配偶者控除

配偶者控除

 配偶者控除は、納税者本人に控除対象配偶者がいる場合に適用を受けられます。

 控除対象配偶者は、納税者と生計を一にする配偶者(内縁関係の人は該当しません。所基通2-46)で、その年の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)の人です(所法2①三十三、三十三の二)。

 控除対象配偶者に該当する人で、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の人を、老人控除対象配偶者といいます(所法2①三十三の三)。

 控除額は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額、および控除対象配偶者の年齢により次の表のとおりになります。()内は住民税による控除額となります。

控除を受ける納税者本人の
合計所得金額
控除額
一般の控除対象配偶者老人控除対象配偶者
900万円以下38万円(33万円)48万円(38万円)
900万円超950万円以下26万円(22万円)32万円(26万円)
950万円超1,000万円以下13万円(11万円)16万円(13万円)
1,000万円超0円(0円)0円(0円)

 例えば、夫が合計所得金額900万円以下で、妻(70歳未満)の合計所得金額が48万円以下であるならば、夫は配偶者控除として、所得税では38万円、住民税では33万円の所得控除ができます。その結果、夫の所得税、住民税の納税額は減ることになります。

配偶者特別控除

 合計所得金額が1千万円以下である納税者に、他の人の扶養親族となっておらず、合計所得金額が48万円超133万円以下の生計を一にする配偶者がいる場合、「配偶者特別控除」を受けることができます。

 「配偶者特別控除」の金額は、以下のように、納税者本人およびその配偶者の合計所得金額に応じて決まり、所得税については38万円から1万円の範囲、住民税については33万円から1万円の範囲で控除されます。()内は住民税による控除額となります。

配偶者本人の合計所得金額控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下900万円超
950万円以下
950万円超
1,000万円以下
48万円超 95万円以下38万円(33万円)26万円(22万円)13万円(11万円)
95万円超 100万円以下36万円(33万円)24万円(22万円)12万円(11万円)
100万円超 105万円以下31万円(31万円)21万円(21万円)11万円(11万円)
105万円超 110万円以下26万円(26万円)18万円(18万円)9万円(9万円)
110万円超 115万円以下21万円(21万円)14万円(14万円)7万円(7万円)
115万円超 120万円以下16万円(16万円)11万円(11万円)6万円(6万円)
120万円超 125万円以下11万円(11万円)8万円(8万円)4万円(4万円)
125万円超 130万円以下6万円(6万円)4万円(4万円)2万円(2万円)
130万円超 133万円以下3万円(3万円)2万円(2万円)1万円(1万円)
133万円超0円(0円)0円(0円)0円(0円)

扶養控除

 扶養控除は、納税者本人に控除対象扶養親族がいる場合に適用を受けられます。控除対象扶養親族は、納税者と生計を一にする配偶者以外の16歳以上(その年12月31日現在の年齢。以下同じ)の親族等(一般的には、親や子供)で、その年の合計所得金額が48万円以下の人です(所法2①三十四、三十四の二)。

 控除対象扶養親族のうち、19歳以上23歳未満の方を特定扶養親族といい、70歳以上の方を老人扶養親族といいます(所法2①三十四の三、三十四の四)。

 老人扶養親族のうち、納税者本人や配偶者の直系尊属(父母、祖父母など)で、納税者本人や配偶者との同居を常としている方を「同居老親等」といいます。老人ホームなどへ入所している場合は、同居を常としているとはいえません。

 控除額は以下の通りとなります。()内は住民税による控除額となります。

対象者控除額
一般の控除対象扶養親族(満 16 歳以上で、下記に該当しない場合)38万円(33万円)
特定扶養親族(満19歳以上満23歳未満)63万円(45万円)
老人扶養親族(満 70 歳以上)同居老親等以外の者48万円(38万円)
同居老親等58万円(45万円)

合計所得金額

 配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除において、合計所得金額の金額がいくらなのかを正しく把握する必要があります。

