相殺

  いわゆる国内FXと海外FXの損益は相殺できません。

 金融所得課税の一体化の観点から平成23年度税制改正により、平成24年1月1日以後、市場を介して行われる一定の市場デリバティブ取引だけでなく、FX業者との相対取引である一定の店頭デリバティブ取引についても、「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」の対象となり、申告分離課税が適用されることとなったのですが、いわゆる海外FXは総合課税の雑所得となります。

 海外FX業者は、ほとんどが金融庁での登録を受けることなく商品を提供しており、金融庁は、そのことに関して以前から懸念をもっていました。なお、海外FX業者が金融庁での登録を受けない背景の1つとしては、最大25倍(2011年8月から)というレバレッジ限定商品しか提供できないことがあげられます(ハイレバレッジ商品が提供できない)。

外部リンク先 金融庁HP「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」
https://www.fsa.go.jp/ordinary/kanyu/20090731.html

 そして、海外FX業者について狙い撃ちする意図があったかどうかわかりませんが、平成28年度税制改正により、平成28年10月1日以後に行う店頭デリバティブ取引のうち、金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限ります。)又は登録金融機関以外との取引は、申告分離課税ではなく、総合課税の対象となることが明確されました。

 つまり、FX取引により生じる所得で申告分離課税の対象となるのは、金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)に規定する店頭デリバティブ取引等の範囲に含まれるFX取引であり、金商法の無登録業者等(主に外国の金融業者)を相手方として行うFX取引による差益については、総合課税の雑所得の対象となります(措法37の12の2②一、41の14)。

 よって、例え、同一年の取引であっても、申告分離課税と総合課税という取り扱いの違いがあるため、いわゆる国内FXと海外FXは相殺できないということになります。
 

東京国税局課税第一部個人課税課、課税第二部消費税課の所得税消費税誤りやすい事例集(令和3年12月)

(誤りやすい事例)
 外国金融商品取引業者で、金融商品取引法上の登録をしていない者を媒介するFX取引を、分離課税の先物取引に係る雑所得等として申告している。

(解説)
 平成24年1月1日以後に行う店頭取引であっても、金融商品取引法に規定する店頭デリバティブ取引に該当しない取引(同法が定める登録を受けていない金融商品取引業者等を相手方として行う取引)は、総合課税の雑所得となる(措法41の14)。