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 会社設立後は、一定期間に所轄の税務署、都道府県税事務所及び市町村役場へ、開業の届出をしなければなりません。

 届出をしない場合でも、数か月後には届出をするよう税務署から連絡がくる場合があります。登記が完了しているため、税務署は新しく会社が設立されたことを把握しているからです。

 会社設立後、数か月たってから届出をすると青色申告の承認が1期目では受けられないなど、会社の不利益になることもあるので、すぐに届出をしましょう。

税務署に提出する書類

 会社を設立した場合、一般的に、税務署に以下の届出書の提出をします。
● 法人設立届出書
青色申告の承認申請書
● 給与支払事務所等の開設届出書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

 また、必要に応じて以下の届出書の提出をします。
● 減価償却資産の償却方法の届出書
● 棚卸資産の評価方法の届出書
● 有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書
● 消費税関係の届出書

 提出する用紙はすべて無料で、税務署で手に入れることができます。また、国税庁のホームページからもダウンロードできるので、届出に先立って用意しておきましょう。

 なお、作成する書類は、税務署提出分と会社控え分の2部を作成しましょう(資本金1億円未満の会社の場合)。作成した2部を税務署に持参し、会社控え分には受領印を押して返却してもらいます。

 直接、税務署へ持参せず郵送でも可能です。ただし、その場合、返信用の封筒(宛名明記・切手貼付)を忘れずに同封してください。なお、提出期限は書類によって異なるのでご注意ください。

法人設立届出書

 法人設立届出書とは、設立した会社の基本的な内容を税務署に知らせ、税務署が、その会社の概要を把握するためのものです。設立の日以後2か月以内に一定の事項を記載して「法人設立届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません(法法148)。

 法人税の納税地(届出書の書式には、単に「納税地」と記してある)とは、本店(または主たる事務所)の所在地となります。「税務署長」に提出となっていますが、実際は税務署の書類提出窓口(1階にあることが多い)で職員に提出します。

 この法人設立届出書には、定款のコピーを1部(資本金1億円以上の会社は2部)添付します(法規63)。なお、平成29年4月1日以降、「登記事項証明書」の添付が不要となりました。また、令和3年度税制改正により、令和3年4月1日以降、代表者の押印が不要となりました。

 なお、資本金が1,000万円以上の法人にあっては、法人設立届出書に「消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日」欄があり、その欄に、年月日を記載することとなります。

給与支払事務所等の開設届出書

 会社が、人を雇って給与を支払ったりする場合には、その支払いの都度、支払い金額に応じた所得税および復興特別所得税(以下、所得税等)を差し引き、いったん会社が預かります。

 そして後日、国(税務署)に納めなければなりません。この所得税等を差し引いて、国に納める義務のある者を源泉徴収義務者といいます。

 会社が、新たに給与の支払いを始めて、源泉徴収義務者になる場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」を、給与支払事務所等を開設してから1か月以内に提出することになっています(所法230、所規99)。

 この開設届出書は、給与支払事務所等の所在地の所轄税務署へ提出することになりますが、小さい会社の場合、一般的に本店所在地の事務所が給与支払事務所等となります。

 会社を設立すると、個人事業主とは異なり、会社の経営者であっても一般的に会社から給与(役員給与)の支払いを受けるという形になります。

 ですから、その時点で自動的に給与を支払う事務所を開設するということになります。

都道府県税事務所及び市町村役場への届出

 国税としての届出窓口が税務署で、地方税としての届出窓口が都道府県税事務所および市町村役場となります。なお、東京都の特別区(23区)で会社設立した場合は、都税事務所への届出だけでよく、区役所への届出は不要です。

 地方税は国税と違って、条例により、それぞれの地域によって取扱いが異なります。例えば、東京都の場合は、事業を開始した日から15日以内に、「法人設立・設置届出書」を所管の都税事務所に提出することになっています。その一方で、神奈川県の場合は、事業を開始した日から2か月以内に、「法人設立・開設届出書」を所管の県税事務所に提出することになっています。その他、申告の際の税率が違っている場合もあります。

 上記のように、地域(自治体)によって取扱いが異なるので、会社を設立したら、まず各都道府県のホームページを見て、会社の所轄の都道府県税事務所を調べ「いつまでに、どこへ」届出をしたらよいかを確認します。同様に所轄の市町村役場を調べ「いつまでに、どこへ」届出をしたらよいかも確認します。

 なお、届出用紙は各都道府県等のホームページからダウンロードできます。税務署、都道府県税事務所及び市町村で共通の様式を使用しているところが多く、その場合は、法人控用分と合わせて4枚のセットとなっています。

 都道府県税事務所及び市町村への「法人設立届出書」の記載のしかたは、税務署への「法人設立届出書」の記載と、ほぼ一緒です。添付書類についても「定款のコピー」と「設立登記の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)」の2つを提出するケースが多くなっています。

 現在、税務署(国税)への「法人設立届出書」の添付書類として、「登記事項証明書」は不要となりましたが、都道府県税事務所及び市町村の場合はまだ求められることが多いです。

 なお、所轄の税務署、都道府県税事務所及び市町村役場へ、それぞれ届出書を提出するのが一般的ですが、例えば川崎市のように「届出書を、所轄税務署、県税事務所及び市町村提出用にそれぞれ作成し、いずれかに提出していただければ、提出のあった機関を通じて他の機関に回付されます。(回付については、定期的に行っているため、他の機関に回付されるまで時間を要する場合がありますので、あらかじめ御了承ください。)」(川崎市ホームページ-法人設立・開設届出書)としているところもあります。