
ふるさと納税を行ったことにより、もらえる返礼品は一時所得に該当します
ふるさと納税を行ったことにより貰える返礼品は経済的利益であり、一時所得に該当することになります。ただし、問題は、返礼品に係る経済的利益の価額です。この金額がわからないと正しい申告はできません。
横浜地裁令和6年2月14日判決(令和4年(行ウ)34号)では、納税者が課税庁からふるさと納税の返礼品に係る一時所得の申告漏れを指摘され、地方団体における調達価格をもって更正処分等を受けたことに対して、調達価格は一般に知り得ないものであるから不合理であるなどとして各処分の取り消しを求めましたが、納税者の主張は棄却されました(後述)。
この判決からすると、返礼品に係る経済的利益の価額は、地方団体における調達価格によることが合理的とされました。ただし、以下のことも判示されました。
「申告納税方式の下では、ふるさと納税に関しても、納税者が返礼品に係る経済的利益の価額を把握した上で申告をすべきものであり、返礼品に係る経済的利益の価額として調達価格によることが合理的と考えられるものであるが、納税者が調達価格を把握することができない事情がある場合には、調達価格に代わる根拠に基づいてふるさと納税に関する返礼品に係る経済的利益の価額を算出したとしても、その根拠が合理的であると認められる限り、返礼品に係る『価額』と認められるというべきである。」
つまり、納税者がふるさと納税の返礼品に係る一時所得について申告していなければ、調達価格により修正申告や期限後申告をする必要があります。
ただし、納税者があらかじめ、調達価格に代わる根拠に基づいてふるさと納税に関する返礼品に係る経済的利益の価額を算出し、その根拠が客観的に合理的であると認められるものであり、それによって申告をしているならば、その申告について税務署は否認できないということになります。
調達価格は一般に知り得ないものであるため、納税者は通常利用できません。よって、平成29年通知(後述)において、返礼割合を3割以下が求められている現状、寄附金額の30%を1つの目安として返礼品の経済的利益を計算する方法もあるかと思われます。
令和2年8月6日裁決(札裁(所)令2第2号)要旨
ふるさと納税の返礼品は、寄附を受けた地方公共団体が謝礼として寄附者に渡すものであるから、地方公共団体は、寄附金の募集に要する費用の額やその返礼品について、予算計画、返礼品の選定、調達個数、市場調査、事業者等との折衝などを踏まえて、寄附額に応じた返礼品を選定・調達するものと推測でき、このため、その返礼品を選定・調達した地方公共団体が、返礼品の価値を最も理解していると考えられる。そして、複数の地方公共団体(本件各団体)は、評価額を返礼品の調達に要した費用に基づき算定したことが認められる。
ふるさと納税に係る返礼品の調達に要した費用は、返礼品の調達先である事業者等と地方公共団体との間で決定されるところ、地方公共団体等が寄附額に応じた返礼品をホームページ等で公開していることを踏まえると、その決定された金額について、事業者等と地方公共団体との間に特別な動機を挟む余地はなく、通常、地方公共団体が返礼品の調達時における時価を超える金額で調達することはないものと考えられる。したがって、評価額は、返礼品の調達時における時価を示したものと認められる。
本件各団体は、返礼品の調達先である事業者による返礼品の発送をもってその代金を支払っており、その金額は発送により確定すると認められる。そして、返礼品の発送すなわち本件各団体の調達と、請求人における取得等は、時期が近接していると認められ、その二つの時期は同時期であるとみても特段不合理ではない。よって、請求人が返礼品を取得等した時点での返礼品の評価額は、本件各団体が調達に要した費用に基づき算定した評価額と同額であると認められる。
以上によれば、本件各評価額は、本件各返礼品の取得等の時における客観的交換価値(時価)と認めるのが相当である。
令和4年2月7日裁決(裁事126集)要旨
ふるさと納税をした個人は地方公共団体からの贈与により返礼品を取得すること、ふるさと納税制度における返礼品の提供が当該個人に対する謝礼であることからすれば、本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、地方公共団体が謝礼(返礼品の調達・提供)のために支出した金額(返礼品調達価格)をその算定の基礎とすることが相当である。そして、通常、地方公共団体が返礼品等をその調達時における時価を超えて調達することはないと考えられ、また、本件において、本件各返礼品が不当に高額又は低額で取引されたといった事情は認められない。
これらのことからすると、返礼品調達価格は、地方公共団体が本件各返礼品を調達した時における返礼品の客観的交換価値を示すものと評価できるから、請求人は、本件各返礼品を取得することにより、本件各返礼品につき返礼品調達価格に相当する経済的利益を得たことになる。したがって、本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、本件各返礼品の返礼品調達価格によるのが相当である。
ふるさと納税の返礼品の収入計上をすべき時期
ふるさと納税の返礼品の収入計上をすべき時期は、返礼品を受け取った年分となります(所基通36-13、国税庁HP質疑応答事例「ふるさと納税の返礼品の収入計上時期」)。
ふるさと納税に係る寄附金と返礼品の受領との間に対価性はありません
ふるさと納税に係る寄附金と返礼品の受領との間に対価性はありません。
令和4年3月1日裁決(名裁(所)令3第29号)要旨
ふるさと納税制度は、寄附者自らの意思に基づいてふるさと納税を行うことにより、個人住民税の一部をふるさと等に実質的に移転させる効果をもたらすものであり、ふるさと納税を受けた地方公共団体が必ず返礼品を提供することを前提とする制度ではない。加えて、総務大臣は、一貫して、地方公共団体及び社会一般に対し、ふるさと納税に係る寄附金が、寄附者から地方公共団体への経済的利益の無償の供与であり、返礼品は寄附の対価の提供ではないとのふるさと納税制度及び返礼品の運用指針を示しており、かかる指針の下で寄附及び返礼品の提供が行われていると考えられる。
これらのことからすると、返礼品の受領を目的(すなわち対価)として寄附が行われるのではなく、返礼品は、各地方公共団体がふるさと納税とは別に、各地方公共団体の独自の取組みにより、寄附者に謝礼として提供されるものと評価すべきであり、ふるさと納税に係る寄附金と返礼品との間に対価性は認められない。そうすると、本件各ふるさと納税に係る寄附金と本件各返礼品の受領との間に対価性はなく、請求人は、本件各返礼品の受領により経済的利益を受けたものと認められる。
複数の自治体にふるさと納税をすることができるのか?
