雑所得の区分

 雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、副業に係る所得、暗号資産取引による所得が該当します。

 令和2年分の確定申告書の用紙の雑所得の欄に「業務」というものが追加され、雑所得は令和 2 年から 次の3 区分されています。

区分具体例
(1)公的年金等国民年金・厚生年金など
(2)業務に係るもの副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なもの(事業所得に該当するものでないもの)
(3)(1)、(2)以外のもの
(その他雑所得)
生命保険会社の年金・暗号資産取引・為替差益・海外FX など

 公的年金等については簡単に分類できますが、「業務に係る雑所得」と「その他雑所得」の違いが分かりづらいものとなっており、実務においては、所得税基本通達35-1、35-2において、例示されたものを当てはめて判別します。

所得の計算方法

雑所得の金額は、次の(1)から(3)の合計額です。

(1)公的年金等
収入金額 – 公的年金等控除額 = 公的年金等の雑所得
(注)公的年金等控除額は、受給者の年齢、年金の収入金額に応じて定められています。

(2)業務に係る雑所得
総収入金額 – 必要経費 = 業務に係る雑所得

(3)その他雑所得((1)、(2)以外のもの)
総収入金額 – 必要経費 = その他の雑所得

 (2)・(3)に損失が出た場合、雑所得内での内部通算はできますが、給与所得・事業所得など他所得との損益通算はできず、損失を翌年へ繰越すこともできません((1)は損失になることはありません)。

必要経費

 必要経費とは以下のものとなります(所法37①)。

(1)これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額

(2)その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額

 「業務に係る雑所得」と「その他雑所得」ともに、所得計算において、必要経費を差し引くことができますが、「業務に係る雑所得」と「その他雑所得」では、必要経費の範囲に違いがあります。

 「業務に係る雑所得」に該当する場合は、上記「(1)これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額」と「(2)その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額」の両方を必要経費に算入することができますが、「その他雑所得」に該当する場合は、上記「(1)これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額」だけしか必要経費に算入することができません(暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)2-3 暗号資産の必要経費)。

損益通算と内部通算

 同一種類の所得の内に黒字と赤字の金額がある場合にこれを差引計算することは、所得税法69条の規定による損益通算ではなく、各種所得の金額の計算にすぎません。

 雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算はできませんが、雑所得内での内部通算(相殺)はできます。

 したがって、競走馬のごとく生活に通常必要でない資産に係る所得の計算上生じた損失の金額であっても、それが雑所得の損失であるならば、同じく雑所得である公的年金から差し引くことができます(所法35②)。

 ただし、国内FXと海外FXのように、雑所得でも、申告分離課税と総合課税の対象になるもの同士は通算できません。

令和4年分以後の業務に係る雑所得

 令和4年分以後の所得税において、業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方は、現金預金取引等関係書類を保存する必要があります。

(注)「現金預金取引等書類」とは、居住者等が上記の業務に関して作成し、または受領した請求書、領収書その他これらに類する書類(自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものは、その写しを含みます。)のうち、現金の収受もしくは払出しまたは預貯金の預入もしくは引出しに際して作成されたものをいいます。

 また、業務に係る雑所得を有しており、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える方が確定申告書を提出する場合には、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)の添付が必要になります。

 なお、その年の前々年分の収入金額が300万円以下である方は、業務に係る雑所得の金額の計算上総収入金額および必要経費に算入すべき金額は、その年において収入した金額および支出した費用の額とすることができます(いわゆる現金主義の特例)。ただし、この特例を受けるには、確定申告書にこの特例を受ける旨を記載しなければなりません。

所得税法と所得税基本通達

所得税法37条(必要経費)1項

 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

所基通35-1(その他雑所得の例示)

 次に掲げるようなものに係る所得は、その他雑所得(公的年金等に係る雑所得及び業務に係る雑所得以外の雑所得をいう。)に該当する。

(1) 法人の役員等の勤務先預け金の利子で利子所得とされないもの
(2) いわゆる学校債、組合債等の利子
(3) 定期積金に係る契約又は銀行法第2条第4項《定義等》の契約に基づくいわゆる給付ほてん金
(4) 通則法第58条第1項《還付加算金》又は地方税法第17条の4第1項《還付加算金》に規定する還付加算金
(5) 土地収用法第90条の3第1項第3号《加算金の裁決》に規定する加算金及び同法第90条の4《過怠金の裁決》に規定する過怠金
(6) 人格のない社団等の構成員がその構成員たる資格において当該人格のない社団等から受ける収益の分配金(いわゆる清算分配金及び脱退により受ける持分の払戻金を除く。)
(7) 法人の株主等がその株主等である地位に基づき当該法人から受ける経済的な利益で、24-2により配当所得とされないもの
(8) 令第183条第1項((生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等))、令第184条第1項((損害保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等))、令第185条((相続等に係る生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算))及び令第186条((相続等に係る損害保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算))の規定の適用を受ける年金
(9) 役務の提供の対価が給与等とされる者が支払を受ける法第204条第1項第7号《源泉徴収義務》に掲げる契約金
(10) 就職に伴う転居のための旅行の費用として支払を受ける金銭等のうち、その旅行に通常必要であると認められる範囲を超えるもの
(11) 役員又は使用人が自己の職務に関連して使用者の取引先等からの贈与等により取得する金品
(12) 譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得(営利を目的として継続的に行う当該資産の譲渡から生ずる所得及び山林の譲渡による所得を除く。)

所基通35-2(業務に係る雑所得の例示)

 次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。

(1) 動産(法第26条第1項《不動産所得》に規定する船舶及び航空機を除く。)の貸付けによる所得
(2) 工業所有権の使用料(専用実施権の設定等により一時に受ける対価を含む。)に係る所得
(3) 温泉を利用する権利の設定による所得
(4) 原稿、さし絵、作曲、レコードの吹き込み若しくはデザインの報酬、放送謝金、著作権の使用料又は講演料等に係る所得
(5) 採石権、鉱業権の貸付けによる所得
(6) 金銭の貸付けによる所得
(7) 営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得
(8) 保有期間が5年以内の山林の伐採又は譲渡による所得
(注) 事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
 なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。