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偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の要件と注意点|令和8年分の所得要件と特定親族特別控除

偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の要件と注意点|令和8年分の所得要件と特定親族特別控除

概要

 配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除は、家族の所得金額や年齢、納税者との生活関係によって適用の可否と控除額が変わります。令和8年分の所得税では、配偶者控除や扶養控除の対象となる人の合計所得金額の上限が62万円になります。

 この改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年分の所得税に適用されます。令和8年11月までの毎月の源泉徴収事務は改正前の取扱いですが、令和8年12月の年末調整では改正後の要件を確認します。令和8年中の所得に対応する個人住民税は、原則として令和9年度分です。

所得要件は年分によって異なる

 配偶者控除や扶養控除の対象となる配偶者・親族の合計所得金額の上限と、収入が給与だけの場合の目安は、次のとおりです。

所得税の年分合計所得金額の上限給与収入のみの場合
令和6年分まで48万円103万円
令和7年分58万円123万円
令和8年分62万円136万円

 令和8年分の「給与収入136万円以下」は、給与所得控除額74万円を前提とした金額です。この給与所得控除額による目安は令和8・9年分についてのものであり、給与以外の所得がある場合は収入額だけで判定できません(所法2①三十三・三十四、措法29の4)。

配偶者控除

適用を受けるための要件

 令和8年分の配偶者控除を受けるには、配偶者が民法上の配偶者であり、納税者と生計を一にし、その年の合計所得金額が62万円以下であることなどが必要です。内縁関係の人は対象になりません。また、青色申告者の事業専従者としてその年中に給与の支払を受けた人や、白色申告者の事業専従者は対象になりません(所法2①三十三・三十三の二、57、83)。

 控除を受ける納税者本人の合計所得金額は1,000万円以下である必要があります。本人の所得が1,000万円を超えて配偶者控除を受けられない場合でも、配偶者が「同一生計配偶者」に該当するかは別に判定します。障害者控除などを検討するときには、この区別が必要です(所法2①三十三・三十三の二、79、83)。

 「生計を一にする」ために、必ず同じ家に住んでいる必要はありません。勤務や療養などで別居していても、生活費を負担するなど、実際の生活関係から判断します(所基通2-47)。

控除額

 令和8年分の所得税の配偶者控除額は次のとおりです。括弧内は、令和9年度個人住民税の控除額です。老人控除対象配偶者は、原則として令和8年12月31日現在で70歳以上の控除対象配偶者をいいます(所法2①三十三の二・三十三の三、83)。

納税者本人の合計所得金額一般の控除対象配偶者老人控除対象配偶者
900万円以下38万円(33万円)48万円(38万円)
900万円超950万円以下26万円(22万円)32万円(26万円)
950万円超1,000万円以下13万円(11万円)16万円(13万円)
1,000万円超適用なし適用なし

配偶者特別控除

 令和8年分では、配偶者の合計所得金額が62万円を超えて配偶者控除を受けられなくても、133万円以下であれば配偶者特別控除の対象となる場合があります。民法上の配偶者であること、生計を一にしていること、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であることなどが必要です。夫婦が互いを対象として配偶者特別控除を受けることはできません(所法83の2)。

 次の表は令和8年分の所得税の控除額です。括弧内は令和9年度個人住民税の控除額を示します。住民税では、配偶者の所得が95万円を超え100万円以下の区分でも、直前の区分と同額です。

配偶者の合計所得金額本人900万円以下本人900万円超950万円以下本人950万円超1,000万円以下
62万円超95万円以下38万円(33万円)26万円(22万円)13万円(11万円)
95万円超100万円以下36万円(33万円)24万円(22万円)12万円(11万円)
100万円超105万円以下31万円(31万円)21万円(21万円)11万円(11万円)
105万円超110万円以下26万円(26万円)18万円(18万円)9万円(9万円)
110万円超115万円以下21万円(21万円)14万円(14万円)7万円(7万円)
115万円超120万円以下16万円(16万円)11万円(11万円)6万円(6万円)
120万円超125万円以下11万円(11万円)8万円(8万円)4万円(4万円)
125万円超130万円以下6万円(6万円)4万円(4万円)2万円(2万円)
130万円超133万円以下3万円(3万円)2万円(2万円)1万円(1万円)

