デパート

 百貨店などの小売業には消化仕入という取引形態があります。この形態の場合は、店舗にある商品の所有権・保管責任は仕入先(百貨店への出店業者)が保有しています。

 そして、百貨店への出店業者が顧客へ商品販売した時に、百貨店は仕入と売上を同時に計上します。

本人取引か代理人取引か

 収益認識会計基準では、財又はサービスを企業が自ら提供する履行義務である場合は、本人取引に該当し、企業は収益を総額で表示することとしています(収益認識適用指針39項)。

 一方で、財又はサービスを他の当事者によって提供されるように企業が手配する履行義務である場合には、代理人取引に該当し、企業は収益を純額で表示することとしています(収益認識適用指針40項)。

 買取仕入(返品条件付買取仕入も含む。)の場合は、本人取引に該当し総額表示となります。一方、消化仕入は代理人取引に該当し純額表示となります。

 企業は、本人取引であるのか代理人取引であるのかを、顧客に約束した特定された財またはサービスのそれぞれについて判断します(収益認識適用指針41項)。

 顧客との約束の性質が、財又はサービスを企業が自ら提供する履行義務である(本人取引)のか、あるいは財又はサービスが他の当事者によって提供されるように企業が手配する履行義務である(代理人取引)のかを判定するためには、次の(1)及び(2)の手順に従って判断します(収益認識適用指針42項)。

(1) 顧客に提供する財又はサービスを識別すること(例えば、顧客に提供する財又はサービスは、他の当事者が提供する財又はサービスに対する権利である可能性がある。)
(2) 財又はサービスが顧客に提供される前に、当該財又はサービスを企業が支配しているかどうか(会計基準37項)を判断すること

 そして、企業が財またはサービスを顧客に提供する前に支配しているかどうかを判定するにあたっては、例えば、次の(1)から(3)の指標を考慮します(収益認識適用指針47項)。

(1)企業が当該財またはサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有していること
(2)当該財またはサービスが顧客に提供される前、あるいは当該財またはサービスに対する支配が顧客に移転した後(例えば、顧客が返品権を有している場合)において、企業が在庫リスクを有していること
(3)当該財またはサービスの価格の設定において企業が裁量権を有していること(ただし、代理人が価格の設定における裁量権を有している場合もある)

代理人取引の主な例

 財またはサービスを手配するだけの商社の取引や百貨店などの小売業における消化仕入は、一般的には、代理人取引に該当します。

 また、財またはサービスを手配するだけの電子商取引(ECやEコマース)サイトの運営も、一般的には、代理人取引に該当します。

仕訳

 代理人取引に該当する場合、販売額と仕入先に支払う対価の差額(純額)を収益に計上することになります。以下、収益認識基準による場合の取扱いの例「ケース6消化仕入(論点:本人・代理人)」(国税庁/平成30年5月)を改変。

(例)百貨店Aは、B社と消化仕入契約を締結している。百貨店Aは顧客に1個20,000円の商品(卸値19,000円)を1個販売した。百貨店Aは、自らをこの消化仕入れに係る取引における代理人に該当すると判断している。なお、消費税率10%とする。この場合の、百貨店Aの仕訳は次のとおり。

売掛金(現金) 22,000円   手数料収入 1,000円
仮払消費税 1,900円      買掛金  20,900円
               仮受消費税 2,000円

 一方、B社(中小企業)の仕訳は次のとおり。

売掛金   20,900円   売上   19,000円
             仮受消費税 1,900円              

法人税

 基本的に会計処理(仕訳)と同じとなり、上記の例でいえば、手数料収入1,000円が益金の額に算入されます。

消費税

 会計処理で、手数料部分のみを純額で収益計上したとしても、消費税法上は課税売上げに係る消費税額と課税仕入れに係る消費税額をそれぞれ認識することになります。

 つまり、会計・法人税においては一致するのですが、消費税は不一致となりますので注意が必要です。また、課税売上割合や免税の判定等に影響しますので、その点にも注意が必要です。

 上記の例でいえば、以下のようになります。
(1) 課税売上げに係る消費税等
課税売上げの対価の額     20,000円
課税売上げに係る消費税等   2,000円

(2) 課税仕入れに係る消費税等
課税仕入れの対価の額    19,000円
課税仕入れに係る消費税等   1,900円

 なお、棚卸資産の販売については、原則としてその引渡しの日がその譲渡の時期となります。よって、百貨店が行う消化仕入については、百貨店への納入業者が顧客に販売をした日が百貨店における譲渡の時期となります。つまり、販売した納入業者と仕入れをした百貨店は同時に課税資産の譲渡等を行ったことになります。

小さな会社の実践的な仕訳

 会計・法人税と消費税の考え方が不一致となるため、小さな会社は処理が混乱する可能性があります(もっとも、収益認識会計基準に準拠しない会社の方が多いと思いますが)。特に、税込経理処理をしている会社は、どのように仕訳を切ったら良いか判断に迷うでしょう。

 ですから、その場合は、期中は「売上」「仕入」科目で処理し、期末(決算)処理で「売上」「仕入」を相殺し、差額を「手数料収入」科目で計上すると良いでしょう。ただし、期中で金融機関等に試算表を提出しないといけない場合は、そのタイミングでも処理する必要があります。

 また、代理人取引以外の売上や仕入がある場合は、混同しないように、あらかじめ「代理人売上」「代理人仕入」科目のようなものを作成しておき、それで期中は会計処理しておいたほうがよいでしょう。

①税抜方式
(期中)
売掛金(現金) 22,000円    売上 20,000円
                仮受消費税 2,000円
仕入 19,000円         買掛金 20,900円
仮払消費税 1,900円

(期末)
売上 20,000円    仕入 19,000円
            手数料収入 1,000円

②税込方式
(期中)
売掛金(現金) 22,000円       売上 22,000円(課税売上げ)
仕入 20,900円 (課税仕入れ)    買掛金 20,900円

(期末)
売上(対象外)  22,000円    仕入(対象外) 20,900円
                 手数料収入(対象外) 1,100円

 税込み方式の注意点は、期中の売上、仕入の消費税の区分は課税売上げ、課税仕入れとするが、期末で「売上」「仕入」を相殺する時の消費税の区分は対象外とする必要があります。そうしないと、課税売上げ、課税仕入れの金額が相殺により0円となってしまうからです。

消化仕入と委託仕入(委託販売における受託)との違い

 どちらも、商品の所有権は仕入先にあり、百貨店などの小売業は売れ残り品等の在庫リスクを負担しません。

 一方、商品の保管責任に違いがあり、消化仕入の場合は保管責任は仕入先にあり、盗難リスク等は小売業側は負担しません。委託仕入の場合は、保管責任は小売業側が負担します。

所有権 保管責任在庫リスク
買取仕入 あり あり あり
返品条件付買取仕入 あり あり なし
委託仕入 なし あり なし
消化仕入 なし なし なし