複数の自治体にふるさと納税をすることができ、寄付先の自治体数に制限はありません。ただし、6か所以上の自治体へ寄付された場合、ワンストップ特例制度が利用できず確定申告が必要になります。
ふるさと納税と特定口座(源泉あり)の関係
特定口座(源泉あり)内でプラスであっても、源泉所得税等が差し引かれているので、その分については申告をする必要がありません。
ただし、特定口座(源泉あり)のプラスを申告することによって、所得が増加するため、ふるさと納税の枠を増加させることができます。
ふるさと納税の返礼品に係る経済的利益の価額について無申告であった場合に、その処分額を地方団体が事業者から返礼品を調達した価格により算定することは合理的であるとされた事例-横浜地裁令和6年2月14日判決(令和4年(行ウ)34号)、東京高裁令和6年12月11日判決(令和6年(行コ)83号)、最高裁判所第二小法廷令和7年5月23日決定
(1)事案の概要
本件の事案の概要は、次のとおりである。
① X(原告、控訴人、上告人)は、Xが行ったふるさと納税(寄附)に関して、地方団体(本件各団体)から取得した返礼品(本件各返礼品)に係る経済的利益を含めずに、平成29年分及び平成30年分に係る所得税等の確定申告を行っていた。
② Y(課税庁)は、本件各団体に対して、同団体が本件各返礼品の調達先の各事業者に現に支出した金額(調達価格)を確認し、これに基づき、本件各返礼品に係る経済的利益の価額を算定し、当該経済的利益は一時所得に該当するとして、所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
| 年分 | 団体数 | 寄附件数 | 寄付額合計 | 調達価格合計 |
|---|---|---|---|---|
| 29 | 40 | 150 | 1,573,000円 | 884,625円 |
| 30 | 73 | 340 | 5,102,000円 | 1,944,430円 |
③ Xはこれらの各処分を不服として審査請求をしたところ、国税不服審判所長は、Yが算定した本件各返礼品に係る経済的利益の価額の一部に誤りがあるとして、上記更正処分の一部を取り消す旨の裁決をした。Xは、裁決で一部取り消された後の各処分の取消しを求めて、訴を提起した。
(2)本件の主な争点
本件各返礼品に係る経済的利益の価額として、一時所得の総収入金額に算入すべき金額は幾らかである。
(3)一審判決要旨(棄却)(控訴)
横浜地裁は、ふるさと納税に関して地方団体から取得した本件各返礼品に係る経済的利益は、一時所得に該当するものとした上で、要旨、以下のとおり判断した。
① 所得税法36条1項は、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とする旨規定し、同条2項は、同条1項の経済的な利益の価額は、当該利益を享受する時における価額(いわゆる時価)とする旨規定しているところ、ここでいう「価額」とは、取得時における客観的交換価値、すなわち、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合において通常成立すると認められる価額をいうものと解するのが相当である。
② ふるさと納税における返礼品は、ふるさと納税(寄附金)を受けた地方団体が、寄附金を支出した者に対し、寄附の対価としてではなく謝礼として提供するものであるところ、地方団体は、調達事業者を募集し、返礼品に係る予算計画の立案、寄附金の募集に要する費用の額、調達を要する個数の検討、市場調査、調達事業者等との折衝を経て、寄附金の額に応じた返礼品を選定し、調達事業者との間で合意した価格で調達するものと考えられる。そうすると、返礼品の調達価格は、特別な関係ないしは動機を持たない地方団体と調達事業者との間において成立した取引価格であるといえ、上記①の「価額」と評価することができるから、調達価格を返礼品に係る経済的利益の価額として一時所得の総収入金額に算入すべき金額とするのは合理的である。
③ 申告納税方式の下では、ふるさと納税に関しても、納税者が返礼品に係る経済的利益の価額を把握した上で申告をすべきものであり、上記②のとおり、当該価額として調達価格によることが合理的と考えられるものであるところ、納税者が調達価格を把握することができない事情がある場合には、調達価格に代わる根拠に基づいてふるさと納税に関する返礼品に係る経済的利益の価額を算出したとしても、その根拠が合理的であると認められる限り、返礼品に係る「価額」と認められるというべきであり、納税者が返礼品の調達価格を具体的に知り得ない場合があるからといって、返礼品に係る経済的利益の価額を調達価格により把握することが不合理であるということにはならない。
