概要

 貸借対照表の提出がない又は期限後申告である場合には、55万円又は65万円の青色申告特別控除を適用することはできません。その場合に、適用される青色申告特別控除の金額は、10万円となります。

 55万円又は65万円の青色申告特別控除額を適用するには、申告書に正規の簿記の原則に従った記録に基づく貸借対照表、損益計算書を添付し、その控除を受ける旨を記載して確定申告書を法定申告期限内に提出しなければなりません(措法25の2③④⑥)。

55万円の青色申告特別控除

 55万円の控除を受けるための要件は、次のようになっています。

(1)不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること。

(2)これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。

(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに当該申告書を提出すること。

65万円の青色申告特別控除

 65万円の控除を受けるための要件は、次のようになっています。

(1)上記「55万円の青色申告特別控除」の要件に該当していること。

(2)次のいずれかに該当していること。
イ その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること。 
ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

電子帳簿保存を行っていること

 令和4年分以後の青色申告特別控除(65万円)の適用を受けるためには、その年分の事業における仕訳帳および総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付けおよび保存を行い、一定の事項を記載した届出書を提出期限内に提出する必要があります(措法25の2④、措通25の2-5、電帳法8④)。

 この場合は、青色申告書決算書を書面提出しても、65万円の青色申告特別控除を適用することができます。

〇 令和4年1月1日から、帳簿書類を電子データのままで保存する場合に必要な税務署長の事前承認が不要となりました。

令和3年6月24日裁決(広裁(所)令2第14号)(棄却)

(1)事案の概要

① 審査請求人Xは、原処分庁に対し、平成29年分及び平成30年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、青色の各確定申告書(以下「本件各確定申告書」という。)を、いずれも法定申告期限までに提出した。ただし、Xは、本件各確定申告書に貸借対照表を添付しなかった。

② Xが、平成29年分及び平成30年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額の計算上、租税特別措置法25条の2《青色申告特別控除》3項の規定を適用して青色申告特別控除の金額を65万円とする所得税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、同項の規定の適用はないとして、同条1項の規定を適用して更正処分等をしたのに対し、Xが、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2)裁決要旨(棄却)

① Xは、本件各確定申告書に貸借対照表を添付しなかったのであるから、措置法25条の2第5項の規定により、Xの本件各年分の不動産所得の金額又は事業所得の金額の計算上、同条3項の規定の適用はなく、Xに適用される青色申告特別控除の金額は、同条1項に規定する10万円となる。

② Xは、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーを利用して本件各確定申告書及び本件各年分の青色申告決算書を作成すれば、適切に確定申告が行えると確信していたが、貸借対照表の各金額を入力しないまま青色申告特別控除の金額を65万円と入力しても、エラー表示がないことに加え、貸借対照表を添付しなければ青色申告特別控除の金額は10万円となる旨の注意喚起もない本件作成コーナーに問題がある旨主張する。

③ しかしながら、申告納税制度の下においては、納税者自身が自己の判断と責任において、法令の規定に従って適正な申告をしなければならないもので、本件作成コーナーは、飽くまで行政サービスの一環として、納税者自身による確定申告書等の作成を補助するためのものにすぎない。よって、納税者が本件作成コーナーを利用する場合には、仮に、Xの主張するようなエラー表示や注意喚起が本件作成コーナーに表示されなかったがためにXが措置法25条の2第3項の規定の適用に必要な貸借対照表の添付を欠き、結果として同項の規定の適用を受けることができなかったとしても、それはXが甘受すべき結果というべきである。