慰安旅行

 慰安旅行とは、会社が従業員のために行う、レクリエーション旅行のことをいいます。旅行にかかる費用としては、鉄道・航空運賃、ホテル・旅館の宿泊代、食事代、ベルボーイや仲居さん等へのチップ等が該当します。

法人税の取り扱い

 慰安旅行が、社会通念上一般的に行われていると認められる範囲であれば、福利厚生費となり、旅行に参加した人について給与課税(源泉徴収)をしなくてもよいことになっています(所基通36-30、昭63直法6-9、平5課法8-1改正)。

 福利厚生費として取り扱われるための条件は次のとおりです。
①旅行費用の会社負担分が、少額であること。
 目安は会社負担分が10万円程度まで(会社負担分が10万円、従業員負担分がゼロでもOK)。
②旅行の参加行事が社会通念上一般的であること
 全員参加の行事としてゴルフをする場合は、たとえ1泊2日の格安な社員旅行であっても、一般的とはいえないとされます。そのため、 原則として、課税される経済的利益になります。また、1年に2回実施するようなこと も、一般的とはいえないとされます。
③旅行の期間が4泊5日以内であること。
 海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること(機内での寝泊りは1泊として、カウントしません)。
④従業員全員を対象とし、旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
 工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要。なお、成績優秀であった支店のみを慰安旅行の対象とするようなことは、その支店の参加者が50%以上であっても経済的利益の供与があったものと考えられます。
⑤自己都合による不参加者に金銭を支給しないこと(詳しくは下記)
 
 ただし、上記すべての条件を満たしている旅行であっても、以下のような旅行は従業員のレクリエーション旅行であると考えられないため、その旅行に係る費用は給与、交際費などで処理しなくてはいけません。つまり、法人税における損金不算入や源泉所得税の問題が生じるということです。
(1)役員だけで行う旅行⇒役員賞与
(2)取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行⇒交際費
(3)実質的に私的旅行と認められる旅行⇒役員賞与、給与手当
(4)金銭との選択が可能な旅行⇒役員賞与、給与手当

国税庁公表による参考事例

 慰安旅行に関しては、税務調査で争点になることが多いです。そのため、国税庁はタックスアンサー「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」で参考事例を公表しています。

 (参考事例)
[事例1]
 イ旅行期間     3泊4日
 ロ費用及び負担状況 旅行費用15万円(内使用者負担7万円)
 ハ参加割合     100%
 ・・・旅行期間・参加割合の要件及び少額不追求の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として非課税

[事例2]
 イ旅行期間     4泊5日
 ロ費用及び負担状況 旅行費用25万円(内使用者負担10万円)
 ハ参加割合     100%
 ・・・旅行期間・参加割合の要件及び少額不追求の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として非課税

[事例3]
 イ旅行期間     5泊6日
 ロ費用及び負担状況 旅行費用30万円(内使用者負担15万円)
 ハ参加割合     50%
 ・・・旅行期間が5泊6日以上のものについては、その旅行は、社会通念上一般に行われている旅行とは認められないことから課税

旅行期間旅行費用社員参加割合給与課税
旅行費用総額会社負担分従業員負担分
事例13泊4日15万円7万円8万円100%非課税
事例2 4泊5日25万円10万円15万円 100%非課税
事例3 5泊6日 30万円15万円15万円 50%課税

 事例3で、給与課税をする理由として、旅行期間についてしか触れておらず、金額については触れていません。そのため、15万円の会社負担分はOKであるのか疑問が残るところです。ただし、給与課税を確実に避けたいのであるならば、やはり会社負担分は10万円程度までにしておいた方が良いと思います。

一般的な海外旅行に要する費用等の額と会社負担金額等

 平成22年12月17日裁決(裁事81集)による認定事実
 官公庁及び民間企業からの依頼により賃金、労務管理、労働問題、経営管理等に関する各種調査研究の受託業務等を行っている法人であるE社が会員企業に対して行った社内行事と余暇・レク活動等に関するアンケート調査の結果によれば、海外への社員旅行を実施した企業の一人当たりの海外旅行費用平均額及び会社負担金額は、次のとおりであった。

