概要

 日本の証券会社に預けている外国株式の配当の課税の取扱いは、国内株式の配当と同じです。なお、 邦貨(円)換算方法は、原則、支払開始日と定められている日の対顧客直物電信買相場(TTB)で換算します。

外国株式の配当の課税の取扱い

 国内においての支払いの取扱者(証券会社等の金融商品取引業者等)を通じて交付を受ける外国株式の配当の課税の取扱いは、国内株式の配当と同じです。上場株式等の配当は20.315%(所得税等15.315%、住民税5%)、未上場株式の配当は所得税等20.42%(住民税はなし)の税率で源泉徴収されます。

 上場外国株式等の配当を受け取った個人は、「申告不要」「申告分離課税」「総合課税」のいずれかを選択します。

 一方、未上場外国株式の配当を受け取った個人は、原則として総合課税として確定申告する必要があります。ただし、少額配当に該当する場合、所得税については申告不要を選択することもできますが、住民税については徴収されていないので申告が必要となります。

 未上場外国株式の配当につき外国所得税が課されている場合には、これを控除した後の金額について支払いを受けるべき1回の配当金額が、10万円に配当期間の月数を乗じ12で除した金額以下であるかどうかで判定します(措法8の5①一、9の2③⑤)。

 なお、 外国株式等の配当を総合課税で申告しても、国内株式と違い、配当控除は利用できません(所法92①かっこ書)。ただし、外国税が徴収されている場合には、外国税額控除を受けることができます。

  外国の証券会社に預けている外国上場株式の配当は、日本の所得税等(+住民税)が源泉徴収されていないので、 上場外国株式等の配当を受け取った個人は、「申告分離課税」「総合課税」のいずれかを選択します。「申告不要」の選択はできません。

 なお、当初申告をした際に、うっかり、外国の証券会社に預けている外国上場株式の配当(国内源泉徴収のないもの)を記載せずに申告した後、税務署から漏れているので修正申告をしてくれと言われた場合、他の上場株式の配当があり当初申告で申告分離課税を選択していれば申告分離課税による修正申告となります。ただし、当初申告で、上場株式の配当で確定申告をしたものがない場合、あるいは、あっても総合課税を選択していた場合は、総合課税しか選択できません。

外国の証券会社に預けている上場外国株式の配当と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算

 外国金融商品市場において売買されている株式等も「上場株式等」に含まれることから、外国の証券会社に預けている外国上場株式の配当は、申告分離課税の選択及び上場株式等に係る譲渡損失との損益通算ができます(措法8の4①一、37の11②一、37の12の2①)。

 金融商品取引法上の登録を受けていない金融商品取引業者等において行う「上場株式等の譲渡」により生じた損失は、上場株式等の配当等との損益通算又は繰越控除ができない(措法37の12の2②一)ことと、混同しないように注意をする必要があります。

上場外国株式の配当について、すでに外国税が源泉徴収されている場合

 上場外国株式の配当について、すでに外国税が源泉徴収されている場合には、その徴収後の金額に対して、日本で20.315%の税率で源泉徴収されます。具体的には、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%です。

 例えば、配当を100,000円、国外源泉徴収税額(10%の場合)を10,000円とすると、100,000円から10,000円を差し引いた90,000円の20.315%に相当する税額が、日本において源泉徴収されることになります。

 つまり、源泉所得税等(復興特別所得税含む)13,783円、源泉住民税4,500円となります。

(外国株式の配当金に対する国内での源泉徴収税額の計算式)
 外貨ベースの配当金×(1-現地源泉税率)×TTB×国内源泉徴収税率

配当の外国税額控除

 外国株式の配当について、すでに外国税が源泉徴収されている場合には、日本の投資家(居住者)の場合は、この配当等に対して日本国内でも課税されます。

 このように外国と日本とで二重に課税されるケースでは、二重課税を調整するため「外国税額控除」の規定が設けられており、確定申告することで、支払った外国税のうち一定額を日本の所得税・住民税から控除することができるとなっています(復興特別所得税を入れると話が細かくなるので以下省略します。)。

 なお、支払った外国所得税(外国税額控除の対象となるものに限ります。以下同じ。)のうち控除できる金額(所得税の控除限度額)は、次の計算式によって計算します。
 所得税の控除限度額=その年分の所得税の額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)

