外国株式の譲渡損益

 外国株式とは、海外(外国籍)の企業が発行する株式のことをいいます。外国株式を売買する方法には、証券会社等を通じて国内の金融商品取引所(証券取引所)で上場されている外国株式を売買する方法、国内外の証券会社等を通じて海外の外国金融商品市場(外国有価証券市場)に上場されている外国株式を売買する方法、証券会社等を相手方として売買する方法等があります。

 外国株式の譲渡損益は、国内の株式と同様に申告分離課税の対象となり、譲渡に伴って生ずる為替差損益は譲渡損益に含めて計算します。

邦貨(円)換算方法

 外貨建株式等に係る売却損益を計算する場合には、譲渡価額と取得価額をそれぞれ邦貨(円)に換算した上で計算します。つまり円貨ベースで計算を行うこととなっています。

 したがって、取得時から譲渡時までの為替の変動による損益(為替差損益)は外国株式の譲渡損益に含まれます。

 なお、邦貨換算の方法は、原則として次のとおりであり、取引先の金融商品取引業者等(証券会社等)が公表している為替レートにより行うこととなります。

 ・譲渡価額・・・売約定日における対顧客直物電信買相場(TTB)
 ・取得価額・・・買約定日における対顧客直物電信売相場(TTS)

(計算例)
・取得単価 100.00ドル 取得株数 100株 TTS 1ドル当たり100.00円
・譲渡単価 90.00ドル 譲渡株数 100株  TTB 1ドル当たり120.00円

 譲渡損益 = 譲渡価額( 90.00ドル × 100株× 120.00円 )- 取得価額( 100.00ドル × 100株× 100.00円 ) = 80,000円

譲渡損益における課税の取扱い

  外国株式は国内株式と同様に、上場株式、未上場株式に分けて課税上取り扱われます。ただし、ほとんどの方が所有している外国株式は上場外国株式に該当するものでしょう。

 上場外国株式の譲渡損については、申告分離課税を選択した上場株式等グループの配当等・利子等・譲渡益・償還差益の金額から控除することができます。

 なお、控除しきれずに残った上場外国株式(日本で内閣総理大臣の登録を受けている証券会社を通して行われたものに限る)の譲渡損は、確定申告をすることによって翌年以降3年間繰越すことができます。

外国の上場株式を国外の証券会社を通じて売買した場合

 外国金融商品市場に上場されている外国株式を、措法37条の12の2②一に規定する金融商品取引業者である国内の証券会社(内国法人)を通じて譲渡した場合には、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の対象となります(措法37の12の2)。

 よって、金融商品取引業の登録を受けていない(金融商品取引法第29条の内閣総理大臣の登録を受けていない)海外の証券会社を通じた譲渡などは、この特例の対象となる譲渡には該当しません。

 つまり、金融商品取引業者等(国内で登録した金融業者等)を通さずに譲渡した外国上場株式の譲渡損は、上場株式等の譲渡になることから、上場株式等の譲渡所得の計算内では差し引きして計算することはできます。ただし、配当との損益通算や繰越控除の特例の適用を受けることはできないということです。

 なお、信託会社の国内にある営業所に信託されている上場株式等の譲渡で、その営業所を通じて金融商品取引法第58条に規定する外国証券業者への売委託により行うもの又は外国証券業者に対して行うものについては、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の対象となります(措法37の12の2②九、十)。

外国株式の配当

 日本の証券会社に預けている外国株式の配当の課税の取扱いは、国内株式の配当と同じです。

邦貨(円)換算方法

 原則、支払開始日と定められている日の対顧客直物電信買相場(TTB)で換算します。

配当における課税の取扱い

 国内においての支払いの取扱者(証券会社等の金融商品取引業者等)を通じて交付を受ける外国株式の配当の課税の取扱いは、国内株式の配当と同じです。上場株式等の配当は20.315%(所得税等15.315%、住民税5%)、未上場株式の配当は所得税等20.42%(住民税はなし)の税率で源泉徴収されます。

 上場外国株式等の配当を受け取った個人は、「申告不要」「申告分離課税」「総合課税」のいずれかを選択します。

 一方、未上場外国株式の配当を受け取った個人は、原則として総合課税として確定申告する必要があります。ただし、少額配当に該当する場合、所得税については申告不要を選択することもできますが、住民税については徴収されていないので申告が必要となります。

 未上場外国株式の配当につき外国所得税が課されている場合には、これを控除した後の金額について支払いを受けるべき1回の配当金額が、10万円に配当期間の月数を乗じ12で除した金額以下であるかどうかで判定します(措法8の5①一、9の2③⑤)。

 なお、 外国株式等の配当を総合課税で申告しても、国内株式と違い、配当控除は利用できません(所法92①かっこ書)。ただし、外国税が徴収されている場合には、外国税額控除を受けることができます。

