相対取引

概要

 各年分において上場株式等を金融商品取引業者等への売委託など一定の方法により譲渡したことにより生じた損失の金額は、その年における上場株式等に係る配当所得等の金額と損益通算できます。

 また、損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上控除することができます。

 いわゆる、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法37の12の2)というものです。

 ただし、この特例を適用できるのは、上場株式等を金融商品取引業者等への売委託により行う譲渡など一定の譲渡により生じた損失に限られ、いわゆる相対取引、外国において外国の証券会社(金融商品取引法上の許可等を受けていない。)を介して行う譲渡又は税制適格ストックオプションの権利行使に基づいて取得した株式を保管証券会社から引き出したことによるみなし譲渡などは、この一定の譲渡には該当しません(措法37の12の2②)。

 よって、相対取引等による譲渡損失については「上場株式等に係る譲渡損失の金額」には該当しないため、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けることはできません。

 なお、上場株式の相対取引による譲渡であっても、上場株式等の譲渡になることから、上場株式等の譲渡所得の計算内では差し引きして計算することとなります(措法37の11①)。

 特例でもなく、単なる同じ上場株式譲渡の損益の通算(いわゆる株内通算)だからです。

 譲渡益がでる場合は、証券会社等を通さずに相対取引で売買しても納税者は損をすることはないですが、譲渡損がでる場合は慎重に検討する必要があります。

(設例)

① 甲が上場株式A(取得価額600万円)を、相対取引によって乙に200万円で譲渡した(但し、所法59②に該当しないもの)。
② 甲が上場株式B(取得価額400万円)を、証券会社への売委託によって500万円で譲渡した。

 上場株式Aの譲渡損益は、200万円-600万円=△400万円、 上場株式Bの譲渡損益は、500万円-400万円=100万円
 A、Bとも上場株式なので、 上場株式等の譲渡所得の計算内では差し引きして計算することとなります。
 よって、 △400万円 + 100万円 = △300万円となります。

 ただし、譲渡損失300万円については、措置法37条の12の2第6項に規定する「上場株式等に係る譲渡損失の金額」に該当しないため、措置法37条の11第1項後段の規定により、その譲渡損失は無かったものとみなされます。

上場株式等の売却損と上場株式等の配当等との損益通算・繰越控除の対象となる主なもの

・証券会社または銀行等への売委託による売却
・証券会社に対する売却
・登録金融機関または投資信託委託業者に対する公募株式投資信託の売却(買取請求)
・公募株式投資信託等の解約請求等
・株式交換または株式移転による株式交換完全親法人または株式移転完全親法人からの金銭などの交付 ・単元未満株の発行会社に対する売却(買取請求)