 外国税額控除限度額の計算では、支払った外国所得税の額が、上記の所得税の控除限度額に満たない場合には、所得税における外国税額控除額は、支払った外国所得税の額となります。

 しかし、支払った外国所得税額が上記の所得税の控除限度額よりも多い場合(つまり、所得税から控除しきれない場合)には、道府県民税や市町村民税(いわゆる住民税)からも控除する計算となっています(控除限度額まで)。

 また、外国税額が所得税等の控除限度額を下回った場合の差額を「控除余裕額」といい、逆に上回った場合の差額を「控除限度超過額」といいます。「控除余裕額」と「控除限度超過額」は、翌年以後、3年間繰越すことができます。

  なお、上場外国株式等の配当の申告について、「申告分離課税」「総合課税」のいずれかを選択しても外国税額控除の適用を受けることはできますが、 「申告不要」の場合は利用できません。

 国外株式の配当等について、申告不要制度(措法8の5、9の2⑤)の適用を受けること(申告しないこと)を選択した場合には、当該配当等に係る外国所得税額は、外国税額控除の計算上「外国所得税の額」に該当しないものとみなされるため、外国税額控除の計算の基礎に入れることはできないということです(措令4の5⑪)。

 確定申告で、国外株式の配当等について申告をしているが、外国税額控除の記載をしなかった場合は、更正の請求書に当該控除金額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付があり、かつ、控除対象外国所得税の額を課されたことを証する書類その他財務省令で定める書類を添付すれば、外国税額控除を適用することができます(所法95⑩)。

 また、本来、租税条約(協定)の制限税率で配当等の所得について現地で課される所得税が軽減・免除される場合であっても、納税者が適切に租税条約上の届出を現地の金融機関等に行っていなければ、通常、現地の国内税法により軽減・免除される額を超えて外国所得税が課されます。

 例えば、租税条約(協定)の制限税率で配当等の所得に対する課税は10%を限度としているが、届出書を配当所得を受領する前に金融機関に提出していなかったため、現地の国内税率である20%によって現地源泉所得税が徴収されてしまうということです。

 そのような場合、租税条約相手国において課することができるとされている額を超えて外国税額控除をすることはできない(所令222の2④四)ため、上記の例であれば、日本において確定申告をする場合の外国税額控除の制度の適用となる外国所得税の額は20%ではなく10%となります。差額の10%部分は現地課税当局に対して還付請求手続きをすることによって還付されます。

 また、スイス、ドイツ、オランダなど一部の国では租税条約の適用を現地の所得税の源泉徴収後の還付申告を前提としています。租税条約の制限税率によらずに全ての非居住者に対して一律に源泉徴収されるため、制限税率超過分はそれぞれの現地課税当局に対して還付請求手続きをすることによって還付されます。

 例えば、スイスにおいて日本との租税条約上は配当については10%ですが、現地源泉徴収税率が35%であるため、10%部分については、日本の確定申告における外国税額控除の適用対象となりますが、差額の25%部分は外国税額控除の適用対象となりません。

 差額の25%部分の外国所得税額の還付をスイス課税当局に請求することになります。

 外国所得税額の還付を現地課税当局に請求する際に、日本における居住者証明書を提出する必要が生じたときは、所轄の税務署で証明請求を行います。

国税庁HPNo.9210 居住者証明書の請求
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9210.htm

配当所得に係る外国所得税だけでなく、不動産所得に係る外国所得税がある場合

 外国所得税額について必要経費算入ができるものは、①不動産、事業、山林、一時又は雑所得に限られており、②利子、配当、給与、退職又は譲渡所得については、二重課税を調整する方法としては、外国税額控除によるしかありません。

 利子、配当、給与、退職又は譲渡所得には、必要経費という概念がないためです。なお、一時所得は「収入を得るために支出した金額」を総収入金額から差し引くため、必要経費と同様に考えられるため必要経費算入ができます。

 なお、その年の外国所得税について、必要経費に算入するか外国税額控除の適用を受けるかどうかの選択は、各年ごとに、その年中に確定した全ての外国所得税について行われなければならず、外国所得税額の一部について外国税額控除の適用を受ける場合、外国所得税額の全部が必要経費に算入できないことになります(所法46、所基通46-1、95-1)。