 令和7年分は、最初の所得区分の下限が「58万円超」でした。令和8年分は「62万円超」になりますが、配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得上限133万円は変わりません(所法83の2)。

扶養控除

対象となる親族

 令和8年分の扶養控除は、原則として、その年の12月31日現在で16歳以上の扶養親族がいる場合に受けられます。扶養親族には、納税者と生計を一にする配偶者以外の6親等内の血族、3親等内の姻族などで、合計所得金額が62万円以下の人が該当します。青色・白色事業専従者についての制限もあります(所法2①三十四・三十四の二、57、84、85)。

 再婚相手の連れ子も、法律上の姻族関係にあり、所得や生計などの要件を満たせば対象になり得ます。16歳未満の子には所得税の扶養控除はありませんが、個人住民税の非課税判定や障害者控除などでは、扶養親族に該当するかを別途確認する場合があります(所法2①三十四、84)。

控除額

扶養親族の区分令和8年分の所得税令和9年度個人住民税
一般の控除対象扶養親族38万円33万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満)63万円45万円
老人扶養親族(70歳以上・同居老親等以外)48万円38万円
同居老親等58万円45万円

 特定扶養親族かどうかは、大学生であるかではなく、年齢、所得金額などの法定要件で判定します。年齢は原則としてその年の12月31日現在の現況によります(所法2①三十四の二~三十四の四、84、85)。

19歳以上23歳未満の親族に係る特定親族特別控除

 令和7年分から、特定親族特別控除が設けられました。令和8年分では、生計を一にする19歳以上23歳未満の親族等について、合計所得金額が62万円を超え123万円以下で、扶養控除の対象にならない場合などに適用を検討します。配偶者は対象にならず、事業専従者についても制限があります(所法84の2)。

特定親族の合計所得金額令和8年分の所得税令和9年度個人住民税
62万円超85万円以下63万円45万円
85万円超90万円以下61万円45万円
90万円超95万円以下51万円45万円
95万円超100万円以下41万円41万円
100万円超105万円以下31万円31万円
105万円超110万円以下21万円21万円
110万円超115万円以下11万円11万円
115万円超120万円以下6万円6万円
120万円超123万円以下3万円3万円

 例えば、令和8年中に20歳となる子の合計所得金額が80万円であれば、その子について扶養控除は受けられませんが、他の要件を満たす人は特定親族特別控除を受けられます。同じ親族について扶養控除と特定親族特別控除を重複して受けることや、複数の納税者が重複して控除を受けることはできません(所法84、84の2、85)。

合計所得金額の判定で注意すること

収入金額や課税所得金額とは異なる

 所得要件は、原則として「収入金額」ではなく「合計所得金額」で判定します。給与だけなら給与所得控除後の給与所得を計算し、事業所得や不動産所得もあれば、それぞれの所得金額を確認します。社会保険料控除、医療費控除、基礎控除などの所得控除を差し引く前の金額であることにも注意が必要です(所法2①三十)。

株式等の譲渡所得・退職所得

 申告分離課税の対象となる土地・建物等や株式等の譲渡所得、申告した上場株式等の配当所得なども、原則として合計所得金額の計算に関係します。申告不要を選択した源泉徴収ありの特定口座内の譲渡所得や、申告不要を選択できる配当所得は、原則として含めません。申告するかどうかで家族の控除に影響する場合があります(所法2①三十)。

 退職所得は、その退職金について確定申告が不要な場合でも、所得税の配偶者控除・扶養控除等に用いる合計所得金額に含まれます。退職金の受取年は、給与や年金だけで所得要件を判定しないようにします(所法2①三十)。

特別控除と損失の繰越控除

 青色申告特別控除の要件を満たす事業所得等は、その控除後の所得金額を基に判定します。一方、純損失・雑損失や一定の株式等の譲渡損失の繰越控除は、原則として繰越控除前の金額を基に合計所得金額を計算します。また、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除などについては、特別控除前の譲渡所得金額を確認する必要があります(所法2①三十、措法25の2、35)。

