支払われる対価が給与なのか外注費なのかで、消費税課税の要否、源泉所得税徴収の要否、労働保険料や社会保険料の負担の要否の判定に影響するため、給与なのか外注費なのかの判定を巡る争いが、会社と課税庁の間ではたびたび生じています。

 会社としては、給与とするより外注費として処理する方がトクするので、外注費として処理するが、実態が給与の場合、税務調査により、給与であると否認されてしまうケースが多いです。

 特に、最近、会社側の都合で、今まで従業員として給与を支払っていたが、外注費として処理したほうが会社にとってメリットがあるということで、安易に変更して、税務調査の際に否認されるケースが増えているので注意が必要です。

会社側の処理給与外注費
消費税課税仕入れに該当しない課税仕入れに該当する
源泉所得税徴収必要報酬・料金等に該当すれば必要
社会保険負担あり負担なし

給与所得なのか事業所得なのかの判例での判定方法

 一般的に、会社側が給与として支払う場合は、対価を貰う側は給与所得となります。また、会社側が外注費として支払う場合は、対価を貰う側は事業所得(雑所得)となります。

 給与所得とは、所得税法28条1項において「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。」とされています。具体的には、雇用契約又はこれに準ずる契約等に基づき、雇用主の指揮命令に服して提供した役務の対価をいい、拘束された時間に対する弁償といえるものです。

 一方、事業所得とは、所得税法27条に定義されていますが、過去の判例を要約すると「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」とされています。

 判例での判定方法は、以下を元に総合勘案して判断するということになります(東京国税局平成15年7月28号)。

判定項目給与事業
雇用契約又はこれに準ずる契約等に基づいているかYESNO
使用者の指揮命令に服して提供した役務かYESNO
使用者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受けているかYESNO
継続的ないし断続的に労務の又は役務の提供があるかYESNO
自己の計算と危険において、独立して営まれているかNOYES
営利性、有償性を有しているかNOYES
反復継続して遂行する意思があるかNOYES
社会的地位が客観的に認められる業務かNOYES

最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)

 給与所得か事業所得に該当するかを判断するうえで極めて有名な弁護士顧問料事件(最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決・民集35巻3号672頁)では以下のように判示しています。

「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、これに対し、給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。」

給与所得なのか事業所得なのかの実務上の判定方法

 給与所得か事業所得かを判断する場合、上記の判例での判定方法では抽象的なので、実務上は、消費税法基本通達1-1-1や「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」を元に総合勘案して判断することが多いです。

(1)契約の内容が他人の代替を受け入れるかどうか
 一般に雇用契約に基づく給与の場合、雇用された人は自分自身が仕事をしたことにより、その役務の対価を受け取ることができます。
 一方、請負契約に基づく事業所得の場合、依頼主との間で仕事の期限、代金等を決定すれば、実際の仕事を行う者は必ずしも請け負った者自身に限らず、自己が雇用する者その他の第三者にまかせることができ、期限までに完成させて納品すれば、決められた代金を受け取ることができます。
 このように給与所得の場合は他人の代替ができませんが、事業所得の場合は他人の代替ができるという違いがあります。

(2)仕事の遂行に当たり個々の作業について指揮監督を受けるかどうか
 雇用契約の場合、雇用主が定める就業規則に従わなければならず、作業現場には監督がいて、個々の作業について指揮命令をするのが一般的です。
 一方、請負契約の場合、仕事の期限さえ守れば途中における進行度合いや手順等について、依頼主から特に指図を受けることがないのが通常です。
 コロナ禍で在宅勤務が一般的になっていますので、「依頼者等から離れた場所で働いている」イコール「請負契約」とはならないのは当然です。

(3)まだ引渡しを終わっていない完成品が不可抗力により滅失した場合において、その者が権利として報酬の請求をなすことができるかどうか
 請負契約の場合、引渡しを終えていない完成品が、例えば火災等により滅失して期限までに依頼主に納品できない場合には、対価の支払を受けることができません。
 しかし、雇用契約の場合、労務の提供さえすれば当然の権利として対価の請求をすることができます。

(4)材料が提供されているかどうか
 雇用契約の場合は雇用主が材料を所得者に支給しますが、請負契約の場合は所得者が材料を自分で用意するのが一般的です。

(5)作業用具が提供されているかどうか
 雇用契約の場合は雇用主が作業用具を所得者に供与しますが、請負契約の場合は所得者が自分で用意するのが一般的です。

 以上の判断項目に基づいた判定方法を図解すると次のとおりとなりますが、最終的には事例に応じて詳細かつ具体的な事実を把握、収集し、総合勘案して判定する必要があります(東京国税局平成15年7月28号)。

