概要

 東京地裁令和5年5月30日判決において、アラブ首長国連邦(UAE)の首長国の一つであるドバイで設立された会社(日本に活動拠点がある)は、日UAE租税条約(本件条約)4条1の規定する「一方の締約国(ドバイ)の居住者」には当たらないことから、本件条約の適用はなく、日本の法人税が課されることと判示されました。

 なお、上記判決は、課税処分当時のUAE及びドバイの税制(法人に対する課税制度を設けていない)を前提としてなされたものであり、2023年6月1日からドバイの税制において税率9%の法人税が課税(導入)されることになりましたので、法人に関していえば、ドバイにおいて法人税が課税されれば「課税を受けるべきものとされる者」となり本件条約が適用されることと思われます。

 ただし、UAE国内でビジネスを行っていない外国投資家や、投資に対するキャピタルゲインと配当については対象外であり、また、フリーゾーンと呼ばれるエリアで一定の要件を満たす場合は、法人税は免除されます。

 よって、今後においても、ドバイにおいて法人税が課税されなければ、上記判決と同じように、日本で法人税が課される可能性があります。

 日本人に多いケースである、ドバイで法人を設立したが、実際は日本に活動拠点(国内事業所)があるような場合は注意が必要かと思います。

日UAE租税条約(本件条約)4条1要約

「一方の締約国の居住者」とは、一方の締約国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいい、一方の締約国内に源泉のある所得のみについて当該一方の締約国において租税を課される者を含まない。

アラブ首長国連邦(UAE)の首長国の一つであるドバイで設立された会社は、日UAE租税条約(本件条約)4条1の規定する「一方の締約国(ドバイ)の居住者」には当たらないことから、本件条約の適用はないとされた事例-東京地裁令和5年5月30日判決(棄却)(確定)

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。
① 原告会社Xは、UAEの首長国の一つであるドバイ(以下、「ドバイ」という。)内の住所を本店所在地とするLLC(リミテッドライアビリティカンパニー)であり、日本国内に活動拠点(国内事業所)を有している。
② Xは、国内事業所において、顧客に対し、Xが保有するXの関連会社株式を譲渡し、当該顧客から株式譲渡代金相当額を収受した。
③ Xは、UAE及びドバイにおいて租税を課されていない。
④ 課税庁Yは、Xの関連会社株式の譲渡に係る譲渡益について、Xが本件条約4条1に規定する「一方の締約国(ドバイ)の居住者」には該当せず、本件条約は適用されないことから、国内法(平成27年12月期及び平成28年12月期は、法人税法138条1号、平成29年12月期及び平成30年12月期は法人税法138条1項1号)により、我が国に課税権があるとして、法人税及び地方法人税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分(本件各処分)を行った。これに対し、Xは、本件各処分の取消しを求めて本訴を提起した。

(2)本件の主な争点

 Xに本件条約の適用があるか(Xが本件条約4条1に規定する「一方の締約国の居住者」に当たるか)である。

(3)判決要旨(棄却)(確定)

① 本件条約4条1は、「一方の締約国の居住者」について「住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、事業の管理の場所その他これらに類する基準」(居住者基準)により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいう旨規定しているが、連邦国家としてのUAEは、法人に対する課税制度を設けておらず、また、ドバイにおけるドバイ所得税命令の規定によれば、居住者基準により課税を受けるべきものとされる者はない。そうすると、以上のようなUAE及びドバイの税制の下においては、ドバイに本店を置く法人(ドバイ法人)は、ドバイの「居住者」、すなわち本件条約4条1の規定する「一方の締約国の居住者」には当たらない(なお、本件条約の議定書2項は、UAEの「一方の締約国の居住者」には6つの機関が含まれるが、これらに限られないことが了解される旨規定しているところ、これは、UAE又はドバイの「居住者」とされる者はない中で、日本とUAEが、UAEの法人等で本件条約の特典を享受できる者を特に合意により定めたものと解される。)。
② Xは、ドバイ法人は、ドバイ所得税命令に基づき「課税対象者」とされる法人であるから、Xは、「一方の締約国の居住者」に当たり、本件条約が適用される旨主張する。
 しかしながら、本件条約4条1が、本件条約の人的適用範囲に関し、居住者基準により「居住者」と取り扱われる者とする旨を定めた上で、本件条約4条2及び3が、締約国のいずれもが、上記のような「居住者」に無制限納税義務を課している場合について、いずれか一方の締約国の居住者に振り分けるための基準を定めているのであるから、締約国が、源泉地管轄に基づき、国内に源泉のある所得のみを課税の対象とする場合における当該課税の対象者は、本件条約4条1の「居住者」には当たらないと解されることから、上記Xの主張は採用することができない。