土地の所有者以外の者が構築物の設置等に係る相当の費用負担をしない場合などの単に土地のみの貸付けによる所得は、契約内容にかかわらず、土地の所有者が申告しなければならないことになっています。

 よって、親名義の土地で、親が月極め駐車場として不動産所得を得ている場合、敷設されたアスファルト舗装又は車止め若しくはフェンスを子供に贈与し、地代については親子間で使用貸借契約をし、その後は、 月極め駐車場料金については子供の不動産所得とするスキームが考えられますが、否認されないように注意をする必要があります。

 下記の平成30年10月3日裁決(裁事113集49頁)において、駐車場に係る所得は、その貸主名義にかかわらず、土地の所有者である者に帰属すると判断されました。

 しかしながら、大阪地裁令和3年4月22日(平成31年(行ウ)第51号)では納税者勝訴となり、控訴審が注目されています。

平成30年10月3日裁決(裁事113集49頁)(棄却)

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人Xの平成26年分所得税等について、原処分庁が、Xの子らの名義で賃貸された土地の賃料に係る収益はXに帰属するとして更正処分等を行ったことの適否が争われた事案である。

○本裁決で争われた「土地の賃料に係る収益」に関する状況等は、次のとおりである。
① 平成26年1月25日、Xは、Xが所有し、駐車場(本件各駐車場)として第三者に賃貸していた各土地(本件各土地)について、Xとその子らとの間において本件各土地を使用貸借する旨の契約(本件各使用貸借契約)をし、「同契約書」(本件各使用貸借契約書)を作成した。

 本件各使用貸借契約書には、Xが本件各土地を平成26年2月1日から10年間、各年の固定資産税・都市計画税の合計額相当額を賃料としてXの子らにそれぞれ賃貸する旨、Xの子らは本件各土地を駐車場用地として賃借する旨、さらに、Xの子らは、Xの承諾により本件各土地を転貸又は賃借権譲渡を行うことができる旨が記載されていた。

② さらに、本件各使用貸借契約書が作成された日と同日の平成26年1月25日、Xとその子らとの間で、本件各土地の上に敷設されたアスファルト舗装又は車止め若しくはフェンス(以下「本件舗装等」という。)をXが子らに贈与する旨の「贈与契約書」がそれぞれ作成された(以下、上記の各贈与契約書を「本件各贈与契約書」といい、本件各贈与契約書による契約を「本件各贈与契約」という。また、本件各使用貸借契約書と本件各贈与契約書を併せて「本件各契約書」という。)。

 本件各贈与契約書には、贈与物件上において営む駐車場賃貸借契約については、子らがその地位を引き継ぐこととする旨が記載されていた。

③ 平成26年1月31日、同年2月1日以後の賃貸人をXの子とするなどを記載した「土地賃貸借変更契約書」が作成された(前日にも同様なことが行われた。)。

④ Xは、平成26年分の所得税等における確定申告書に添付して提出した収支内訳書(不動産所得用)には、本件各駐車場の賃貸契約期間については、これを平成26年1月のみとし、当該期間の賃貸料収入を同年分の不動産所得に係る総収入金額に含めて不動産所得の金額を算出していた。

(2)裁決要旨(請求棄却)

 本件各契約書には、Xの意思に基づく署名・押印があるものの、(ア)本件各使用貸借契約及び本件各贈与契約については、本件各土地の所有権をXに留保したまま、その使用収益権原のみを相応の対価を発生させることなくXの子らに移転する方法として採られたものと認められること、(イ)Xは、原処分調査において、本件各契約書については一貫して知らない旨申述しており、本件各契約書の作成事実を認識していなかったと認められること、(ウ)本件各土地を巡る一連の取引は、Xの子から相続対策の相談を受けていた税理士法人が企図し、本件各契約書の書式も当該税理士法人が作成したものと認められること等からすると、Xは、本件各契約書の内容を確認することがなかったため、その内容を全く認識していなかった可能性が高い。

 そうすると、本件各契約書にXの意思に基づく署名・押印があるとしても、本件各契約書の内容自体がXの意思に基づくものとの推定は働かないから、本件各使用貸借契約及び本件各贈与契約がXの意思に基づいて成立したものとは認められない。したがって、本件各駐車場に係る所得は、その貸主名義にかかわらず、いずれも本件各土地の所有者であるXに帰属するというべきである。

大阪地裁令和3年4月22日(平成31年(行ウ)第51号)(納税者勝訴)(控訴)

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 平成26年1月、原告X(当時82歳であったが、意思能力に特段の問題はなかった)は、Xが所有し駐車場(本件各駐車場)として第三者に賃貸していた各土地(本件各土地)について、Xとその子らとの間において本件各土地を使用貸借する旨の契約(本件各使用貸借契約)をし、「同契約書」(本件各使用貸借契約書)を作成した。
 本件各使用貸借契約書には、Xが本件各土地を平成26年2月から10年間、各年の固定資産税・都市計画税の合計額相当額を賃料としてXの子らにそれぞれ賃貸する旨、Xの子らは本件各土地を駐車場用地として賃借する旨、さらに、Xの子らは、Xの承諾により本件各土地を転貸又は賃借権譲渡を行うことができる旨が記載されていた。
② さらに、本件各使用貸借契約書が作成された日と同日、Xとその子らとの間で、本件各土地の上に敷設されたアスファルト舗装又は車止め若しくはフェンス(以下「本件舗装等」という。)をXが子らに贈与する旨の「贈与契約書」がそれぞれ作成された(以下、上記の各贈与契約書を「本件各贈与契約書」といい、本件各贈与契約書による契約を「本件各贈与契約」という。また、本件各使用貸借契約書と本件各贈与契約書を併せて「本件各契約書」という。)。
 本件各贈与契約書には、贈与物件上において営む駐車場賃貸借契約については、子らがその地位を引き継ぐこととする旨が記載されていた。
③ 平成26年1月、同年2月以後の賃貸人をXの子らとするなどを記載した「土地賃貸借変更契約書」が作成された。
④ 平成27年3月、Xは、平成26年分の所得税の確定申告書を期限内に提出したが、添付して提出した収支内訳書(不動産所得用)には、本件各駐車場の賃貸契約期間については、これを平成26年1月のみとし、当該期間の賃貸料収入を同年分の不動産所得に係る総収入金額に含めて不動産所得の金額を算出していた。
⑤ 平成29年3月、課税庁は、平成26年2月以後の本件各駐車場の収入がいずれもXに帰属するとし更正処分等をしたため、Xは、上記処分を不服として、本訴を提起した。

