自用地としての価額により評価

 土地の所有者が、その土地をそのままの状態又は土地の所有者自らが土地に設備を施して貸駐車場を経営することは、その土地で一定の期間、自動車を保管することを引き受けることであり、一定の範囲の土地を利用させることになります。

 ただし、このような自動車を保管することを目的とする契約は、土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約(不動産賃貸借契約)とは本質的に異なる権利関係ですので、この場合の駐車場の利用権は、その契約期間の長短に関係なく、その土地自体に及ぶものではないと考えられます。

 つまり、土地を独占的・排他的に使用できる占有権・管理権を引き渡したということではありません。

 そして、駐車場として利用している土地は、現況により、ほとんどの場合、登記簿上の地目がたとえ宅地であっても、雑種地として評価することとなりますが、雑種地の評価はその現況に応じて評価されますので、その現況が宅地と何ら変わるところがないような場合は、宅地と全く同じように評価することになります。

 よって、このような土地の所有者が、自らその土地を貸駐車場として利用している場合には、路線価方式により評価する宅地の価額と同様に、その路線価を基にして自用地として評価します。

 なお、貸駐車場には青空駐車場のようなものから、本格的な駐車施設を備えているものまでありますが、この取扱いは土地の所有者自らが施した設備の程度によって差異が生じるものではなく、全て自用地として評価します。

 また、アスファルト舗装等した場合については、構築物として評価した上で、土地とは別に相続財産として申告する必要があると考えられます。

 アスファルト舗装部分の再建築価額を基として、舗装時から課税時期までの期間について定率法により計算した償却費の合計額を控除した金額の70%に相当する金額によって評価することとなります(評基通97)。

賃借権の価額を控除した金額によって評価

 駐車場用地として利用するための土地の賃貸借契約を締結し、駐車場利用者の責任と費用において、その土地に車庫などの駐車場施設を設置し、自ら使用し、又は他人に利用させている場合は、土地の賃貸借(不動産賃貸借契約)になると考えられますので、その土地の自用地としての価額から、賃借権の価額(契約期間に応じた賃借権相当分)を控除した金額によって評価します。

 この場合、地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権か否かで賃借権の価額は、下記(1)(2)のように変わります。

 地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権とは、例えば、賃借権の登記がされているもの、設定の対価として権利金や一時金の支払のあるもの、堅固な構築物の所有を目的とするものなどが該当します。

(1)地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権

「①自用地としての価額×賃借権の残存期間に応じその賃借権が地上権であるとした場合の法定地上権割合(相法23)」又は「②自用地としての価額×借地権であるとした場合の借地権割合」のいずれか低い価額が賃借権の価額となります。

(相続税法23条における地上権割合)

残存期間 地上権割合 残存期間 地上権割合
10年以下5%30年超35年以下50%
10年超15年以下10%35年超40年以下60%
15年超20年以下20%40年超45年以下70%
20年超25年以下30%45年超50年以下80%
25年超30年以下
及び地上権で存続期間の定めのないもの
40%50年超90%

 ただし、その価額が、自用地としての価額に下記の残存期間に応ずる割合を乗じて計算した金額より下回る場合には、「 自用地としての価額 × 下記の残存期間に応ずる割合表 」が賃借権の価額となります。

(残存期間に応ずる割合表)

賃借権の残存期間5年以下5年超
10年以下
10年超
15年以下
15年超
割合5%10%15%20%

 よって、貸駐車場の相続税評価額は下記(イ)、(ロ)のいずれか低い金額となります(評基通86(1))。

(イ)自用地としての価額 - (「①自用地としての価額×賃借権の残存期間に応じその賃借権が地上権であるとした場合の法定地上権割合(相法23)」又は「②自用地としての価額×借地権であるとした場合の借地権割合」のいずれか低い価額 )

(ロ)自用地としての価額 - 「 自用地としての価額 × 残存期間に応ずる割合表 」

(計算例)