番号調査実施年月平成11年7月平成16年3月平成21年12月
1海外旅行費用平均額112,421円108,000円81,154円
21の内、会社負担金額69,089円74,000円56,889円
3会社負担割合(2/1)61.5%68.5%70.1%

 マカオへの2泊3日の社員旅行であり、従業員のほぼ全員が参加したのだが、従業員一人当たりの会社負担額が24万円余と高額であるために、その費用が福利厚生費か給与かで課税庁と争われた平成22年12月17日裁決(裁事81集)では、以下のように判断され、納税者(会社側)の福利厚生費であるとの主張は棄却されました。

「レクリエーション行事として行われる旅行が本件基本通達にいう社会通念上一般的に行われていると認められるものに当たるか否かの判断に当たっては、当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員の参加割合、使用者及び参加従業員の負担額、両者の負担割合等を総合的に考慮すべきであるが、少額の現物給与は強いて課税しない(少額不追求)という本件基本通達の趣旨からすれば、従業員の参加割合、参加従業員の費用負担額ないし両者の負担割合よりも、参加従業員の受ける経済的利益、すなわちレクリエーション行事における使用者の負担額が重視されるべきであるところ、請求人が負担した従業員一人当たりの本件旅行の費用の額は、海外への社員旅行を実施した企業の一人当たりの会社負担金額を大きく上回る多額なものであるから、少額不追求の観点から、強いて課税しないとして取り扱うべき根拠はないものといわざるを得ない。」
「したがって、本件旅行については、社会通念上一般的に行われているレクリエーション行事の範囲内と認めることはできない。」

 なお、その後、 東京地裁平成24年12月25日判決(税資262号-272(順号12122))、東京高裁平成25年5月30日判決(税資263号-98(順号12222)) 及び最高裁(第二小法廷)平成25年11月8日決定(税資263号-206(順号12330))においても争われましたが、納税者敗訴となっています。

慰安旅行に不参加者がいる場合

 若い世代の方に多いのですが、会社が行う慰安旅行に行きたがらない方もいます。また、会社の業務上、ある従業員の方には、慰安旅行に参加させずに仕事をしてもらう場合もあるでしょう。この場合、不参加者に金銭を支給すると給与課税の問題が発生します(所基通36-30、36-50)。

 ①自己都合による不参加者に、金銭を支給
 旅行不参加者だけでなく、参加者も含めた全員に、不参加者に支給された金銭相当分の給与課税がかかります。例えば、自己都合による不参加者に対して金銭1万円を支給した場合には、金銭支給を受けた不参加者はもちろんのこと、参加者も同様に1万円の給与課税が行われます。従業員全員が、その行事に参加するか、または、参加しないで金銭支給を受けるかの選択ができるからです。
 ②会社の業務上の都合による不参加者に、金銭を支給
 業務を休めない部署や出張など、会社都合での旅行不参加者に金銭を支給した場合は 、その不参加者に対して、支給された金銭相当分の給与課税がかかります。なお、参加者への給与課税はありません。

家族同伴の慰安旅行

 外資系の会社に多いのですが、従業員だけでなく、従業員の家族も招待する慰安旅行を行っているケースがあります。ただし、日本の税務上においては、家族も招待する慰安旅行は社会通念上一般的とは認められません(せいぜい、日帰りの海水浴やピクニックまでが限度)。ですから、家族同伴で参加した従業員には、「本人分+家族分」の費用が給与課税されることになります。
 しかし、家族同伴で参加する従業員がいたとしても、慰安旅行そのものが社会通念上一般的の範囲内であれば、単身参加した従業員については、給与課税されることはないと考えられます。

