概要
会社を設立した後は、税務署、都道府県税事務所、市町村の税務担当部署に、必要な申請書・届出書を提出します。
書類ごとに、提出が必要になる条件と期限が異なります。特に、設立第1期から青色申告をしたい場合は、最初の決算日によって申請期限が早くなるため、設立後すぐに確認しましょう。
この記事では、日本国内に本店を置く株式会社・合同会社などの普通法人について、会社設立後の主な税務手続を説明します。内容は2026年10月15日時点の制度・公表資料に基づいています。
税務署に提出する主な申請書・届出書
まず、法人設立届出書、青色申告、給与支払事務所、源泉所得税の納期の特例について、次のように整理します。
| 書類 | 提出が必要になる場合 | 提出期限・時期 |
|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 普通法人などを設立した場合 | 設立の日以後2か月以内 |
| 青色申告の承認申請書 | 設立第1期から青色申告の承認を受けたい場合 | 設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日まで |
| 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 役員報酬・従業員給与などの支払事務を取り扱う事務所等を開設した場合 | 開設した日から1か月以内 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 給与の支給人員が常時10人未満で、納期の特例を受けたい場合 | 随時。ただし、通常は申請した月の翌月の源泉徴収分から適用 |
法人設立届出書は納税地の所轄税務署に提出します。一方、給与関係の届出・申請は、給与の支払事務を取り扱う事務所等の所在地を所轄する税務署に提出するため、提出先が同じとは限りません。
法人設立届出書は設立の日以後2か月以内
法人設立届出書は、会社の納税地、事業の目的、設立の日などを税務署に知らせる書類です。設立の日、すなわち設立登記の日以後2か月以内に、納税地の所轄税務署長に提出します(法法148)。
内国法人の法人税の納税地は、原則として本店又は主たる事務所の所在地です(法法16)。
添付するのは、定款などの写しです。税務署への法人設立届出書に、登記事項証明書を添付する必要はありません。代表者の押印も不要です(法規63、国税庁「内国普通法人等の設立の届出」)。
書面で提出する場合、現行の国税庁の手続案内では、届出書及び添付書類は1部提出とされています。会社で保管する控えは別に作成し、提出日とともに保存しましょう。
青色申告の承認申請は最初の決算日にも注意
設立第1期から青色申告の承認を受けたい場合は、次の2つの日のうち、いずれか早い日の前日までに申請します(法法122②一)。
- 設立の日以後3か月を経過した日
- 設立第1期の事業年度終了の日
「設立後3か月程度で提出すればよい」と考えると、初年度の決算が早い会社では期限を過ぎてしまうことがあります。
例えば、2026年10月15日に設立し、第1期の決算日を2026年10月31日とした会社では、青色申告の承認申請期限は2026年10月30日です。
法人設立届出書を提出する際に、青色申告の承認申請も併せて確認しておくと、提出漏れを防ぎやすくなります。
なお、設立の日から第1期の末日までの期間が3か月未満の場合は、第2期の申請期限にも特則があります。第2期については、設立の日以後3か月を経過した日と第2期の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日が期限になります。この特則によって、第1期の申請期限が延びるわけではありません(法法122②四)。
国税の届出・申請期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たる場合は、原則として休日等明けの日が期限となります。ただし、手続によって例外があるため、個々の提出期限を確認してください(通法10②)。
役員1人だけでも給与関係の届出を確認する
役員報酬や従業員給与などの支払事務を取り扱う事務所等を開設した場合は、開設した日から1か月以内に、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書を提出します(所法230、所規99)。
従業員を雇っていなくても、社長1人に役員報酬を支払う会社は対象になります。届出の必要性は、給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設したかどうかで判断します。
そのため、会社設立の日が、すべての会社について自動的に給与支払事務所等の開設日になるとは限りません。また、開設日と最初の給与支払日が異なる場合は、その両方を区別して記載します。
給与等の支払時には、支払額や扶養控除等申告書の提出状況などに応じて、所得税等の源泉徴収を行います(所法183)。源泉徴収税額が0円であっても、給与支払事務所等を開設した場合の届出は必要です。
納期の特例は申請した月の支払分まで遡らない
給与の支給人員が常時10人未満である給与支払事務所等については、源泉所得税の納期の特例の申請をして承認を受けることにより、給与・退職手当や個人の税理士等への一定の報酬から源泉徴収した所得税等を、年2回にまとめて納付できます(所法216・217)。
