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国内FX(申告分離課税)と海外FX(総合課税)の損益は通算できるのか?

国内FX(申告分離課税)と海外FX(総合課税)の損益は通算できるのか?

概要

 いわゆる国内FXと海外FXの損益は通算できません。ただし、一般に「国内FX」「海外FX」と呼ばれていますが、申告分離課税となるかどうかは、FX業者が国内に所在するか海外に所在するかだけで決まるものではありません。

 FX取引のうち、租税特別措置法41条の14による申告分離課税の対象となるのは、同条所定の一定の市場デリバティブ取引又は一定の店頭デリバティブ取引に係る差金等決済です。

 平成28年10月1日以後に行う店頭デリバティブ取引については、金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限ります。)又は登録金融機関を相手方として行うものに限り、同条の対象となります(措法41の14①二、国税庁タックスアンサーNo.1521・1522)。

 この要件を満たさない店頭FXによる所得は、措法41条の14による申告分離課税の対象外となり、一般的には雑所得として総合課税の対象となります(所法35、措法41の14①二、国税庁タックスアンサーNo.1521)。

 一方、措法41条の14の対象となるFXから生じた所得は「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象となります。

 その損失は、他の「先物取引に係る雑所得等」との間では通算できますが、それ以外の所得とは損益通算できません(措法41の14、国税庁タックスアンサーNo.1521・1522)。

 また、措法41条の14の対象外となるFX所得が雑所得に該当する場合、その損失は雑所得の範囲内での損益通算は可能ですが、「先物取引に係る雑所得等」と通算することはできません(所法35・69、措法41の14、国税庁タックスアンサーNo.1521)。

 したがって、申告分離課税の対象となるFXと、その対象外となり一般的には雑所得として総合課税されるFXとの損益を通算することはできません。

海外FXに関する過去の税制改正

店頭FXのレバレッジ規制

 個人顧客を相手方とする店頭FXについては、顧客保護や業者のリスク管理等の観点から証拠金規制が導入され、平成22年8月からレバレッジ50倍以下、平成23年8月から25倍以下とされています(金融庁「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」資料)。

平成23年度税制改正

 平成23年度税制改正により、平成24年1月1日以後に行う一定の店頭デリバティブ取引についても「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」の対象とされました。

 これにより、市場を介して行われる一定の市場デリバティブ取引だけでなく、FX業者との相対取引である一定の店頭デリバティブ取引についても、申告分離課税の対象となりました(措法41の14、国税庁タックスアンサーNo.1522)。

平成28年度税制改正

 平成28年度税制改正により、平成28年10月1日以後に行う店頭デリバティブ取引については、金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限ります。)又は登録金融機関を相手方として行うものに、措法41条の14の適用対象が限定されました(措法41の14①二)。

 したがって、それ以外の者を相手方として行う店頭FXは同条による申告分離課税の対象外となり、その所得は一般的には雑所得として総合課税の対象となります(所法35、措法41の14①二、国税庁タックスアンサーNo.1521・1522)。

 財務省「平成28年度税制改正の解説」221頁では、この改正について、海外に所在する無登録業者がインターネットを通じて日本居住者と店頭取引等を行い、投資家とのトラブルが生じていたことを背景として、適切な投資家保護が確保できない無登録業者との取引を本特例の対象外とする趣旨が説明されています(財務省「平成28年度税制改正の解説」221頁)。

 近年、金融商品取引法に基づく金融商品取引業の登録をしていない海外に所在する業者が、インターネット取引によって日本の居住者を相手方として店頭取引等を行うケースが見受けられ、投資家とのトラブルが生じています。こうした海外の無登録業者との取引は適切な投資家保護が確保できない取引であることから、無登録業者との取引を本特例の対象外とする観点から(略)改正が行われました

無登録の海外所在業者に対する金融庁の注意喚起

 海外所在業者であっても、日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方として金融商品取引を業として行う場合には、日本の金融商品取引法に基づく金融商品取引業の登録が必要です。日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは禁止されています(金商法29、金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」)。