 次の(1)と(2)の合計額に、退職所得金額(個人住民税においては、分離課税の対象となる退職所得を除く)、山林所得金額を加算した金額が合計所得金額となります。
(1) 事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後の金額)
(2) 総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の2分の1の金額

 ただし、次の繰越控除を受けている場合は、その適用前の金額をいいます(所法2①三十、三十一、三十三、三十四、措法8の4③一、37の10⑥一、37の11⑥、37の12の2④⑧、41の14②一、41の15④)。

  • 純損失や雑損失の繰越控除
  • 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除
  • 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
  • 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
  • 特定投資株式に係る譲渡損失の繰越控除
  • 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除

 社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除等の所得控除を差し引く前の金額が合計所得金額となりますので、子供がバイトしすぎたといって、所得控除で調整しようと思っても意味がないです。

まとめ

合計所得金額は、以下で判定します。
(1)所得税法に規定する特別控除は控除「後」
(2)措置法に規定する特別控除は控除「前」(収用、居住用等の特別控除)
(3)損益通算は通算「後」
(4)繰越控除は控除「前」

注意点

配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除共通

〇 青色事業専従者・白色専従者
 青色事業専従者として給与の支払を受ける者・白色専従者は配偶者控除、配偶者特別控除や扶養控除の対象外となります(所法2①三十三、三十四)。

〇 配偶者・扶養親族が青色申告特別控除(事業所得)を利用している場合の所得の判定
 青色申告特別控除後の金額が事業所得の金額とされているので、控除対象配偶者又は扶養親族に該当するかどうかを判定するときの所得要件は、青色申告特別控除後の事業所得の金額が48万円以下であるかどうかによって判定すればよいことになります(措法25条の2①、③、④)。

〇 配偶者・扶養親族が死亡した場合
 死亡時点で控除対象配偶者や控除対象扶養親族の要件に該当していれば、その年の扶養控除の適用を受けることが可能です。この場合の、「合計所得金額が48万円以下」という要件は、亡くなった方のその年の1月1日から死亡日までの間の合計所得金額で判定します。また、年の中途で死亡した場合であっても、配偶者控除額等の月割計算等は行いません。

〇 納税者自身が年の途中で死亡又は出国した場合
 納税者自身が年の途中で死亡又は出国した場合は、その時の現況により判断します(所法85①③)。

〇 年の中途において納税者が死亡した場合の、他の納税者における適用
 年の中途において死亡した納税者の控除対象配偶者若しくは配偶者特別控除対象配偶者又は扶養親族として控除された者であっても、その後その年中において他の納税者の控除対象配偶者若しくは配偶者特別控除対象配偶者又は扶養親族にも該当する者については、他の納税者が自己の控除対象配偶者若しくは配偶者特別控除対象配偶者又は扶養親族として控除することができます(所基通83から84-1)。
 例えば、年の途中で死亡した父親の準確定申告において配偶者控除を受けた母親(合計所得金額48万円以下)について、父親の死後において子が扶養している場合は、子の控除対象扶養親族として扶養控除を適用することができます。
 父の準確定申告における同一生計配偶者の該当性は、死亡日の現況で判定(所法85③)し、また、子の申告(年末調整)において、控除対象扶養親族の該当性は12月31日の現況で判定します(所法85③)。

配偶者控除・配偶者特別控除

〇 内縁の妻
 内縁の妻は配偶者控除の対象となりません(所基通2-46)。

〇 配偶者の一方が他の配偶者を配偶者特別控除の対象としている場合
 配偶者の一方が他の配偶者を配偶者特別控除の対象としている場合、他の配偶者は一方の配偶者を配偶者特別控除の対象とすることはできません。これは、夫婦の双方がお互いに配偶者特別控除の適用を受けることは認めない趣旨によるものです(所法83の2②)。