| 源泉徴収した期間 | 納付期限 |
|---|---|
| 1月から6月まで | その年の7月10日 |
| 7月から12月まで | 翌年の1月20日 |
納期の特例は、対象となる支払と人数要件が定められた任意の制度です。すべての源泉所得税を半年分まとめて納付できる制度ではありません。
税務署長から却下の通知がない場合は、申請した月の翌月末日に承認があったものとみなされ、申請した月の翌月に源泉徴収する所得税等から適用対象になります(所法217⑤)。
例えば、10月に申請した場合、10月中の支払から源泉徴収した所得税等は、原則として11月10日までに納付します。11月以後の対象となる源泉徴収分について、納期の特例を適用します。
なお、2027年分以後の源泉徴収には、防衛特別所得税も関係します。給与計算では、その年分に対応した源泉徴収税額表を使用してください。
取引内容に応じて確認する法人税関係の届出
棚卸資産や減価償却資産などについて、税務上の計算方法を選定する場合は、必要な届出と期限を確認します。
| 書類 | 新設法人についての主な提出期限 |
|---|---|
| 棚卸資産の評価方法の届出書 | 原則として、設立第1期の確定申告書の提出期限まで |
| 減価償却資産の償却方法の届出書 | 原則として、設立第1期の確定申告書の提出期限まで |
| 有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書 | 有価証券を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限まで |
棚卸資産・減価償却資産の届出については、仮決算による中間申告書を提出する場合などに期限が異なります。対象資産や選定する方法を確認し、国税庁の各手続案内に従って提出してください(法人税法施行令29条2項・51条2項・119条の5)。
役員賞与を予定している場合は、事前確定届出給与の届出も検討します。新設法人が設立時に開始する役員の職務について事前確定届出給与を定める場合の届出期限は、原則として設立の日以後2か月を経過する日までです。届出のほか、あらかじめ定めた支給時期・金額に従うなどの要件も確認する必要があります(法法34①二、法人税法施行令69条)。
定款の定めなどにより法人税の申告期限の延長を受けたい会社は、延長の要件と申請期限も確認しましょう。
消費税・インボイス関係の手続も設立時に確認する
資本金1,000万円以上の新設法人
基準期間のない事業年度の開始の日における資本金又は出資金が1,000万円以上の法人は、その事業年度に含まれる課税期間について、消費税の納税義務が免除されません(消法12の2①)。
該当する会社は、消費税の新設法人に該当する旨の届出書を速やかに提出します。ただし、法人設立届出書に、新設法人に該当する旨及び所定の事項を記載して提出した場合は、別にこの届出書を提出する必要はありません(消法57②、消基通1-5-20)。
設立時の資本金又は出資金が1,000万円以上の場合は、法人設立届出書の「消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日」欄に、設立年月日を記載します。
資本金1,000万円未満でも課税事業者になる場合がある
資本金1,000万円未満の会社でも、次のような場合には、消費税の納税義務が免除されないことがあります。
- 適格請求書発行事業者として登録を受ける場合
- 大規模な事業者等の支配下にあるなど、特定新規設立法人の要件に該当する場合
- 第2期について、特定期間の課税売上高等による判定で課税事業者となる場合
- 課税事業者を選択する届出を提出する場合
- 合併・分割等に関する納税義務の特例が適用される場合
設立時には、消費税の納税義務、インボイス登録の必要性、課税事業者の選択、簡易課税制度の選択などを検討します。課税事業者の選択や簡易課税制度には、継続適用や設備投資に伴う適用制限があるため、届出の提出期限と併せて確認することが大切です(消法9・9の2・11・12・12の3・37)。
新たに事業を開始する法人が、設立第1期の初日からインボイス登録を受ける特例を利用する場合は、その課税期間の末日までに登録申請をする必要があります。この特例については、課税期間の末日が土曜日、日曜日、祝日等であっても、その日までに申請しなければ適用を受けられません(国税庁Q&A「新たに設立された法人等の登録時期の特例」)。
登録を受けている間は、課税売上高が少なくても消費税の納税義務は免除されません(消法9①)。
都道府県・市町村への法人設立の届出
提出期限は自治体ごとに確認する
都道府県と市町村にも、法人設立・設置に関する届出を行います。届出書の名称、提出期限、添付書類は自治体によって異なります。
例えば、新設法人についての公式案内は、次のとおりです。
| 提出先 | 届出書 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 東京都 | 法人設立・設置届出書 | 事業を開始した日から15日以内 |
| 神奈川県 | 法人設立・開設届出書 | 県内に法人を設立して事業を開始した場合は、事業を開始した日から2か月以内 |
