(1)事案の概要

 本件は、原処分庁が、申告漏れとなっていた審査請求人X保有の一般口座内株式について概算取得費を用いて上場株式等の譲渡所得の金額を計算して、所得税等の更正処分等を行ったことから、Xがその処分の取消しを求めた事案である(その他、修正申告において、源泉徴収選択口座で生じた上場株式等の譲渡損失の金額等を新たに計上できるか否か等の争いがあるが省略)。

(2)裁決要旨(一部取消し)

① 株式等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上、取得費に算入する金額は、金銭の払込みにより取得した株式等や購入した株式等については、その払込みをした金銭の額(取得のために要した費用を含む。)又はその購入の代価(購入手数料等を含む。)であるが、2回以上にわたって同一銘柄の株式等を取得している場合には、所得税法施行令105条1項1号に掲げる総平均法に準ずる方法によって算出した1単位当たりの金額に、譲渡した株数を乗じて計算した金額となる。そして、本件通達規定(租税特別措置法《株式等に係る譲渡所得等関係》の取扱いについて37の10・37の11共-13)は、納税者が、株式等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額に関し、譲渡をした同一銘柄の株式等について、概算取得費を当該株式等に係る譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費として計算しているときは、これを認めて差し支えない旨定めていることからすれば、当該規定は、取得費の額について、納税者の利便性も考慮し、納税者の利益に反しない限り、簡便な計算方法によることを認める趣旨であり、当審判所においても相当と認められる。そうすると、原処分庁が課税処分を行うに当たって、Xに対する調査を含め、その調査を尽くしても取得時期及び取得価額が明らかにならない場合及び概算取得費を取得費の額とすることが納税者の利益と認められる場合において、概算取得費を用いることも相当である。

② 上記の総平均法に準ずる方法による株式等の取得費の算定に当たっては、当該株式等の取得価額が必要であるところ、これらの事項は、取引証券会社から交付される取引報告書や顧客勘定元帳などにより確認することが可能であり、これらによっても取得価額が明らかでない場合には、株式等の名義書換日を調べて取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、明確かつ簡便な推定方法として合理的であると解される。
 本件においては、本件各株式の取得価額について、これらを直接的に立証する客観的な証拠資料等が確認できないところ、上記同様、本件各株式についてその名義書換日を調べて取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、合理性を有する取得価額の把握方法であると解される。そして、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、本件各株式は本件被相続人が有償取得したものと推認され、また、本件各株式について、本件被相続人に係る顧客勘定元帳及び有価証券明細簿並びに本件各株式の名義書換代理人からの回答等を検討したところ、本件各株式のうち、J社、K社、L社、M社、N社、P社、Q社及びR社の各株式の名義書換日やその日の終値等の状況は、別表の「年月日」、「取引区分等」、「増加株数」、「減少株数」、「残株数」及び「備考」の各欄のとおりであった(以下、名義書換日が判明した銘柄の株式を「本件各判明分株式」という。)。なお、本件各株式のうち、S社、T社及びU社については、いずれも最初の名義書換日が判明しなかった。以上を前提とすれば、本件各判明分株式については、有償取得されたことを前提に、名義書換日の相場(終値)で取得価額を算定することも明確かつ簡便な推定方法として合理性を有する取得価額の把握方法であると解されることから、本件各判明分株式の取得費については、概算取得費によらず、総平均法に準ずる方法により算定することが相当である。

③ もっとも、本件各判明分株式のうち、P社及びQ社の各株式の取得費については、概算取得費により算定した金額が総平均法に準ずる方法により算定した金額を上回るため、概算取得費により算定するのが相当である。また、本件各株式のうち、S社、T社及びU社については、最初の名義書換日が判明しなかったのであるから、その取得費についても、概算取得費により算定するのが相当である。