取引先から送られきた支払調書と個人事業主が計上する売上金額が違う場合

 

概要

 支払調書には、その年中に支払の確定した報酬等の金額を「支払金額」欄に記載しなければならないとされています(所規84①二)。

 また、その報酬等につき源泉徴収をされる所得税額を「源泉徴収税額」欄に記載しなければならないとされています(所規84①三)。

 なお、その場合、支払調書を作成する日において、支払の確定した報酬等のうちまだ支払っていない報酬等がある場合及び報酬等を支払っていないため徴収していない税額があるときは、支払調書の「支払金額」欄及び「源泉徴収税額」欄にその金額を内書きすることとされています(申請書様式・記載要領の備考)。

 ただし、実務上煩雑になるため、支払ベースで支払調書を作成し交付していることが多く、その場合、支払調書に記載されている金額は、支払者側からみてその年の1月から12月までに支払った報酬等合計額及びそれについて源泉徴収した所得税等の合計額となります。

 つまり、支払ベースによる現金主義ということになります(ただし、支払者側によっては発生主義で作成するところもあります。)。

 一方、個人事業主が所得税の確定申告の時に売上計上して申告するのは、その年の1月から12月までに役務提供の完了等請求の確定した金額の合計額です(請求ベースによる実現・発生主義)。

 上記の理由により支払調書の金額と、個人事業者自身の1年分の請求合計額とがずれていることはよくあることで、支払調書に記載された支払金額と確定申告する売上金額が一致している必要はありません。

 個人事業主が確定申告をする場合には、支払調書ではなく、役務提供の完了等により自分が作成している請求書の金額を合計することです。

 また、確定申告書の源泉徴収税額欄には実際に「源泉徴収をされた所得税の額」だけでなく「源泉徴収をされるべき所得税の額」も記載するところとなっています(所法120①四)。

 ですから、現金主義による支払調書では記載されていないのですが、12月分の売上計上だけでなく、それに対する源泉徴収税額も確定申告書に記載します。

 確定申告書の第二表の所得の内訳欄には、支払調書の金額だけではなく、個人事業主が12月に請求して支払調書に反映されていない金額もプラスして記載します。

 また、翌年分に関しては、支払調書に、自分が前年に売上計上した分も含まれていることになるので、その分はマイナスして確定申告をすることになります。

 なお、税務署からのお尋ね等心配の方は、あらかじめ決算書の特殊事情の記載欄や別紙で、既に過去年分の確定申告書に売上計上(源泉徴収)されたものがある旨記載されるのがよろしいかと思われます(どこに、いくら等)。