(前提)
自用地評価額80,000千円、 借地権割合50%、課税時期から賃貸借契約終了までの残存期間26年2か月

(答)
(イ) 「80,000千円 × 法定地上権割合40%」と「 80,000千円 × 借地権割合50% 」では、 「80,000千円 × 40%」 が低い金額となるので、 80,000千円 - 32,000千円 = 48,000千円
(ロ) 80,000千円 - (80,000千円× 20%)= 64,000千円
(ハ) (イ)<(ロ)のため、 貸駐車場の相続税評価額は48,000千円

(2)(1)に掲げる賃借権以外の賃借権

「自用地としての価額 × 賃借権の残存期間に応じその賃借権が地上権であるとした場合の法定地上権割合(相法23)の2分の1に相当する割合」 が賃借権の価額となります。

 ただし、その価額が、自用地としての価額に下記の残存期間に応ずる割合を乗じて計算した金額より下回る場合には、「 自用地としての価額 × 下記の残存期間に応ずる割合表 」が賃借権の価額となります。

賃借権の残存期間5年以下5年超
10年以下
10年超
15年以下
15年超
割合2.5%5%7.5%10%

 よって、貸駐車場の相続税評価額は下記(イ)、(ロ)のいずれか低い金額となります(評基通86(1))。

(イ)自用地としての価額 - 「 自用地としての価額 × 賃借権の残存期間に応じその賃借権が地上権であるとした場合の法定地上権割合(相法23)の2分の1に相当する割合 」

(ロ)自用地としての価額 - 「 自用地としての価額 × 残存期間に応ずる割合表 」

(計算例)

(前提)
自用地評価額80,000千円、 借地権割合50%、課税時期から賃貸借契約終了までの残存期間3年4か月

(答)
(イ) 80,000千円 - (80,000千円× 5% × 1/2) = 78,000千円
(ロ) 80,000千円 - (80,000千円× 2.5%)= 78,000千円
(ハ) (イ)=(ロ)のため、 貸駐車場の相続税評価額は78,000千円

貸駐車場についての小規模宅地等の特例の適用の可否

概要

 相続開始の直前において被相続人等の貸付事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業、準事業に限る。)の用に供されていた宅地等(3年以内貸付宅地等を除く。)で、被相続人の親族が相続または遺贈により取得し、相続税の申告期限まで事業承継及び保有継続要件を満たしている場合は、貸付事業用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例適用により200㎡まで50%の課税価額の減額を受けることができます(措法69の4③四)。

〇 「準事業」とは、事業と称するに至らない不動産の貸付その他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものをいいます(措令40の2①)。
〇 相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等であっても、相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業(貸付事業のうち準事業以外のものをいいます。以下同じです。)を行っていた被相続人等のその特定貸付事業の用に供された宅地等については、3年以内貸付宅地等に該当しません(措法69の4③四、措令40の2⑲)。
〇 「特定貸付事業」とは、貸付事業のうち準事業以外のものいうのですが、社会通念上事業と称する程度の規模で貸付事業が行われていたかにより判定し、実務上は、所基通26-9の5棟・10室基準による事業的規模の判定が参考とされます(措通69の4-24の4)。
〇 事業的規模での駐車場業を営んでいたとしても、80%の減額割合の適用対象にはなりません。あくまでも、「貸付事業用宅地等」として50%の減額割合の対象となります。

(1)被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等

事業承継要件その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその貸付事業を行っていること。
保有継続要件その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。

(2)被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業の用に供されていた宅地等

事業継続要件相続開始前から相続税の申告期限まで、その宅地等に係る貸付事業を行っていること。
保有継続要件その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。

アスファルトやコンクリートなどで舗装

 上記のように、貸駐車場が小規模宅地等の特例の適用を受ける場合には、「貸付事業用宅地等」に該当する必要があり、宅地等とは建物または構築物の敷地の用に供されている(措法69の4①、措規23の2)ことが要件となります。

