亡くなってしまった人(被相続人)でも、死亡した年に、一定の所得があれば所得税がかかります。

 働いてお金を稼ぐと、そのお金には所得税がかかります。たとえ、被相続人でも、死亡した年に一定の所得があれば、所得税がかかるため、被相続人についても確定申告をする必要があります。

 ただ、被相続人は、自分で確定申告をすることはできません。そこで、亡くなった人の相続人等(相続人の他、包括受遺者を含む。)が、代わりに確定申告をします。これを、準確定申告といいます。

 相続税のことだけで頭が一杯になって、所得税(準確定申告)のことを忘れないよう注意する必要があります。

 準確定申告といっても、確定申告とほとんど変わりません。ただし、少しだけ異なる点があります。準確定申告では、所得と税額の計算期間は、1月1日から亡くなった日までとなります。

準確定申告による所得税と住民税

所得税

 相続人が2人以上いる場合は、原則として、準確定申告書(付表)には、相続放棄した方を除く全ての相続人の氏名及び住所等の記載が必要です(所令263②、所規49一)。

 一緒に申告できない相続人は別に準確定申告書と付表の提出が必要となります(所令263②)。そうでないと、無申告となります。

 また、令和2年分以後の準確定申告を電子申告により行う場合、申告データを送信する相続人以外の相続人が申告内容を確認した上で、自署で署名・捺印した確認書のイメージデータを添付することにより、申告データを送信する相続人以外の電子署名等は不要となっています(国税デジタル省令5①二、令和元年国税庁告示25号)。

 なお、準確定申告により払った所得税は被相続人の払うべき税金であるため、納めた所得税は、被相続人に係る相続税の申告において債務控除することができます(相令3③十)。

 また、逆に還付金(納めすぎた税金をかえしてもらう)があった場合は、相続財産にプラスされ、相続税の課税の対象となります。

住民税

 準確定申告書を提出すれば、個人住民税の申告書を提出したとみなされます(地法317の3①)ので、個人住民税について別途手続の必要はありません。

 なお、個人住民税は、前年の所得に対して課税することとされ、1月1日を賦課期日とする賦課課税方式を採用しています(地法32①、39、313①、318)。

 例えば、被相続人が、令和4年11月20日に死亡した場合、令和5年1月1日現在、課税の対象となる個人が存在しませんので、令和5年度分の個人住民税の納税義務はないということになります。

準確定申告の期限と納税

納税がある場合

 申告期限は亡くなった日(相続を知った日)の翌日から4ヶ月以内です。例えば7月1日に亡くなった場合は、11月1日までに準確定申告をする必要があります。納税の期限も申告期限と同じです。

 準確定申告書を死亡した被相続人の死亡時の納税地(一般的には、住所地)の所轄税務署長に提出します(所法16⑥)。実際に申告するのが相続人であっても、相続人の住所地は納税地となりません。

 確定申告をしなければならない人が翌年の1月1日から確定申告期限(原則として翌年3月15日)までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合の準確定申告の期限は、前年分、本年分とも相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内となります(所法124、125)。

 なお、確定申告をしなければならない人が確定申告期限内に確定申告書を提出しないで死亡した場合は、前年分については、通常通り、期限後申告となります(通法18、所基通124・125-2)。

還付がある場合

 還付申告書を提出できる期間は、申告書を提出できる日から起算して5年間です(通法74①)。居住者が年の途中で死亡した場合に、その相続人が還付請求をすることができるのは、死亡の日の翌日からであるため(所法125)、最終日は、死亡日の翌日の5年後の応当日の前日となります。

 例えば、令和2年5月31日に被相続人が死亡した場合は、令和7年5月31日までとなります。

準確定申告による還付金及び還付加算金

 還付金請求権は(本来の)相続財産であり、相続税の課税の対象となります。したがって、還付金請求権に基づいて還付金を取得した場合は、相続税の課税の対象となります。

 一方、準確定申告による還付加算金の請求権は相続人が確定申告書の提出によって原始的に取得するもので、被相続人からの相続によって取得するものとは認められないため、相続人の所得税(雑所得)の課税対象となり、相続税の課税価格には算入されません(国税庁HP質疑応答事例「被相続人の準確定申告に係る還付金等」)。

 なお、被相続人が確定申告書を提出した後に死亡した場合の被相続人に係る還付加算金については、相続税の課税価格に算入されます(国税庁HP質疑応答事例「確定申告書提出後に死亡した被相続人に係る還付加算金の課税関係」)。

被相続人がサラリーマンなどの給与所得者の場合

 サラリーマンなどの給与所得者は、この準確定申告が不要のことが多いです。収入先が勤め先での給与収入1つなら、会社などがその人の給与所得にあわせて、年末調整をしてくれるからです。

 会社側の処理としては、死亡した人に係る給与等で死亡時までに支給期の到来している給与等については、「給与所得の源泉徴収票」の「支払金額」欄に含める必要があります(この分も含め、年末調整を行います。)。

 一方、死亡後に給与等の支給期の到来するものについては、本来の相続財産として、相続税の課税対象となる(相基通3-33)ため、「給与所得の源泉徴収票」の「支払金額」欄に含める必要はありません。つまり、相続税の課税価格計算の基礎に算入されるので、所得税は課税されません(所基通 9-17)。

