概要
所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の確定申告をした場合、本来、納期限である3月15日までに納税をする必要があります。
例えば、令和5年分の納期限は、令和6年3月15日(金)です。この納期限までに、確定申告により納めることとなった税額の全額を納税することが原則となります。
資金繰りの都合で、全額の納税をすることができない方はいるでしょう。全額を納税することはできないが、半分を納めることができる場合は、延納制度を利用しましょう。
延滞税
もし、納税が納期限に遅れた場合は、本税とは別に、納期限の翌日から納付(完納)日までの延滞税がかかります(国通法60①)。
未納税額×「延滞税率」×延滞日数/365日=延滞税の額 〇 未納税額に1万円未満の端数があるとき、又はその税額の全額が1万円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てとなります(国通法118③)。 〇 延滞税の額に100円未満の端数があるとき、又はその全額が1,000円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てとなります(国通法119④)。 |
上記の延滞税率(延滞税の割合)は、以下となります(措法94①)。
(1) 納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合を適用することとなります。
(2) 納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合を適用することとなります。
令和4年1月1日~令和6年12月31日までは、延滞税特例基準割合をベースとした割合のほうが低くなるため、上記(1)の割合は2.4%、上記(2)の割合は8.7%となります。
例えば、令和6年3月15日までに令和5年分の所得税等の申告をしたが、遅れて納付した場合の延滞税の割合は、令和6年3月16日から同年5月15日までの間は年2.4%、令和6年5月16日以後は年8.7%となります。
上記のように、延滞税は高いですし、また、払っても次年分の必要経費にすることもできません(所法45①三)。
ですから、次に説明する延納制度を利用しましょう。
延納と利子税
延納
納期限までに納付すべき税額の2分の1以上を納付すれば、残りの税額の納付を5月31日(5月31日が土日祝日だった場合は翌営業日)まで延長することができます(所法131①)。
例えば、令和6年3月15日までに申告し、納付する税金の2分の1以上の金額を令和6年3月15日(金)までに納付すれば、残りの額を同年5月31日(金)まで延納することができます。
また、振替納税を利用している場合は、延納との併用も可能となっています。例えば、令和6年3月15日までに申告し、納付する税金の2分の1以上の金額を振替日である令和6年4月23日(火)に振替納税(口座引落し)すれば、残りの額を同年5月31日(金)まで延納することができます。
口座振替による納付は納期限に納付されたものとみなして、延納に関する規定を適用するとされているからです(国通法34の2②)。
延納の手続きとしては、確定申告書第一表の右下にある「延納の届出」の「申告期限までに納付する金額」と「延納届出額」を記載すれば届け出となり、特別な届出書はありません(所法131②、所規50)。
確定申告書第一表の右真ん中あたりにある「第3期分の税額/納める税金」(確定申告により納めることとなった税額)の2分の1以上の金額を「申告期限までに納付する金額」に記載し、残りの2分の1未満の金額を「延納届出額」に記載します。
ただし、「延納届出額」は、千円単位で記載することとなります。例えば、「第3期分の税額/納める税金」が408,100円であった場合、「申告期限までに納付する金額」に204,100円、「延納届出額」に204,000円を記載するようなこととなります。
なお、「申告期限までに納付する金額」は、必ず、申告期限までに納税してください。申告期限までに納税をしないと、延納の要件を満たさない事になり、所得税の督促状が税務署から送られてきます。
確定申告をし、「申告期限までに納付する金額」を申告期限までに納税していれば、「延納届出額」を納付するための納付書が、だいたい4月末ごろに税務署から送られてきます(振替納税を利用していない場合)。
その納付書をもって、5月31日までに納税をします。ゴールデンウィーク明けでも納付書が届いていない場合は、税務署に連絡して確認されるのがよいと思います。
利子税
延納期間中は、利子税がかかります(国通法64①、所法131③)。これは、民事においていまだ履行遅滞に陥っていない場合に課せられる約定利息に相当するものです。
延納届出額×「利子税率」×延納日数/365日=利子税の額 〇 延納届出額に1万円未満の端数があるとき、又はその税額の全額が1万円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てとなります(国通法118③)。 〇 利子税の額に100円未満の端数があるとき、又はその全額が1,000円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てとなります(国通法119④)。 |
上記の利子税率(利子税の割合)は、年「7.3%」と「利子税特例基準割合」のいずれか低い割合で利子税がかかります(措法93①)。
令和4年1月1日~令和6年12月31日までは、利子税特例基準割合のほうが低くなるため、は年0.9%となります。延滞税にと比べて、お得な割合となっています。
利子税の計算
5月31日に「延納届出額」を納税をした場合、延納日数は3月16日から5月31までの77日となりますので、令和5年分については以下となります。
延納届出額(1万円未満端数切捨て)×0.9%×77日/365日=利子税の額
(1)延納届出額が530,000円の場合
530,000円×0.9%×77日/365日=1,006円
100円未満の端数があるときは切捨てのため、1,000円
(2)延納届出額が520,000円の場合
520,000円×0.9%×77日/365日=987円
1,000円未満は全額切捨てのため、0円
必要経費
延滞税と違い、利子税のうち一定の金額は、利息としての経費性を有するものとして、利子税を納付した日の属する年分の必要経費に算入されます(所法45①二)。
例えば、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を行う居住者が納付した確定申告納税額の延納に伴って納付する利子税については、次の算式によって計算した金額が必要経費に算入されます(所令97①一)
納付した利子税額×(前年分の不動産所得の金額+事業所得の金額+山林所得の金額)÷前年分の各種所得の金額の合計額(給与所得の金額+退職所得の金額を除く) |