 具体的な任意的記載事項としては、事業年度、最初の事業年度、社長や、社員総会を開催する場合の規定などがあります。