 上記の給与等の支給期については、所得税基本通達36-9《給与所得の収入金額の収入すべき時期》(1)等に定めるところによります。

 所得税基本通達36-9(1)は、給与所得の収入金額の収入すべき時期については、原則として、契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等についてはその支給日、その日が定められていないものについてはその支給を受けた日となる旨定めています。

 なお、死亡後に支給期の到来する給与から控除された社会保険料は、被相続人が負担すべき社会保険料として相続財産の課税価格の計算上債務控除されることになるので、社会保険料控除の対象とはされません。よって、準確定申告において、その控除された社会保険料を社会保険料控除の対象とすることはできません。

 また、被相続人が受けるべきであった賞与の額が被相続人の死亡後確定したものは、本来の相続財産として、相続税の課税財産となります(相基通3-32)。

(設例)
 A社の役員である甲は、令和3年6月10日に死亡した。
 A社の社内規定では、役員及び社員への給与について、月末までの勤務分を翌月15日に支給する旨定めており、これに基づき、甲の令和3年5月分の給与(以下「本件給与」という。)50万円が同年6月15日に甲の口座へ振り込まれた。
 また、A社は、令和3年6月20日に、株主総会により甲への役員賞与(以下「本件賞与」という。)300万円を支給する旨の決議を行い、同月30日に当該賞与が甲の口座へ振り込まれた。
 これら甲の死亡後に支給された本件給与及び本件賞与に係る課税関係はどのようになるか。

(答え)
 本件給与及び本件賞与は、いずれも本来の相続財産として、相続税の課税財産となる。
 また、いずれも所得税の課税は生じない。

被相続人が個人事業者の場合

 準確定申告書を提出した場合には、個人事業者であった被相続人の個人事業税の申告がされたものとみなされ、個人事業税の納税義務が成立することになります。

 なお、被相続人が生前55万円(65万円)の青色申告特別控除の適用を受けていて、準確定申告においても、その適用を受けるためには亡くなった日の翌日から4ヶ月以内に申告する必要があります(所法125、措法25の2③④⑥)。

 個人事業税に係る納税通知があれば、「未納個人事業税」であり相続税法が規定する「確実と認められる債務(公租公課)」となりますので、被相続人に係る相続税の申告において債務控除することができます(相令3③十)。

 なお、被相続人の事業が相続人に引き継がれた場合には、当該事業を承継した相続人の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することになり、相続による事業承継が行われなかった場合には、事業廃止後に生じた租税公課として被相続人の事業廃止日の属する年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することになるものと解されます。その際、既に準確定申告書が提出されているときには、更正の請求ができることと解されます。

青色申告承認申請書の提出期限

 被相続人の事業を相続人が引き継ぎ、青色申告をする場合の青色申告承認申請書の提出期限は以下の通りです。

区分青色申告承認申請書の提出期限
被相続人が白色申告者の場合(その年の1月1日から1月15日までに業務を承継した場合)青色申告の承認を受けようとする年の3月15日
被相続人が白色申告者の場合(その年の1月16日以後に業務を承継した場合)業務を承継した日から2か月以内
被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の1月1日から8月31日)死亡の日から4か月以内
被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の9月1日から10月31日)その年12月31日
被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の11月1日から12月31日)翌年2月15日

被相続人が不動産所得がある場合

 所得税では、原則として、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡した日までの間に賃貸借契約上の支払日が到来した不動産賃貸料については、準確定申告において、不動産収入として計上します(所基通36-5(1)、直所2-78昭和48年11月6日通達の適用なしの場合)。

 相続税では、死亡日において既に収入すべき期限が到来しているもので同時期においてまだ収入していない不動産賃貸料は、相続税の課税対象となります(評基通208)。

固定資産税

 固定資産税は、賦課期日(各年度の初日の属する年の1月1日)現在において所在する固定資産を有する者を納税義務者として課されます(地法343、359)ので、固定資産税について、被相続人の地位を承継した相続人が実際に納付した場合には、相続人の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することもできますし、被相続人がその生前に固定資産税の納税通知書の送達を受けていて、相続人の必要経費としないときには、その全額を被相続人の準確定申告における不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することもできると解されます。

 つまり、被相続人がその生前に固定資産税の納税通知書の送達を受けていれば、既に年税額が具体的に確定しているため、被相続人と相続人の必要経費が重複しない限り選択が可能と解されます。

被相続人が株式運用をしていた場合

 上場株式の配当や特定口座(源泉あり)内の譲渡益は源泉徴収されているので、本来、申告の必要はありません。ただし、他に所得がなくて、基礎控除等の所得控除を利用できる等であれば、準確定申告により所得税は還付される場合があります。

 住民税においては、亡くなった方については、次年度分の納税義務がありません。例えば、令和4年中に死亡した場合、令和5年分の住民税の納税義務はないということです。

 よって、上場株式の配当や特定口座(源泉あり)内の譲渡益に対して、所得税・住民税が差し引かれており、準確定申告において、所得税が還付される場合であっても、住民税においては納税義務がない(申告することができない)ため、還付されることはありません。

確定申告と準確定申告の違い

確定申告準確定申告
申告をする人本人相続人等
所得と税額の計算期間1月1日~12月31日1月1日~亡くなった日
申告の期限翌年の2月16日~3月15日相続を知った日の翌日から4ヶ月以内