概要

 期限内申告書(還付請求申告書を含む。)を提出した後、修正申告書の提出があったときには、修正申告により納付することとなった税額の10%(期限内申告税額相当額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)に相当する過少申告加算税が課せられます(通則法65①、②)。

 ただし、修正申告書の提出が、調査通知以後、かつ、調査による更正を予知してされたものでない場合には、その提出により納付することとなった税額の5%(期限内申告税額相当額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)に相当する過少申告加算税が課せられます(通則法65①括弧書、⑥)。

 なお、修正申告書の提出が、調査通知以前、かつ、調査による更正を予知してされたものでないときは課されません(通則法65⑥)。

 なお、納税者に隠蔽又は仮装の事実があっても、調査による更正を予知しないで自発的に修正申告書の提出をした場合には、過少申告加算税が課されない、又は軽減されますが、この場合には重加算税も課されません(通則法68①括弧書)。

調査による更正を予知してされたものでないときの修正申告の場合には課されない理由

 納税義務者の自発的な修正申告を勧奨するためであり、和歌山地裁昭和50年6月23日判決(税資82号70頁)は、次のように判示しています。
「適正に申告がなされることを促す一方において、税務当局の徴税事務を能率的かつ合理的に運用し、申告の適正を維持するため、税務当局において先になされた申告が不適法であることを認識する以前に、納税義務者が自発的に先の申告が不適法であることを認め、あらたに適法な修正申告書を提出したときには、これに対し右加算税を賦課しないこととされているのである。」

還付申告書を提出している場合

 還付申告書を提出している場合にも、その還付申告額が過大であり、それが修正(又は更正)の対象になれば、実際に納付しなくても、原則として過少申告加算税が課せられます。

「調査」とは何か

 この場合に、「調査」とは何か、「更正の予知」とは何かということが問題なってきますが、「調査」の意義については幅広く解さざるを得ないとして、大阪地裁昭和45年9月22日判決(訟月17巻1号91頁)は、次のように判示しています。
「国税通則法24条(当時)にいう調査とは、課税標準等または税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味すると解され、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て更正処分に至るまでの思考、判断を含むきわめて包括的な概念である。」

 つまり、国税通則法65条5項に規定する「調査」とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を含む税務調査全般を指すものと解され、いわゆる机上調査のような租税官庁内部における調査をも含むものと解されます。

 本件条項の文言及び趣旨からすると、修正申告書の提出が、その申告に係る国税について更正があるべきことを予知してされたものでないことの判断に当たっては、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して判断すべきということになります。

 なお、「申告所得税及び復興特別所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」の第1の2《修正申告書の提出が更正があるべきことを予知してされたと認められる場合》は、本件条項の規定を適用する場合において、その納税者に対する臨場調査、その納税者の取引先に対する反面調査又はその納税者の申告書の内容を検討した上での非違事項の指摘等により、当該納税者が調査のあったことを了知したと認められた後に修正申告書が提出された場合の当該修正申告書の提出は、原則として、本件条項に規定する「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当する旨定め、その注書は、臨場のための日時の連絡を行った段階で修正申告書が提出された場合には、原則として、「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当しない旨定めています。

修正申告書の提出が、通則法65条1項括弧書に規定する更正があるべきことを予知してされたものでないときに該当しないとされた事例-令和3年1月6日裁決(東裁(所)令2第46号)(棄却)

(1)事案の概要

 審査請求人Xが、原処分庁からの実地調査に係る事前通知があった後、実際の臨場前に所得税等の修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を提出したところ、原処分庁が過少申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、Xが、本件修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知したものではないとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2)本件の主な争点

 本件修正申告書の提出が、通則法65条1項括弧書に規定するその申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときに該当するものか否かである。

(3)裁決要旨(棄却)

① 通則法65条1項括弧書の規定の趣旨からすると、修正申告書の提出が、その申告に係る国税について更正があるべきことを予知してされたものでないことの判断に当たっては、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して判断すべきである。
② 通則法65条1項括弧書に規定する「調査」とは、課税庁が行う課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を含む税務調査全般を指すものと解され、いわゆる机上調査のような租税官庁内部における調査をも含むものと解される。
③ 担当調査官は、令和元年5月7日に、法定調書を出力し、確定申告と照合して本件譲渡(株式に係る譲渡)の申告漏れを把握したことから、租税官庁内部における机上調査を行ったものと認められる。次いで、担当調査官は、Xの税務代理人に調査に係る事前通知を行い、その後同月13日までの間に、本件譲渡について確認をしたい旨を伝えており、調査の目的が本件譲渡の申告漏れに係る調査であることは明白である。そして、税務代理人は、同月21日付で、証券会社における証券取引に係る記録の写しの交付を受けて確認し、修正申告書の提出に至ったというものであり、修正申告書の提出は、担当調査官からの本件譲渡に係る摘示とは無関係に自主的にされたものと認めることはできない。
④ 以上のとおり、担当調査官は、修正申告書の提出前に通則法65条1項括弧書に規定する「調査」を行ったものと認められ、修正申告書の提出に至る、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、調査の内容との関連性等の事情を総合考慮すると、本件修正申告書の提出が、通則法65条1項括弧書に規定する更正があるべきことを予知してされたものでないときに該当しない。