概要

 インボイスに対応するのに大変だというのに、電子帳簿保存法にも対応しないといけないわけで、現在、事業者はとても忙しい状況だと思います。

 特に、人手不足、資金不足の中小企業は、大変な状況だと思います。経理をしてくれる人がいない、忙しくてやめてしまったという中小企業は多いでしょう。

 しかしながら、電子帳簿保存法に対応する必要があります。以下は、人手不足、資金不足の中小企業向けの実践的な電子帳簿保存法対応策を説明します。

紙の領収書等

 紙の領収書等は、そのまま保存をしてください。スキャナ保存(紙で受領・作成した書類を画像データで保存)をすれば、読み取った後の紙の領収書等を廃棄できるので、紙の領収書等のファイリング作業や保存スペースが不要になります。

 ただし、電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件を満たす必要がありますので、現時点では、素直に、紙の領収書等のまま保存することをお勧めします。

 保存方法は、A4の紙に日付(月)ごとにテープやのりで貼り付けた紙の領収書等をファイリングするとよいでしょう。

電子の領収書等(電子取引データ)

 「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいいます。なお、この取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。

 具体的には、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等をいいます。

 amazonや楽天等のECサイトによる購入、店頭でのクレジットカード・電子マネーによるキャッシュレス決済や、取引先によるメールに添付されたPDFによる請求書等受取りも電子取引となります。

 電子の領収書等(電子取引データ)は原本ですので、これをそのままPCやクラウド等に保存してください。紙の領収書等の保存のように、わかりやすく保存をしてください。

 例えば、電子の領収書等保存専用のフォルダーを作成し、そのフォルダーの下に年分(事業年度)ごとに月々に分けて、そこに電子データをいれる等がよいでしょう。

 本来は、「可視性の確保」と「真実性の確保」を満たすという一定のルールに従って電子取引データを保存する必要があるのですが、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)は、電子取引データをそのまま保存しておくだけで大丈夫です(ただし、下記説明する税務調査対応はしてください)。

 相当の理由とは、「システム整備が間に合わない」「資金不足」「人手不足」など、幅広い理由で認められるため、人手不足、資金不足の中小企業は、電子取引データを保存しておけばよいということになります。

 そして、税務調査等の際に、「電子取引データのダウンロードの求め」または「電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求め」に応じることができるようにしてください。

 つまり、電子取引データを消さずに保存しつつ、税務調査などの際に、電子取引データや電子取引データをプリントアウトした書面を渡せるようにしておけばよいということになります。

まとめ

 電子の領収書等は、消さずにPCやクラウド等に電子の領収書等保存専用のフォルダーを作成し、そこに保存しておいてください。

 そして、「電子の領収書等をプリントアウトした書面」と「紙の領収書等」を整理してファイリングをしておいてください。

 電子の領収書等をプリントアウトしていなくても、税務調査の際に、PCやクラウド等に保存した電子の領収書等をダウンロード(渡せるように)すればよいのですが、あらかじめプリントアウトしていたほうが実践的だと思います。

 紙の領収書等、電子の領収書等を問わずに、経費等については、1つのファイルの中ですぐに見れる状況にしておくのがよいでしょう。