 したがって、不動産所得に係る外国所得税を必要経費に算入した場合は、配当所得に係る外国所得税について、外国税額控除の適用を受けることはできなくなります。

確定申告書に外国税額控除の記載がない場合

 平成23年分以後の年分については、確定申告書に外国税額控除の記載がない場合でも、修正申告書や更正の請求書に当該控除金額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付があり、かつ、控除対象外国所得税の額を課されたことを証する書類その他財務省令で定める書類を添付した場合も適用できます(所法95⑩)。

 例えば、不動産所得に係る外国所得税がある場合に、外国所得税額について必要経費算入して確定申告をしたが、外国税額控除への変更を求めて更正の請求をすることができるということになります。

 なお、外国上場株式の配当等について、申告不要制度(措法8の5、9の2⑤)の適用を受けること(申告しないこと)を選択した場合には、当該配当等に係る外国所得税額は、外国税額控除の計算上「外国所得税の額」に該当しないものとみなされるため、外国税額控除の計算の基礎に入れることはできません(措令4の5⑪)。

 よって、外国上場株式の配当がある場合に、その配当を除いて確定申告をした場合(配当所得及び外国税額控除の金額の記載がない場合)には、納税者自身が申告不要を選択したことになり、計算に誤りがないため、その配当に係る外国所得税について外国税額控除の適用を受ける旨の更正の請求をすることはできません(令和3年5月26日裁決・東裁(所)令2第85号)。

外国株式の配当のまとめ

( 日本の証券会社に預けている外国株式の配当 )

外国株式の配当の種類国内源泉徴収税率申告方法
上場株式等の配当20.315%
(所得税等15.315%、住民税5%)
いずれかを選択
・申告不要(外税控除なし)
・申告分離課税(外税控除あり)
・総合課税(外税控除あり)
未上場株式等の配当少額配当20.42%
(所得税等 20.42%)
いずれかを選択
・申告不要(外税控除なし) 。住民税の申告は必要
・総合課税 (外税控除あり)
少額配当以外 20.42%
(所得税等 20.42%)
総合課税 (外税控除あり)

( 外国の証券会社に預けている外国株式の配当 )

外国株式の配当の種類国内源泉徴収税率申告方法
上場株式等の配当源泉徴収なしいずれかを選択
・申告分離課税(外税控除あり)
・総合課税(外税控除あり)
未上場株式等の配当 源泉徴収なし総合課税 (外税控除あり)

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租税条約(租税協定を含む。)は、国際的二重課税排除のために外国税額控除を認める旨を規定しているが、同規定は、具体的な適用条件や控除額の計算について、租税条約が国内法と異なる定めをしている場合に限り、優先的に適用されるものであるとされた東京高裁令和3年1月28日判決

(1)事件の概要

1 X(納税者)は、外国法人から支払を受けた配当金について、当該配当金の支払通知書に記載された外国所得税の全額を外国税額控除の額とし、これを控除する旨の平成29年分の所得税及び復興特別所得税(所得税等)の確定申告を行ったところ、Y(課税庁)は、所得税法に規定する外国税額控除の限度額を超える外国所得税の額を控除することはできないとして、同年分の所得税等の更正処分(本件更正処分)及び過少申告加算税の賦課決定処分(本件賦課決定処分)を行った。
2 Xは、本件更正処分による外国税額控除の額の減額部分は、我が国が締結した租税条約に反するなどとして、本件更正処分の一部の取消し及び本件賦課決定処分の取消しを求めて本訴を提起した。