 そのため、駐車場に線を引いた程度の、いわゆる青空駐車場のように単に空地を利用しているにすぎないと認められるような場合はこの特例の適用対象となりません。

 舗装路面は構築物に該当するので地面をアスファルト、コンクリートや砂利敷などで敷設しているような場合は、原則として、特例の対象となります。

 ただし、砂利敷の場合、砂利の量が少ない、砂利が土に埋もれているような場合等は、砂利敷が構築物と認められないため、特例の適用が認められないことがあります。

〇 舗装道路及び舗装路面の対象年数(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一)

コンクリート敷、ブロック敷、れんが敷又は石敷(砂利敷含む、耐通2-3-13)のもの15年
アスファルト敷又は木れんが敷のもの10年
ビチューマルス敷のもの3年

 なお、「貸付事業用宅地等」については、「特定居住用宅地等」や「特定事業用宅地等」のように建物又は構築物の所有者に関しては、被相続人又は被相続人の親族であるなどの要件は付されていませんので、土地を更地の状態で第三者に貸し付けていたとしても、土地所有者が第三者に有償で賃貸している事実が存在していることが確認できる場合は該当します(措達69の4-4(1))。

 つまり、アスファルト、コンクリートや砂利敷などで敷設したのが本人であるか賃借人であるかを問われません。ただし、構築物と認められる状況である必要があります。

千葉地裁平成10年10月26日判決(税資238号811頁)判示要旨

 本件土地は、その上にはコンクリート舖装等特段の措置は講じられておらず、砂利が敷かれた程度で地面は露出しており、フェンス等の設備も簡易なものであって、その施設の維持管理についても専ら借主がその負担において行っているなど、特段の人的・物的な資本投下がされているとは認められず、必要なときはいつでも容易の原状回復のうえ他に転用できるものであることなどからすれば、事業性を認識しうる程度に資本投下がされた構築物の敷地の用に供されているということもできない。したがって、被告(課税庁)が本件土地について「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」を適用しないで評価していることは適法といえる。

平成17年12月16日裁決(札裁(諸)平17第9号)判断要旨

 土地はいわゆる青空駐車場であり、アスファルト舗装、金属製パイプを組み合わせたフェンスや看板があるほかは、特段、建造物があるわけではないところ、アスファルト舗装は土地全体の面積の8%にされたにとどまるものであること、また、金属製パイプを組み合わせたフェンスや看板は構造が簡易であることから、これらの撤去は容易にできる程度のものであることが認められ、さらには、当審判所の調査の結果によれば、平成5年(課税時期の8年前)の駐車場施設を整備する際に、駐車スペースの整地と砂利を敷設していることが認められるものの、本件相続開始時(平成13年)においては、当該砂利は地中に埋没し土地の一部と見られる状態になっていることが認められる。そうすると、土地は物的施設に乏しく、処分面の制約への配慮の必要性は非常に少ないと認めるのが相当であるから、構築物の敷地の用に供されている宅地等に該当するとは認められず、この点に関する請求人らの主張を採用することはできない。

静岡地裁平成20年11月27日判決(税資258号-228(順号11086))判示要旨

 本件土地は、A社に賃貸され、同社により従業員専用の駐車場として利用されているが、その土地上には、地面に駐車位置を指定するためのロープが敷設され、道路に面した南側面の一部に駐車場であることを示す野立看板が設置されているのみで、それ以外に設置物はなく、いわゆる青空駐車場として利用されているにすぎないのであり、本件土地に何らかの構築物を設置し、その上で、当該構築物を利用した事業が行われているものでもない。そうすると、本件土地は、同法69条の4第1項の定める「財務省令で定める建物若しくは構築物の敷地の用に供されているもの」という要件を満たさず、同土地について小規模宅地等の特例を適用することはできないというべきである。