(2)本件の争点

 平成26年2月以後のXの子らの名義で賃貸された土地の賃料に係る収益はXに帰属するか否か

(3)判決要旨(納税者勝訴)(控訴)

① Xは、平成26年1月まで各土地の賃貸人として駐車場収入を得ていたところ、同年2月以降の駐車場収入については、使用貸借契約等により、賃貸人がXの子らになり、各駐車場収入はXの子らに帰属するものとして確定申告をしているから、平成26年2月以降の駐車場収入がXに帰属するか否かを検討するに当たり、使用貸借契約が成立したか否かが問題となる。
② そして、本件各使用貸借契約書のXの署名・押印は真正なものであるから、民事訴訟法228条4項によれば、使用貸借契約書の原告作成部分は真正に成立したものと推定されることになる。これに対し、被告国は、Xが使用貸借契約書の内容を全く認識していなかったと認められるから上記推定は働かない旨主張する。
③ しかしながら、Xは、Xの子から本件税理士法人が作成した本件各使用貸借契約書のひな型への署名・押印を求められ、その記載内容を一切確認せず、言われるがままこれに応じたと推認することはできない。かえって、本件各使用貸借契約書の署名・押印に至る経緯、使用貸借契約書の記載内容その他本件各取引の内容、Xの知識・経験・行動傾向等、各取引後の取引実態、確定申告におけるXの行動等を総合すれば、Xが使用貸借契約書の基本的な内容を認識した上で使用貸借契約書に署名・押印した事実を優に認定することができる。
④ 本件各使用貸借契約書は真正に成立したものと認められるところ、経験則に照らせば、本件各使用貸借契約書のような処分証書が真正に成立していれば、「特段の事情」がない限り、作成者によって記載どおりの行為がされたことを認めるべきである(処分証書の法理)。
 X及びその子らの本件各取引を行う目的として、X及びその子らが支払う租税の合計額を軽減させることにあったことは認められるものの、このような目的があったことと、本件各使用貸借契約の内容どおりの行為がされたこととは両立し得るというべきである。すなわち、上記の目的を有しつつ、本件各使用貸借契約を締結するということがあり得る(言い換えれば、節税効果を発生させることを動機として本件各使用貸借契約を締結することはあり得るのであって、節税の動機と目的物を無償で使用収益させる意思とは併存し得るものである)から、上記の目的がある場合であっても、直ちに本件各使用貸借契約書に記載どおりの行為がされたとの経験則を妨げる「特段の事情」があるとすることはできないというべきである。
⑤ 本件各使用貸借契約は成立した(すなわち、本件各使用貸借契約書は真正に成立し、本件各使用貸借契約書と引渡しによりその記載どおり本件各使用貸借契約が成立した)と認められるところ、使用貸借契約は対価を払わないで他人の物を借りて使用収益する契約であるから(民法593条)、Xの子らは、平成26年2月以降、Xから、本件各土地の使用収益権を与えられたことになる。そして、Xの子らは、本件各土地の使用収益権に基づき、第三者との間で賃貸借契約を締結し、本件各土地の賃借人から本件各駐車場収入を得ることになる。
 他方、Xは、本件各土地の所有者ではあるが、平成26年2月以降は、本件各使用貸借契約の締結により、本件各土地の使用収益権をXの子らに与えたため、Xの子らが賃貸人ということになるから、本件各土地の賃貸借契約の賃貸人ではなくなり、本件各駐車場収入を得ることはできないことになる(実際にも本件各駐車場収入を得ていない。)。
 本件各土地の賃貸借に関する民法上の法律関係を、所得税法12条(実質所得者課税の原則)の規定に照らしてみると、Xの子らは、「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者」に該当するというべきであり、実際にも駐車場収入を収益として享受しているから、「単なる名義人であって、その収益を享受」しないということはできない。さらに、Xは、駐車場収入を収益として享受していないから、「その者以外の者がその収益を享受する場合」における「その者以外の者」に当たるということもできない。したがって、本件において、所得税法12条の適用により、平成26年2月以降の駐車場収入の帰属がXにあるということはできないというべきである。

東京国税局課税第一部個人課税課、課税第二部消費税課の所得税消費税誤りやすい事例集(令和2年12月)より

(誤りやすい事例)
 配偶者や親名義の土地を、例えば月極め駐車場として、土地所有者以外の名義で契約し、その所得を契約者の所得として申告している。

(解説)
 土地の所有者以外の者が構築物の設置等に係る相当の費用負担をしない場合などの単に土地のみの貸付けによる所得は、契約内容にかかわらず、土地の所有者が申告しなければならない(所基通12-1)。