暗号資産(仮想通貨)の取引(儲け)だけで生活していければ事業所得とすることができます。そうでなければ、原則通り、雑所得となります。

 金融商品投資による副業(副収入)を考えている者は増えてきています。金融商品投資には、株式等の譲渡所得のように申告分離課税の対象になるものだけではなく、所得が総合課税に該当する金融商品もあり、代表的なものは暗号資産(仮想通貨)です。

「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和3年6月30日)」の「Q8 暗号資産取引の所得区分」で、以下のように記載されています。

(問) 暗号資産取引により生じた利益は、所得税法上の何所得に区分されますか。
(答) 暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得に区分されます。
 暗号資産取引により生じた損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、
・ その暗号資産取引自体が事業と認められる場合(注1)
・ その暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合(注2)
 を除き、雑所得に区分されます。
(注)1 「暗号資産取引自体が事業と認められる場合」とは、例えば、暗号資産取引の収入によって生計を立てていることが客観的に明らかである場合などが該当し、この場合は事業所得に区分されます。
2 「暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合」とは、例えば、事業所得者が、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として暗号資産を使用した場合が該当します。

 暗号資産取引の収入によって生計を立てていることが客観的に明らかである場合は事業所得になると記載されています。よって、暗号資産取引で損失が生じており、給与所得などと損益通算しているような場合は、事業所得と認められることは難しいと思えます。

 この辺のことについては、今後、暗号資産の取引により生じた利益が事業所得なのか雑所得なのか争われる事例がでてくれば、もう少し、明確になるでしょう。ただし、総合課税の対象となる金融商品投資による過去の事例で、ある程度のことは推測できます。

 過去の事例からいうと、金融商品のようなものは投機性が強く、「相当程度の期間継続して安定した収益を得る可能性が極めて低い」と判断される傾向にあり、また、実際に損失となっている場合には、そのことを納税者自身が証明してしまうことになり、事業所得と判断されるのは難しいといえます。

 なお、裁判例の中には、「事業所得」にあたるとされたものもあります。ただし、それは、納税者が事業所得であると主張したうえで「事業所得」にあたるとされたわけではありません。

 例えば、福井地裁昭和39年12月11日判決(昭和34年(行)第4号)、名古屋高裁昭和43年2月28日判決(昭和40年(行コ)第2号)及び最高裁昭和47年11月9日第一小法廷判決(税資66号940頁)では、原告、控訴人及び上告人は、先物取引ことに清算取引は、高度に臨時、偶発的かつ不規則的な性質を有するから、非営業者が先物取引を行って得た利益は、競輪、競馬の払戻金と同様に一時所得であると主張していました。

 また、静岡地裁昭和50年10月28日判決(月報21巻13号2803頁)、東京高裁昭和51年9月13日判決(昭和50年(行コ)第71号)及び最高裁昭和53年2月14日第三小法廷判決(税資97号173頁)では、原告、控訴人及び上告人は、商品取引所において商品仲買人を通じ、商品先物取引をなしていたが、元来、商品先物取引による利益(儲け)は所得税法上にいう事業所得に該当せず、所得税の納付義務がないと主張していました。

 以下では、金融商品投資による損失について、納税者が「事業所得」が該当し給与所得などと損益通算をして確定申告をしたが、「事業所得」にあたらないとされた事例等について取り上げます。

名古屋地裁昭和60年4月26日判決(行集36巻4号589頁)

(1)事実関係等

 会社役員である原告は、商品先物取引による損失を事業所得計算上の損失として、各年分の給与所得と損益通算をして昭和53年分、昭和54年分及び昭和55年分(以下「本件各年分」という。)の確定申告をしたが、被告税務署長は、原告のした商品先物取引による損失を雑所得計算上の損失であると認定し損益通算を否定する増額更正処分を行ったので、原告はその取消を求めた事案である。
原告は、本件各係争年分中において、S社(工業用ゴム製品卸売業、資本金1200万円、年間売上高約13億円、従業員約13名)及びT社(工業用ゴム製品製造業、資本金1600万円、年間売上高約6億円、従業員約40名)の代表取締役である。
 なお、原告の請求は棄却され、確定している。