扶養控除

〇 再婚相手の連れ子
 子のある者と再婚した場合のその子は、一親等の姻族に該当しますので、要件を満たせば扶養控除の対象となります。

〇 複数の納税者による重複
 12月31日の現況において、ある一人の方を対象として複数の納税者がそれぞれ重複して扶養控除を受けることはできません(所法85⑤)。例えば、兄弟が均等に親に送金している場合であっても、兄弟がそれぞれ重複して控除の対象とすることはできません。なお、2人以上の居住者が同一人をそれぞれ自己の扶養親族にしている場合において、その年において既にある居住者が給与所得者の扶養控除等申告書等の記載により、その扶養親族としているときは、当該親族は、その居住者の扶養親族とするものとされ(所令219②一)、それでもいずれの居住者の扶養親族と定められない場合には、居住者のうち、合計所得金額が最も大きい居住者の扶養親族とするものとされています(所令219②二)(平成19年12月27日裁決・名裁(所)平19第60号)。

〇 同居老親等
 介護老人福祉施設(いわゆる老人ホーム)に入居している者は同居しているとはいえません。ただし、病気治療のため病院に入院している者は、同居しているものとして取扱われます。また、介護老人保健施設(旧老人保健施設)に入所している者で、同施設への入所が短期間であり一時的なものと見込まれる客観的な事情が認められない場合には、同居しているとはいえません。

〇 国外居住親族
 国外居住親族について扶養控除を適用する場合に添付する送金関係書類は、国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払いを必要の都度、各人に行ったことを明らかにすることが必要です(所法120③二、所令262③、所規47の2⑥、所基通120-8、令和元年12月4日裁決・関裁(所)令元第20号)。
 例えば、扶養控除の適用を受けようとする国外居住親族が複数いる場合、送金を代表者にまとめて行うようなことはできません。
 また、所得税法施行規則47条の2第6項は、送金関係書類は、①金融機関の書類又はその写しで、当該金融機関が行う為替取引によって当該居住者から当該国外居住扶養親族に支払をしたことを明らかにするもの、あるいは、②クレジットカード等購入あっせん業者の書類又はその写しで同項2号に規定する内容のもののいずれかであって、確定申告書を提出する居住者がその年において国外居住扶養親族の生活費又は教育費に充てるための支払を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものとする旨規定しています。
 よって、扶養者である居住者から現金を受け取ったことを国外居住親族自身が証明する旨の書面では該当せず、扶養控除の適用はありません(令和2年6月24日裁決・東裁(所)令元第111号)。

越谷簡易裁判所令和2年7月7日判決(税資270号-68(順号13428))

(1)事案の概要

 本件は、原告の所得税の確定申告に際し、国外居住の親族(長女及び長女の子)に関する扶養控除の申請において、未成年者(長女の子)への生活費の送金を親権者(長女)に一括して送金し、関係書類を各人別に添付しなかったことから追徴課税されたのは、民法824条に反し違法であるとして、同法に基づき損害賠償を請求した事案である。

 原告は、未成年者への直接送金は、民法824条の親権者による未成年者の財産管理権に抵触していると考え、長女の未成年の子の生活費も、長女宛てに一括送金したことによるとしていた。

(2)裁判所の判断

 原告が、本件請求の根拠とする民法824条は、親権者がその子の財産を管理し、その財産に関する法律行為について、その子を代表することなどを定めたものであり、被告国に対する損害賠償請求の根拠となる規程ではないから、原告の主張自体が失当である。

 なお、原告の主張を善解するとすれば、被告の行為が、親権者の有する財産管理権を不法に侵しているので、不法行為による損害賠償を求めていると解することができないわけではない。しかし、民法824条は、親権者が未成年の子の財産を保護する目的を有するところ、当該扶養控除の申告において、被告が、原告に対し、親権者とは各別に未成年の子について扶養控除の申請を求めたり、それぞれ各別に書類を添付することを求めたりすることが、親権者の財産管理権を侵していることになることとの主張、或いは、原告が未成年者自身へ直接送金することは、親権者の財産管理権を侵害していることになることなどの主張(この主張自体も失当と思われるが、それはさておき)を、具体的に裏付ける証拠は見当たらない。

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