(1)事案の概要

 本件は、審査請求人Xが、被相続人から包括遺贈により財産を取得したとして、平成28年12月29日に被相続人に係る相続税の申告書を提出したところ、原処分庁が、Xにおいて遺贈があったことを知った日が平成27年9月15日であり、上記相続税の法定申告期限が平成28年7月15日であるから、上記申告書が期限後申告書であるとして、上記相続税に係る無申告加算税の賦課決定処分をしたため、当該処分の適法性が争われた事案である。Xは、遺贈があったことを知った日は当該包括遺贈を承認又は放棄をする期間(熟慮期間)が経過した平成28年8月1日であると主張している。

○本裁決で争われた「相続の開始があったことを知った日」に関する状況等は、次のとおりである。
① 本件被相続人の死亡日は裁決上伏せられており不明である。
 本件被相続人は、生前、平成25年9月10日付の自筆証書遺言(以下「本件遺言書」という。)を作成しており、本件遺言書は、平成26年1月24日に検認された。
② 平成27年8月28日付で、Xに対し、本件遺言書に基づくXへの包括遺贈(以下「本件遺贈」という。)の承認又は放棄に係る調停の期日通知書(以下「本件通知書」という。)及び本件遺言書の写しが郵便で送付され、Xは、同年9月15日頃、当該郵便物を開封した。
③ Xが、平成27年11月25日付で、家庭裁判所に対し、本件遺贈の承認又は放棄の期間(以下「熟慮期間」という。)の伸長に関する家事審判申立て(以下「本件申立て」という。)をしたところ、同裁判所は、同年12月10日付で、本件遺贈の熟慮期間を平成28年7月31日まで伸長する旨の審判を行った。

 Xの主張は、次のとおりである。
「本件遺贈の熟慮期間を平成28年7月31日まで伸長する審判をされたから、本件相続の開始があったことを知った日は同年8月1日であり、本件相続に係る相続税の法定申告期限は平成29年6月1日である。したがって、平成28年12月29日に提出した本件申告書は、期限内申告書であって、期限後申告書には該当しない。」

(2)裁決要旨(請求棄却)

① 法定相続人以外の受遺者について相続税法27条1項に規定する「相続の開始があったことを知った日」とは、自己が遺贈により当該財産を取得したことを知った日をいうものと解される。そして、遺贈の効果は、遺言がその効力を生ずる遺言者(被相続人)の死亡の時に発生するのであるから(民法985①)、法定相続人以外の受遺者は、被相続人の死亡の事実と自己のために遺贈があった事実の両方を知らない限り、自己が遺贈により当該財産を取得したことを知ったとはいえない。そうすると、法定相続人以外の受遺者について「相続の開始があったことを知った日」とは、当該受遺者が、被相続人の死亡の事実と自己のために遺贈があったという事実を知った日をいうものと解するのが相当である。

② Xは、本件相続の法定相続人ではないところ、平成27年9月15日頃に、本件遺贈の承認又は放棄に係る調停の期日を通知する本件通知書及び本件遺言書の写しが封入された郵便物を開封し、同年11月25日付で、家庭裁判所に対し、本件遺贈の熟慮期間の伸長を求める本件申立てをしていることから、遅くとも同日(11月25日)までには、被相続人の死亡の事実及び自己のために遺贈があったという事実を知ったことは明らかである。

③ そうすると、Xが「相続の開始があったことを知った日」は、遅くとも平成27年11月25日であり、本件相続に係る相続税の法定申告期限は、遅くとも平成28年9月26日(9月25日が日曜日のため)となるから、同日の後である同年12月29日に提出された本件申告書は、期限後申告書に該当すると認められる。