(2)判決要旨

 原告が本件各係争年分において行った商品先物取引の回数、数量及び損失の額からすれば、この商品先物取引についての営利性、継続性はこれを肯定することができる。
 原告が本件係争年分中に行った商品取引のための資金は、原告の自己資金及びS社からの借入金(右借入をなすについては、S社のその他の役員の了承を得ることはなく、その返済期限の定めもなかつた。また、原告においても借入当時右借入金について明確な返済計画を有しているものではなかつた。)でまかなわれていたこと、原告は商品先物取引の売買委託会社の外務員の勧奨により商品先物取引を開始する以前においては商品先物取引に関する職業に関与したことはなかったこと、T社及びS社の勤務時間中にその業務の傍ら各取引先と電話連絡の方法で商品先物取引を行い、商品先物取引を行うための特別の人的、物的設備を有していないこと、及び商品先物取引を行うための情報は前記商品先物取引の売買委託会社等の取引先から入手するほかは、業界新聞や業界雑誌その他の専門書等によることなく、日本経済新聞等の一般の経済新聞によっていたことの各事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。
 以上の事実を要約すると、原告はそれまで商品先物取引に関する職業に関与したことはなかったが、昭和48年10月ころ、たまたま土地売却代金を得たことを契機として商品取引員の勧奨により商品先物取引を行うに至つたもので、商品先物取引を行うについて法229条による届出をすることなく、本件各係争年中においては、生活の資を得る業務を他に有し、右業務の傍ら商品先物取引を電話にて取引先に連絡する方法で行うにすぎず、その資金も自己が代表取締役である会社からの借入金により調達するもので、取引に必要な情報を入手するための特段の手段及び取引のための特段の人的、物的設備を講ずるものでもなかつたものということができる。
 更に、商品先物取引が、商品先物取引市場における相場の急激な変動を利用して売買差益を稼ごうとするものであることは公知の事実であるから、商品先物取引が極めて投機性が強いものであつて、相当程度の期間継続して安定した収益を得る可能性が極めて低いことは明らかである(現に、原告は商品先物取引を開始した昭和49年以来、右取引により連年多額の損失を繰返していることが認められるのであり、本件各係争年中に損失を生じたことは前記のところから明らかである。
 以上からすれば、原告が本件各係争年中に行った商品先物取引に営利性、継続性が存することは前記のとおりであるが、その余の諸要素すなわち、自己の危険と計算による企画遂行性の有無(原告が自己の危険と計算により本件係争年中に商品先物取引を行ったものであることは前記のところからこれを認めることができるが、その企画遂行力が高度のものであつたかについて多大の疑問を禁じ得ないところである。)、商品先物取引を行うのに費やした精神的、肉体的労力の程度(左程のものとは思われない。)、人的、物的設備の有無、資金調達方法(通常の経済取引としてされる他からの貸付金を資金とするものではない。)原告の職業、社会的地位、生活状況及び商品先物取引により相当程度の期間継続して安定した収益を得られる可能性が極めて低いことを総合すると、原告が本件係争年中に行った商品先物取引が令63条12号に該当するものということはできない。

神戸地裁平成4年10月28日判決(判タ814号146頁)

(1)事実関係等

 本件は、税理士である原告が商品先物取引(以下「本件取引」という。)によって受けた損失を事業による損失であるとして事業所得から控除して昭和60年分、昭和61年分及び昭和62年分(以下「本件各年分」という。)の確定申告をしたところ、所轄税務署長である被告が右取引は事業に当たらないとして更正処分等をしたので、原告がその取消しを求めた事案である。
 なお、原告の請求は棄却され、確定している。