判定項目給与事業
当該契約の内容が他人の代替を容れるかNOYES
仕事の遂行に当たり個々の作業について指揮監督を受けるかYESNO
まだ引渡しを終わっていない完成品が不可抗力のため滅失した場合等において、
その者が権利として報酬の請求をなすことができるか
YESNO
材料が提供されているかYESNO
作業用具が供与されているかYESNO

消費税法基本通達1-1-1(個人事業者と給与所得者の区分)

 事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。

大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)/大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得区分

 事業所得とは、自己の計算において独立して行われる事業から生ずる所得をいい、例えば、請負契約又はこれに準ずる契約に基づく業務の遂行ないし役務の提供の対価は事業所得に該当する。また、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく役務の提供の対価は、事業所得に該当せず、給与所得に該当する。
 したがって、大工、左官、とび職等が、建設、据付け、組立てその他これらに類する作業において、業務を遂行し又は役務を提供したことの対価として支払を受けた報酬に係る所得区分は、当該報酬が、請負契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのか、又は、雇用契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのかにより判定するのであるから留意する。
 この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
(5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。

従業員から外注先に変更になった作業員に支払った報酬について、「給与等」に該当し、仕入税額控除の対象とならないとされた東京地裁令和3年2月26日判決(令和2年(行ウ)68号)

事件の概要

 本件は、塗装工事業等を営む原告Xが、作業員2名に支払った報酬(本件支出金)を課税仕入れとして消費税等の申告をしたところ、所轄税務署長から、当該報酬は作業員にとって給与所得であるから課税仕入れに当たらないなどとして、消費税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに源泉所得税等の納税告知処分を受けたことから、これらの処分の取消しを求める事案である。

 作業員が従業員から外注先に変更になった理由は次の通りである。

 Xは、平成26年10月頃、Xの各従業員に対し、平成27年4月から健康保険及び厚生年金保険に加入し、給与から健康保険及び厚生年金保険に係る各保険料を徴収する旨説明したところ、Xの従業員であった甲及び乙から、給与が減額されるのは困るので、「外注先」として取り扱ってほしいとの申出があった。
 Xは、上記申出を受け、平成27年4月から甲及び乙を「外注先」として取り扱うこととし、同年3月、所轄公共職業安定所長に対し、甲及び乙が同月31日に離職する旨を記載した「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出し、同年4月7日付けで同所長から「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(被保険者通知用)」の交付を受けた。

本件の争点

 Xが外注先として作業員に支払った報酬について、「給与等」に該当し、仕入税額控除の対象とならないか。

裁判所の判断

① 本人に代わって他の者が役務を提供することが認められている場合や、本人が自らの判断によって補助者を使うことが認められている場合等役務の提供の代替性が認められている場合には、「給与等」該当性を否定する要素の一つとなる。本件各作業員が予定されていた作業を休むこととなった場合には、Xが代替の作業員を手配していた。このことは、本件各作業員は、Xの他の従業員と同様、代替性が認められていなかったことを示すものである。
② 具体的な仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対して諾否の自由があることは、「給与等」該当性を否定する重要な要素となる。本件各作業員は、本件支出金が支出されていた間も、従業員であった時期と同様に、Xから空間的、時間的な拘束を受け、Xの指揮命令に服し、Xに対して継続的ないし断続的に労務又は役務を提供していたものというべきであり、このことは、本件支出金の「給与等」該当性判断において最も重視されなければならない。
③ 報酬が、完成した仕事の内容ではなく、時間給、日給、月給等時間を単位として計算される場合には、「給与等」該当性を補強する重要な要素となる。本件各作業員には、完成すべき作業の定めはなく、依頼した作業が完成しなかったとしても、作業日数に応じた報酬が支払われていた。Xと本件各作業員との間で契約書は交わされておらず、危険負担についての定めもなかった。
④ 据置式の工具など高価な器具を所有しており、これを使用している場合には、事業者としての性格が強く、「給与等」該当性を弱める要素となる。本件についてみると、工具については、現場で着る作業着と手持ちの道具箱に入るくらいのコテとヘラを本件各作業員が用意し、それ以外の軍手、ハケ、ローラー、研磨機、マゼラーなどの道具や機械はXから支給されたり貸与されたりしていた。これは、各作業員が従業員であった時期と同様であった。
⑤ Xは、平成27年3月、所轄公共職業安定所長に対し、各作業員が同月31日に離職する旨を記載した「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出した。また、Xは、本件支出金を外注費に計上し、源泉所得税を徴収せず、本件各作業員は、本件支出金を事業所得として申告していた。
⑥ 以上の事情を総合すると、本件支出金は、Xから空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的にされる労務又は役務の提供の対価として支給されたものであり、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付というべきであるから、所得税法28条1項の「給与等」に該当する。

 判決を不服としたXは控訴したが、控訴審である東京高裁令和3年8月24日判決においてもXの主張は認められなかった。