キャバクラ

キャバ嬢・ホステスにとって、どう違ってくるのか?

 キャバ嬢等がお店から支払われるお金が給与所得であれば年末調整等で課税関係が終了しますが、事業所得の場合は、原則としてキャバ嬢等が自分自身で確定申告をする必要があるということになります(もちろん、申告業務を税理士に依頼することもできます)。
 なお、事業所得に該当する場合は、収入を稼ぐためにかかった経費は必要経費となります。一方、給与所得の場合、必要経費は利用できません。ただし、給与所得控除というものがあり、給与収入そのものに税金がかかるというわけではありません。
 コロナ禍における持続化給付金を得るため、今まで確定申告をしてこなかったキャバ嬢等があえて事業所得として確定申告をしたという最近の流れがありました。

お店側(キャバクラ店・クラブ)にとって、どう違ってくるのか?

(1)源泉所得税

 お店がキャバ嬢等に報酬(キャバ嬢等からすると事業所得)として支払うときは、源泉徴収すべき所得税等の額は、報酬の額から同一人に対し1回に支払われる金額について、5千円にその報酬の「計算期間の日数」を乗じて計算した金額を差し引いた残額に10.21%の税率を乗じて算出します。

(例) キャバ嬢の報酬の支払金額の計算の基礎期間4月1日から4月30日(30日間) 、 お店の営業日数24日間、キャバ嬢の出勤日数15日間、4月分の報酬60万円を支払う場合
 (60万円―15万円 ※ )×10.21%=4万5945円
 ※15万円=5千円×30日間
 よって、源泉徴収すべき所得税等の額は4万5945円になります。

 上記の「計算期間の日数」とは、「お店の営業日数( 24日間 )」又は「キャバ嬢等の出勤日数( 15日間 )」ではなく、報酬の支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までの全日数(30日間)となります。

 ホステス報酬源泉徴収事件として有名な最高裁(第三小法廷)平成22年3月2日判決(民集64巻2号420頁)では、「計算期間の日数」の考え方について、お店側が主張する「集計期間の全日数」と課税庁側が主張する「ホステスの実際の出勤日数」で争われましたが、 お店側の主張が認められ、その結果、現在の課税実務では上記の考え方がとられています。

 例えば、OLが6月にアルバイト感覚でキャバクラで5日間働き15万円の収入を得たとします。この場合、その収入が報酬であれば源泉徴収される所得税等は0円となります。しかし、それが報酬ではなく給与だった場合、乙欄により源泉徴収されるので、8700円が徴収されるということになります。
 つまり、税務署からすると、キャバ嬢等に対する支払いが報酬ではなく給与とした方が税金が取れるということになるため、お店に税務調査が入った場合は、給与であると否認してくる傾向にあります。
 なお、上記の最高裁の判例が出るまでは、水商売の課税の実務では、「計算期間の日数」については課税庁側が主張していた「ホステスの実際の出勤日数」が用いられることが多かったのです。例えば、5日間働き15万円の収入の場合、(15万円― 5千円×5日間 )×10.21%= 12762円が源泉徴収される所得税等となり、あえて、給与であると否認する旨味は税務署側になかったということです。

(2)消費税

  お店側がキャバ嬢等に報酬として支払うとき(キャバ嬢等からすると事業所得)は、その報酬等の支払をするお店側の消費税額等の計算上は、報酬を仕入税額控除の対象とすることができるということになります。一方、給与として支払った場合は、 お店側の消費税額等の計算上は、 仕入税額控除の対象にならないということになります。15万円が報酬であれば、仕入税額控除の対象となり、お店側の消費税の納税額が13636円減るということになります。一方、15万円が給与であれば、お店側の消費税の納税額に変化はありません。

 キャバ嬢等全体に対する年間の支払いが数億円、数千万円となるお店側にとって、無視できない実情があるということになります。なお、 キャバ嬢等が受領する報酬は事業所得に該当しますので所得税の確定申告をすることになりますが、当のキャバ嬢等が確定申告をしているかどうかは、課税仕入れの判定に何ら影響しません。

(3)まとめ

 お店側としては、上記の理由から、キャバ嬢等に対する支払いを給与ではなく報酬(キャバ嬢等からすると事業所得)としたがる傾向にあります。しかしながら、いざ、税務調査が入った場合は、お店側にとって厳しい結果がでているのが実情です。プロのホステスを主体としているのではなく、学生・OLがアルバイト感覚で働いているようなお店は要注意です。
 なお、下記に参考事例として、過去の裁決例・裁判例のポイントを記載しておきます。

裁決例・裁判例

(1)給与所得と判断されたホステス報酬-福岡地裁平成28年7月28日判決(税資266号-113(順号12891))、福岡高裁平成29年1月11日判決(税資267号-2(順号12951))