  外国の証券会社に預けている外国上場株式の配当は、日本の所得税等(+住民税)が源泉徴収されていないので、 上場外国株式等の配当を受け取った個人は、「申告分離課税」「総合課税」のいずれかを選択します。「申告不要」の選択はできません。

 なお、当初申告をした際に、うっかり、外国の証券会社に預けている外国上場株式の配当(国内源泉徴収のないもの)を記載せずに申告した後、税務署から漏れているので修正申告をしてくれと言われた場合、他の上場株式の配当があり当初申告で申告分離課税を選択していれば申告分離課税による修正申告となります。ただし、当初申告で、上場株式の配当で確定申告をしたものがない場合、あるいは、あっても総合課税を選択していた場合は、総合課税しか選択できません。

外国の証券会社に預けている上場外国株式の配当と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算

 外国金融商品市場において売買されている株式等も「上場株式等」に含まれることから、外国の証券会社に預けている外国上場株式の配当は、申告分離課税の選択及び上場株式等に係る譲渡損失との損益通算ができます(措法8の4①一、37の11②一、37の12の2①)。

 上述した、金融商品取引法上の登録を受けていない金融商品取引業者等において行う「上場株式等の譲渡」により生じた損失は、上場株式等の配当等との損益通算又は繰越控除ができない(措法37の12の2②一)ことと、混同しないように注意をする必要があります。

上場外国株式の配当について、すでに外国税が源泉徴収されている場合

 上場外国株式の配当について、すでに外国税が源泉徴収されている場合には、その徴収後の金額に対して、日本で20.315%の税率で源泉徴収されます。具体的には、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%です。

 例えば、配当を100,000円、国外源泉徴収税額(10%の場合)を10,000円とすると、100,000円から10,000円を差し引いた90,000円の20.315%に相当する税額が、日本において源泉徴収されることになります。

 つまり、源泉所得税等(復興特別所得税含む)13,783円、源泉住民税4,500円となります。

(外国株式の配当金に対する国内での源泉徴収税額の計算式)
 外貨ベースの配当金×(1-現地源泉税率)×TTB×国内源泉徴収税率

配当の外国税額控除

 外国株式の配当について、すでに外国税が源泉徴収されている場合には、日本の投資家(居住者)の場合は、この配当等に対して日本国内でも課税されます。

 このように外国と日本とで二重に課税されるケースでは、二重課税を調整するため「外国税額控除」の規定が設けられており、確定申告することで、支払った外国税のうち一定額を日本の所得税・住民税から控除することができるとなっています(復興特別所得税を入れると話が細かくなるので以下省略します。)。

 なお、支払った外国所得税(外国税額控除の対象となるものに限ります。以下同じ。)のうち控除できる金額(所得税の控除限度額)は、次の計算式によって計算します。
 所得税の控除限度額=その年分の所得税の額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)

 外国税額控除限度額の計算では、支払った外国所得税の額が、上記の所得税の控除限度額に満たない場合には、所得税における外国税額控除額は、支払った外国所得税の額となります。

 しかし、支払った外国所得税額が上記の所得税の控除限度額よりも多い場合(つまり、所得税から控除しきれない場合)には、道府県民税や市町村民税(いわゆる住民税)からも控除する計算となっています(控除限度額まで)。

 また、外国税額が所得税等の控除限度額を下回った場合の差額を「控除余裕額」といい、逆に上回った場合の差額を「控除限度超過額」といいます。「控除余裕額」と「控除限度超過額」は、翌年以後、3年間繰越すことができます。

  なお、上場外国株式等の配当の申告について、「申告分離課税」「総合課税」のいずれかを選択しても外国税額控除の適用を受けることはできますが、 「申告不要」の場合は利用できません。

 国外株式の配当等について、申告不要制度(措法8の5、9の2⑤)の適用を受けること(申告しないこと)を選択した場合には、当該配当等に係る外国所得税額は、外国税額控除の計算上「外国所得税の額」に該当しないものとみなされるため、外国税額控除の計算の基礎に入れることはできないということです(措令4の5⑪)。

 確定申告で、国外株式の配当等について申告をしているが、外国税額控除の記載をしなかった場合は、更正の請求書に当該控除金額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付があり、かつ、控除対象外国所得税の額を課されたことを証する書類その他財務省令で定める書類を添付すれば、外国税額控除を適用することができます(所法95⑩)。

 また、本来、租税条約(協定)の制限税率で配当等の所得について現地で課される所得税が軽減・免除される場合であっても、納税者が適切に租税条約上の届出を現地の金融機関等に行っていなければ、通常、現地の国内税法により軽減・免除される額を超えて外国所得税が課されます。

 例えば、租税条約(協定)の制限税率で配当等の所得に対する課税は10%を限度としているが、届出書を配当所得を受領する前に金融機関に提出していなかったため、現地の国内税率である20%によって現地源泉所得税が徴収されてしまうということです。