 従業員の家族分費用について、裁決では以下のように判断しています。

 平成9年7月2日(熊裁(法・諸)平9第3号)
「本件慰安旅行の日程、参加者、費用の額からみて、当該旅行に要した費用のうち、従業員等に係る部分については所得税の課税の対象にせず、請求人の福利厚生費として損金の額に算入することは相当と認められ、この点については、請求人及び原処分庁双方に争いはない。」
「しかしながら、本件所得税通達及び本件運用通達は、従業員等本人の旅行等の費用を使用者が負担した場合に、これらの旅行等に参加した従業員等が受ける経済的利益についての取扱いを定めたものであり、従業員等の家族が参加した場合の当該家族に係る部分の費用を使用者が負担した場合については、たとえ、従業員等本人に係る部分について経済的利益として課税されないものであっても、そのことをもって、当該負担額が福利厚生費等として法人税の所得金額の計算上損金の額と算入されるものと解することはできない。したがって、このような場合は、従業員等以外の者を参加させた理由、目的等を総合して判断すべきものと解するのが相当である。」
「本来、福利厚生費とは、専ら従業員等本人のために行う福利厚生のために通常要する費用をいうのであるから、従業員等の家族を参加させなければその目的を達せられないなど特段の事情がある場合はともかく、単に家族による内助の功に報いるという趣旨のものはこれに当たらないと解するのが相当である。したがって、本件慰安旅行については、そのような特段の事情は認められないから、この点に関する請求人の主張は採用できない。」

 平成23年4月14日裁決(名裁(諸)平22第48号)
「本件行事が会社の行う社会通念上一般的に行われていると認められるレクリエーション行事に該当するといえたとしても、本件家族分各費用に係る経済的利益には、本件通達の適用がなく、課税対象となる。」
「本件家族分各費用に係る経済的利益は、請求人と本件家族参加各従業員との雇用関係等に基づき受けることができた経済的利益であることは明らかである。したがって、本件家族分各費用に係る経済的利益は、本件家族参加各従業員に対する給与等として、本件家族参加各従業員に帰属する。」
「定期的な給与でないことは明らかである。したがって、本件家族分各費用に係る経済的利益は、本件家族参加各従業員に対する臨時的給与(賞与)に該当する。」

源泉所得税の取り扱い

 会社が行った慰安旅行が、社会通念上一般的に行われていると認められるものでないと否認された場合、会社負担額の全額が給与とされ、会社は源泉徴収する必要があります。なお、この場合は賞与支払い時や年末調整時に源泉徴収することが多いです。

 ただし、不満に思う従業員のことを考えて、追加徴収すべき所得税を徴収しないで、賞与処理する会社もいますが、その場合は、その賞与の源泉後の金額(手取り額)と一致させる必要があります。

 例えば、慰安旅行に関する従業員甲の追加徴収すべき源泉所得分が10,000円で、その分を税務署に収めたとします。

 未収金 10,000円 預り金  10,000円
 預り金  10,000円 現金  10,000円

 そして、賞与の税率が10%だとしたら、以下のように賞与処理します。

 給与(賞与) 11,111円  未収金 10,000円
              預り金  1,111円  

消費税の取り扱い

 ①国内慰安旅行
 一般的には、全額が課税仕入れとなります。ただし、ベルボーイや仲居さん等へのチップは、謝礼であるため、役務提供の対価ではありません。そのため、課税仕入れにはなりません。
 ②海外慰安旅行
 海外取引と国際間運賃は課税仕入れとなりません。ただし、国内で使われる費用は課税仕入れとなります。
(例)国内における集合場所から空港までの運賃。パスポート取得代行費用。
 旅行業者に一括で払う場合は、旅行業者から発行される請求書をもとに、課税仕入れの区分を行ってください。  

慰安旅行の証拠資料

 慰安旅行であったという証拠資料を保存しておいたほうが良いでしょう。
(例)旅行費用請求書、領収書、明細書、パンフレット、写真、慰安旅行の日程表など