(2)判決要旨

 原告は、本件各年分の3年間だけでも、相当多数回の商品先物取引を行い、その金額も相当多額にのぼっているから、本件取引が反復、継続して行われたものであることは否定できない。また、商品先物取引の売買委託会社の外交員に勧められて本件取引を始めたとはいえ、相場を読むためのチヤートを作成するなど工夫をし、自ら判断して取引をしていたのであるからある程度計画的に行われたという事情も窺うことができる。
 しかし、原告は、職業が税理士で、過去に商品先物取引に関する職業に関与したことはなく、商品先物取引に関する十分な知識を有していたわけではない。また、本件取引は原告の税理士事務所においてされたもので、その事務所にいるものは主に税理士業務に関する仕事に従事し、チヤートの作成に使用したパソコンも主に税理士業務に使用していたものであり、特別な物的、人的施設を有しているということはできない。さらに、原告が本件取引に関する工夫に当てた時間帯は税理士業務に差し支えない午前2時か3時ころで、税理士業務からの収入が本件取引開始後もそれ以前と比べて取り立てて減少していないことからして、原告は、相変わらず本業が税理士業で、その片手間に本件取引をしていたにすぎないと推認できる。その取引の資金についても、特別に調達手段を持たず、全て税理士業務で得た利益をつぎ込んでいるにすぎず、原告の生活も全て税理士業で得た収入を当てていて、さらに、本件取引が投機性の相当強い商品先物取引であることもあって、本件各年分の商品先物取引は全て相当な損失に終わり、(略)、本件取引は継続的に安定した収益を得られる可能性が極めて少ないものということができる。
 このように、原告は、税理士業を本業とし、これにより生計を維持し、この本業により安定した収入を確保しつつ、その傍ら、わずかな労力と時間により本件取引を行っていたものであり、継続かつ反復して行われた取引高も一般投資家の取引と特に異なる点はなく、また、多少窺える計画性も、熱心な一般投資家に認められる周到さと何ら変わるところはない。
 以上の事実を社会通念に照らして検討しても、本件取引が「対価を得て継続的に行う事業」に当たるということはできない。

東京地裁平成23年2月18日判決(税資261号-28(順号11618))

(1)事実関係等

 本件は、原告が、平成19年分の所得税につき、金融商品取引業者との外国為替証拠金取引による損失(総合課税の対象となるもの)が事業所得の金額の計算上生じた損失に該当するとして原告の給与所得の金額と損益通算した上で確定申告をしたところ、所轄税務署長から、同取引による所得は雑所得に該当し、同取引による損失は給与所得と損益通算することができないなどとする更正処分等を受けたことから、その処分の取消しを求めた事案である。

 原告は、液晶部品及び製品の販売及び輸出入等を業とするA社の代表取締役であり、また、スポーツ施設等の経営等を業とするB社の代表取締役であった者であり、A社、B社に、原告以外に核となるナンバー2の人物はいない。

 なお、原告の請求は棄却され控訴したが、控訴審(東京高裁平成23年7月27日判決・税資261号-132(順号11722))、上告審(最高裁平成24年1月27日決定・税資262号-17(順号11867))においてもそれぞれ棄却された。

(2)判決要旨

 本件FX取引についてみるに、①原告は、蓄財の方法を検討していたところ、FX取引であれば利益が得られるものと考え、平成15年8月又は9月頃にD証券に口座を開設し、その後、インターネットにより本件FX取引を行っていること、②原告は、スポーツ施設等の経営等を業とするB社の代表取締役であったところ、本件FX取引の多くは、同社の事務所において行われ、本件FX取引のために特別に人を雇用したり、物的設備を整えたこともなく、情報収集のために格別の経費を支出したり、調査のための特別な機構を持っているといった事情もうかがわれないこと、③本件FX取引の資金は、原告の自己資金又は自ら代表取締役を務めるB社からの借入金であり、特別な資金調達手段を有しているわけではないこと、④原告は、同社及びA社から役員報酬として1年間に合計3600万円を得て、そこから生活費を支出しており、本件FX取引による利益は、全て新たな取引の原資に充てられていること、⑤FX取引は、一定の証拠金を預託して、その数倍から数十倍の価値の外貨の売買を行う取引であり、大きな利益を期待することができる一方、多額の損失を被る可能性のある極めて投機性の高い取引であり、長期的に相当程度安定した収益を得る可能性は乏しいといわざるを得ないことなどからすると、本件FX取引は、社会通念に照らし、「対価を得て継続的に行う事業」であるとは認められないというべきである。
 原告は、比較的中長期の為替値動きのトレンドを分析して売買注文を建てていくことを基本としつつ、トレンドの確度によっては円以外の通貨間の取引を組み合わせてリスクヘッジするなどの調整を行うことを大きな方針としており、平成19年以外の年は安定した利益を確保しているから、本件FX取引は、不安定な投機的行為ではないと主張する。
 しかし、前記のとおり、FX取引は、その仕組み自体が極めて投機性の高い取引であり、他方、原告の主張する取引方針は具体性及び客観性に欠けるものであり、原告が前記のような取引方針に基づいてFX取引を行い、平成19年以外の年には損失が生じなかったとしても、そのことからFX取引の有する高度の投機性が低減し、当該取引により長期的に相当程度安定した収益を得ることが客観的に可能になるものといえるものではなく、原告の上記主張は採用することができない。