(2)本件の主な争点

 外国所得税の額のうち控除限度額を超える部分について外国税額控除を認めなかった本件更正処分は適法か否か。

(3)裁判所の判断

 裁判所は、第一審(東京地裁令和2年8月20日判決)の判断を補正又は引用し、要旨次のとおり判断し、Xの控訴を棄却した。
1 国際的二重課税を排除するか否かは、各国の政策的判断により決定される事項であって、我が国は、租税条約の有無にかかわらず、国際的二重課税を排除することを目的として外国税額控除制度(所得税法95条)を設けているところ、これは、我が国の国際的競争力の維持発展を図るという政策的要請の下に、国際的二重課税を防止し、投資や経済活動に対する課税の公平と税制の中立性の確保という政策的目的を実現するために、課税を減免する措置を定めたものというべきである。そして、所得税法施行令222条が控除限度額を定めるところ、この規定は、上記の政策的考慮を超えて我が国の国内源泉所得に対する税負担が減少することのないようにする目的に照らし合理的なものであり、違法であるということはできない。
 そして、我が国が締結した租税条約においては、国際的二重課税排除のために外国税額控除を認める旨を規定しているが、同規定は、具体的な適用条件や控除額の計算について、租税条約が国内法の規定するところと異なる定めをしている場合に、その限りにおいて優先的に適用されるものと解される。
2 本件における各租税条約においては、いずれも日本の所得税法の規定に従って外国税額控除を行うこととされていると認められるから、Xの平成29年分の所得税等に係る外国税額控除の額は、同法95条及び所得税法施行令222条の規定に従って計算した控除限度額を限度として計算することとなるため、本件更正処分における外国税額控除の額の計算に誤りはなく、同処分は適法である。

確定申告書に国外配当に係る所得及び外国税額控除の記載がされずに提出されている場合には、更正の請求により外国税額控除の適用を受けることができないとされた事例-令和3年5月26日裁決(東裁(所)令2第85号)(棄却)

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 審査請求人Xは、平成26年から令和元年の各年において、国外で発行され、外国金融商品市場において売買されている上場会社の株式を保有し、国内における支払の取扱者を通じ、当該株式に係る配当(以下「本件各国外配当」という。)の支払を受けた。
 また、Xは、本件各国外配当の支払に係る基準日において、上記上場会社の発行済株式の総数の100分の3以上に相当する数の株式を有していなかった。
② Xは、平成26年分から令和元年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税等について、いずれも法定申告期限までに申告した(以下、当該申告を「本件各確定申告」といい、本件各確定申告に係る各確定申告書を「本件各確定申告書」という。)。
 なお、本件各確定申告書には、本件各国外配当に係る所得及び外国税額控除について、いずれも記載されていなかった。
③ Xは、令和2年7月、本件各年分の所得税等について、外国税額控除の適用を求め、各更正の請求をした(以下、当該各更正の請求を併せて「本件各更正請求」といい、本件各更正請求に係る各更正の請求書を「本件各更正請求書」という。)。
④ 原処分庁が、Xは当該配当を申告していないことから、当該配当に係る外国所得税について外国税額控除の適用を受けることはできないとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたのに対し、Xが、当該更正の請求をした際に原処分庁所属の職員から十分な説明が無かったなどとして、その全部の取消しを求めた。

(2)主な争点

 当該配当に係る外国所得税について外国税額控除の適用を受けれるか否かである。

(3)裁決要旨(棄却)

① Xは、支払を受けた国外配当について、確定申告書に、国外配当に係る所得及び外国税額控除のいずれも記載せずに提出しているところ、これは国外配当の額を配当所得の金額に含めず、また、国外配当に係る外国所得税の額を外国税額控除の対象としないところで確定申告をしたものと認められる。そして、このことを前提として、法令の規定を適用すれば、確定申告書に配当所得及び外国税額控除の金額の記載がないのは、国税に関する法律の規定に従って、誤りなく計算された結果であると認められる。
② したがって、Xが確定申告書に記載した課税標準等又は税額等の計算が、国税に関する法律の規定に従っていなかった又は当該計算に誤りがあったとは認められないから、本件各更正請求は、国税通則法23条1項の規定による更正の請求をすることができる場合に該当しない。
③ Xは、(イ)更正請求書を提出する前に、外国税額控除の適用について原処分庁に電話で相談したが、対応した職員から十分な説明がなかったこと、(ロ)更正請求書を2回にわたり提出した際のいずれにおいても、収受した原処分庁所属の職員は、配当所得の入力がなく、申告分離課税を行っていないという専門家ならばすぐに気が付くべき問題点の指摘をせずに受理したこと、(ハ)外国税額控除に関する国税庁ホームページ上の説明は、長文かつ難解な文章であり、一般納税者が理解することは困難であること及び(ニ)国税庁ホームページ上にある更正の請求書を作成するシステムには不備があること等の事情を挙げ、これらの事情からすれば、本件各更正請求は認められるべきである旨主張する。
④ しかしながら、Xの主張は、Xが更正請求を行う際の事情であって、Xが確定申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことに関する主張ではないから、当該事情の存否は、通知処分の適法性に係る判断に影響を及ぼすものではない。