| 川崎市 | 法人設立・開設届出書 | 設立又は開設の日から2か月以内 |
なお、神奈川県で新たに事務所・事業所を開設した場合は、開設の日から1か月以内とされています。法人の新設と、事務所・支店等の開設は区別して確認してください。
本店所在地のほかに支店・事務所等がある会社は、その所在地についての地方税の届出も確認します。
東京都23区では法人住民税の届出先が都税事務所になる
東京都23区内では、市町村民税相当分も法人都民税として東京都が扱います。そのため、法人住民税・法人事業税に関する設立届の提出先は都税事務所であり、区役所に法人住民税の設立届を提出する必要はありません。
この取扱いは、法人住民税・法人事業税の設立届に関するものです。給与支払報告書など、給与に関する市区町村への手続は別に確認します。
東京都内でも、23区以外の市町村に事務所等がある場合は、都税事務所等への届出に加え、該当する市町村への届出が必要です。
登記事項証明書の添付が必要かは提出先によって異なる
地方税の届出では、国税の届出とは別に、提出先の自治体が指定する添付書類を確認します。
東京都では、2026年4月1日以降、法人設立・設置届出書への登記事項証明書又は登記簿謄本の添付が不要になりました。新設法人については、定款等の写しを添付します(東京都主税局「申請様式(共通)」「届出方法・添付書類について」)。
川崎市の現在の公式案内でも、添付書類は定款、寄付行為、規則又は規約の写しとされています。他の自治体については、それぞれの最新の案内を確認してください。
他の提出先への回付制度を利用するとき
川崎市は、税務署・県税事務所・市町村の各提出用をそれぞれ作成し、いずれかの機関に提出した場合、他の機関に回付される取扱いを案内しています。
回付には時間がかかるとされているため、制度を利用する場合は、対象となる書類、必要部数、添付書類及び提出期限の取扱いを確認しましょう。青色申告や給与関係など、他の申請・届出についても、それぞれ提出できているか確認することが大切です。
提出方法と控えの保存
電子申請と書面提出
国税の主な設立関係の届出・申請は、e-Taxで提出できます。地方税の法人設立・設置届も、対応する自治体・手続についてはeLTAXを利用できます。
e-Taxソフト(WEB版)の法人設立関係の手続では、対応する国税・地方税の様式を同時に作成・提出できる機能もあります。利用する手続の対応状況、電子署名、添付書類などを確認して進めましょう。
書面による窓口提出や郵送も可能です。郵送する場合は、税務署又は業務センターなど、各手続の最新の送付先を確認してください。
税務署は控えに収受日付印を押さない
税務署では、2025年1月から、申告書・申請書・届出書等の控えへの収受日付印の押なつが廃止されています。
書面で提出する場合は、提出用の正本のみを提出・送付し、控えは会社で保存します。提出年月日も記録し、郵送の場合は発送記録なども保管しましょう。
e-Taxで提出する場合は、送信した届出書等のデータと受信通知を保存します。受信通知で、受付番号や受付日時などを確認できます(国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」)。
地方税の控えの取扱いは、各自治体の案内に従ってください。
提出時点に対応する最新様式を使う
届出書・申請書は、国税庁や各自治体の公式サイトから入手し、提出時点の案内に従って作成します。
国税庁は、2026年10月1日以後の法人の青色申告承認申請について、一部の記載項目を不要とする案内を公表しています。また、2027年1月1日以後に使用する「青色申告の承認申請書 兼 法人設立届出書」も公表しています。
過去に保存した様式をそのまま使う際は、使用時期や記載要領が変更されていないか確認しましょう。
主な根拠資料
- 国税庁新設法人の届出書類(No.5100)
- 国税庁内国普通法人等の設立の届出(C1-4)
- 国税庁青色申告書の承認の申請(C1-19)
- 国税庁給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出(A2-7)
- 国税庁源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例(No.2505)
- 国税庁棚卸資産の評価方法の届出(C1-25)
- 国税庁減価償却資産の償却方法の届出(C1-33)
- 国税庁基準期間がない法人の納税義務の免除の特例(No.6503)
- 国税庁消費税の各種届出書(No.6629)
- 国税庁消費税法基本通達・第5節 納税義務の免除の特例
- 国税庁新たに設立された法人等の登録時期の特例(Q&A)
- 国税庁インボイス制度の申請手続
- 国税庁令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて
- 東京都主税局法人事業税・法人都民税Q&A
- 東京都主税局法人事業税・法人都民税等の申請様式
- 神奈川県県税Q&A 法人県民税・事業税
- 川崎市法人設立・開設届出書
- 川崎市法人市民税の申告方法
- e-Tax法人設立及び異動手続の申請・届出について
- 国税庁法人課税関係の申請、届出等の様式の制定について