(1)福岡地裁(棄却)(控訴)
① 認定事実によれば、本件ホステスらの出勤日は各店舗のほかの従業員やホステスらとの間で調整して決められており、各自が自由に決めることができなかったこと、各店舗においては、始業前に朝礼への参加が義務付けられ、業務開始の準備、接客方法や接客態度等に関する詳細な決まりがあり、これらに基づいてホステスらに対し業務上の指導が行われることもあったことが認められる。これらの事実に照らせば、本件ホステスらは、原告(お店側)の業務上の指導の下で、接客等の業務を行っていたといえる。そして、ホステスらが顧客から受け取る金員は、原告の売上げとされ、ホステスらが受け取る金員は給与規定に基づき計算されたものに限られていたことからすると、本件支給金員は、ホステスらが提供する労務の対価であったといえる。
② 本件ホステスらの勤務時間は、タイムカード等によって管理されていなかったものの、出勤時間及び退勤時間は決まっており、これに違反した場合には罰金が科されていたこと、出勤日はホステスらの希望を踏まえて調整されていたものの、休むことができる日数には制限があった上、出勤が強制され、自由に休みを取ることができない場合があり、ホステスらが自由に決めることができなかった。このことからすると、本件ホステスらは、給与支給者である原告との間で、時間的な拘束を受けていたといえる。
③ 以上の事実に照らせば、本件支給金員は、原告とホステスらとの間で締結された、雇用契約又はこれに類する原因に基づき、使用者からの指揮命令に服したことの対価として受領していたものといえるから、本件支給金員は、給与所得に当たり、所得税法204条1項6号は適用されず、本件告知期間の源泉徴収に係る所得税額は、法185条1項に従って算定されることとなる。

(2)福岡高裁(棄却)(上告・上告受理申立て)
① 本件各店舗が接客付き飲食店であり、本件ホステスらの業務が個々の客を接客するものであることからすれば、本件ホステスらが、それぞれの顧客情報を管理していたからといって、直ちに本件ホステスらが自己の計算と危険において独立して事業を営んでいたことが根拠付けられるものではない。
② 本件各店舗のマニュアル等において、顧客名簿の作成を促す記載がみられることや、本件支給金員はホステスらの出欠、遅刻の有無、同伴の有無、同伴者の氏名等を記載した管理表等を用いて計算されているため、ホステスらにおいて、その正確性を確認するため、顧客名簿との照合をせざるを得ないことからすれば、本件ホステスらがそれぞれ顧客情報を管理しているからといって、このことのみから直ちに本件ホステスらが自己の計算と危険において独立して業務を行っているものということはできない。
③ 控訴人(お店側)は、本件ホステスらが風営法2条13項所定の接客業務受託営業を営む者であることを前提に縷々主張する。しかし、本件支給金員の所得区分を判断する上で、本件ホステスらが風営法にいう接客業務受託営業者に当たるか否かは全く関係がなく、控訴人の主張は失当である。なお、同項は雇用契約による場合も予定しているというべきであるから、同項の規定から直ちに本件支給金員が当然に請負契約又は委任契約に基づく報酬であると認めることはできない。

(2)事業所得に該当するものと給与所得に該当するものがいるとされた事例-平成26年7月1日裁決(東裁(諸)平26第1号)

① 一般に、給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない(最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決)。したがって、ある給付が給与等に当たるか否かについては、労務等の提供及び支払の具体的態様等を基に、客観的、実質的にみて上記の基準に該当するかどうかによって判断するのが相当である。
② 認定事実によれば、B及びCらは、出勤表や各タイムカードにより出勤日や入退店時間、従事時間、同伴、遅刻及び欠勤等を請求人(お店側)によって管理され、請求人の指揮命令に服して、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務を提供し、その対価として、日給又は時間給を基本とし、これに、各人が接客業務を行ったか否かに関係なく得意客の飲食代金に応じ決定された金額とホステスチャージ・同伴の実績等に応じ決定された金額が加算された金員を、月払により支給されていたものというべきである。そうすると、請求人が、B及びCらに支払った金員は、いずれも所得税法28条1項に規定する給与等に該当すると認められる。
③ Aについては、本件店舗において接客業務に従事していたことにつき、請求人との関係において空間的、時間的な拘束を受け、請求人の指揮命令に服していたとまではいえない上、Aに対する金員は、Aの客の売上げの50%相当額に当該客のほとんどの者が支払っていたホステスチャージ及び同伴料等が加算される支払体系であったこと、及び接客のために費用負担をしていたことが推認されることからすると、所得税法28条1項に規定する給与等には該当しないと認められる。

(3)キャストに支払った金員は給与等に該当するとした事例-平成30年1月11日裁決(裁事110集)

① 請求人(お店側)は、請求人が営むキャバクラ店において接客業務に従事する女性(キャスト)は請求人から時間的、空間的な拘束を受けておらず、営業で必要な費用(携帯電話代金等)を負担しているから、キャストへの支給額(本件支給額)は所得税法第27条《事業所得》第1項に規定する事業所得に該当する旨主張する。
② しかしながら、キャストは接客業務に従事するに当たり、請求人との間で、給与体系、勤務時間及び店舗規則などの勤務条件について合意していたこと、請求人はキャストの勤務時間又は接客時間を管理していたこと、キャストは指名客以外の客に対しても店長の指示により接客していたことが認められるから、キャストは入店から退店までの間は請求人の管理下にあったと認められ、請求人から空間的、時間的な拘束を受け、継続的又は断続的に労務又は役務の提供をしていたとみることができる。そして、キャストが営業のために必要な費用の一部を負担しているとの請求人の主張を考慮しても、本件支給額は接客時間等を基準に各種手当て及びペナルティの有無を勘案して算出されていること、採用後1、2か月間は一定の時給が保証されていること、キャストは客に対する売掛金を回収する責任を負っていなかったことからすれば、キャストは自己の計算と危険において独立して事業を営んでいたものとみることはできない。以上によれば、本件支給額は、キャストと請求人との雇用契約に基づき、請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価であるから、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与等に該当する。