 金融庁は、無登録の海外所在業者との取引について、出金に応じてもらえない、業者と連絡が取れなくなるなどのトラブルが発生しているとして注意喚起しています。

 また、無登録の海外所在業者については業務実態等の把握や業者への追及が困難な場合がある一方、金融庁・財務局は、無登録で金融商品取引業を行っているとして警告書を発出した業者の名称等を公表しています。

 さらに、無登録の海外所在業者の中には、日本国内のレバレッジ規制を大きく上回る高レバレッジを宣伝文句としてFX取引を勧誘している例があるとして、金融庁が注意を呼び掛けています。

〇金融庁HP「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」
https://www.fsa.go.jp/ordinary/kanyu/20090731.html

上場株式等の譲渡所得等と先物取引に係る雑所得等の違い

 上場株式等に係る譲渡所得等と先物取引に係る雑所得等には、いずれも申告分離課税の特例と損失に関する特例が設けられていますが、その適用要件の置かれ方は異なっています。

 上場株式等については、国外の無登録証券業者への売委託による譲渡であっても、その譲渡自体が措法37条の11に規定する上場株式等の譲渡に該当する限り、同一年中の他の上場株式等の譲渡損益との内部通算の対象となります(措法37の11)。

 一方、措法37条の12の2第2項所定の要件を満たさない譲渡から生じた損失については、同条による上場株式等に係る配当所得等との損益通算及び翌年以後3年間の繰越控除の対象とはなりません(措法37の12の2①②⑤、措通37の12の2-1、国税庁タックスアンサーNo.1474)。

 つまり、上場株式等については、措法37条の11による申告分離課税の対象となるかという問題と、措法37条の12の2による「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の適用を受けられるかという問題は別です。

 したがって、国外証券業者への売委託による譲渡損失について措法37条の12の2の損失特例が適用されない場合であっても、その譲渡自体が措法37条の11に規定する上場株式等の譲渡に該当する限り、申告分離課税の対象であることに変わりはありません(措法37の11、37の12の2)。

 これに対し、先物取引に係る雑所得等については、措法41条の14による申告分離課税の特例そのものが、平成28年10月1日以後の店頭デリバティブ取引について、金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限ります。)又は登録金融機関を相手方として行うものに対象を限定しています(措法41の14①二)。

 この要件を満たさない店頭FXは同条による申告分離課税の対象外となり、その所得は一般的には雑所得として総合課税の対象となります(所法35、措法41の14①二、国税庁タックスアンサーNo.1521・1522)。

関連する裁決例・裁判例

 平成20年2月28日裁決(裁事75集・288頁)は、当時の店頭FXについて、当時の措法41条の14による申告分離課税及び措法41条の15による損失の繰越控除の対象にはならないと判断しています。

 ただし、この裁決は平成24年1月1日から店頭デリバティブ取引が特例の対象に追加される前の制度に関するものであり、現在の無登録海外FXの課税関係についての直接の先例ではありません。

 また、平成22年2月16日裁決(裁事79集)は、FX取引が事業所得を生ずべき事業に該当するかについて、取引回数や取引金額だけでなく、人的・物的設備、資金調達、費やした労力、職業・社会的地位等を総合的に検討し、その事案では事業所得ではなく雑所得に該当すると判断しています。

 上場株式等については、外国証券会社への売委託により生じた譲渡損失に措法37条の12の2の損失特例が適用されるかが争われた京都地裁平成27年7月3日判決(税務訴訟資料265号-106・順号12689)があり、納税者の請求は棄却されました。

 その控訴審である大阪高裁平成28年3月17日判決(税務訴訟資料266号-48・順号12826)も控訴を棄却し、最高裁第二小法廷平成28年9月30日決定(税務訴訟資料266号-132・順号12910)により上告棄却・上告受理申立て不受理となり確定しています。

参考条文(本稿関係部分)

上場株式等の譲渡所得等

措置法37条の11 (上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例)
1 居住者(略)が、平成28年1月1日以後に上場株式等の譲渡をした場合には、当該上場株式等の譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得(略)については、(略)、他の所得と区分し、その年中の当該上場株式等の譲渡に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額として政令で定めるところにより計算した金額(以下この項において「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」という。)に対し、上場株式等に係る課税譲渡所得等の金額(略)の100分の15に相当する金額に相当する所得税を課する。
この場合において、上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同法その他所得税に関する法令の規定の適用については、当該損失の金額は生じなかつたものとみなす。

