概要

 株式会社では、法人が取締役や代表取締役になることはできません(会社法331①一)。

 一方、合同会社の場合、業務執行社員や代表社員には自然人だけではなく法人もなれます。ただし、法人が業務執行社員になるといっても、実際に業務を行うにあたっては、職務を行うべき自然人がいない状態は不可能です。

 そのため、法人が業務執行社員である場合には、その法人は職務を行うべき自然人(職務執行者)を選任します(会社法598)。そして、その選任した者の氏名及び住所を他の社員に通知する必要があります。なお、法人が代表社員である場合には、この職務執行者の氏名及び住所が登記事項となります。

 業務執行社員たる法人の職務執行者についても、他の業務執行社員と同様に、善管注意義務、忠実義務などの義務及び責任を当然に負うことになっています。職務執行者の資格には制限がないため、業務執行社員となる法人の役員や従業員でなくてもかまいません。したがって、その法人の顧問弁護士等でも問題ありません。

 また、職務執行者の選任は業務執行社員となるその法人の業務執行の決定機関が行うことになります(取扱通達・第4部 持分会社 第2 設立 81ページ)。一般的にその法人が株式会社で取締役会設置会社の場合は取締役会で、取締役会非設置会社の場合は取締役の過半数をもって選任することになります。その法人が持分会社である場合には、社員の過半数をもって選任することになります。

法人が業務執行社員、代表社員となる場合の税務上の役員給与の取扱い

 法人税法2条15号に規定する役員には、持分会社(合同会社)の社員である法人が含まれることとされています(法基通9-2-2)ので、法人税法上の役員に関する各規定も、法人社員についても適用されます。

 よって、合同会社において法人社員に支払う役員報酬(業務執行報酬)については、個人社員である役員の場合と同様に法人税法34条の規定が適用されることになるので、定期同額給与、事前確定届出給与又は業績連動給与(これは、まずない)のいずれかに該当しない場合には損金不算入とされます。また、不相当に高額な部分若しくは事実を隠蔽し、又は仮装して支給した部分とされる金額も損金不算入とされます。

 そして、合同会社の業務執行社員は、使用人兼務役員になることはできない(法法34⑥、法令71①三)こととされていますので、合同会社から法人社員に支払われる業務執行報酬は、その全額が役員給与として取り扱われることになります。

 なお、内国法人については、給与とされる所得について所得税の課税は行われない(所法7①四)ので、法人社員への業務執行報酬の支払については源泉徴収を要しません。

 また、給与といいながらも、その性格上、雇用契約に基づく労務提供ではなく法人社員が行う経営に対する役務提供に対する対価であると考えられるため、給与を支払う合同会社において、消費税法上、課税仕入として取り扱われるものと思われます(消法2①八②)。

 一方、業務執行報酬を受領する法人社員側においては、その受領する金額を益金の額に算入します。そして、その法人社員が職務執行者に給与等を支給するのが一般的となっています。