クラウド会計対応 月額5,500円からの顧問料 東京都豊島区池袋の格安顧問料の税理士です

土地・建物を一括取得したときの取得価額の按分と裁判例

概要

 賃貸マンションや事業用の不動産を、土地と建物の総額で購入したときは、購入代金を土地部分と建物部分に区分する必要があります。

 建物の購入代金がいくらになるかによって、減価償却費の計算の基礎となる取得価額が変わります。消費税の一般課税では、課税仕入れに係る支払対価の額にも関係します。

 ただし、買主が税務上有利になるように、自由に建物価額を決められるわけではありません。まず確認するのは、売買契約でどのように価額が定められ、その区分をどのような事情や資料が裏付けているかです。

 この記事では、主に賃貸用・事業用の土地と建物を購入した場合について、買主側の取得価額の区分と、裁判例・裁決例からみた判断上の注意点を解説します。按分方法の全体像や基本的な計算方法は、土地・建物の売買価額の区分に関する総合解説をご覧ください。

一括取得で区分する「購入代金」と「取得価額」の関係

土地と建物では、購入後の費用化が異なる

 土地は減価償却の対象となりません。一方、賃貸や事業に使用する建物は、原則として減価償却によって、その取得価額を各年・各事業年度に配分していきます。

 このため、購入総額が同じでも、土地に配分する金額と建物に配分する金額によって、その後の減価償却費が変わります。ただし、法人税では損金経理などの要件があり、個人の所得税と償却費の扱いがすべて同じになるわけではありません(法法31①、所法49①)。

購入代金を按分しただけでは、最終的な取得価額は決まらない

 購入した減価償却資産の取得価額は、原則として、購入の代価に購入手数料などの購入のために要した費用を加え、さらに事業・業務の用に供するために直接要した費用を加算して計算します(法令54①一、所令126①一)。

 したがって、実務では、まず土地・建物の購入代金を区分し、その後、仲介手数料などの付随費用について、取得価額に含めるものと、その期・年の費用とするものを確認します。

 「売買代金のうち建物はいくらか」という問題と、「減価償却の基礎となる建物の取得価額はいくらか」という問題は、分けて整理する必要があります。

 なお、本稿は購入総額を把握できる場合の区分を中心に扱います。過去の契約書などがなく、購入総額自体が分からない場合や、売却時の譲渡所得の取得費を推定する場合は、個人の譲渡所得における取得費の確認・推定に関する解説をご覧ください。

取得価額を区分するときの確認順序

 土地と建物を一括取得したときは、次の順序で確認すると、検討すべき点が明確になります。

  1. 契約内容を確認する。 土地・建物それぞれの価額や、建物に係る消費税等の額が定められているかを確認します。
  2. その区分の根拠を確認する。 当事者間の合意内容、価格交渉の経緯、物件の状態、評価資料などから、区分の合理性を検討します。
  3. 区分が不明、又は合理性に問題がある場合に、按分方法を検討する。 固定資産税評価額、売主側の販売価額の資料、鑑定評価など、取得時の事情に合う資料を検討します。

 最初から固定資産税評価額で計算するのではなく、実際の取引内容を確かめることが出発点です。反対に、契約書に内訳があるというだけで、どのような価額区分でも認められるわけではありません。

契約書に内訳がある場合――尊重される区分と、否定される区分

契約書の区分を固定資産税評価額比に置き換えられなかった事例

 平成20年5月8日裁決では、法人が土地と建物を一括取得し、契約書には土地1億1,000万円、建物1,000万円、消費税等50万円と記載されていました。買主は、契約書の建物価額によらず、固定資産税評価額の比で按分した金額を基に、減価償却費と仕入税額控除を計算しました。

 これに対し、審判所は、売主側で仲介業者の査定などを踏まえて価額を算定していたこと、当事者間に特殊な利害関係がなかったことなどを検討し、契約書の区分を不合理とする事情はないとして、契約書に記載された建物価額を基に計算すべきと判断しました(平成20年5月8日裁決・裁事75集711頁)。

 この裁決から確認できるのは、合理的に合意された契約上の区分があるときに、固定資産税評価額で計算した方が建物価額が大きくなるという理由だけでは、区分を変更できないという点です。

契約書等の「土地3割・建物7割」が認められなかった事例

 一方、令和4年9月9日裁決では、不動産賃貸業を営む個人が取得した3物件について、契約書又は譲渡対価証明書で、いずれも土地3割・建物7割に相当する内訳が示されていました。

 審判所は、固定資産税評価額との比較だけでなく、建物の築年数や設備の状態、売主が売買総額を重視し、内訳について具体的な交渉をしていなかった事情などを検討しました。そのうえで、各物件の内訳価額は客観的な価値と比較して著しく不合理であるとし、固定資産税評価額の比で建物の購入代金を算定すべきと判断しています(令和4年9月9日裁決・裁事128集)。

 これは、「建物が7割なら否認される」という基準を示したものではありません。物件ごとの実態に照らし、建物側に多くの価額を配分する理由があるかが問題となりました。なお、処分全体としては、仲介手数料などの計算誤りにより一部が取り消されています。