 そのような場合、租税条約相手国において課することができるとされている額を超えて外国税額控除をすることはできない(所令222の2④四)ため、上記の例であれば、日本において確定申告をする場合の外国税額控除の制度の適用となる外国所得税の額は20%ではなく10%となります。

 また、スイス、ドイツ、オランダなど一部の国では租税条約の適用を現地の所得税の源泉徴収後の還付申告を前提としています。租税条約の制限税率によらずに全ての非居住者に対して一律に源泉徴収されるため、制限税率超過分はそれぞれの現地課税当局に対して還付請求手続きをすることによって還付されます。

 例えば、スイスにおいて日本との租税条約上は配当については10%ですが、現地源泉徴収税率が35%であるため、10%部分については、日本の確定申告における外国税額控除の適用対象となりますが、差額の25%部分は外国税額控除の適用対象となりません。

 差額の25%部分の外国所得税額の還付をスイス課税当局に請求することになります。

 外国所得税額の還付を現地課税当局に請求する際に、日本における居住者証明書を提出する必要が生じたときは、所轄の税務署で証明請求を行います。

国税庁HPNo.9210 居住者証明書の請求
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9210.htm

外国株式の配当のまとめ

( 日本の証券会社に預けている外国株式の配当 )

外国株式の配当の種類国内源泉徴収税率申告方法
上場株式等の配当20.315%
(所得税等15.315%、住民税5%)
いずれかを選択
・申告不要(外税控除なし)
・申告分離課税(外税控除あり)
・総合課税(外税控除あり)
未上場株式等の配当少額配当20.42%
(所得税等 20.42%)
いずれかを選択
・申告不要(外税控除なし) 。住民税の申告は必要
・総合課税 (外税控除あり)
少額配当以外 20.42%
(所得税等 20.42%)
総合課税 (外税控除あり)

( 外国の証券会社に預けている外国株式の配当 )

外国株式の配当の種類国内源泉徴収税率申告方法
上場株式等の配当源泉徴収なしいずれかを選択
・申告分離課税(外税控除あり)
・総合課税(外税控除あり)
未上場株式等の配当 源泉徴収なし総合課税 (外税控除あり)

租税条約(租税協定を含む。)は、国際的二重課税排除のために外国税額控除を認める旨を規定しているが、同規定は、具体的な適用条件や控除額の計算について、租税条約が国内法と異なる定めをしている場合に限り、優先的に適用されるものであるとされた東京高裁令和3年1月28日判決

(1)事件の概要

1 X(納税者)は、外国法人から支払を受けた配当金について、当該配当金の支払通知書に記載された外国所得税の全額を外国税額控除の額とし、これを控除する旨の平成29年分の所得税及び復興特別所得税(所得税等)の確定申告を行ったところ、Y(課税庁)は、所得税法に規定する外国税額控除の限度額を超える外国所得税の額を控除することはできないとして、同年分の所得税等の更正処分(本件更正処分)及び過少申告加算税の賦課決定処分(本件賦課決定処分)を行った。
2 Xは、本件更正処分による外国税額控除の額の減額部分は、我が国が締結した租税条約に反するなどとして、本件更正処分の一部の取消し及び本件賦課決定処分の取消しを求めて本訴を提起した。

(2)本件の主な争点

 外国所得税の額のうち控除限度額を超える部分について外国税額控除を認めなかった本件更正処分は適法か否か。

(3)裁判所の判断

 裁判所は、第一審の判断を補正又は引用し、要旨次のとおり判断し、Xの控訴を棄却した。
1 国際的二重課税を排除するか否かは、各国の政策的判断により決定される事項であって、我が国は、租税条約の有無にかかわらず、国際的二重課税を排除することを目的として外国税額控除制度(所得税法95条)を設けているところ、これは、我が国の国際的競争力の維持発展を図るという政策的要請の下に、国際的二重課税を防止し、投資や経済活動に対する課税の公平と税制の中立性の確保という政策的目的を実現するために、課税を減免する措置を定めたものというべきである。そして、所得税法施行令222条が控除限度額を定めるところ、この規定は、上記の政策的考慮を超えて我が国の国内源泉所得に対する税負担が減少することのないようにする目的に照らし合理的なものであり、違法であるということはできない。
 そして、我が国が締結した租税条約においては、国際的二重課税排除のために外国税額控除を認める旨を規定しているが、同規定は、具体的な適用条件や控除額の計算について、租税条約が国内法の規定するところと異なる定めをしている場合に、その限りにおいて優先的に適用されるものと解される。
2 本件における各租税条約においては、いずれも日本の所得税法の規定に従って外国税額控除を行うこととされていると認められるから、Xの平成29年分の所得税等に係る外国税額控除の額は、同法95条及び所得税法施行令222条の規定に従って計算した控除限度額を限度として計算することとなるため、本件更正処分における外国税額控除の額の計算に誤りはなく、同処分は適法である。