概要

 会社の「本店」とは、営業上の主軸となる店舗のことをいい、その所在場所を「本店の所在地(所在場所)」といいます。要するに会社の住所ですが、「本店」の場所なので当然、1社につき1か所のみとなります。

 ただし、本店の所在場所として会社専用のビルや専用のオフィスを用意する必要はなく、例えば、代表の自宅を本店の所在場所としてもかまいません。

 会社を経営する上で、事業の業種によっては自宅兼事務所というのはあまり好ましいとはいえない場合もあるでしょう。しかし、無理をすることは禁物です。経営が軌道に乗るまでの当分の間、自宅を事務所にするというのもひとつの方法です。

居住用で借りている場所

 居住用で借りている賃貸マンションやアパートであっても会社の本店として登記をすることはできます。

 ただし、後々トラブルにならないように、その物件の所有者である大家や、物件を管理している管理会社などには「会社の本店としてよいかどうか」を登記申請前にあらかじめ確認してください。事業用は絶対に不可の場合もあるでしょうから。

バーチャルオフィスを借りる

 バーチャルオフィスを借りて、そこを本店所在地とする方も多いです。注意点としては、あまりにも金額が低額な所ですと、審査が甘く、詐欺行為をしているような会社にも貸している場合があります。取引先に、勘違いされる場合もありうるので、そのようなバーチャルオフィスは避けるべきです。

 また、会社名義でカーリースしようと思った場合、本店もしくは営業所登録されていない場所で車庫証明をとることはできません。よって、実際に仕事をしている場所からあまり離れた場所のバーチャルオフィスを借りると、不都合が生じます。

定款と登記

 定款の記載事項としての本店の所在地は、最小行政区画をもって表示すればよいことになっています。そのため、本店の所在地を定款で定める場合には、次の2とおりの方法があることになります。

(イ)「当会社は、本店を東京都港区に置く」「当会社は、本店を神奈川県横浜市に置く」というように、最小行政区画である市町村(東京都の特別区を含み、政令指定都市にあっては市)までを記載する方法

(ロ)「当会社は本店を東京都港区六本木九丁目2番3号に置く」や「当会社は本店を東京都港区六本木九丁目2番3号六本木マンション第111号室に置く」というように、具体的な本店所在場所まで記載する方法

 定款に記載する本店の所在地は、上記いずれの方法でもかまいません。

 (イ)のように定款で定めたときは、後で本店をその範囲内(例えば、東京都港区六本木から東京都港区西麻布に移転するような場合)で移転するのであれば、定款を変更する必要はありません。

 しかし、(ロ)のように定めると、本店移転のつど定款の変更が必要になることになります。ですから、社員の数が多いなど定款の変更手続きが大変な場合には、定款は(イ)のような記載をするのがよいでしょう。

 なお、登記申請書に記載すべき本店所在場所は、具体的な所在場所(例えば、東京都港区六本木九丁目2番3号)まで記載しなければなりません。そのため、定款(イ)のような記載事項であるならば、別に本店所在地決定書を作成する必要があります。定款への本店の所在地の記載は、下記のように行います。

[記載例1]
(本店の所在地)
第○条 当会社は、本店を東京都港区に置く。

[記載例2]
(本店の所在地)
第○条 当会社は本店を東京都港区六本木九丁目2番3号に置く。

[記載例3]
(本店の所在地)
第○条 当会社は本店を東京都港区六本木九丁目2番3号六本木マンション第111号室に置く。