二つの事例をどう読むか

 前者では買主が契約書の建物価額より大きい金額への変更を求め、後者では契約書等に記載された高い建物価額の維持を求めています。

 結論だけを見て「契約書が優先する」「固定資産税評価額が優先する」と整理すると、判断を誤ります。実際の合意内容と、その区分を支える客観的な事情の双方を確認する必要があります。

契約書に内訳がない場合――確認できる資料によって方法が変わる

 契約書に土地・建物の内訳がない場合でも、直ちに資料が何もないと判断する必要はありません。売主や分譲会社などに、販売価額を区分した資料が残っていることがあります。

 平成12年12月28日裁決では、賃貸用に取得した新築・中古マンションについて、土地と建物の区分が争われました。契約書には内訳がありませんでしたが、新築物件については、売主等の区分経理から確認できる販売価額の割合が用いられました。中古物件については、売主等にも区分資料がなく、適切な類似売買事例もなかったため、固定資産税評価額の比による区分が相当とされました(平成12年12月28日裁決・裁事60集157頁)。

 この裁決は、新築か中古かによって方法が自動的に決まるという趣旨ではありません。同じ買主の物件であっても、取得時の価額を裏付ける資料の有無や内容に応じて、採用する方法が異なることを示しています。

 なお、売主の「販売価額の区分」と、売主が保有していた資産の「帳簿価額」は同じではありません。売主の帳簿価額が分かっただけで、それを買主の購入代金の区分としてそのまま使えるわけではありません。

総額から土地価額を引く「差額法」は使えるか

 土地の価額を先に求め、購入総額から差し引いた残額を建物価額とする方法があります。しかし、土地の見積額に誤りがあると、その影響がそのまま建物価額に及びます。どのような土地価額を差し引くのかが重要です。

土地を路線価で評価し、残額を建物とする方法が否定された事例

 大阪地裁平成27年6月11日判決では、購入総額から、路線価などを基に算出した土地価額を差し引いて建物価額を求める方法が争われました。

 裁判所は、土地と建物を一体として売買する取引において、売主の利益が土地には反映されず、建物側だけに反映されることなどの問題を指摘し、この事案で主張された差額による算定方法を認めませんでした(大阪地裁平成27年6月11日判決・税資265号-94、順号12677)。

 路線価に基づく土地価額を差し引けば、残額が当然に合理的な建物価額になる、とはいえません。

建物の状態などを踏まえた差額による区分が認められた事例

 他方、令和2年2月17日裁決では、売買総額から土地価額を差し引いて定めた、契約書の建物価額が採用されています。

 この事案では、建物に既存不適格の問題や劣化などがあり、価額の算定が難しい事情がありました。土地価額については、売主の帳簿価額を基準としつつ、固定資産税路線価に基づく評価額との比較検討もされていました。審判所は、こうした個別事情を踏まえ、契約上の区分を合理的と判断し、買主が求めた固定資産税評価額比による再計算を認めませんでした(令和2年2月17日裁決・福裁(諸)令元第4号)。

 二つの事例からは、差額法という方法名だけで採否が決まるわけではないことが分かります。差し引く土地価額の根拠、建物の状態、当事者がその区分に至った経緯まで含めて検討する必要があります。

固定資産税評価額による按分と、鑑定評価の関係

固定資産税評価額比は有力な資料になるが、必ず採用されるわけではない

 土地・建物の固定資産税評価額の比は、公的な評価資料を基に区分できるため、内訳が不明な場合などに用いられています。しかし、個々の物件について別の合理的な評価が示された場合まで、常に固定資産税評価額比によると決まっているわけではありません。

 東京地裁令和2年9月1日判決は、競売により一括取得した土地・建物・附属設備の取得価額の区分が問題となった事案です。先行する平成27年6月1日裁決では、納税者が提出した評価書による区分より、固定資産税評価額などを基にした区分が合理的とされていました。

 これに対し、訴訟では裁判所が選任した鑑定人による鑑定が行われ、裁判所は、その評価内容を検討したうえで、鑑定結果などに基づいて各資産の取得価額を算定しました。結果として、消費税等の更正処分などの一部が取り消されています。控訴審でもこの判断が維持され、確定しました(東京地裁令和2年9月1日判決・税資270号-84、順号13444、東京高裁令和4年12月22日判決・税資272号、順号13794)。

鑑定書があれば足りるわけではない

 この事件では、納税者側が提出した評価書と、訴訟で実施された鑑定を区別する必要があります。鑑定評価という形式だけで、納税者の主張が認められたわけではありません。

 実務でも、鑑定を依頼する場合は、購入時点を評価の基準としているか、評価対象に何が含まれるか、土地と建物それぞれの評価過程に整合性があるかを確認する必要があります。契約上の区分がある場合には、その区分を変更すべき事情を説明する資料にもなっているかが問題となります。