適用に当たっての注意点

青色・白色事業専従者

 青色申告者の事業専従者としてその年中に給与の支払を受けた人や、白色申告者の事業専従者は、所得が62万円以下でも配偶者控除・扶養控除の対象にはなりません。青色申告をしている事業者の家族というだけで、一律に対象外となるわけではありません(所法2①三十三・三十四、57)。

配偶者や扶養親族が年の途中で死亡した場合

 控除の対象となる配偶者や親族が年の途中で死亡した場合は、原則としてその死亡時の現況で判定します。死亡した人の所得要件は、その年の1月1日から死亡日までの合計所得金額で判定し、控除額を生存月数で按分しません(所法85)。

納税者本人が年の途中で死亡・出国した場合

 納税者本人が年の途中で死亡した場合や、所得税法上の一定の出国をした場合は、原則として死亡・出国時の現況で配偶者控除・扶養控除等を判定します。ただし、生存している配偶者や親族の所得要件は、その時点で見積もった、その年の1月1日から12月31日までの合計所得金額で判定します。納税者本人の所得は死亡・出国の日まで、対象となる生存親族の所得要件はその年の年間見積額という違いがあります(所法85、所基通85-1)。

 令和8年11月30日以前に令和8年分の死亡・出国に伴う準確定申告書を提出するときは、同年12月1日施行の改正後の控除等を提出時点では適用できません。施行後に改正による控除を受ける場合、法定申告期限が既に到来していれば更正の請求、まだ到来していなければ訂正申告を確認します。更正の請求について国税庁が案内する期間は、令和8年12月1日から令和13年12月1日までです。

死亡した納税者の配偶者が、別の納税者の扶養親族となる場合

 例えば、父が年の途中で死亡し、父の準確定申告では母について配偶者控除を受け、その後、母が子と生計を一にした場合を考えます。母が子の年末時点で控除対象扶養親族の要件を満たせば、父の死亡時に配偶者控除の対象になったことだけを理由に、子の扶養控除が否定されるわけではありません。それぞれの納税者について、異なる判定時点の要件を確認します(所法85、所基通83~84の2-1)。

兄弟が同じ親を扶養する場合

 兄弟がそれぞれ母に生活費を送っていても、同じ年の同じ母について二人が重複して扶養控除を受けることはできません。扶養控除等申告書や確定申告書等の記載と、所得税法施行令の所属に関する規定に従って整理します。所得の多い兄弟が常に優先するという取扱いではありません(所法85、所令219)。

長期入院と老人ホームへの入所

 同居していた父母等が治療のため入院した場合は、結果として入院が1年以上に及んでも、同居老親等として扱うことができます。一方、老人ホーム等に入所し、施設が居所となっている場合は、原則として同居老親等には当たりません。その場合でも、生計を一にするなどの要件を満たせば、同居老親等以外の老人扶養親族として扶養控除を受けられる場合があります(所法84、国税庁質疑応答事例「『同居』の範囲(長期間入院している場合)」)。

国外居住親族を扶養する場合

 令和5年分以後、30歳以上70歳未満の国外居住親族について扶養控除を受けるには、留学により国内に住所・居所を有しなくなった人、障害者、又はその年に納税者から生活費・教育費に充てるための支払を38万円以上受けた人のいずれかに該当する必要があります。16歳以上30歳未満又は70歳以上の国外居住親族とは、対象者の要件が異なります(所法2①三十四の二、84)。

 確定申告で国外居住親族の扶養控除を受けるには、原則として親族各人について親族関係書類と送金関係書類の添付又は提示が必要です。30歳以上70歳未満の留学による対象者には留学ビザ等書類、38万円以上の支払を要件とする対象者には、その人への年間支払額を示す38万円送金書類が必要です。外国語の書類には翻訳文も確認します(所法120③、所令262、所規47の2)。