④ 以上によれば、本件各返礼品に係る経済的利益の価額は、本件各団体の調達価格によるのが相当であり、その収入すべき時期は、本件各返礼品がXの指定する送付先に到達した日をもって、本件各団体の調達価格を一時所得の総収入金額に算入すべきである。
(4)控訴審判決要旨(棄却)(上告・上告受理申立て)
東京高裁は、一審判決を補正又は引用するほか、控訴審におけるXの下記①の補充主張に対して、要旨下記②のとおり判示し、Xの控訴を棄却した。
① Xは、(イ)返礼品の募集に係るA市の取扱いによれば、返礼品の価格は調達事業者が一方的に指定し、そこに価格交渉が介在する余地がないと認められるから、返礼品の調達価格の決定に際して、原判決が認定する「地方団体と調達事業者との折衝」は存在しないこと、(ロ)返礼品ごとに調達価格の決定過程を立証しなければ、調達価格をもっていわゆる時価と認定すべきではないこと、(ハ)調達価格を返礼品の経済的利益の価額とすると、同一の商品につき異なる調達価格となる場合が生じ得ることなどを理由として、返礼品に係る調達価格をもって返礼品に係る経済的利益の価額とすることは不合理である旨主張する。
② しかしながら、(イ)については、証拠によれば、A市は、ふるさと納税の返礼品の調達事業者を広く募集し、応募のあった返礼品の内容や価格についての審査を経て、当該調達事業者との間で契約締結に至ることが認められるのであり、同取扱いをもって、返礼品の調達価格が、調達事業者が一方的に指定したものであり、価格交渉が介在する余地がないものと認めることはできず、(ロ)については、地方団体は、一般的に、調達事業者を募集し、返礼品に係る予算計画の立案、寄附金の募集に要する費用の額、調達個数の検討、市場調査、調達事業者等との折衝を経て、寄附金の額に応じた返礼品を選定し、調達事業者との間で合意した価格で調達するものと考えられるから、このような過程を経て決定された調達価格をいわゆる時価として評価することは合理的であり、返礼品ごとにその決定過程を個別に立証しないことにより直ちに不合理と評価されるものではなく、(ハ)については、経済的利益の額(時価)は、個々の取引において、その取引に関わる当事者間の合意により成立する価額であるから、同じ返礼品であっても異なる価額となるのは当然のことであって、同じ返礼品に対する調達価格が地方団体ごとに異なっていたとしても、当該調達価格はいずれも適正な時価と評価することができるから、Xの補充主張はいずれも採用することができない。
(5)上告審決定(棄却・不受理)(確定)
本件上告を棄却する。本件を上告審としして受理しない。
返礼割合が3割以下となった経緯
ふるさと納税制度とは、地方団体に対する寄附のうち、一定額を超える部分について、地方税法37条の2及び314条の7に規定する個人住民税における税額控除並びに所得税法78条1項に規定する所得税における所得控除を総称する制度であり、平成20年度税制改正によって創設されました。地方団体に対する寄附は、経済的利益の無償の供与として行われるものであり、ふるさと納税に関して地方団体から返礼品の送付がある場合でも、これは寄附の対価としてではなく、謝礼として提供されるものです。
ふるさと納税制度の創設当時、地方団体が寄附金の受領に伴い当該寄附金を支出した者に対して謝礼として提供する返礼品について特に定める法令上の規制は存在していませんでした。
その後、返礼割合(寄附金の額に対する返礼品の調達価格の割合をいう。以下同じ。)の高い返礼品を提供する地方団体が多くの寄附金を集める事態が生じたこと等から、総務大臣は、地方自治法245条の4第1項の技術的な助言として、平成27年4月1日付け通知(総税企第39号)及び同28年4月1日付け通知(総税企第37号)を発しました。上記各通知は、返礼品について、換金性の高いものや高額な又は返礼割合の高いものの送付を行わないようにすること等を求めるものでした。
しかし、その後も、地方団体間の競争が過熱するほか、一部の団体においてふるさと納税の趣旨に反するような返礼品が送付される状況にありました。このような状況を受けて、総務大臣は、各都道府県知事宛てに、地方自治法245条の4第1項の技術的な助言として、平成29年4月1日付け通知(総税市第28号。以下「平成29年通知」という。)を発しました。平成29年通知は、返礼割合を3割以下とすることを求めるものでありました。