措置法37条の12の2(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除)
1 確定申告書(略)を提出する居住者(略)の平成28年分以後の各年分の上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合には、第37条の11第1項後段の規定にかかわらず、当該上場株式等に係る譲渡損失の金額は、当該確定申告書に係る年分の第8条の4第1項に規定する上場株式等に係る配当所得等の金額を限度として、当該年分の当該上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上控除する。
2 前項に規定する上場株式等に係る譲渡損失の金額とは、当該居住者(略)が、上場株式等の譲渡のうち次に掲げる上場株式等の譲渡(略)をしたことにより生じた損失の金額として政令で定めるところにより計算した金額のうち、その者の当該譲渡をした日の属する年分の第37条の11第1項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除してもなお控除しきれない部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額をいう。
一 金融商品取引法第2条第9項に規定する金融商品取引業者(同法第28条第1項に規定する第一種金融商品取引業を行う者に限る。次号において「金融商品取引業者」という。)又は同法第2条第11項に規定する登録金融機関(第3号において「登録金融機関」という。)への売委託により行う上場株式等の譲渡
(略)
5 確定申告書を提出する居住者(略)が、その年の前年以前3年内の各年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額(この項の規定の適用を受けて前年以前において控除されたものを除く。)を有する場合には、第37条の11第1項後段の規定にかかわらず、当該上場株式等に係る譲渡損失の金額に相当する金額は、政令で定めるところにより、当該確定申告書に係る年分の同項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び第8条の4第1項に規定する上場株式等に係る配当所得等の金額(第1項の規定の適用がある場合にはその適用後の金額。以下この項において同じ。)を限度として、当該年分の当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上控除する。

先物取引に係る雑所得等

措置法41条の14(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)
1 居住者(略)が、次の各号に掲げる取引又は取得をし、かつ、当該各号に掲げる取引又は取得(以下この項及び次条において「先物取引」という。)の区分に応じ当該各号に定める決済又は行使若しくは放棄若しくは譲渡(以下この項及び次条において「差金等決済」という。)をした場合には、当該差金等決済に係る当該先物取引による事業所得、譲渡所得及び雑所得については、(略)、他の所得と区分し、その年中の当該先物取引による事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額として政令で定めるところにより計算した金額(以下この項において「先物取引に係る雑所得等の金額」という。)に対し、先物取引に係る課税雑所得等の金額(略)の100分の15に相当する金額に相当する所得税を課する。この場合において、先物取引に係る雑所得等の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同法その他所得税に関する法令の規定の適用については、当該損失の金額は生じなかつたものとみなす。
一 商品先物取引等(略)
二 金融商品先物取引等(金融商品取引法第2条第21項第1号から第3号までに掲げる取引(略)で同項に規定する市場デリバティブ取引(略)に該当するもののうち政令で定めるもの又は同法第2条第22項第1号から第4号までに掲げる取引(略)で同項に規定する店頭デリバティブ取引(略)に該当するもの(第37条の12の2第2項第1号に規定する金融商品取引業者又は登録金融機関を相手方として行うものに限る。)をいう。以下この号において同じ。) 当該金融商品先物取引等の決済(略)
三 金融商品取引法第2条第1項第19号に掲げる有価証券(略)の取得(略)

措置法41条の15(先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除)
1 確定申告書(略)を提出する居住者(略)が、その年の前年以前3年内の各年において生じた先物取引の差金等決済に係る損失の金額(この項の規定の適用を受けて前年以前において控除されたものを除く。)を有する場合には、前条第1項後段の規定にかかわらず、当該先物取引の差金等決済に係る損失の金額に相当する金額は、政令で定めるところにより、当該確定申告書に係る年分の同項に規定する先物取引に係る雑所得等の金額を限度として、当該年分の当該先物取引に係る雑所得等の金額の計算上控除する。

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