建物価額が決まった後に確認すること

建物本体と建物附属設備の区分は、別の検討になる

 土地と建物の区分が決まっても、減価償却では、建物本体と建物附属設備の区分が問題となることがあります。

 前述の平成12年12月28日裁決では、この区分についても、建築主が保存していた工事請負契約書から工事費の割合を把握し、それを基に取得価額を計算しています。中古物件では、建物本体と設備の経過年数による価値の減少も考慮されています。

 したがって、「建物価額のうち一定割合を設備とすればよい」と一律に考えることはできません。工事内訳、取得した設備の範囲や状態など、区分の根拠となる資料を確認する必要があります。

付随費用は、内容と帰属先を確かめる

 仲介手数料など、土地と建物の取得に共通して要した費用については、合理的な基準でそれぞれに配分します。特定の土地又は建物だけに対応する費用は、その対応関係を踏まえて処理します。

 また、購入に関係する支出がすべて取得価額になるわけではありません。例えば、法人の不動産取得税や登録免許税・登記費用などには、取得価額に算入しないことができる取扱いがあります。一方、個人が業務用の土地・建物について負担する不動産取得税や登録免許税などは、必要経費に算入する取扱いです。両者を同じ選択処理として説明しないよう注意が必要です(法基通7-3-3の2、所基通37-5、49-3)。

 税抜経理・税込経理や、控除できない消費税等の処理によっても取得価額は変わり得るため、土地・建物の購入代金の比率を、そのまますべての支出に機械的に適用しないことが大切です。

消費税は「建物の対価」と「控除できる税額」を分けて確認する

 事業として土地と建物を購入した場合、土地の取得に係る部分と、課税仕入れに当たる建物の取得に係る部分を区分する必要があります。ただし、建物の対価を区分できたことと、その消費税等の全額を仕入税額控除できることは別の問題です。

 実際の控除については、適格請求書等と帳簿の保存、売主の登録状況や取引時期に応じた取扱い、購入した建物の用途などを確認します。居住用賃貸建物については、仕入税額控除を制限する規定もあります(消法30)。

 なお、現行の消費税基本通達11-4-2は、一定の宅地建物取引業者が適格請求書発行事業者以外の者から宅地・建物を譲り受ける場合を対象とする通達です。過去の裁判例・裁決例が引用する旧通達の記載を、そのまま現在のすべての購入に当てはめることはできません。

 売主側の譲渡対価の区分が争われたカチタス事件の経緯や判断内容は、カチタス事件にみる土地・建物の価額区分で解説しています。取得時の検討では、その結論だけを取り出すのではなく、自分の取引の契約内容や資料に照らして判断する必要があります。

 売主側の土地・建物の価額区分、税込売買総額からの消費税等の計算、固定資産税等の精算金の取扱いについては、土地・建物を一括売却したときの価額区分と消費税をご覧ください。

取得時に残しておきたい資料

 取得価額の区分について後日説明できるよう、計算結果とともに、その根拠となる資料を保存しておくことが重要です。

資料確認・保存しておく内容
売買契約書・覚書・精算書土地・建物の内訳、消費税等の額、変更がある場合の合意内容と経緯
価格交渉や査定の資料売主の提示額、仲介業者の査定、内訳を決めた理由、当事者間のやり取り
固定資産税の評価資料取得時に対応する年度、土地・建物それぞれの価格(評価額)、対象となる筆・家屋の範囲
建物の状態を示す資料築年数、修繕・改修履歴、設備の劣化や不具合、法令上の制約、写真や調査報告書
売主等の資料・鑑定評価書販売価額の区分、工事内訳、評価時点、評価対象、評価方法と算定根拠
買主の計算書採用した方法と理由、税込・税抜の整理、付随費用の配分、会計処理との対応関係

 固定資産税の資料では、「価格(評価額)」と「課税標準額」を区別してください。住宅用地の特例などが反映された課税標準額や税額の比率を、評価額の比率と取り違えないようにします。また、土地と家屋の資料の年度や対象範囲が対応しているかも確認します。

 契約書等が複数ある場合は、どの書面が実際の合意内容を表しているかも重要です。前橋地裁平成28年9月14日判決では、当初の契約書とは別の契約書が提出されましたが、後者に買主の署名押印がないことや作成経緯などから、当初の契約書に記載された区分が採用されました。控訴審もこれを維持しています(前橋地裁平成28年9月14日判決・税資266号-123、順号12901、東京高裁平成29年5月11日判決・税資267号-69、順号13018)。

 購入後に別の計算方法を探すだけでなく、契約を締結する段階で、土地・建物の区分とその根拠を確認しておくことが、取得価額を説明するうえで役立ちます。

参考資料

  • 国税庁:減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用、固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合
  • 国税庁:仕入税額控除の対象となるもの、仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項、消費税基本通達11-4-2
  • 『十二訂版 法人税基本通達逐条解説』第7章第3節・取得価額及び付随費用関係
  • 『令和8年版 所得税基本通達逐条解説』49-3関係
  • 『令和6年版 消費税法基本通達逐条解説』11-4-2関係

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry

error: Content is protected !!