持分

 株式会社の場合、出資者である株主が有する権利を株式といいますが、この株式会社の株式に相当するものを持分会社では持分といいます(完全に同じものであるわけではありません)。なお、持分会社における社員の持分には2つの意義があるとされています。

 「第1の意義は、社員たる地位それ自体、つまり社員がその資格において会社に対して有する各種の権利義務の基礎である、会社と社員との関係のことである(省略)。持分譲渡でいう持分とはこの意味である(省略)。第2の意義は、社員が会社財産に対して有する分け前を示す計算上の数値のことである(省略)。611条の退社員の持分の払戻しにおける持分とは、第2の意義である。この2つの意義は相互に関連性があり、第2の意義の持分は第1の意義の持分の経済的価値を表している」(会社法コンメンタール第14巻/神田秀樹(編)111頁より引用)

 合同会社では、社員の個性やつながりが重視されています。そのため、基本的には社員は持分の譲渡を自由に行うことはできません。したがって、原則として社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部または一部を他人に譲渡することができないことになっています。

 ただし、業務を執行している社員の変更は、会社に影響を及ぼす可能性が高く重要なことですが、業務を執行していない単なる社員の変更は、そこまでの影響はないと考えられます。また、社員の数が多数いる合同会社の場合、現実的に社員全員の承諾を得ることはかなり難しいといえます。そのため原則として、業務を執行しない社員に関しては、業務を執行する社員すべての承諾があるときは、その持分の全部または一部を他人に譲渡することができることになっています。

 つまり、合同会社の社員の持分の譲渡は、原則として以下のとおりとなります。

①業務を執行する社員は、他の社員の全員の承諾があるとき、持分を他人に譲渡することができる。
②業務を執行しない社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるとき、持分を他人に譲渡することができる。

 なお、合同会社において「社員の氏名又は名称及び住所」「社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準」は定款の絶対的記載事項のため、社員の持分の譲渡があるときには当然に定款の変更が生じることになります。定款の変更には、原則として社員全員の同意が必要なのですが、業務を執行しない社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、業務を執行する社員の全員の同意によって定款の変更ができることになっています。

定款による別段の定めで「強化」も「緩和」もできる

 ただし、上述の「持分の譲渡」の要件については、あくまでも原則的なことです。持分の譲渡に関する規律は会社の内部関係であるため、定款で別段の定めをすれば、上述と異なる要件にすることができます。

 例えば、業務を執行しない社員の「持分の譲渡」の要件についても、他の社員の全員の承諾があるときにできるようにすることができます。これにより、閉鎖的な会社にすることができます。なお、定款に記載する場合は、「社員及び出資」の章の中に記載するとよいでしょう。その記載例を下に示します。

(持分の譲渡)
第○条 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
 2  会社法第585条第2項及び第3項は、適用しない。

 逆に、「持分の譲渡」の要件について緩和することもできます。ただし、その場合は「定款の変更」の要件についても緩和する必要があるでしょう。

(持分の譲渡)
第○条 社員は、他の社員の過半数の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
 2  前項の規定にかかわらず、業務を執行しない社員は、業務を執行する社員の過半数の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。
 3  第○条(定款の変更)の規定にかかわらず、業務を執行しない社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の過半数の同意によってすることができる。

(定款の変更)
第○条 当会社が定款を変更するには、社員の過半数の同意を得なければならない。

持分を譲渡した社員の立場

 社員は、持分の全部または一部を他人に譲渡することができることになっているので、持分の「全部を譲渡した場合」と「一部を譲渡した場合」の2つのケースがあるということになります。これについては、以下のようになります。

 「持分の全部を譲渡した社員は、その譲渡後、持分会社の持分を失い、社員ではなくなるため、会社債権者との関係では、退社した場合と同様の立場に立つことになる」「持分の一部を譲渡した社員は、通常、その出資の価額が減少することとなる」(論点解説 新・会社法―千問の道標/相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔(編著)572、573頁より引用 )

会社による自己持分の譲り受けはできない

 合同会社では、株式会社における自己株式の取得をするようなことは認められていません。ようするに、合同会社それ自体が、持分を譲渡しようとする社員から持分の全部または一部を譲り受けることができないことになっています。もし、合同会社がやむをえずに、その合同会社の持分を取得した場合(合併による承継など)には、その持分は合同会社がこれを取得したときに消滅することとされています。

登記上の注意点

 持分の譲受によって新たな社員が加入する場合でも、会社に対する新たな出資はないため、資本金の額は変動しません。なお、業務執行社員が他の社員に持分の全部を譲渡した場合には、退社の登記が必要となります。また、持分の譲受によって新たに加入した社員が業務執行社員である場合には、業務執行社員の加入の登記が必要です。

税務上の注意点

 例えば、合同会社を設立する際に10万円を出資して社員となり、持分を取得したとします。その合同会社が毎年、利益を出し続け、10年後に会社が大きく成長していたとします。その時に、出資したのが10万円だからといって、10万円で持分を手放すようなことは普通しないでしょう。つまり、その時点での持分の価値(時価)が10万円を超えていることは明らかだからです。

 個人の社員が他の個人に出資の持分を譲渡した場合には、実際に売却など譲渡した金額と、出資の取得価額との差額に対して所得税が課されます。つまり、10万円の出資で手に入れた持分を、1000万円で売却した場合は990万円(1000万円-10万円)を基に所得税が課されるということになります。

 では、ある人が自分の持っている持分(時価1000万円、取得価額10万円)を10万円で息子に譲渡したとします。この場合、息子は時価1000万円のものを、10万円で手に入れたことになります。こういった著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合には、息子に贈与税が課されることになります。
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