 送金関係書類には、要件を満たす金融機関の書類やクレジットカード会社の書類のほか、令和6年分以後は一定の電子決済手段等取引業者の書類も含まれます。現金の受取書や納税者自身が書き込んだ出金記録だけで、法定の送金関係書類を満たすと考えないようにします。書類の形式と、親族各人への生活費・教育費の支払実態を確認します(所規47の2)。

税法上の扶養と健康保険の被扶養者

 配偶者控除・扶養控除を受けられるかどうかと、健康保険の被扶養者として認定されるかどうかは別の制度で判定します。令和8年分の所得税で給与収入136万円以下という目安に該当しても、それだけで健康保険上の被扶養者になるわけではありません。

国外居住親族への送金に関する裁判例・裁決例

越谷簡易裁判所令和2年7月7日判決

 国外居住の長女とその子に関する扶養控除の申告で、長女宛てに一括送金し、各人別の関係書類を提出しなかったことに関連して、納税者が国に損害賠償を求めた事件です。裁判所は、民法824条は国に対する損害賠償請求の根拠とならず、主張する財産管理権の侵害を裏付ける証拠もないとして、請求を棄却しました。この判決は損害賠償請求についての判断であり、個々の送金が扶養控除の要件を満たすかを直接確定した判決ではありません(越谷簡裁令和2年7月7日判決・税資270号-68、順号13428)。

国税不服審判所令和5年3月14日裁決

 国外居住親族について、現地金融機関の振替書類、現金受取書、出金記録等が、対象年分の法令で定められた送金関係書類に当たるかが争われた公表裁決です。審判所は、提出された書類は当時の法令が列挙した書類に該当しないと判断しました。対象は平成28年分から令和2年分までの事案です。令和6年分から追加された電子決済手段等の書類や、令和5年分からの国外居住親族の年齢別要件については、それぞれ適用年分の法令で判断する必要があります。

主な根拠資料

  • 所得税法2条1項30号・33号~34号の4、57条、83条、83条の2、84条、84条の2、85条、120条、所得税法施行令219条・262条、所得税法施行規則47条の2
  • 所得税基本通達2-47、83~84の2-1、85-1
  • 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
  • 国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」
  • 国税庁タックスアンサー「配偶者控除」、「配偶者特別控除」、「扶養控除」、「特定親族特別控除」
  • 国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等」
  • 越谷簡易裁判所令和2年7月7日判決(国税庁公表判決文)
  • 国税不服審判所令和5年3月14日裁決

越谷簡易裁判所令和2年7月7日判決(税資270号-68(順号13428))

(1)事案の概要

 本件は、原告の所得税の確定申告に際し、国外居住の親族(長女及び長女の子)に関する扶養控除の申請において、未成年者(長女の子)への生活費の送金を親権者(長女)に一括して送金し、関係書類を各人別に添付しなかったことから追徴課税されたのは、民法824条に反し違法であるとして、同法に基づき損害賠償を請求した事案である。

 原告は、未成年者への直接送金は、民法824条の親権者による未成年者の財産管理権に抵触していると考え、長女の未成年の子の生活費も、長女宛てに一括送金したことによるとしていた。

(2)裁判所の判断

 原告が、本件請求の根拠とする民法824条は、親権者がその子の財産を管理し、その財産に関する法律行為について、その子を代表することなどを定めたものであり、被告国に対する損害賠償請求の根拠となる規程ではないから、原告の主張自体が失当である。

 なお、原告の主張を善解するとすれば、被告の行為が、親権者の有する財産管理権を不法に侵しているので、不法行為による損害賠償を求めていると解することができないわけではない。しかし、民法824条は、親権者が未成年の子の財産を保護する目的を有するところ、当該扶養控除の申告において、被告が、原告に対し、親権者とは各別に未成年の子について扶養控除の申請を求めたり、それぞれ各別に書類を添付することを求めたりすることが、親権者の財産管理権を侵していることになることとの主張、或いは、原告が未成年者自身へ直接送金することは、親権者の財産管理権を侵害していることになることなどの主張(この主張自体も失当と思われるが、それはさておき)を、具体的に裏付ける証拠は見当たらない。

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